2011年 08月 23日
大橋純子/クラブサーキット2011詳細(2)
m3.たそがれマイ・ラブ



初めてこの曲をテレビで聴いた時は、「美乃家」の大橋純子を歌謡曲歌手にしてしまった、と落胆した私でさえ、今では「うーむ、さすが筒美京平先生」と唸る次第。
現在、日本ポップス界で最高の作曲家とも讃えられる筒美さんではあるが、ただし、筒美作品の個性が最も現れるのは京平先生が自らアレンジも担当した時なのだ。"たそがれマイ・ラブ”はまさにこれに入る。
そもそも、洋楽の大ネタを使って、そこに独特な毒気を仕込んでいく筒美さんの作風をとことん生かすには、先生自身のアレンジとともに、歌が圧倒的にうまい人がメインである必要がある。尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」で始まる筒美京平黄金時代は、南沙織さんの「17才」らを経て、岩崎宏美さんの「ロマンス」「ファンタジー」「未来」などのソウル・ディスコ歌謡と太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」にて絶頂期を迎え、大橋純子さんの「たそがれマイ・ラブ」で完結すると言って良いのでは。

この「ペイパー・ムーン」は収録された曲全てが傑作ばかり、と言ってもよいが、その中でもひときわ強烈な個性が光るのが、アルバム・タイトル曲の"ペイパー・ムーン"とその前に配置された"やさしい人"である。
"ペイパー・ムーン"は"シンプル・ラブ"や"サファリ・ナイト"とともに、ジュンコさんのカッコよさを示す必殺キラーチューンの代表。"やさしい人"は、今のJ-POP界なんかでは絶対に生まれない、「とんでもない」楽曲で、 詞・曲ともに書いた方も書いた方だが、これを歌いこなしてしまう方もとんでもない。この2曲の場合、アレンジは別の人なのだが、ジュンコさんというとんでもない逸材を得て、楽曲制作に皆がすごく燃えて競っているように感じるのだ。だから、出来が良い。
京平さんの2曲以外でもそれは言えて、だからこそ、この「ペイパー・ムーン」が大傑作となり得た。本当にすべてが素晴らしいものばかり。おまけにリマスター盤では、これまで未収録だった3曲が加わり、ますます充実した内容になっている。この時代の日本の音楽界がいかに凄かったか、いかに燃えていたかを、見事に示している。

とは言え、このアルバム最大の聞き物はA面1曲目の"サファリ・ナイト"で、これは佐藤健さんが筒美先生をTKOに追い込むべく、気合いの入った強烈なカウンターを決めた瞬間だったのではないかと勝手に想像する。
その後も"傷心飛行""マイ・ソング"とケンさんが素晴らしい仕上がりぶりなので、もはや美乃家サイドの勝利は決定的となった。

大いに脱線したまま、まったく戻れずに、長文になってしまったので、続く、と。
バンマスまさかの大脱線、でも大歓迎ですよ、すんごくためんなる講座、ありがとうございます。
確かに筒美京平さんのどん欲な洋楽エッセンスの吸収とその活用に対する意欲はすごいなあと思いますし、そのセンスももちろん私みたいな者が今さら言うまでもないことで。
サイドBを筒美さんが担当することになったときのケンさんはきっとすんごく燃えてたんだろうな、って想像しちゃいます。
リマスター盤の追加曲はU社のOさんと相談しながら決めて行ったんで、喜んでいただけるとすごく嬉しいです。