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ジョン・レノン スーパー・ライヴ2012の詳細(7)

(6)からの続き。

 絢香さんを迎えて Don't Let Me Down〜All You Need Is Love

 2008年に絢香さんが初めてスーパー・ライヴに来てくれた時は、実に衝撃的だった。とにかく、歌が最高にウマイ! その時は1番手として、"Eight Days A Week"と"Mind Games"を歌ってくれたのだが、私はこのブログにおいて「最高最強のトップ・バッター、まさにイチローばりの存在」と書いた。その考えは今も変わっていない。
 そして4年ぶりに、彼女は帰ってきてくれた。リハ前に打ち合わせで挨拶した時、正直、別人かと思った。4年前の彼女は、確かに凄い新人ではあったが、回りをたくさんの人達がガードしていた印象を持つ。ところが、今の彼女は堂々とこちらの目を見て、しっかりとした口調で話をする女性であり、一人でちゃんと自立しているのが、よくわかった。何だかすごくキラキラしていて、その魅力に圧倒されてしまった。

 前回はこちらが用意した音に、彼女がスッと合わせてくれた感じだったのだが、今回は彼女自身のやりたいことがはっきりしており、そのアイデアを最大限取り入れさせてもらいながら、共に作り上げていく形になった。これはとても楽しい時間になった。

ジョン・レノン スーパー・ライヴ2012の詳細(7)_e0093608_1720212.jpgジョン・レノン スーパー・ライヴ2012の詳細(7)_e0093608_18402265.jpg まずは"Don't Let Me Down"。ジョンの切実な叫びは、「がっかりさせないで、僕を愛して愛して愛して!」って感じだろう。だが、我々が耳にするビートルズのパフォーマンスは、スタジオ・テイク(69年1月28日)もループ・トップ・コンサート(同年1月30日)も、気持ちのいい開放感があって、何よりバンドとして演奏する喜びを感じるのだ。
 この曲の歌詞は、音楽的なノリの良さで言葉を選んだものだと思う。つまり、まずはバンドでカッコよくシャウトをキメることが最重要項目なのだ。それで、最高の語呂としての「ドン・レッ・ミー・ダーン」を思いついたのではないか。歌いながら偶然に出てきたものかもしれない。そんな流れでなければ、ジョンがリンゴに向かって、「景気付けの為に、最初は思いっきりシンバルを鳴らしてくれ」とは言わないだろう。
 ようするに、この曲ではあまり深読みする必要はない。ヨーコさんに捧げたラブ・バラード?もちろん、それでOKだ。だが、それよりも我々は大いに楽しみたい、バンドでこの曲をやる喜びを。

 絢香さんもちゃんとそれを心得ていて、一言「バンドで行きましょう」であった。

 というわけで、「リードボーカル絢香」を得たバンドが盛り上がらないわけがない。で、私としてはビリー・プレストンのエレピを再現するよりも、土屋さんのエッチなギター・ソロが無性に聴きたかったので、あえてお願いした。それと、もう一度サビでの絢香さんのシャウトを聴きたかったので、これも付け加えることにした。

ジョン・レノン スーパー・ライヴ2012の詳細(7)_e0093608_18545435.jpg 2曲目の"All You Need Is Love"は、これまでの経験で言うと、とことん完コピを目指すか、全く別ものにするか、なのだが、今回はそのどちらでもないところでまとめられないか、少々思案していた。とりあえず、オリジナルに近い形で取りかかりながらも、あまりこだわりすぎないようにしておいた。

 そこへ、絢香さんの素晴らしいアイデアが降ってきた。「1コーラスをピアノのみで歌い、2コーラスはオリジナルの感じで、エンディングでは再びピアノのみの『Love, Love, Love』で終わりたい」。彼女はリハ前に自らピアノを弾きながら、このアレンジを練っていたとのこと。「これは、いただき!」とばかりに、すぐにリハを始めた。

 ピアノのみでの絢香さんは、随所に自由なフェイクを交えながら、R&Bバラード風のニュアンスで巧みなボーカル・テクニックを聴かせた。ドラムスのきっかけでバンド全員が参加してからは、「思いっきりいつもの感じで」、その理由は「このイベントでないと出来ないビートルズ感を楽しみたいから」であった。
 そして、「Love is all you need」の繰り返しを「バーン」とあっけなく突き放して、再びピアノのみになる部分は、いろいろとトライして良いものを見つけ出した。結果としてパート2(ビートルズ編)が、夢の中にいるような印象になり、素敵なクリスマス・プレゼントのようでもあった。

 絢香さんとバンドの個性をお互いに生かした形になっただけでなく、まるで短編映画でも観るような、小さな組曲が出来上がった。個人的には、リハの段階で勝利を確信したのだった。

 本番では、会場中からの絢香さんの歌への期待の大きさが否応なく感じられ、それが、こちらの気分をますます高めてくれ、すごく集中してプレイすることができた。もちろん、彼女の歌は最高だった。だから、2曲が終わってステージを降りても、各メンバー達は高ぶっていて、絢香さんとハイタッチして盛り上がったのだった。古田くんの「思わず目頭が熱くなった」との言葉に、私も大きくうなづいた。

(8)に続く。
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by harukko45 | 2013-01-06 19:46 | 音楽の仕事 | Comments(0)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


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