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D'Angelo/Voodoo

 ディアンジェロは天才だと思っているが、どうもアヤシいと感じるところもある。なぜなら、あまりにも寡作だ。アルバムは全部で3枚しかないし、そのうち1枚はライブで、おまけにそれは日本オリジナルの特別版だ。あんまりファンを待たせていると、才能が早くも枯渇したかと心配になる。

 2nd"Voodoo"は2000年1月のリリースだ。前作から5年(Liveからは4年)、そしてすでに6年も経過したのに、新作は登場しない。噂ではダラダラと生活して、スタジオにも一切入っていないらしい。そうこうしているうちに、今や彼の存在はさほど重要視されなくなってしまった。残念なことだ。

 さて、ファンとしては待ちに待っていた2nd"Voodoo"はとてつもない傑作とも言えるし、つきあいきれないとも言える。日によって変わる。こちらの気分や体調で大きく変わる。スピーカーで聴くか、ヘッドフォンで聴くかでも変わる。
 誰にも出来ない音ではあるが、それがあざといとも思える瞬間もある。もっと普通にやったって凄いことができるはずだと思う。だが、こうなってしまうのは才能がありすぎるからかとも思う。

 それにしても、音はすごくいい。特にベースとバスドラのボトム部分は強力だ。m2以外はすべて生演奏の一発録りで、各プレイヤーのパフォーマンスの高さを感じるにはヘッドフォンで聴く方が演奏のリアルさが増していい。
 オープニングの"Playa Playa"からして、前作とは違うのだと主張している。すげぇ妖しげで、ヘビーなスロー・ファンク。ここで、めげる人は多いかも(そういう人がこのアルバムを選ぶわけないか)。でも、これぞブラックネス、次元の違うカッコ良さに、彼の天才を確信する。

 たぶんこのアルバムで一番聴きやすいのはプリモ(DJ Premier)と作ったm2"Devil's Pie"だ。二人の天才がガップリ四つに組んで生み出された文句ない傑作で、最高のトラックだ。ただ、プリモ色が強いことが成功の原因で、同じ天才でもプリモの方が業界を生き抜くタフさを持っている証明でもある。一発でつかみのあるグルーヴとフックを持っているし、同時にクラシックとなりうる深みがある。
 m3"Left&Right"もHip-Hop色が濃い。二人のゲスト・ラッパーが強烈で、ディアンジェロが控えめすぎるようにも思える。でも、この(1stに通じる)シャイさ加減が彼らしいか。さて、この後はやっかいだから、良い子の音楽ファンはこれ以上聴かないこと(?)。

 バンドの演奏はどれも素晴らしくカッコイイのだが、ディアンジェロの多重録音によるボーカルが異様で(前作よりも、だいぶ後ノリで)全体のグルーヴに妙なギャップを生んでいる。最初はこれがすごく不安な気分にさせるし、取っ付きにくい。
 が、常習性がすごい。つまり何度も聴きたくなって、そのうちこの声の塊が心地よくなる。m4"The Line"のグルーヴは深い。m5"Send It On"のSweetさは文句なくソウルとして楽しい。m6"Chicken Greece"は、このアルバムのベストにもあげたい最高のファンク。が、その後にm7"One 'Mo Gin"が来て、完全にシビレまくってお手上げ、私はここでピークに達する。それにしても、すごいサウンドじゃないか!で、次曲への短いグルーヴ・チェンジがこれまたクール。
  m8"The Root"ではボーカル・ダビングいっぱい!とジャズ・ギターのリバースが(クールに)炸裂で変態色と浮遊感が極まるものの、全体的にはなかなかポップ。

 そんなこんなで聴いてくると、m9"Spanish Joint"はいきなりラテン・フュージョン風で、それまでの緊張感がとけてホっとさせるものの、同時に「ん?」と思ってしまう。確かに演奏もいいし、レベルの高い出来なんだけど、ちょっと知性がじゃましているような気がする。とは言うものの、このグルーヴ感はまさに生演奏の素晴らしさ。結局「かっこいい!」との結論に達するわけです。
 ロバータ・フラックのヒットであるm10"Feel Like Makin' Love"は、ずいぶんドンヨリしてて、あまり楽しめない。別に入れることなかったのでは。まぁ、スライの"Fresh"をねらったのかも?でも、これは長くって退屈。申し訳ないが、この曲は飛ばす。

 個人的にはm8の後に、m11"Greatdayindamornin' / Booty"に行って欲しかった。だって、このメドレーはやったらカッコイイのだ。せっかくの中毒状態をずーっと続けて欲しかった!
 そして、次のプリンスへのオマージュと言われるm12"How Does It Feel"はあまりにもモロなのにスゲェーと思わせる。再び、他との次元の違いに圧倒されるわけね。突然のカット・アウトもいい。

 ラストの"Africa"で、m1からのトータル性を示しているようだ。ずっとヴードゥーの儀式をやってトランスしてた聴き手を、じょじょに夢から目覚めさせるよう。それにしても美しいエンディング曲じゃないか。最後にジミ・ヘン風のリバースが亡霊のように聴こえるよ。

 彼にしか作れない作品だと認めるし、彼は本当の天才だと信じる。でも、何から何まで大絶賛ってことにはならない。別格の大傑作扱いのこのアルバムでさえ、彼にとってはピークではないと感じる。だから、新作をずっと待っているのに。


追記:2025年10月14日に、とてつもない天才だったディアンジェロが亡くなった。51才、心からご冥福をお祈りします。そして、あなたの残した素晴らしい音楽・レガシーはこれからも輝き続けるでしょう。
とにかく、今は彼のアルバムを聴き返して、改めてその偉業に敬服するのみです。
あー今は、とても悲しく寂しい気持ち。上記のように「Voodoo」に関して書いてるけど、その後もずっとファンであったし、聴けば聴くほど惚れ込んでたので。「Black Messiah」も文句ない傑作。その他にも2000年6月のライブ、2012年のパリでのライブも最高!

# by harukko45 | 2025-10-20 15:54 | 聴いて書く | Comments(0)

2024年に聴いた音楽のまとめ

2024年は、いろいろと楽しませてもらった音楽にたくさん出会えた。
で、一年間を通じてよく聴いてたアルバムを記録しておきます。

1. Brittany Howard - What Now
2. Vampire Weekend - Only God Was Above Us
3. Billie Eilish - Hit Me Hard And Soft
4. Sturgill Simpson - Passage Du Desir
5. Narah Jones - Visions
6. Jack White - No Name
7. Charley Crokett - $10 Cowboy
8. Kacey Musgraves - Deeper Well
9. Waxahatchee - Tiger Blood
10. Paul McCartney & Wings - One Hand Clapping
11. Mdou Moctar - Funeral for Justice
12. MJ Lendermann - Manning Fireworks
13. Charli xcx - brat

2024年の暮れ近くなってからリリースされたり、リリースされてたことに気づいてなかったアルバムで気に入ったアルバムも。
これらは、年明けても聴き込んでく感じかな。

14. Father John Misty - Mahashmashana
15. Fontaines D.C. - Romance
16. George Harrison - Living in the Material World (50th Anniversary)
17. Kim Gordon - The Collective
18. Miranda Lambert - Postcards From Texas
19. Nilüfer Yanya - My Method Actor
20. Charley Crocket - Visions of Dallas

Classicでは
21. Rudolf Buchbinder - Beethoven Complete Piano Sonatas Live From Salzburg Festival
22. Hilary Hahn - Ysaÿe: 6 Sonatas for Violin Solo, Op. 27
23. Christian Thielemann, Wiener Philharmoniker - Bruckner 11 Symphonies
24. Andris Nelsons, Wiener Philharmoniker - Beethoven Complete Symphonies
25. AndrisNelsons,Gewandhausorchester-Bruckner Symphonies,Wagner Orchestral Music

以上です。

# by harukko45 | 2025-01-15 17:16 | 聴いて書く | Comments(3)

2023年に聴いた音楽のまとめ

おっと、2023年って何にも投稿してなかったっけ。
一応、よく聴いたアルバムを記録として残しておきます。この年も面白いアルバムが多かったな。

1. Nickel Creek - Celebrants
2. Paramore - This Is Why
3. boygenious - The Record
4. Lana Del Rey - Did you know that there's a tunnel under Ocean Blvd
5. Bob Dylan - Shadow Kingdom
6. Jason Isbell - Weathervanes
7. Molly Tuttle - City of Gold
8. Margo Price - Strays
9. Squid - O Monolith
10. The Rolling Stones - Hackney Diamonds
11. Blur - The Ballad of Darren
12. Caroline Polachek - Desire, I Want To Turn Into You
13. Zack Bryan - Zach Bryan



# by harukko45 | 2023-01-15 17:18 | 聴いて書く | Comments(0)

2022に聴いた音楽のまとめ

2022年は、本当にひどい1年だった。コロナで上がったり下がったり、ロシアの無茶苦茶さに怒りを通り越して、呆れ果てて、絶望感で一杯になった。国内じゃ、安倍晋三氏が銃撃されて亡くなるなんて、いったい何なの。

とにかく、日本だけじゃなく、世界中においても、将来、ひどい年として思い出されるに違いない。

そんな中、音楽の世界においても、自分はすっかりヒット曲なるものに興味関心がなくなった。特に日本のヒットチャートは全く知らないし、若いアーティスト達も知らない。(アーティスト?いわゆる歌手、ミュージシャン、バンドでしょ?アーティストなんて、そんなにたくさんいても困る)

とは言うものの、こんな年だったからなのか、面白そうなアルバムを見つけては、聴きまくる時間は、一番気持ちが落ち着いて幸せな気分になっていたのかも。
なので、愛聴していたアルバムを記憶しておくためにも、ここにまとめておきたい。

一応、Best10ランキング・スタイルにしておけば、2022年の気分も後で思い出されるか?数年後には「何でこんなアルバムを喜んでたのか?」と思うかもね。

1.ミランダ・ランバートMiranda Lambert "Palomino"
2.アシュリー・マクブライドAshley McBryde Presents "Lindeville"
3.ビッグ・シーフ Big Thief "Dragon New Warm Mountain I Believe In You
4.ファーザー・ジョン・ミスティ Father John Misty "Chloë and the Next 20th Century"
5.ハリー・スタイルズ Harry Styles "Harry's House"
6.ケンドリック・ラマー Kendrick Lamar "Mr. Morale & The Big Steppers"
7.エンジェル・オルセン Angel Olsen "Big Time"
8.ジャック・ホワイト Jack White "Fear Of The Dawn"
9.スプーン Spoon "Lucifer On the Sofa"
10.ティアーズ・フォア・フィアーズ Tears For Fears "The Tipping Point"

今は10枚には入らなかったけど、今後は上がっていくかも盤
11.シザ SZA "SOS"
12.モリー・タトル Molly Tuttle "Crooked Tree"
13.ウェイズ・ブラッド Weyes Blood "And in the Darkness, Hearts Aglow"
14.ボニー・レイット Bonnie Raitt "Just Like That..."
15.ウィルコ Wilco "Cruel Country"

新譜ではなくリイシューでは
1.ザ・ビートルズ The Beatles "Revolver (2022 Mix - Super Deluxe Edition)
2.ブロンディ Blondie "Against The Odds 1974-1982"

クラシックでは
1.Vivaldi Naive Edition Vol.1~たくさん(全ては集められず)
2.Monteverdi Vespero (Alessandrini盤、Gardiner盤、Herreweghe盤)
3.Krystian Zimerman Beethoven Complete Piano Concertos
4.Hilary Hahn Paris/ Eclipse

以上です。それでは、良いお年を!



追伸: ついでに、去年全く書いてないから、2021年のランキングも加えておきます。1年で随分変わるもんだ。要は雑食なんだな、きっと。

1.ジャズミン・サリバン Jazmine Sullivan "Heaux Tales"
2.ザ・ウォー・オン・ドラッグス The War On Drugs "I Don't Live Here Anymore"
3.シルク・ソニック Silk Sonic "An Evening With Silk Sonic"
4.ウルフ・アリス Wolf Alice "Blue Weekend"
5.ビリー・アイリッシュ Billie Eilish "Happier Than Ever"
6.ラナ・デル・レイ Lana Del Rey "Chemtrails Over The Couintry Club"
7.スクイッド Squid "Bright Green Field"
8.リンゼー・バッキンガム Lindsey Buckingham
9.ロバート・プラント/アリソン・クラウス Robert Plant/Alison Krauss "Raise The Roof"
10.ボブ・ディラン Bob Dylan "The Bootleg Series, Vol.16 Springtime in New York 1980-1985"



# by harukko45 | 2022-12-31 16:53 | 聴いて書く | Comments(10)

2022年も終わり

ここまで、ずっとブログ書いてなかったねぇ。もう、ほとんど存在意義ないブログになってますなぁ。書く気分にならないで、あっという間に3年近く経ったとは。

とは言え、実際の生活や仕事の方は、いろいろと忙しくさせてもらっていたわけで、これに関しては、各方面でお世話になっている方々に感謝しなければいけません。

今年一番多く、仕事でご一緒させてもらったのは、水越けいこさんですね。
昨年の「Re: I Love You」に続く、4曲入りのミニ・アルバム制作を春から関わりながら、6月からは「Re: I Love You」ツアーとして全国のライブハウスを周りました。途中、ギターの横山くんが不参加となり、後半は私一人でのバッキングになってしまったけど、それはそれなりに対処できて、やり甲斐としては、より上がった状態で、充実した日々を過ごすことができたと思ってます。

大阪(高槻)、名古屋、東京(原宿)、新潟(三条、上越)、長崎、松本、長野、そして再び、高槻、名古屋の計10カ所で、ライブにお越し下さった、「けいこファン」の皆様には、心より感謝申し上げます!いつも暖かく迎えてくれて、ありがとうございました!

演奏してて、いつも感じるのは、「水越けいこという人は、なんて良い曲を書き続けているのか」です。特にメドレーにしてやってみると、後から後から良い曲が繋がってくるし、時にじっくり聴くと、その歌詞が深かったりして。だから、熱いファンが全国にいるんだね。

ちなみに、セットリストをあげておきます。これって、ここ数年で1番の曲順メニューじゃないかと思うほど、大好きな流れでした。さすが、けいこさんです。

m1.プレリュード〜哀しみが終わらない
m2.ゆれて二人
m3.Loneliness & Blue
m4.海と少年
m5.好きでいさせて
m6.モナムール
m7.少し前、恋だった
m8.あなたに
m9.Touch Medley (Touch Me in the Memory/いつだってボーイフレンド/水彩画/そしてetc/あの日に帰りたい/渚にかえって/Touch Me in the Memory(Refrain))
m10.つないだ手
m11.特別な人
m12.エアメール
m13.ブルースカイ・ロンリー
m14.ほほにキスして
m15.蒼い涙
m16.Love Songs For You
En1.Too Far Away
En2.Re: I Love You

ツアー最後の2本、高槻と名古屋はリピート公演だったので、一部メニューを変更しました。
m2.第二章
m5.月あかり
m8.二人
m9.Beautiful Days Medley (Beautiful Days/Feeling Blue/移る季節に/My Love/始まり/プラチナのブレスレット/32階のBAR/落葉が見たくて)
m12.生まれ変わるために(高槻のみ)
m16.In My Life

水越けいこさんに続いて書いておきたいのは、8月28日に行われた、杉田二郎さんと、きたやまおさむさんによる「杉田二郎 きたやまおさむを歌う」コンサート。私が参加したのは今年で3回目となるが、これまでの中でも一番内容が濃く、気持ちも入った本番を体験させてもらい、強く印象に残っているのでした。

特に、きたやまおさむ作詞・杉田二郎作曲による新曲として初演となった「一日一時間一秒でも」は、二郎さんときたやまさんと私とで、デモをメールで送りあいながら、じっくりと作り込んだ曲で、その作業の過程に、それぞれの熱い気持ちが込められている作品だったわけで、やはり人一倍気合の入る演奏となったわけです。
また、ジローズ初期の曲である「どっちでもいいじゃないか」が、びっくりするぐらいの名曲で、なぜ今まで埋れていたのかと驚かされたのでした。今の時代でもちっとも古くない。

そして、何より強調したいのは、二郎さんは今年76歳になられたが、その歌声、パフォーマンスに衰えを知らない。ますます味わいのあるボーカルには敬意以外の言葉が見つからない。

二郎さんは、いつも「俺の唄は大丈夫か?」と聞いてくるのだが、私は「二郎さんは常に良いです!」と本心から答えているのでした。

その二郎さんも加わるユニット、ブラザーズ5のコンサートも今年は2回あり、何度やっても「楽しい!」と思える本番だった。フォークというジャンルにこの歳になって、随分と関わるようになったわけだけど、今になってその深さというものにズッポリハマり始めているのでした。それも、大御所の方々と共演できるのだから、この幸運に感謝せねばいけない。

11月には諸塚香奈美さんとコロナ前の2019年以来の再会!
彼女のイベント、面白かった、楽しかった。それに香奈美さんは「ちゃんとやる」子なので、こちらも一緒に頑張れる。これからもどんどん成長していくはず。また是非ご一緒したい。だって、彼女の「Kyamon」は本当にサイコーな気分になる曲なのだ!

さて、今年最後の仕事は、ブラザーズ5のメンバーでもある堀内孝雄さんのクルーズ船コンサートだった。これは、レギュラーのピアノの方が参加できず、代役として参加した次第。正直、ブラザーズ5以外で、堀内さんのソロ・コンサートのバックを務めるのは初めてであるから、それなりの緊張感があったが、他のバンドメンバーの方々のフォローもあり、何とか終えることができたのでした。

それにしても、ソロ・ライブにおける堀内さんの凄みには圧倒されたし、改めて感動したのでした。
また、新曲として歌われた「空のほとりで逢えたなら」のレコーディングで、アレンジを担当させてもらったことは、本当に光栄なことだったし、正直、私の中ではこれまでで一番の作品となったのだった。なので、こうしてご一緒出来て、心から嬉しい時間を過ごせたと感じたのでした。

そんなこんなで、2022年を一気にまとめて、サボってばかりのブログにてお茶を濁すことをお許しください。来年はもう少し意欲的に、ちゃんと記録として残せるように、書き続けるようにしたいと思います。それでは、こんなズボラでは、見てくれる人もいないと思いますが、皆様、良いお年を!



# by harukko45 | 2022-12-30 19:04 | 音楽の仕事 | Comments(3)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


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