人気ブログランキング |

詳細(1)からの続き

 GOING UNDER GROUNDの松本素生さんを迎えて

e0093608_16151250.jpg 松本さんは外見に似合わず(失礼!)、実に爽やかで良く通る声がいい。それに、その表現にはとてもナイーブな一面を感じさせる。私はこのイベントで何回か"Don't Let Me Down"をやらせてもらったが、今回が一番うまくいったように感じた。
 それは、我々トリビュート・バンドのメンバー達がただの寄せ集めでないレベルであり、一つの固まりとして、私たちならではのサウンドを作り出していたからだった。土屋さん、古田くん、押葉くん、和田の4人は2005年からの付き合いであり、十川さんも2007年から、長田くんも昨年から、とメンバー同士の気心があってきたことが大きい。それぞれ会うのは一年ぶりだったりするが、何となく「我が家にお帰り」的感覚が今年は強く感じられたのだった。

 特に、この曲のようなシンプルなサウンドで、それぞれの個性が生きるものでは、自分が思っている以上にこのバンドの「色」が浮かび上がってきたと思う。ビートルズの忠実な再現からスタートしながら、じょじょに各自が自分なりに昇華していく作業こそ、まさにバンドをやる醍醐味と言える。

 そこに、素生くんの声がのってすごく気持ちのいいブレンドが出来上がった。

e0093608_16414958.jpg その素生くんの切ない感じの歌声がより生きたのは、"(Just Like)Starting Over"だった。この曲も選曲する人が多く、必ず毎回登場するが、正直、ジョンのテイクにある「ピュアさ」を出す事はなかなか難しく、それぞれの「再出発」を提示することになる。それはそれで良いし、新たな世界に導いてくれて楽しい。だが、オリジナルにある大事な「何か」をしっかり表現することも音楽家の大きな役割だと思っている。
 また、キーを高く変更したりすると、ジョンが目指した「プレスリー・ロックンロールの現代化(この当時は80年代化)」が出来なくなる。ギターやベースのサウンドがどっしりしなくなり、ピアノでのオールディズ風な3連刻みがやけに可愛いらしくなってしまう。なので、意識的にアプローチを普通のシャッフル・ビートに変えてやったりもしていた。

 が今回、オリジナル・キーで、そういったサウンド面での制約がなくなったので、プレスリー・スタイルのアプローチが出来たし、女性コーラスのサンプリングも効果的に使うことが出来たのだった。これも個人的には大変うれしかった。

 私は押葉くんが歌う"Starting Over"が最も好きだが、今回の素生くんはそこにかなり肉薄するパフォーマンスをしてくれたと思うし、素生くんのピュアな音楽観にとても共感した。天才歌手ジョンの曲を歌いこなすのはすごく難しい。

 続いて、Leyonaさんを迎えて

e0093608_17231949.jpg Leyonaさんは独特の歌い回しで聴き手を魅了する人で、ブラックミュージック系のニュアンスを生まれながらに持っているような自然さがあって、すごく素敵だなと思った。
 彼女が歌った1曲目はおなじみの"Mother"。これも人気曲であり、これまでも何度も取り上げられてきたが、Leyonaさんは大胆不敵にもア・カペラでのパフォーマンスになると聞き、我々も最初驚いた。
 だが、実際にリハーサルでお会いし、そのカッコイイ歌いっぷりを聴くと、なるほど彼女ならア・カペラで十分に観客を虜にする力があると確信した。ただ、より彼女の登場を効果的にしたかったので、ジョンのオリジナルにある教会の鐘の音を流すことにした。これで、お客さん達も曲があの"Mother"であることがわかるし、その音の後に、何と無伴奏で歌われることがより刺激的になると思った。あの時、シーンと静まり返った武道館に、彼女の声と鐘が美しく共鳴しているのを感じたのだった。

e0093608_16271356.jpg 緊張感あふれる中、凛とした姿で"Mother"を歌い終わった後に、今度は我々バンドとともに実に渋い選曲、でも演奏してても聴いてても楽しくてゴキゲンな"You Really Got A Hold On Me"を歌ってくれた。

 この曲のオリジナルは62年のザ・ミラクルズのヒット曲で、当然作曲はスモーキー・ロビンソン。モータウンの名曲の一つであるが、ミラクルズでのタイトルは"You've Really Got A Hold On Me"なのに、ビートルズは"You Really Got..."のタイトルでカヴァー、63年のセカンド・アルバム「With The Beatles」に収録している。
 ビートルズはかなり忠実にモータウン・オリジナルをコピーしているが、キーをCからAに下げている。スモーキー・ロビンソンがファルセットで甘くセクシーに歌っているのに比べると、ジョンは正攻法でけれん味なく歌っている。やはり、横揺れ横ノリするミラクルズの「くー、タマラン」ってムードには一日の長を感じるが、なかなかどうして若いビートルズも健闘していて、特にハモ・パートなどビートルズの方がカッコよくキマっている。

e0093608_16221281.jpg で、我々は最初、ビートルズのバージョンを基にタイトな感じでやっていたのだが、Leyonaさんの歌はより黒っぽく、たぶん彼女もミラクルズの方を意識したような感じだったので、少しテンポを落とし、粘っこいニュアンスを加えるようにトライしてみた。
 もちろん、キーもビートルズのAからCに上げたので、ふむふむ、結局ミラクルズと同じになったわけね。
 ただし、押葉・土屋・和田のコーラス隊はビートルズ風で頑張ってみた。2回出てくる「Hold Me,hold me,hold me」のリードとコーラスの絡みは曲中で最大の聴かせ所だけに、ちょっと緊張したが、本番はすごくうまくいったと思う。いやぁ、実に気持ちがよかったぞい。

詳細(3)に続く
by harukko45 | 2009-12-28 16:55 | 音楽の仕事 | Comments(0)

 去る12月8日に日本武道館にて行われたジョン・レノン・スーパーライヴは、今年で9回目。私がこのイベントに関わるのは6回目、バンマスとしての役割を仰せつかってから5回目となった。
 これまでの8回のコンサートでの収益は世界22カ国85の学校建設に支援され、当初の目標である100の学校建設の達成も実現の見通しとなったのだった。
 とかく、チャリティと称して売名的で一過性のまやかしイベントや企画が多い中、「世界を良くするために、恵まれない子供達への教育を」という一点にしぼって、コツコツと継続してきたDream Power事務局の真摯な姿勢と努力には、今更ながらに頭の下がる思いだ。

 終演後のパーティで、ヨーコさんがスピーチの中で、「最初の2年間は大丈夫だろうか、と思ったが、苦しい時期も耐えて頑張ってくれたことで、この9回目を迎える事が出来た」といった主旨のことを述べられていた。まさに「継続は力なり」を実践することで、現在の高い認知と成果を上げることとなったのだった。

 だがその分、私を始めとするコンサートの制作現場の人間は、ある種の危険に気づき始めていたとも言えるし、それを回避するためのプレッシャーが年々増大するのを感じていたように思う。「やる前から成功はほぼ約束されている」部分があり、それが予定調和的なパフォーマンスを生み、継続することがマンネリズムに陥ることを私は最も恐れたし、そのような流れを作らないよう心がけなければならないのだった。


e0093608_1803463.jpg ジョン没後29年目の2009年での9回目のイベント。ジョン・レノンの誕生日が(10月)9日、ゆえに彼がラッキーナンバーとしていた「9」。
 勘のいいレノン・ファン、ビートルズ・ファンならすぐにピンと来たかもしれない。オープニング映像に引き続き、会場に流れたのは「ホワイト・アルバム」に収録された"Revolution 9"。その「Number 9」のリフレインにクロスするように、我々が演奏し始めたのは"#9 Dream"。ボーカリストとして登場したのは奥田民生、吉井和哉のお二人である。

 e0093608_1743122.jpg 1974年の「Walls And Bridges」に収録された"#9 Dream"は日本語タイトルが「夢の夢」となっており、シングル・カットもされたので、その日本語イメージが強い人も多いだろう。内容はジョンの見た夢の話で、サビの歌詞も意味不明な言語であり、彼が夢の中で聞いた言葉をそのまま使っているとのこと。
 だから、ジョンの内面を垣間みるようとも言えるし、完全におちょくられているような気もするし。

e0093608_010268.jpg だが、この曲全体に漂う幻想的なムードは実に魅力的だ。イントロのスライド・ギターのフレーズ(ジェシ・エド・ディヴィス?)や、さりげなくも印象的なエレピのバッキング(ニッキー・ホプキンス?あるいはケン・アッシャーか)も良いし、何と言ってもまさに「魅惑の」ストリングスのアレンジが効果バツグン(アレンジはケン・アッシャー)。
 で、これはジョンがプロデュースしたニルソンの"Many Rivers To Cross"(アルバム「Pussy Cats」収録)のオーケストレイションを借用したものらしい。確かに、聞き比べると同じフレーズが聞こえてくる。
 で、フワフワとして酔っぱらったような(あるいはブっ飛んでいるような)ボーカルの合間をぬうゴージャスなストリングスにクラっときていると、突然の転調にハッとさせられる。そして、先述の妖しいサビに突入。とどめはサビ後のブリッジでのハープのアルペジオ、ルートに落ち着かず不安定に漂うベース、それに絡むストリングス、スローダウンしていくテンポ、と実に芸の細かい夢の再現が成されているのだった。
 こういうアレンジはブライアン・ウィルソンがやりそうなのだが、この頃のジョンはまさに「失われた週末」期で、その心情はブライアン的なものに近かったのだろうか。本来なら、ブライアンに近いのはポールのはずだが、ジョンがこのようなサウンド・メイクをしたのは極めて興味深いし、ポップな感覚が満載でありながら、同時に寂しさをも強く感じさせるあたりもブライアン的。

 さて、実際の我々の演奏では、Aメロでボーカルとストリングスがからむ部分に秘められたジョンのワナに引っ掛かり、奥田さんも吉井さんもリハではかなり苦労していた。本番でも一瞬ヒヤっとする場面があったが、さすがのお二人はうまく切り返してまとめてくれたし、我々バンドもピタっとついていったのは良かったと思う。
 確かにライブでやるのは難曲だったと思うが、個人的には今までとは全く違う感触のオープニングで面白かったし、このフンワリとして何とも言えないトリップ感が実に気持ちよかった。そして、ウットリと2コーラスが終わったところで、次の曲に突入。

e0093608_03566.jpg とことん「9」にこだわる今回のオープニングでは、続けてビートルズ「Let It Be」に収録された"One After 909"を演奏した。前曲に比べて、この曲は極めてストレートなロックンロール調であり、"#9 Dream "で一瞬キョトンとした感じの会場のムードを一気に高めるには持ってこいの選曲とも言えるか。
 だがしかし、この曲のノリはなかなか難しい。基本的にはカントリーのニュアンス、いわゆるロカビリー的な要素を知らないとかっこ良くグルーヴできないのだ。
 ビートルズの有名なルーフトップ・コンサートでのテイクでは、ジョンもジョージもずいぶんアヤシい演奏をしている。なので頼りはもちろんポールで、彼はつねにテンション高くバンドを引っ張っており、加えてもう一人、強力な助っ人であるビリー・プレストンが最高にイカシたフレーズ連発でゴキゲンなのだ。
 
 リハ開始当初はうまくノリをつかみきれない感じだったのだが、実は我々には土屋潔さんというギターの名手がいるので、彼にはビートルズとは少し違った感じで、カントリー的な2ビートっぽいバッキングを終始やってもらい、それにリズム・セクションが絡む感じにした。もう一人のギターの長田進君は彼本来のロック色強い演奏で、全体にワイルド感を強調してくれたし、ピアノの十川ともじさんもビリ・プレ節を随所に聴かせてくれた。本番では奥田さんのギターも加わって、ソロも弾いてくれたので、オリジナルよりもかなりパワーアップした仕上がりになったと思う。

 こういう曲はやっていて文句なく楽しい。リハーサルの時は、吉井さん奥田さんのかわりに、私とベースの押葉真吾君でツイン・ボーカルをずっとやっていたのだが、もう最高に楽しく気持ちよく歌わせてもらいました。バンドの皆さんどうもありがとう。
 いやはや、もちろん本番ではメインのお二人がゴキゲンなハモリを聴かせてくれました。ウム!なかなか良い滑り出しでありました。

詳細(2)に続く
by harukko45 | 2009-12-28 01:14 | 音楽の仕事 | Comments(0)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる