ジョン・レノン・スーパーライヴの詳細(5)
2006年 11月 07日
いよいよ、終演に近づいて来た。ここまで、演奏する立場からするとアッと言う間だった気がします。あんなに長くリハーサルしたのに、本番はこうも早く過ぎ去って、幸せな時は何と短いのでしょう。
本編最後にお迎えしたのは、佐野元春さん。佐野さんの登場に、我々バンド側にはピリっとした空気が流れましたね。なぜなら、スタジオでのリハの時からすでに、彼はこちらの予想を上回るエネルギーで、本番さながらのパフォーマンスを披露していたからです。私達は、彼の動き、合図、声を絶対に見逃したり聞き逃すことは許されません。初対面だろうと、古田君のように旧知の中だろうと、すべてのコントロールは佐野さん次第なのです。
だからといって、借りて来た猫のような演奏でおとなしくなんかしていられない。スタジオだろうとステージだろうと、いようがいまいが彼にはお客が見えていて、その見えない相手を常にあおり続けているし、背中から我々にも強烈なオーラでプッシュしてくるのだった。
曲はお馴染み"Come Together"のみ。しかし、魂を込めてこれ1曲ですべてを出し切りたいという主旨のメールをご本人から本番日前にいただいた以上、こちらにもそれなりの覚悟と気合いが必要なわけです。ですから、やはりピーンとした緊張感が生まれたのも当然でした。
去年のオノ・ヨーコさんとのステージを思い起こしました。あの時も同じような緊張感と、一瞬たりともヨーコさんの動きを見逃さないように集中しようとしていました(それでも、いろいろあったけど)。
そういう時って、集中が高まることで、逆に本能的な演奏になっていくところがある。特にこういうシンプルで扇動的なロック・チューンならなおさらなのだ。だから、どこをどう演奏したかより、どこまでも熱く深く音楽に入り込んでいたか、と同時に氷のように冷静に全ての動きを理解できていたか、となるのだった。こういう体験は麻薬的なので、ずっと浸っていたいのだ。もっと演奏したい。もっと、もっと...。
音楽って時間に司られた芸術で、エンディングに向かってその興奮や感動は頂点に導かれていくわけだけど、その「約束の地」とも言えるエンディングは同時に文字通り「終わり」であって、残酷にもそこで音は消え、もう二度と戻ってこない。
その時間は7,8分あっただろうか。短かった、だが濃密なひと時だったと感じる。
さて、次で最終回。詳細(6)へ続く