2005年 12月 25日
ブルーノ・ワルターが聴きたくなった(3)ブラームス
だからってわけじゃないが、今日もワルター先生を聴くことに。

というわけで、ずっと敬遠していたのだが、これまたワルター盤を聴いて、すっかり虜に。今じゃ、まさに「ブラームスはお好き?」なんて言っちゃったりして。とにかく、ワルター先生のせいで私にとってのブラームスは「ヨヨヨヨヨヨ」と崩れ堕ちていく愛とロマンの世界、頽廃と爛熟の音楽として、しっかり成立するようになってしまった。
それにしても、ドイツ人の「ロマン主義」ってすっごく妖しい世界で、だいたいの雰囲気はわかっても、現代人とくにこんな極東に住んでる人間にはなかなか溶け込めない領域だ。実際「ロマンティック」って何?って聞かれても、ビシっと答えることはできません、ハイ。
ところが、音楽というのはありがたい。余計な理屈をどこかに追いやって、ただただ「これぞ、浪漫の世界!」というものにどっぷりと浸ることができるのだ。さすが、ワルター先生は1876年のベルリン生まれで、まだリストもワーグナーもブラームスも生きていた時代、まさにロマン主義全盛の時代を知っているわけで、少なからずその影響が彼の表現の根本にあっただろうと容易に推察できる。
とにかく、1楽章の始まりから豊かな響きと歌にぐわんぐわんにされてしまう。そのまま、滅多に飲めない豊潤な高級ワインと脳天ぶち切れそうに甘いチョコレートと生クリームを同時にいただくような、又は、その崩れて崩れてトロトロの精神のまま、もうどうにでもして!と思わず口走ってしまうような、そんな感じ。
ビデオによるリハーサル風景を見ると、この楽章の場合全てのフレーズ一つ一つにクレッシェンドとディミニエンドをかけていて、常に先生は「Sing! Sing!」と楽員に呼びかけていた。それと強弱の指示も細かい。オケのバランスに関しては細心の注意を払っていたのが印象的だった。でも、そうしていくと「この音」「あの音」が聴こえてくるので、「なるほどー。」と深く感心するのだった。
3楽章までのまさに熟しきった音に私は陶酔するのみだが、4楽章では一転、それまで抑えていたものが一気に爆発して、大興奮のフィナーレとなる。
濃厚な表現ゆえに、嫌う人も多いかもしれないが、私にとってはワルター以外は皆物足りなく思ってしまうほどの愛聴盤。
モノラルで50年以上前なのに、大変ツヤのあるいい録音だ。