W杯2006/ドイツ3-1ポルトガル
2006年 07月 10日
ただし、前回に引き続き今大会では開催国が回ったので、ドイツはもう一踏ん張りして有終の美を飾りたいという気持ちだろう。よって、はなからドイツ有利に決まっていた。
ラインナップも両チームとも主力やケガ人を外していたから、モチベーションのみならず実力的にも落ちるわけだ。とは言え、前半0-0ではあったものの、それぞれの良さが随所にあってなかなか見応えのある内容だった。強い緊張感が試合を支配していないので、いくぶん守りよりも攻撃することで、前の試合の悔しさを晴らしたい思いになるのかもしれない。
だから、ポルトガルなどデコを中心にワンタッチ、ツータッチのパスがよく通って、かなりよい感じでサッカーしていて、ひさびさの美しいゴールの予感もあったが、かなわなかった。もし、デコやパウレタのゴールが決まっていたら、モヤモヤした思いも一気に吹っ切れたかもしれない。
ドイツの方も負けずにゴール前でのチャンスを多く作り、シュートも放っていたが決まらない。ここまでは、カーン、リカルド両キーパーの活躍もあって得点はなかったが、見所も多いゲームだった。
だが後半に入ると、やはりドイツの決定力が圧倒した。それも、シュバインシュタイガー1人の。彼はようやく疲れやプレッシャーから解放されたのか、今までで一番の働きぶりだった。決勝Tに入ってから、ほとんどチームに貢献できなかったのが嘘のような大活躍で、一気に3-0にしてしまった。ひょっとしてバラックがいない方がやりやすいのかな?
さて、61分にペティートのオウンゴールで勝負はついた感じだったので、後はポルトガルがこのままノー・ゴールなのか小国が意地を見せるか、そして代表引退するフィーゴはいつ出てくるのか、が焦点となった。
ポルトガル・サポの私としては、やはり彼らに勝利をつかんでほしかったが、この時点においては逆に気持ちも楽になって、どこかで素晴らしいプレイを見せてほしいということだけしか思わなくなった。大好きなフィーゴなら、きっとやってくれる!
77分フィーゴがついに入ったが、その前からディフェンダーを外してFWのヌーノ・ゴメスを入れて2トップとなり、前掛りで攻撃するポルトガルには78分の3失点目はもう仕方のないことだ。相手シュバイニのナイス・シュートを褒めよう。逆に言えば、ドイツもシュバイニが前にこのぐらいやってくれれば決勝にとどいたかもしれない。ま、「たら・れば」だけど。
さあ、もうこうなるとフィーゴしかない。そして終了間際の88分、右サイドにはっていたフィーゴにボールが渡ると、彼はゴール前GKとDFの間に絶妙のクロスをあげ、そこにヌーノ・ゴメスがドンピシャにヘッドで合わせたのだった。これは美しかった。これこそ、「らしい」ゴールと言えよう。さすがポルトガルの偉大なスター、フィーゴは最後までチームに貢献し、私の心を熱くしてくれた。
点を入れたヌーノ・ゴメス、彼もフランス戦に投入されていれば、ひょっとして? との思いもよぎったが、これも「たら・れば」、もう仕方のない事だ。
今大会のポルトガルは、けっして絶好調とはいかなかったが、特に攻撃陣の不振を粘り強い守備とこれまではなかった試合運びのしたたかさで勝ち上がり、ベスト4の大健闘だった。が、ベスト16でのオランダとの大乱戦以降、すっかりファウル王のヒール役になってしまった。
イングランド戦でのルーニー退場が決定打になったが、本来ならアピールしたC・ロナウドよりカルバーリョを踏みつけたルーニーの方が当然非難されるべき行為のはず。が、どういうわけかロナウドの方が完全な悪役に仕立て上げられ、英仏独のサポーターから常にブーイングを浴びせられるのを見るのは、実に不愉快な気分だった。
まさに「小国の悲哀」「サウダージの国の人々」に最後はどうしても帰結してしまった感じのポルトガル代表だったが、スコラーリ監督の「この代表はまだ磨かれていない宝石」という言葉が心に残る。次の2008ユーロでの彼らの成長を大いに期待したい。ルイ・コスタが去り、ついにフィーゴも去るが、やはり私はポルトガルを応援するだろう。