水越けいこ/シンフォニー・クルーズ
2008年 08月 20日
結論から言ってしまうと、「いやぁー楽しかった!」。ショウの時間は60分でしたが、全12曲のセットメニューはなかなか充実していて、やっている方としても大変満足感のある内容だったと感じました。
毎回、大胆な企画構成を信条とする(?)けいこさんからのアイデアは「アルバム全曲演奏」、マジっすか、と始めはびっくりしましたが、これもけいこさんらしいと納得。
で、選ばれたのは1979年のサードアルバム「Aquarius」でした。当然、"Too Far Away"の印象が強いが、実際に1曲1曲あたっていくと、それぞれ良く仕上がった佳曲ばかり。大村雅朗氏の手堅くツボを心得たアレンジと、佐藤準氏のヤンチャで楽しいアレンジの好対照も実に面白い。
バンドの編成的には全てを再現するのは不可能でしたが、出来る限りそれぞれの曲の良さを生かすようにトライしました。
m1.Hiroshi
「Aquarius」の全曲演奏ではありますが、オープニングはその前のアルバム「Heart」のラストにおさめられた曲。さりげないけど、ちょっとしたこだわりが良いんじゃないでしょうか。
私のイントロからギターの田口慎二君が、あの「ひろしーぃ」のフレーズを奏でるというインストでスタート。サビのメロディを私が弾いている時にけいこさん登場、後半をモノローグのように歌いました。当然、聴き手は次の展開を期待する流れになるわけですな。
m2.生まれ変わる為に
続けてやったこの曲からアルバムの曲順通りです。79年当時のAOR風のノリが特徴なんですが、内容は前向きな曲なので、あまり重い感じにはなりたくないが、サラサラともしたくないといったところ。後半は少しゴスペル風な倍速ビートになり、お客さんからも手拍子をもらっての意外な盛り上がりになりましたね。これはうれしかった。タイトル通り「生まれ変わって」しまいました。
m3.東京が好き
これは名曲ですし、佐藤準さんの好アレンジも光ります。最初はピアノだけでやろうかと思いましたが、イントロのストリングスの感じが捨てがたく、エレピとシンセでトライしました。とってもムードのある曲だし、アレンジに奥行きがあるので、演奏していると夢中になってしまうんですね。個人的には、ところどころ冷静さを欠いていたと反省もしていますが、やっていて充実感を憶える作品であることは間違いないです。
m4.秋想
続けての曲、すごく幻想的な感じのする内容です。曲やアレンジと言うよりも、詞の内容がいろいろ複雑な思いを感じさせて、いかようにも取れるからかもしれない。シンプルなアレンジでの演奏だけに、詞の一言一言がこちらを刺激するように響いてくるのでした。「深いソファーに沈んでいる」と「時の谷間に落ちそう」とか、それに対称としておかれる「心の隙間が隠せない」、または「レンガのホテル」や「月が私の肌を照らす」なんかがそう。
最後の一節には希望があるのか、諦めなのか慰めなのか、その辺の感じ方が常に変化して面白いです。
m5.最後のデート m6.ヨーソロ m7.そしてetc...
ここから、もう1人サックス奏者の渡部将人君に加わってもらいました。
この辺になってくると、根っからのけいこファンの方には「Aquarius」だな、と確信されたとおもいます。最初のリハではそれぞれフル・コーラスでやっていましたが、ショウ全体の時間との兼ね合いもあり、この3曲は少しずつ短くしながらメドレー的な扱いになりました。
「最後のデート」はサックスの間奏をフィーチャアしたかったので、メドレーの最初としては少し長めになりましたが、曲として2コーラス出来たので良かったと思います。その分、「ヨーソロ」はメドレー扱いにするにはもったいないとも思いましたが、またの機会の楽しみに。
「そしてetc...」は佐藤準さんの過激でヤンチャな部分が出ているアレンジです。で、とにかく「どうなっちゃうの」的な間奏は、当たりと外れの境界線とも言えるわけですが、今回はカットになりました。でも、指の練習にもなりましたし、発想の豊かさによる魅力は素晴らしくて、個人的にはとても好きです。
サックスの渡部君が歌に絡むバッキングのフレーズをよくケアしてくれて、実に効果的でした。
m8.TOUCH ME in the memory
これはけいこさんのレパートリーの中でも人気曲の1つですね。悲しい詞の内容なのに、ポップで爽やかなメロディが印象的だからでしょう。アルバムではイーグルス風にギターがフィーチャアされていたので、こちらもやはり田口君のソロを生かしたかったのでした。
ただし、前曲ではスリリングで楽しいアレンジだった佐藤氏ですが、こちらはちょっとやりすぎか? なので、後半は少し短くさせてもらいました。ライブとしてはこれで正解だと思います。
m9.少年
続けてのこの曲、なかなか良かったです。リハの時よりも本番が一番うまくいったと思いました。いかにもフォーク・ソング風な詞と曲調なんですが、今回の小さな編成でのパフォーマンスの方が、より曲の良さが出たようにも感じました。会場からも言い知れぬ熱気みたいなムードを感じましたねぇ。「曲順通りでわかっていたけど、やっぱり新鮮だった」って気分かも。そうだったら、してやったり!ですが。個人的には「海はいいー」のところでグっと持ってかれるのですが、どうでしょうか。
m10.雨の休日
さらに続けたこの曲は、あまりにも悲しすぎる詞だけど、けいこさんの声だと暗くならずにホっとするのでした。アレンジは「生まれ変わる為に」同様、70年代後半のAOR風の16ビートですが、それに終始せずにいろいろと細かく展開していくのがミソです。パフォーマンス的には各自がフィーチャアされる流れでショウ後半を盛り上げるようにしました。ナベちゃんが熱く吹きまくってくれて楽しかった。今回、サックスが入った効果がありました。
m11.Too Far Away
さて、お待ちかねの代表曲。ただし、今回は非常に淡々とした心情でやろうと思いました。あまり思い入れ強くならないように。
アルバムを通して演奏するということで、その流れの影響からか、この曲へのアプローチにも微妙な変化が自分の中であったかもしれません。
ある意味、この曲の持つ純粋さとか、少し青臭いかもしれない情熱をストレートに表現するだけではちょっと大人げないかな、とも。
よく考えれば元々、けいこさんが歌うことで、この曲には女性的な複雑さというか、神秘的な雰囲気も加わっているのでした。そこら辺の深さにもようやく気付いたというわけです。いやはや、まだまだですなぁ。
En.ほほにキスして
無事に「Aquarius」全曲演奏を終え、アンコールはパーっと楽しんじゃえ、ということでおなじみの「ほほキス」で盛り上がりました。
それにしても、良いアルバムの曲順というのは、やっぱりライブでやっても良いもんだというのを再認識しました。ちゃんと考えられているものは、どんな形でやっても効果があるし、それによる満足感があるということでした。この企画はこれからも続きそうですな。
終演後は気持ちが晴れやかになりました。お越しいただいた方々には心よりお礼したいと思いますし、楽しい時間を一緒に過ごせた、けいこさんとメンバー、スタッフにも感謝感謝です。
和田春さんのコメントをみて、ライブのおさらいをさせてもらってます。出来ればライブ前に教えてもらえると、気合入れてきけるかもって無理ですよね。コンサートは、凄く楽しみにしていたので、予想以上に楽しく素敵でした。和田春さん自身が楽しんで演奏されてるのが分かって、見てて気持ちよかったです。ありがとうございました。
シンフォニークルーズにお越し下さり、またこのようにコメントもいただき、本当にありがとうございました。
水越さんとの仕事を通じて、これからも交流ができればと思います。
今後ともどうぞよろしくです。