ニーベルングの指環
2007年 06月 15日
相手となるブリュンヒルデを演じたクリスタナ・ローケン(ターミネーター3)も良く、これほど美しく力強くカッコいい女性をテレビで観たのは久しぶりだ。
それに、脇を固める役者陣もうまい人ばかりで、深みのある映像を作り出すことに貢献していたと思う。
また、VFXのテクニックとセンスがよく、神話と騎士の世界を壊すことなく、迫力ある素晴らしい効果を出していて、この前に観た「スター・ウォーズ」旧3部作のリメイクがますますショボく感じられる。
そして、何より大元の北欧神話が持つ壮大(だろう、読んでないのでわからないが)な世界を、現代人にも理解しやすくし、それでいてスピーディな展開とファンタジックで極めて人間的なストーリーにまとめあげた脚本が素晴らしいと思った。なんと、脚本は「24/Twenty-Four」のロバート・コクランである。さすがだ。
こういった良いキャスト、スタッフを仕切った監督のウーリー・エデルを初めて知ったが、映像美にもかなりのこだわりを見せる実力派だと思う。全体にザックリした力強い表現の中、役者のアップをうまく使って、微妙な心理も的確にわかりやすく映し出していたのだった。
さて、私のような音楽好きには「指環」という題名だとすぐに浮かぶのはワーグナーのオペラだ(今時の人は「ロード・オブ・ザ・リング」でしょうが)。上演に4夜かかる大作楽劇である。で、その下敷きとなっているドイツの叙事詩「ニーベルンゲンの歌」の映画化なのだが、ワーグナーのを知っていて、こちらを読んでいない私は、そのストーリーや登場人物の設定に微妙な違いがあり、最初少々とまどった。(ワーグナーの方が改変しているのだけど/追記:「ニーベルンゲンの歌」を読んだところ、この映画もかなり改変脚色されていた。ただ、本で読むこの物語はもっと面白い!)
にもかかわらず、役者・脚本・演出の巧みさのおかげで、すぐにストーリーの面白さにぐっと引き込まれてしまい、ジークフリートとブリュンヒルデにどんどん感情移入してしまうのだった。それは、だいたいの筋と結末を知っていればこそで、物語が進むほどに2人の悲劇がどんどん心に迫ってくるのだった。
はっきり言って、ワーグナーの書いたものよりも面白い!この映画のエンディングでの切なさ、悲しさはワーグナーお得意の「女性の愛による救済」風のエンディングよりも心に響いた。もちろん、ワーグナーの音楽は凄いけどね。ただし、この作品を持ってワーグナーの楽劇のストーリーだと誤解しては困る。あえて言えば、ワーグナーの「指環」の後半、3夜「ジークフリート」と4夜「神々の黄昏」に近いが、その全てではない。
また、「ニーベルンゲンの歌」ではその後の壮絶な復讐劇が語られているらしい。実はこの映画で語られているのは物語の前半のみなのだった。
というわけで、私は早速図書館で「ニーベルンゲンの歌」を借りてまいりました。より深く、探求して行きたいと思います。