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ジョン・レノン・スーパーライヴ2007の詳細(3)

 詳細(2)からの続き...

 Bonnie Pinkさんのコーナーが終わって、トリビュート・バンドは一時休憩。バックステージでBonnieさんと再会、盛り上がった気分でお互いの健闘を讃え合っておりました。私のように、すぐ頭に血が上って興奮してしまう人間にとっては、こういう刺激の多いイベントは何回も死んで、何回も生き返るって気分であります。

 ステージでは日本が誇る大女優、樹木希林さんが登場して「子供の作文」を紹介するシーンになった。私は全てを見れなかったのだが、後で会場にいた友人達から、希林さんが素晴らしかった、という話を聞いた。私も"Imagine"の朗読を聞かせてもらったが、リハーサルでの飄々とした感じとは違い、本番での集中力の高さと、発せられる言葉言葉に深い表情がこめられていて、すっかり感動してしまった。もう、さすがとしか言いようがなく、ソデに下がってこられる時もずっと拍手していたのでした。

 さて、次に登場するのはThe Sunday Drivers。スネオヘアーこと渡辺健二さんとクリエイティブ・プロデューサーとして他方面で活躍されている箭内道彦さんとのスペシャルユニット、いや正確には、箭内さん(右ハンドル)渡辺さん(左ハンドル)によるオール・ドライブソング・ユニットである。

ジョン・レノン・スーパーライヴ2007の詳細(3)_e0093608_14272788.jpg で、お二人にはとても重要なミッションが託され、去る10月にタイの奥地にある「Dream Power」によって建てられた学校を実際に見に行ってくれたのだった。そして、その時の様子、地元の子供達との交流が映像として流された。そのバックとして彼らは2人だけで"Love"を歌った。かつて、某アーティストがスーパーライヴに登場した時、この名曲を台無しにするアレンジを施し、意味のないパンクロック風で演奏させられた、何とも苦々しい思い出があるが、今回のお二人は原曲の素朴さ美しさをきっちりと尊重してくれた。ステージ袖で聞いていると、渡辺さんの繊細なボーカルが武道館に響いて、それが映像ともうまくマッチし、とても透明感あふれるムードが生まれた。

 それから、彼らの軽妙なトークに会場もステージもとっても和んだね。意外に本人達はシリアスだったりするから、不思議なんですけど。

ジョン・レノン・スーパーライヴ2007の詳細(3)_e0093608_14275394.jpg そんなほのぼのとしたムードの中、「Love」つながりとして、2曲目にやったのが"Real Love"だ。これは"Anthology2"に新曲として収録されたものだが、当然ジョンは亡くなっているので、ヨーコさんが所持していたテープをメンバー3人に渡し、ビートルズの作品として完成させたものである。
 曲全体としては、ポップなメロディで親しみやすいが、今一つつかみ所がないとも言える。しかし、よくよく演奏してみると意外に面白い発見があるのだ。今回は特に1コーラスをSunday Driversのみでやったので、2コーラスへのブリッジ部分での暗く重いマイナー・コードの部分がより印象的になった。なので、それまでの静寂感を壊す気持ちで、強調してみた。
 その後は淡々と進んで行くが、ここでもそれまでの静謐なムードから、まるで暖炉に灯がともってポカポカしてくるようなイメージで、じょじょにサウンドを厚くしていった。

 また、サビでの3声のハーモニーがCDではジョンを支えるように壁になっているのだが、お二人が別のアプローチをしていたので、私はそれをシンセでやることにした。ちょっとTOTO風の音だったけど、悪くなかったし、後半名越君のスライド・ギターとの絡みもよく、ジンワリと盛り上がって、とっても気持ちよかった。今じゃ、"It's real love.It's real."のリフレインが頭から離れない私なのでした。

 さあ、続いてはちょっと緊張。私のような世代にとっては偉大なる伝説の人が登場だからだ。Mr.Klaus Voorman(クラウス・フォアマン氏)、ハンブルグ時代からのビートルズの友人であり、ベーシストとしてはマンフレッド・マンでも活躍、ジョンのプラスティック・オノ・バンドに参加、アルバム"Imagine"等でも弾いているし、ジョージとの親交も深く、"All Things Must Pass"そして、あの「バングラ・デシュのコンサート」でも演奏していた人物だ。
 また、多才な彼は画家としても有名。特にビートルズの"Revolver"のジャケットでグラミー賞を受賞していることでも有名だ。

 まさにあの時代、あのビートルズの真実を知る、数少ない人物のひとりがクラウスさんなのだ。
 今回は、彼がこのたび書いたビートルズ回想録「ザ・ビートルズ / リメンバー」の発売のための来日だったのだが、スーパーライヴへの参加も実現したのだった。

 我々バンド全員は、当日リハーサル前に武道館の彼の控え室を訪ね、初対面した。最初はやはり「伝説のヒーロー」を前に少々堅くなってしまったが、もう70歳近いというのに、実にカッコイイ!!姿と紳士然とした振る舞いに、すっかり魅了されてしまった。
 そして、その当時弾いていたフェンダー・プレジション・ベースを我々に見せてくれて、それは我らが押葉君に託された。「今日これを、君が弾いてくれ」。さすがにフェンダー嫌いの押葉君も、この音楽歴史的財産とも言えるようなベースを拒否するわけにはいかないね。もちろん、喜んでお借りする事になった。

 その後、クラウスさんはリハーサルを熱心に見学し、我々に「よりアグレッシブに」、そして自分をもっと「アピールすること」を強調された。また、自分が歌う楽曲へも細かい注文を各ミュージシャンにつけていた。最近はあまり演奏されていないとは言え、やはり音楽が始まればミュージシャン魂に火がつくのは当たり前なのだ。

ジョン・レノン・スーパーライヴ2007の詳細(3)_e0093608_15273760.jpg そして、もう一つ大きなこと。それは、実はクラウスさんが加わる曲はサム・クックのビッグ・ヒットで、ジョンも"Rock'n Roll"の中でカヴァーしている"Bring It On Home To Me"なのだが(実際にこのアルバムの中でジョンとデュエットしているのがクラウス、オリジナルはサム・クックとルー・ロウルズ、これも凄い!)、当初リード・ボーカルを歌うはずだった、クラウスさんの奥様が病気で来日が果たせず、その代役を我らが押葉真吾君がやることになったのだった!!

 この大変更にショックのあまり、押葉君はそのことを我々に当日まで知らせなかったのだが、聞いた我々は逆に大喜び!だって、本来ならこのイベントで我らが代表として歌ってほしい押葉君が、打ち合わせの段階で「今回はベーシストに徹し、ボーカリストとしては立ちません」と宣言してしまったのだ。私はひどく残念だったので、ことごとく機会を狙っては「歌って〜歌って〜」と誘いを入れていたのだが、彼の意志は堅かった。

 ところがだ!やはりそれをジョンの魂が許さなかったのだよ、オシバッチ!
そう、これが君の運命なのだ、と言わんばかりに突然リード・ボーカルと取る事になったじゃないか!私として狂喜乱舞でありましたな。

 そして、押葉&クラウス、二大ベーシストによるデュエット"Bring It On HomeTo Me"は、私にとって最高に思い出深い演奏になった。この曲はいろんなセッションでもよくやられる曲で、簡単なコード進行の繰り返しなのだが、今回はクラウスさんの要望で、サム・クックのオリジナル・バージョンにかなり忠実にやった。そのおかげで、セッション曲として割と軽んじられがちなこの曲が、やはりたぐいまれなる名曲であったことを再認識したのだった。
 やはり、先輩から学ぶことは大きい。5コーラスあるボーカルパートが終わると私とオッサンとでソロを回した。「アピールするように」との言葉で2人とも燃えたよ。もちろん、この時の土屋さんのギターソロは素晴らしかった。

 終演後のパーティで、たくさんの人との応対にさすがのクラウスさんも相当お疲れだったにもかかわらず、最後に土屋さんに向かって「君は実にグッド・プレイヤーだ」と絶賛されていた。また、たまたま近くにいたせいだが、私に向かっても「君のプレイにはエネルギーを感じる、とても大事なことだ」と言ってくださった。感激である。私は「一生のうちでも、ものすごく思い出深いひと時になりました。だって、やはり私達にとっては、あなたは伝説のヒーローなんですから」と話した。そのようにヒーロー扱いされるのを、嫌がる感じのクラウスさんだが、この時は私の手を強く握ってくれた。再び感激であった。

 詳細(4)へ続く。
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by harukko45 | 2007-12-15 15:28 | 音楽の仕事 | Comments(0)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


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