「やっと買いました」のCD(3)
2009年 09月 29日
デビュー作の"I Am"ではグラミーでも最優秀R&Bボーカル・パフォーマンス部門で受賞し、アメリカでは一躍期待の星となっていたわけですが、どちらかと言えば、歌唱力とともにダンスやら、セクシーな外面などが売れる必須条件となっている現在のアメリカでは、彼女のような歌一本で勝負する人はしんどい部分もあるか?と余計な心配をしておりました。
ですが、2年後の今年リリースとなった待望の2ndは、何とビルボードTop200で初登場1位だったとはうれしい驚きであります。
で、このアルバム"Epiphany"は全体に曲の出来が格段に良くなりました。前作はとてもジャズ的な要素を感じさせていて、彼女自身もビリー・ホリディやエラ・フィッツジェラルドら偉大のボーカリスト達へのリスペクトと影響を語っておりました。私のような古めの音楽嗜好の者は、彼女の「ジャズっぽさ」「クラシック・ソウル風の歌声とルックス」にギュっと心をつかまれてしまったわけですが、その分楽曲に「今」「これから」を感じさせるツカミが弱かった。
プロデュースの面でもWill.i.amあたりはいい仕事をしていましたが、それでも割と渋めではありました。
それが、今回は人気絶頂の売れっ子Ne-Yoをエグゼクティブ・プロデューサーに迎えての制作の効果か、俄然ポップな仕上がりになっていて、気になっていた「ツカミ」をちゃんと作り出していると感じました。かなりの曲に関わっているChuck HarmonyはNe-Yoがらみの人らしいが、この人に大々的にプロデュースを任せたことで、アルバム全体の統一感も生まれましたな。うーん、良かった良かった。
それでいて、クリセットの良いところと言っていいと思いますが、「この1曲がサイコー!」という感じでなく、気持ちのいいボーカルをそれぞれの曲で堪能しながら、アルバムを通して聴き続けられるということ。
正直、最近のR&B系に代表されるポップ・チューンは、音質のうるささや音像の平坦さ、またそれ以前に打ち込みのつまらなさから、ずっとアルバムを聴き通す事がなかなか厳しいというのが現実。少なくとも私はそう。
さて、そんなこんなで話が脱線しそうなのでやめますが、この"Epiphany"は最近では珍しくスルっと最後まで楽しめたのでした。それと、1stの"I Am"をもう一度聞き返したくなるという効果もありました。でもって、聴いてみると、うーむ、この初々しいくもちょっと古っぽい感じも結構好きに思えるなぁ。ひょっとすると、新作は洗練され過ぎか?と少しだけグラグラしている自分がおります。