人気ブログランキング | 話題のタグを見る

クラブ・サーキット斬り!東京編3/18

 名古屋を最後に今年のブルーノート・ツアーは終了。最後に東京・六本木スイートベイジルを残すのみとなった。名古屋から中4日あって各自それぞれに過ごしていたようだが、わかっていることは私は名古屋から帰宅直後、インフルエンザを発症して高熱で2日間ダウン。ウエちゃんは私が治りかけてきたあたりで発症、彼も高熱でダウン。六本木当日もまだ完治からはほど遠い状態。ゴトウさんは極度の花粉症でマスクとティッシュが手放せない...
 
 他にも花粉症はヒロコちゃんとオッサンだが、こちらはそれほど重症ではない。私は本番日には熱も下がり、ほぼインフルエンザは終結だが、まだ風邪のような症状が多少残っていた。そのような中で幸いなのはジュンコさんがいたって元気であったこと。もちろん、長旅とたくさんのステージをこなして体力的には疲労がたまっていたはずだが、メインとしてこのツアー最後のステージへの責任感が体を支えていたのだろう。

 東京はここまでのセットリストとは違って、90分強のメニュー。よって、60分ステージのブルーノートでは演奏されなかった曲が加わっている。確かにメンバーの体調面での不安はあるものの、短い期間に12ステージと集中してライブしてきた私たちには、ある意味余裕があったし、内容も良いという自信もあった。そのおかげか、東京だから最終だからというプレッシャーをさほど意識することなく、自然体でステージに上がれた気がしている。では、当日のMDを聴いてみよう。

“The Hotel Marginal”
 素晴らしい内容。とにかく、SEのフェイドアウトからシンセのインがクロスしていくところから広がりのあるムードがあり、期待させる。「異空間のホテル」が理想のイメージだったが、まずはこのイントロでちゃんと表現できている。唄中、間奏、ブレイク、サビ、エンディングとあっという間に過ぎ去る豊かな時間を楽しみたい。私のシンセはこのホテルの外観と雰囲気をゴージャスに作りこんでいるし、オッサンのギターがさりげなく、それでいて時々刺激的なエッセンスを加えてくれている。リズム隊は落ち着きはらった態度で堂々としている。そしてコーラスには夢見心地なニュアンスがあってホテルに優雅さがあらわれた。ジュンコさんはここの気品あるマダムであり、一人の旅行者でもある。

“Crystal City”
 いいタイミングで頭入ったね。この曲もCDの打ち込みバージョンから生演奏へすっかり昇華されたと思う。前の週のブルーノートでのテイクに比べると、ソリッドな感じはいくぶん減っているが、その分落ち着いているね。オッサンは本来の音に戻って、相変わらずこちらの予想不可能な展開でソロをとっていく。と、いい感じで聴いてくると2コーラスのサビ前でシカケがよれている。ウエちゃん、インフルエンザの影響でしょうか?

“Simple Love”
 MCは「どうも皆様今晩は。ようこそおいでくださいました。今日はゆっくり楽しんでいってください。」演奏は悪くないね。特にベースの動きはいつもながら絶妙。ロクさんのソウルとロックの中間のような感覚が「美乃家」風と言えるかな。ただ、バランス的にはベースはもうちょっと聞こえているといいのだが、ライン録りなので贅沢は言えない。音質が前回の名古屋や福岡に比べるとやわらかめなせいもあるかもしれないが、我々のパフォーマンスも鋭さよりも豊かさに重点がある感じに聞こえる。

“Beautiful Me”
 アカペラ・コーラスから渋めのギターのフィルイン、そのバックにオルガンと、一応昔のソウル系のフォーマットを意識しているわけだが、実際の演奏ではメリハリもノリもいい線いってるのではないかな。アカペラ後がもう少しハデでも良かった気もするが、バランス的にベースが小さいのでそう感じるのかもしれない。間奏、エンディングともオッサンのソロは素晴らしい。唄の合間に入ってくるフィルインもセンスがいい。それにしても、やっぱり名曲だなぁ。オルガンはもうちょっと歪んでいる方が良かったな、残念。

“Stray Eyes”
 ‘Trinta’からの曲だが、CDよりのテンポは落ちている。やっているうちにこうなったのだが、この方が今っぽい(?)どうかな?私は好きだ。全体に空間も見えるし、音で埋め尽くされていない感じになった。ここでの私のプレイはかなり良いね。ゴトウさんのサックスは「タクシードライバー」が思い浮かぶような都会派だ。全体がよく溶け合っていて素晴らしいアンサンブルと思う。

“My Journey”
 これも‘Trinta’から。前半はオッサンのアコースティックとジュンコさんだけのところが幾分早くなっているが、音の広がりはかなりいい。2コーラスから全員が入って落ち着きが出てきて、メロの良さもより引き立ってきた。間奏はもっと盛り上げたいところだが、次の曲を考えてこのあたりで正解だろう。

“愛は時を越えて”
 そうとうこなれていて、かなり良いね。イントロ、ブリッジ、エンディングの私とオッサンの絡みはきれいだし、唄中の適度なレイドバック感が好きだ。前の曲ではあえて盛り上げなかったサビも気持ちよくいかせてもらう。音数の少ないゴトウさんのソロも曲を壊さずに大人だなぁ。とにかく、今回のツアーでのいろいろな成果の中でも際立った曲の一つが「愛時」で、こういうタイプの曲で完成度の高いパフォーマンスができたことを大変うれしく思っている。

クラブ・サーキット斬り!東京編3/18_e0093608_15515850.jpg さて、セットリストを見ているとこのあたりの前後数曲がむずかしいと思った。もちろん、何度も演奏している曲をやるわけだが、この並べ方だと、重ッタルイ気分になるのではないかという不安があったのだ。具体的には私はこのメニューでの危険地域として“My Journey”から“残響”を心配していた。そこで、バンドの要であるウエちゃんともこのパートは、緊張感を維持しながらも、入り込みすぎて内容が重くなることのないように確認しあったりしていた。実際には、ジュンコさんが大変落ち着いていて、これまでで最高のMC(!)で曲と曲をつないでくれたし、「愛時」がここのところハイレベルでやれていたので、この時点ではもうだいぶ安心してきていた。

“たそがれマイラブ”
 で、この曲ではまさに「ジュンコバンド」の音が聞こえる。みんなそれぞれちゃんといるのだが、一つの塊としても存在しているのだ。全体の印象は軽やかなボサだが、よく聴くとそれぞれが意外とネットリと絡み合っていておもしろい。なのにくどくなっていないのが大変よろしい。ゴトウさんのフルートがなかなか光る。

“シルエット・ロマンス”
 イントロのゴトウさんはめずらしく少しかたい。だが、唄までの流れは悪くないし、私のピアノもやさしさがあっていい。サビのタメの感じもよい。うーむ、間奏でもゴトウさんの表情はかたい。ちょっと惜しいね。少しテンポが遅くなってきたかな。ま、大丈夫か。全体として及第点。もっと良いテイクがあったので。

“残響”
 全体としてはかなり良くなっている。ただ、私自身のプレイはイントロと間奏で2つほど気に入らないところがある。1コーラス後のブリッジも名古屋の時のフワっとした感じがここではうまく出なかったな。ただ、福岡では何度やってもイマイチな気分だったのに比べれば良いことは確かだ。ただし、この曲はやはりつかみ所がない。特に“シルエット・ロマンス”の後だけに、それを強く感じてしまうのだ。詞を生かすにはもうちょっと違うアプローチが必要か。

“Say Love”
 ベースがよく聞こえないのが残念だな。この曲のグルーヴはベースが肝なのだから。ただ、雰囲気は悪くない。ツアー当初のイケイケより、グっと大人なJazz-Funk調になった。ここでもオッサンはおもしろいソロで持って行くね。コーダ前の一瞬抑えた感じからコーダで一気にノっていくところはすごく良い。エンディングもタイトにきまった。

“Safari Night”
 ここまで来ると後は全力疾走。イケイケなのだが、今夜はどこかにリラックスした感じがある。だから気持ちが先走ってノリがつんのめっていくことはない。安心して聴いていける。これって都会風?オッサンのソロにはまたまたやられる。今日のオッサンはユーモアがあるよ。

“Paper Moon”
 しかし、この曲は何だかんだ言っても、燃えてしまう構造。だから、こないだまでの「ムワッ」がそこらじゅうから現れ始めるのだった。オッサンのキレはどんどん良くなるし、音色もしびれる。そして、ゴトウさんのサックス・ソロもなかなか快調だぞ。

“星を探して”
 イントロのオッサンの泣きがいい。前半抑えた感じのウエちゃんもいいドラミングを披露している。なかなかメリハリの効いた演奏で、じょじょにギターソロに集中していく。そして来た!なんと、オッサンはこれまで聴いたパターンとは違うソロで泣かせるじゃないか!そのまま、エンディングまで自由自在に弾きまくった。

アンコール“A Way”
 今回のツアー最大の成果はこの曲なのだ。これは私の独断だけど。この曲を聴くと、ケンさんにはもっとジュンコさんのために新曲をどんどん書いて頂きたいと思う。つまり「21世紀の大橋純子が歌う」曲、これなどまさにその典型だと確信する。「美乃家」でなく「歌謡曲系」でない感覚。それに、曲というのは成長するということ。最初にやったときには気がつかない良さや大事な部分が時間とともにわかってくるし、我々がそれをわかることで元々あった素晴らしさがどんどん際立っていくのだ。いい曲に出逢うとバンドも成長するし、その相乗効果がバンドの個性となって財産になっていくのだと思う。“A Way”は私にその事を強く印象づけた名曲だった。

 さて、今年のクラブサーキットは今までで一番内容が濃かったと思う。もちろんすべてが満足いく出来だったとは言えないが、その中でバンドや曲、ショウ全体が時には喜んだり、悩んだり、転んだり、そして再び走り出したりしながら成長していくということを改めて感じることができた。今回録音したMD、全13本を聴き倒すのはけっこう重労働だったし、ちょっとやりすぎかとも思ったが、すべてを聴き終えた今は何とも言えない達成感、充実感を感じている。そして、それが今後の活動への自信と展望につながっていくのだと思う。

 最後に各地でライブに来てくれたファンの皆様には最大級のお礼を言います。それと、このしつこいコラムを頑張って最後まで読んでくれた人がいたら、それはそれは感謝感激です。銀河系級のお礼を言います。どうも、ありがとう!!
2005.4.18

関連
Photographs/クラブサーキット2005 六本木STB編

名前
URL
削除用パスワード
by harukko45 | 2005-04-18 14:47 | 音楽の仕事 | Comments(0)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


by harukko45