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 いよいよ、コンサートも終盤。4人の強者、最後は吉井和哉さんだ。

 吉井さんは、普段はいたって気さくな方なのだが、リハーサルでも本番でも、いったん音が始まれば、ガラっとかわって、ピリっとした緊張感が漂う。いつもは仲がいいらしい奥田さんが、常にリラックスしたムードなのに比べて、全く好対照の2人である。

 その吉井さんの1曲目は"Yellow Submarine"に収録された"Hey Bulldog"、2曲目は"Double Fantasy"から吉井さんお気に入りの"I'm Losing You"を2曲続けてやった。
 実はこの順番、当初は逆だった。だが、ご本人から本番当日、変更したいとの要望があった。正直、こちらとしては面食らった。どちらかと言えば、"I'm Losing You"から始めてもらった方が、我々は演奏しやすいし、その流れに慣れていたからだ。
 それと、3曲目にやるスロー・バージョン"Help!"をより効果的にするために、その前に"Hey Bulldog"で爆発して一度出し切ってしまおう、とバンド内では話していた。

 だが、吉井さんとしては、自分のコーナーの始まりをより印象づけたかったのかもしれない。今となっては、どちらが良かったかはわからないが、こういうことはアーティスト側のある種の「直感」を信じた方がいい場合が多い。それに、最終的にはメインにあくまでついて行くのがバンドの使命ってもんだ。

e0093608_11404781.jpg さて、その"Hey Bulldog"。タイトルからして、曲調からして、吉井さんにピッタリではないか。何とも毒や皮肉を含んだようなその内容は、それ自体ジョン・レノンという人のもう一つの側面を見事に表しているし、吉井さんの芸術性・音楽性にも通じるものだと思う。
 私はこの選曲を聞いて、思わずニヤっとしてしまい、絶対に「キマる」と確信したのだった。

 まずは、全体に大活躍のピアノのイントロからしておぞましい。コンプレッサーでひどくつぶれた音で印象的なリフが演奏される。で、歌のバックでもピアノが右手で8分打ちしながら、低音をコードの1-5、1-5とストライド奏法のように弾いているのだが、ベースはそれを無視するかのように高いポジションで自由に弾いている。これが、変!
 一応サビのような部分(厳密にはサビらしいサビはないが)「You can talk to me.」のコードの流れは、まるでサスペンス映画かスパイ映画のバックグラウンドのような響きで上昇して行き、そこから一気にイントロで提示されたリフに突入するのが、たまらなくカッコいいのだ。
 私にはこの辺の動きが、その後登場するキング・クリムゾンのサウンドのようにも感じられたので、思いっきり強調して、オリジナルには入っていないゾリゾリしたストリングスも加えてしまった。
 そして、本番では名越君が過激なトーンで見事に再現してくれたが、ジョージの作った間奏のギターソロも妙竹林だ。しかし、これがどうにも耳に残って離れない(ホーケヒキョ、キャララララってやつです)。

 歌詞だって、何が何だかの典型で、おふざけとも言えるし、世の中への風刺ともとれる。それに元々は"Hey Bullfrog"(ウシガエル)だったし(1コーラス目に登場する)。それがブルドッグになったのはポールがレコーディング中に吠えたから、ということらしい。
 おまけに、映画「イエロー・サブマリン」ではこの曲のシーンは「4つの頭を持つ犬(ブルードッグ)」が奇形の表現だとして、長らくカットされていたというから、吉井和哉に合う要素が、何から何まで整っているわけだ(?)。

 で、後半の「Hey Bulldog」のリフレインでは私も押葉君も、吉井さんとともに大いにシャウトさせてもらいました。何と光栄なことでしょう。それだけでも私としては満足でしたね、イヤハヤ。また、その合間をぬって十川さんの過激なピアノ・ソロ、名越君のキレまくったギター・ソロがうねりを上げてましたね。ほんと、おおバカかましておりました。とにかく、ここでいったんキレてしまいましょうが、我々の合い言葉でした。

e0093608_1141375.jpg だから、次の"I'm Losing You"は切り替えが大変だった。なので、イントロあたりでは、まだ息が上がった感じがあったかもしれない。とは言え、この曲は実に渋いブルーズだと思っていて、とても好きだし、演奏のしがいがある。"Double Fantasy"ではニューヨークのスタジオ・ミュージシャンの洗練された演奏が聞かれるが、我々はもう少しアーシーな方向性になっていて、AOR的な表情のCDよりもロック色が強まったと思う。
 もちろん全体には淡々と、そしてキチっと演奏していかないといけないが、そうしていくうちに、ところどころに「毒」が盛ってあることに気付き(ほんと、やっかいなBメロ)、ちょっとずつクラっとしながら進むのだった(吉井さんにも一瞬毒が)。

 間奏のツイン・ギターでのハモリも土屋&名越の名コンビが見事に再現してくれたし、後奏での土屋さんはシブすぎるぐらいにシブかった。彼のキャラが、よりこの曲をロックよりに色付けたとも言える。
 それと、吉井さんの声の魅力。けして歌が圧倒的にうまいわけではないが、一度耳にすると離れがたい気持ちになってしまうのが、彼の凄さだ。そして、普段の生活感ある世界から、一気に別世界に拉致されてしまうかのようだ。それが、ジョンの曲と相まって、完全に毒がまわってしまうということになる。

 そんな吉井さんらしさが、最も表れたのが3曲目にやった"Help!"だった。

e0093608_11411981.jpg 始めは、オリジナル・バージョンでやるものと思っていたら、リハの数日前にバラードにしたいとの意向を聞き、参考の音源を送っていただいた。それを元に私が簡単な譜面をおこし、リハ当日にご本人とセッションしながら完成させていったのが、今回のスロー・バージョン"Help!"だ。
 あのリハの日、この"Help!"が完成した瞬間、「これで、我々の本編はキマった!」と確信したし、最高の状況でラストの忌野清志郎さんにバトンを渡せると思った。それは、バンドだけでなくスタッフも思ったはず。舞台監督の中村さんも上機嫌で、これを大きな山場として捉える事が、全員の暗黙の了解だった。

 それほど、興奮させるセッションがあり、私は自信を持ってこの"Help!"を武道館においで下さった皆さんにお届けすることが出来たと思っている。

 当初の参考音源では、ピアノとシンセのみでの演奏だったが、そこに力強いドラムやオルガンも加え、スライド・ギターによる間奏で膨らませ、再び静寂のキーボードのみの世界へ、SE的なシンセでの映像的なカラーリングもおこなった。
 私のイメージはデイヴィッド・ボーイの"Space Oddity"や"Ziggy Stardust "。それを言うと、吉井さんは「最後はピンク・フロイド的な」と加えた。そんな会話で、我々は共通の認識に立って音楽が出来た。そういったことが、大きな満足感を生む。ともにステージに立つものが、共感しあって共鳴する喜びは、何事にも代え難い。こういう機会を与えてくれた吉井さんには心から感謝している。

 本番では、イントロの十川さんのピアノから、エンディングでのキーボード2人の絡みに至るまで、ずっと集中したパフォーマンスになったと思っている。とにかく、やりきった感がものすごくあった。この曲で、我々は再び休憩に入ったのだが、いつもなら「イェー!」とばかりにハイタッチしたり、ハシャいだ会話で盛り上がっているのに、この時は私も古田君も呆然としていた気がする。それだけ入り込んだし、やる事やったという充実感があった。

 良かった。うまくいって。きっと、これなら大丈夫と思った。

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by harukko45 | 2007-12-17 11:47 | 音楽の仕事

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 私は斉藤和義という人の歌が大好きだ。この人は何とも魅力的な歌を歌う。立ち振る舞いも、リハーサルや出番前なんかに何気なくしているムードもいい。けっして、いい男風でも気取っているわけでもなく、逆に全く気遣いない感じがカッコイイ。だからって、回りの人間を寄せ付けないようなバリアを張っているわけじゃない。

 実は去年のスーパーライヴでの打ち合わせの時から、その朴訥としたような(?)雰囲気が面白く、それでいて一緒にやった"Free As A Bird"と"I Am The Walrus"では、内面からあふれるような情熱を感じさせてくれ、たぶん昨年の全レパートリーの中でも、白眉の仕上がりだったと思っている。

e0093608_0481283.jpg そして今年、彼は去年本当はやりたかったという名曲中の名曲"Jealous Guy"を自らの日本語詞で歌った。それも、彼のMCによると「たぶん、このようなことを歌っているのであろう」と俺訳したもののようだ。でも、その詞が何ともキュンとくるのだった。やはり自分の言葉で伝えようとする姿勢はとても大事なことだと思った。とにかく、スタジオでのリハーサルの段階から、この弾き語りにはみんなシビレていたのだった。
 また、本番ではギブソンの12弦ギターを弾いてくれたのだが、これがまた良い音だったなぁ。そんなこんなで、個人的にはかなりウットリと聴き入ってしまった。

e0093608_0505987.jpg だが、そこでボーっとしていてはいけない。続く2曲目では我々がサポートしなくては。だが、それにしても、またシブい選曲になったものだ。"Baby It's You"は女性R&Bグループのザ・シュレルズが1962年にヒットさせた曲で、バート・バカラックら3人の共作。
 ビートルズはデビュー・アルバム"Please Please Me"でカヴァーしているが、このジョンのリード・ボーカルが実に良いのと、バックのポール&ジョージの「シャラララ」コーラスがこれまたゴキゲンで、正直オリジナルよりも完成度が高く(まぁ、シュレルズ・バージョンの切ない感じがいかにもガールポップ風ですが)、これをしてビートルズ作の曲か、とも思えるような仕上がりだった。

 また、蛇足だがゲイル・マッコーミクがリードボーカルのL.A出身のバンド「スミス」が69年に、かなりハードでブルー・アイド・ソウル風なアレンジでカヴァーし、全米トップ10に入るビッグ・ヒットにもなった。(これもなかなかカッコイイ出来で、私は大橋純子さんのライブで、かつてよくやっておりました!)
 他にはカーペンターズもやっておりましたな。(これまた、全然別曲のように、お兄ちゃんのかなり凝ったアレンジになっておりますので、聴き比べてみて下さい。)

 今回はもちろんビートルズ・バージョンです。で、とにかくこれはまずは「シャラララ」コーラスがキマラないことには話にならんわけ。イメージ的には柔らかく歌っているようですが、実はビートルズはかなりシャキッとやっております。裏声かなんかでフニャフニャ歌っておらんのです。そのキビキビとした中に、何とも言えないセクシーさを出す、これがむずかしいんだよな。
 とにかく、斉藤さんのリード・ボーカルの良さをぶち壊さないように、押葉、土屋、和田で頑張りました。それにしても、斉藤さんが「エッチなミュージシャン」とも呼ばれる理由もわかる気がしました。こういう曲のボーカルがまた色っぽいわけだ。

 それと、特筆すべきはこの時斉藤さんが弾いてた「Silvertone」の黄色いギター、ニューヨークに仕事で行った際に購入したビザールものだそうですが、これが見た目も音も両方いい味出してくれた。おかげでキーボードのバッキングはほとんど必要のないサウンドになりました。リハの時もみんなでこのギターを囲みながら、あれやこれや話がはずみましたっけ。
 というわけで、ここでも私としてはコーラス・ワークがうまくいって、とてもうれしく感じましたし、実に気持ちのいい演奏になったと思いました。そして、何と言っても斉藤さんの素晴らしいボーカルに大感謝であります。

 さぁ、次はいよいよ奥田民生さんです。

 ふらっと現れてセッティングし始めるという、さりげない登場に、自ら「あまりにもカリスマ性のない」と評されてましたが、それがかえって奥田民生の奥田民生たる所以(?)か。
 奥田さんは何と言ってもリラックスさせてくれますし、根っからのミュージシャンであり、音楽を楽しむことをけっして忘れない感じが素晴らしい。だから、妙なアーティスト気取りなど、彼にとっては「どうでもいいこと」なのでしょう。そんなことより演奏して歌ってしめすよ、それが彼だと思います。

e0093608_0524081.jpg そんな彼の1曲目は軽快なロックンロール、L.リチャードの"Slippin' And Sliden"。ジョンは"Rock'n'Roll"でカヴァーしていますが、当然ビートルズ時代から歌い続けていた曲でしょう。この"Rock'n'Roll"はジョンのアルバムの中でも、個人的には最高に好きなものの一つで、意外に一番聞いているかもしれない。やっぱ、ジョンはロックン・ロールがムッチャ似合うのですよ、ハイ。
 ですから、盛り上がらないわけがありません。曲の時間としては2分半ぐらいで終わってしまうのですが、中味は濃いのです。十川さんは実にゴキゲンなロックンロール・ピアノを聞かせてくれましたし、オッサンのソロももちろん渋かったし、私はいかにもビートルズ風あるいはフィル・スペクター風とも言える(いや、元のリトル・リチャードもろだわ!失礼。)サックス・アンサンブルをシンセで再現し、途中でオルガン・ソロも弾かせてもらいました。

 こういうものを歌う奥田さんはさすがですね。ロックンロールをこれだけカッコよく歌いこなせる人って、今、他にいるかな?彼が歌うとノリがぐっとしまってくるのでした。その辺はドラムの古田君との相性もバッチリってとこです。

e0093608_0535197.jpg とにかく楽しさ満載の奥田コーナーにもう一人素敵なゲスト、木村カエラさんを迎えての2曲目は何と!何と!"Revolver"の9曲目(B面の2曲目)に収録された"And Your Bird Can Sing"であります!
 私、個人的に何とも好きなんですね、これ。まぁ、よく考えれば他の名曲の数々に比べれば、どうってことない作品なんだけど、何とも、何ともねぇ、好きなんですよ。(ちなみに"For Sale"に入っている"Every Little Thing"もそういう感じで好きな曲、これはポールの曲だけど、リードボーカルはジョンです。)

 で、何がいいのかって、ツイン・ギターで延々とハモりながらメロ弾いているわけです。これじゃ、インストじゃんってぐらいね。ビートルズ・バージョンはこれがまた何ともタドタドしいんだけど、それがまたいい(?)。

 だが、それだけじゃない。ビートルズのボーカル・ハーモニーのアレンジはいつも凝っていて感心させられますが、例えばビーチ・ボーイズのような天才の考えた造形美あふれるものというよりも、いかにもライブで鍛えたバンドらしい、ザックリしていながら実に効果的なコーラス・ワークと言えるでしょう。
 それが、この小曲でも肝になっています。曲の頭ではジョンのリードの上と下についていたハモが最後の部分ではいきなり上に二つのってきて、これがフォーク・ロック風なムードを一気に醸し出してくれるのでした。こういうのはバーズの影響だったのか?正直、ここがシビレちゃうわけね。

 さて、本番では奥田、土屋、名越によるトリプル・ギターでのアンサンブルになりました。豪華ですなぁ。それに奥田さんはジョンが使っていた(?)、とにかく曰く付きのリッケンバッカーをこの日のために、わざわざ借りてきておりましたからね。
 また、例のハモ・パートはカエラさんの参戦で、ずいぶん強化されました。彼女は全く緊張することを知らないらしく、飄々とハーモニーをつけていましたね。それと、1stタンバリンの大役も軽々とこなしてくれました。私は2ndタンバリンとして、細かい裏打ちや16ビートをやっておりましたが、それに夢中になりすぎて、最後の上に移行するハモを外してしまいました。これは、ひどくショックでした。あんなに練習してたのに!もう、残念至極です。でも、とりあえずカエラさんは全く動じずに歌ってくれていたので、何とか一命は取り留めました。

e0093608_054349.jpg そして、その宇宙人のような存在感のカエラさんをフィーチャアしての3曲目は、出ました"In My Life"。誰もが知ってる名曲であります。カエラさんと奥田さんが一緒に歌うためにキーはお互いに譲り合った感じでAからBに上がりました。でも、この程度なら原曲のムードからあまり遠くはなりませんでした。なので、ほぼオリジナル通りに演奏することできました。
 例のバッハ風ピアノ間奏は、十川さんと私とで連弾じゃないか、とにかく2人で再現しました。十川さんも私も同じヤマハの音源を使っていたので、音色を合わすことができたのも良かったです。

 それにしても、実に楽しい3曲でした。ある意味「古き良き」ビートルズ、一番仲の良かった時代のビートルズを感じさせるパフォーマンスになったのではないでしょうか。それが、いかにも奥田さんらしい、気の利いた選曲だったと言えるでしょう。

詳細(6)へ続く。
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by harukko45 | 2007-12-17 00:55 | 音楽の仕事

 スーパーライヴの詳細(1)からの続き...

 さて、本編のトップバッターとして今回初登場となる「くるり」のお二人がステージに立った。岸田さんはリハの時と同じ、リッケンバッカーの12弦ギター、佐藤さんもベースを演奏しながらのパフォーマンスになる。

e0093608_5465529.jpg 彼らとの1曲目はビートルズ1966年のアルバム"Revolver"に収録されている"She Said She Said"だ。いかにも彼ららしい選曲とも言える。ただ、同じ"Revolver"には同系統と思えるサイケ曲として"Tommorow Never Knows"もあって、ビートルズ・ファンの好みは別れるところ。私でさえ、このアルバムでの代表曲の一つとして上げる際、これまでなら"Tommorow..."の方になってしまう。

 だが今回、実際にバンドで演奏してみたら、CDで聞くと意外にあっけなく終わってしまうような印象だった"She Said..."が、実は骨太なロック・チューンであり、ライブ向きの派手さを持った作品として、かなり現代のロック・サウンドにマッチしていることがわかったのだった。簡単にいえば、かっこよさに気がついたってことね。

 それと、極めて面白かったのが、インド風のムードを醸し出したイントロのファズ・ギターに始まり、フォーク・ロックっぽいニュアンスのギター・サウンドでウキウキと進んで行くと、途中で突然3拍子になってしまうところ。ジョンの曲によくある変拍子だけど、ここでの3拍子がよく聞くと、えらく優雅に演奏されていたのだった。ヨーロッパの舞踏会で演奏されるようなワルツのノリが明らかにそこにあった。それをちょっと意識すると、この部分の演奏がもの凄く楽しい気分になった。
 この辺はウィーンでレコーディングしてしまう「くるり」としては百も承知だったのかもね。

 また後半、エンディングに向けて、岸田君と名越君のギターと十川さんのエレピがサイケ色炸裂の演奏で、カオス状態を作り出したのだった。

e0093608_54778.jpg 続く2曲目は、"Rubber Soul"からの"Nowhere Man"。これはまずは何と言ってもボーカル・ハーモニーの部分。岸田、佐藤のご両人に、私、押葉、土屋で各パートをダブリングしながら頑張ってみました。「くるり」のお二人がいない時もバンド側はよく練習しましたので、本番ではかなり良かったんじゃないでしょうか。最後の最後に出てくる(いつものように)ポールの、主メロを食ってしまう高音部のパートも佐藤君と押葉君の奮闘により、うまくいったと思うよ〜ん。

 それと、1コーラス後に登場するジョージのギター・ソロ部分、これを土屋さんと岸田君と2人で弾いたのでダブリングされてあるスタジオ盤の雰囲気にも近かったのでは。岸田君は、このギターをこれこそまさに「完コピ」する、と気合い入ってましたっけ。

 もう一つ、頭のコーラス後に登場するジョージのフレーズはEのコード上で9thを強調した感じで弾かれていますが、土屋さんの解説によると、7thも鳴っているとのこと。確かに、CDで聞くと一瞬「オッ?!」と思わせるのは、そのせいなのでした。でも、一度耳にするとその響きでなくてはならない気がするのが不思議だし、それがビートルズなのでしょう。

 でも、とにかく私としては"Nowhere Man"のコーラスが、かなりうまくいった手応えを感じ、実に気分がよかったなぁ!

e0093608_13254318.jpg さて、お次は一昨年に続いて2回目の登場であるBonnie Pinkさん。そして曲は"What You Got" 何この曲?どのアルバムに入ってんの?"Walls And Bridges(1974)"の4曲目、うーちょっと見過ごしてましたなぁ。
 "Walls And Bridges"はジョンの「失われた週末」時期のアルバムで、正直、個人的にはほとんど印象になかったし、あまり好きとは言えない。それに、ジョンにはどうにも異質に感じてしまう16ビートが、やはり腑に落ちなかった。

 実際、バンドだけで合わせた時に、ひどくつまらない感じがしてしまった。ただやっていては、何の取り柄もない軽薄なディスコ・サウンドになりそうだったのだ。そこで、全員にもっと「やさぐれて」もらうことにした。小ぎれいにやったってダメだ、もっと汚く。そんな会話に皆すぐに反応してくれて、じょじょにエゲツないサウンドに変わっていった。
 不思議なもので、意識がちょっと変わっただけで、やっていることはそれほど変わっていなくても、ずいぶんと印象の違う音楽になるものだ。それに、Bonnieさんが歌う事で、ちょっとした「美女と野獣」効果が加わり、我々が目指した「やさぐれ」サウンドが具体的に表れてきたのだった。
 そしてとどめに、古田君のローディ・チームにパーカッションで加わってもらいました。彼らは裏方の仕事をしながら、突然として演奏にも参加ですから、ほんと、ご苦労様でした。でも、すごく効果的でしたよ、ありがとうね!

 さて本番では、Bonnieさんのキレのいい発音と、それが生み出すノリが実に気持ち良く、この曲のグルーヴをさらにうねらせてくれたことが素晴らしい。それに、こんな言い方をしては失礼かもしれないが、彼女のボーカルは一昨年よりも数段良くなっていた!
 もとより声の良さとステージングの魅力はあったが、それに加え歌自体が明らかに良くなっているのに驚いたし、感心した。素晴らしい成長ぶりである。
 おかげで、かなりの「おバカのり」で盛り上がらせてもらった。最初の彼女によるカウント「On~e」がなめきっていて良かったしね。

 それと、この曲で歌われている内容、「誰も失うまでは自分の持ち物を知らない/失ってはじめてわかる/ああ、もう一度チャンスがあったなら」という嘆きが、パーティっぽいビートで歌われると、まさに「失われた週末」を感じさせて切なくなる。だが、その「失ったもの」の大事さを悟ったジョンはニューヨークに戻り、ヨーコと再会してもう一度やり直すのだ。

e0093608_5473177.jpg それがBonnieさんの意図だったなら、とてもよく考えられた構成で、これまた感心するし、素晴らしいことだ。2曲目は"Double Fantasy"のオープニングを飾った"(Just Like)Starting Over"だからだ。
 "Starting Over"は発表直後にジョンの死があったために、どうしても哀しみを感じながら聞いてしまうが、内容的にはタイトル通りに極めて前向きな歌で、2人での再出発を歌っているものだと思う。だが、今回Bonnieさんのためにキーを上げたために、元のイメージよりも軽い感じになってしまい、何とも可愛らしいオールディーズ・ソングになりそうだった。なので、サウンドの重心を低くして、よりザックリしたアプローチを試みた。

 具体的には、いかにも50年代風のピアノの3連カッティングをやめ、十川さんにはウィーリッツァー風のエレピで全体をつつんでもらい、シンプルなパターンだったギターは低音部も鳴らしてシャッフルのノリを強調してみることにした。

 この方向性は大正解だったと思っている。私だけでなく、皆がアイデアを出し合ってBonnieさんのボーカルを生かす、実に男性的(!)なバック・サウンドになった。そして何より、Bonnieさんの歌声が気持ちよく、この曲がとても彼女に合っていると感じたし、後半、のびやかなフェイクを聞かせてくれたことで、全体も盛り上がり、終わってしまうのがもったいない気がしたのだった。何と言うか、"Starting Over"の別の魅力を引出すことができたのではないかと思う。
 明らかに前半のピークを作ってくれたBonnie Pinkさんに、感謝であります。

 詳細(3)
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by harukko45 | 2007-12-14 05:55 | 音楽の仕事

 ジョン・レノン・スーパーライヴは2000年に始まって、今年で7回目。そのうち、私は3回目に参加させてもらい、その後5回目からはバンマスを仰せつかって3年経った。特にそのバンマスになってからの3年間はどれも印象的なものばかりで、いつまでも素晴らしい経験として私の心に残っていくことでしょう。
 例えば、2005年では奥田民生さん、吉井和哉さんといった素晴らしいアーティスト達との競演だけでなく、オノ・ヨーコさんとパフォーマンスをするという信じられない機会を持ったこと。
 2006年は、バンド・メンバー中4人が前年と変わらず、そこに阿部義晴さん、黒沢健一さんを迎えて、よりバンド色が濃厚になったことが私には何よりもうれしいことでした。斉藤和義さんやスキマスイッチといった、今が旬でこれからも飛躍していきそうな素晴らしい才能にも出会えました。

 そして、2007年。我らがトリビュート・バンドのメンバーは土屋潔氏(彼は皆勤)、古田たかし君、押葉真吾君と私が3年連続不動。そこに実力あるキーボーディストであり、プロデューサー/アレンジャーとしても有名な十川知司さんと、これまた十川さんとともにENDLICHERI☆ENDLICHERIでも活躍していて、他方面でも引っ張りだこのギタリスト名越由貴夫さんを迎えた2007年バンドは、演奏面においてこれまでで最強であったことは自他ともに認めてしまいます、ハイ。

 ただし、演奏がうまいバンドに陥りがちな部分、じょじょにこじんまりとまとまってしまう危険もありました。が、やはりこのイベントの持つ凄まじいエネルギーがそんなことは許さなかった、例えば忌野清志郎、奥田民生、吉井和哉、斉藤和義という4人の日本を代表するロックスターが一堂に会するだけでも、ただでは済まないことは明白なのでした。

e0093608_1642649.jpg それに、まず今回は実に明解なテーマがありました。それはプロデューサーの斉藤さんからの「屋上セッション」というアイデアでした。ビートルズ・ファンのみならず、それなりにロックの歴史をご存知の方なら、当然ピンとくると思います。つまりはビートルズの映画「Let It Be」でほとんど無秩序にダラダラと垂れ流されるスタジオ映像が続いたあげくに、最後の最後でそれまでのすべて払拭するかのように感動的なアップル・ビルの屋上での無許可ライブ・セッションのことです。
 これはビートルズ4人(+ビリープレストン)にとっても、最後のライブ演奏・映像であり、この後にビートルズはアルバム"Abbey Road"を執念で完成させて、バンド活動を終結してしまい、二度とライブはやっていないのでした。

e0093608_16435872.jpg この屋上セッションで演奏された曲は、現在"Let It Be"と"Past Masters, Vol.2"、"Anthology"等で聞けますが、やはり2003年に突然発表された"Let It Be...Naked"で収録された5曲が圧倒的に素晴らしいと思います。この中からジョンをフィーチャアした3曲、"Dig A Pony""I've Got Feeling""Don't Let Me Down"が選ばれました。

e0093608_1645550.jpg そこに、演出面からの要望でオープニング映像からのつなぎに"Abbey Road"のA面最後に収録されたヘビーブルーズ"I Want You(She's So Heavy)"の後奏部分を使いたいとのことでした。実に面白いと思いましたね。最初の打ち合わせの時点で、暗闇のシーンでの"I Want You"から、一気に明るくなって屋上セッションに展開していくというワクワクするような絵が浮かぶではありませんか!!

 このオープニング・メドレーの音楽的な構成は私に任されましたが、私からの提案は歌う人は男4人で行きましょうということ。そして、選ばれてご協力願ったのが上記の4人です。この組み合わせ、もうすでにそれだけでツカミはOKでしょう?!

 というわけで、メドレーの流れは"I Want You"~"Dig A Pony"~"I've Got Feeling"~"Don't Let Me Down"と決めて、どこをどう切ってどうつなげるか、いろいろと悩みました。だって、おいしいとこだらけなんですから、どの曲も!なので、泣く泣くハサミでバッサリと切りまくった感じで何とか一つにすることができました。押葉君にも相談にのってもらいました。それと、もう一つ。今回、とても大きな事柄として、ガンで活動休止していた忌野清志郎さんの復活をお祝いしたいということがありました。それには、単に言葉だけでなく、音楽と演出上で彼に皆で敬意を表しながら、ともに喜びたかったのです。ですから、このメドレーの最後は清志郎さんが"Don't Let Me Down"を歌うことしか考えられなかった。

 その後、清志郎さんの登場をより印象的にしたいという舞台監督の中村さんからの提案で、そこに音楽をつけることにしましたが、いろいろ考えたあげくに、"I Want You"のAメロ部分を土屋さんのギターをフィーチャアしてインストでやることにしました。すると、コードの流れがほぼ奇跡とも言う程、"Don't Let Me Down"につながっていったのです(Am~C~D~F~E)。ちょっと、個人的にシビレました。

 実際のパフォーマンスにおいては、暗転での"I Want You"における我々はもうすでに鼻息の荒い戦闘モードでした。皆の気合いを感じましたし、この曲のおぞましいリフが否応なく我々の魂を揺さぶるのです。「I want you.」はジョンがヨーコに向けた言葉ですが、今回は我々がジョンに向けての言葉になったのです。

 そして、一気に幕が振り落とされて、吉井さんによる"Dig A Pony"。おいしい幕開けです。やっていてニヤリです。会場中の熱気と期待感がヒシヒシと伝わってくるし、それを一発で受け止めてしまう吉井さんは凄い。そこにサビから高音のハーモニー・パートで参戦する奥田さん。何か文句ありますか?彼は、たぶんこの中でも最高のビートルズ者だと思いますが、音楽的には主メロのジョンのパートよりも重要と言えるポールのパートをお願いして、ご苦労かけました。が、彼ならきっとやってくれると思ってました。ありがとうございました!!
 そして、ここでの最大の見せ場、聞かせどころ。サビの最後に来る、吉井&奥田だけでの「Because」。ここはノン・テンポでふたりがお互いを見ながら合わせるのです。実際に、見つめ合うように向き合った2人は思わず吹き出してしまいましたね。これには、バンドも大受けしてしまいました。でも、このおかげでスーっとリラックスできました。気合いの入り過ぎのような力みがすっかり取れたのでした、これは大きかった。
 "Dig A Pony"のリフから突然テンポチェンジして"I've Got Feeling"のリフへの突入は、何のきっかけもなくやりました。これは、ずっとリハしてきたバンドならでは。曲を全員が体で憶えてくれなくてはできないのです。
 そのブレイクで、奥田さんはポールばりのシャウトを決めてくれました。その"I've Got Feeling"はほとんどポールの曲と言えますが、後半絶妙のタイミングでジョンが絡んでくるところがあります。そして、最後に2人の歌うメロディが重なり合うという心憎いアレンジがされているのです。まさに、その部分を奥田さんと斉藤さんに再現してもらいました。音域的にはどうしてもジョン役の斉藤さんが不利ですが、にもかかわらず彼の存在感は独特で堂々たるものでした。

 それを引き継ぎ、土屋・名越のツイン・ギターでの3連の応酬に、曲は終わったかのような大きな拍手がありました。うむうむ、それがこちらの狙いでもあります。で、先に述べた再び"I Want You"のテーマにのって、ついに忌野清志郎さんの登場です。それもマント付き!この時は、私達と清志郎さんとの駆け引きがあり、実はステージ上はピリっとした緊張感が流れていました。終演後のパーティで、清志郎さんに「バンマスー、あそこはどうなるかってドキドキしてたよー。」ってニコニコしながら言われました。でも、バッチリ決まりました、さすがです。あの有名なギター・イントロから彼が「Don't let me down.」と歌い始めたことで、私はもうすっかり感動してしまいました。素晴らしい声と存在感!忌野清志郎は完全復活です。

 正直、1曲だけで1コンサート分のエネルギーを使いました。でも、すごく満足できるオープニングになりましたし、バンドの演奏も極めて好調、これなら後は存分に楽しませてもらいます。

 ずいぶん長くなりました。まだオープニング、続きます。....詳細(2)
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by harukko45 | 2007-12-12 16:35 | 音楽の仕事

 ジョン・レノン・スーパーライブを終えて早10日、このところはJabBeeさんの新作用のレコーディングに集中しておりました。と言っても、大掛かりなライブの仕事から一転、全て自宅での作業であります。プロデューサー兼ベーシストの永田君からリズム・トラックのデータを受け取って、しこしこキーボードを入れ込んでおった次第。

 うーむ、曲は今年に入って、何度もプレイしてきたものばかりだったけど、改めてレコーディング用に整理してくると、今までの演奏はかなり「やり逃げ」的だったかもと反省至極。家でこつこつ作業することで、じっくりとJabBeeの曲と向かい合えたのでした。そうすると、やるべきこと、やらない方が良いことが見えてきて、とても勉強になった。
 ライブ一発の楽しさはあるけど、ずっとそればかりでは音楽としての成長はないわけで、バンドに参加してから半年、私にとってはちょうどいいタイミングでのレコーディングでありました。

 全7曲予定のミニ・アルバム仕様になるらしいが、とりあえず完成を楽しみに待つことにします。
 そして、15日のライブ用に昨夜はリハーサル、やっぱりレコーディング後のいい影響ってそれぞれあるんじゃないかな。バンドとしての個性がかなり現れてきてスケールアップしており、自信みたいものも感じました。面白いもんです。だから、何か演奏しててもところどころニヤついちゃったりしてね。
 
 さて、気分も上々にバンドのみんなと別れてから、帰宅する車の中ではビートルズの"Naked"を聴いて感動しておりました。これはまだ武道館の余韻もあるけど、今現在かなり好きですね、このアルバム。"Dig A Pony"にガツンとやられるし、"Two Of Us"から"Don't Let Me Down"までの4曲が何たって最高だね。ここでの歌と演奏を聴いてると、70年代のバンドとしてのビートルズが生き生きと存在していて、ものすごく新鮮。どうしても、彼らのピークを60年代中期にしてしまうのを改めなくてはいけないかも。

 で、"Across The Universe"は、これが決定版かな(?)まだ、少し疑問ではあるが。ラストの"Let It Be"に久々に感動してしまったのも、"Across..."からの流れだからかな、きっと。
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by harukko45 | 2006-11-14 00:46 | 音楽の仕事

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e0093608_13123338.jpg この日の18曲目は1967年のビートルズのシングルとして発表された"All You Need Is Love"。
「ラブ&ピース」を常に信条としてきたジョン・レノンのテーマとも言える内容の曲だろう。その持っているメッセージといい、パーティ的な曲調・アレンジといい、まさにアンコールでオールキャストが参加するには持ってこいの曲だった。

 この曲のノリと言うのは、極めてのんびりとゆったりとしてないとムードがでない。多少酔っぱらってるぐらいでちょうどいいのかも。あんまりタイトにサクサクとやってしまうと、いろんなところに施された印象的なフレーズや仕掛けが効果的に聴かれないまま過ぎてしまうからだ。
 だが、個人的にはイントロのラ・マルセイエーズ(フランス国歌)のフレーズをぐっと粘って弾こうとして、ちょっとやりすぎたことが悔やまれる。そのせいで、リズムがよれて、余計な音も出してしまった。うーむ、反省。あまりにも印象的な部分だけに、残念至極じゃぁぁぁ。

 その他のジョージ・マーティンズ・オーケストラのおいしい部分の再現はほぼ私一人でやり遂げることが出来たと思っております。簡単に言えば、頭のブラスからハープシコードにいって、そのままストリングスを弾き、サビではブラス(パーパッパ、パーパッパ)とサックス(パッパラババ)のセクションを交互にプレイし、間奏ではギターの後のヴィヴァルディ風のストリングス・アンサンブル、そしてエンディングにおけるバッハとグレン・ミラーとグリーンスリーヴスって具合。あー忙しかった。

 さて、その分他の皆さん、特に黒沢君、阿部君、押葉君にはヴォーカル・パート、コーラス・パートを頑張ってもらった。何しろ、オールキャストで十分にはリハは出来なかったので、我らバンドが率先してリードしていかねばならんのです。
 特に最後の"She Loves You"のパートは黒沢君頼みって感じだったね。でも、彼の抜ける声に引っ張られて会場のお客さん達も歌うのが見えて、すごくウレシくなったなぁ。
 この曲の前にやった「ONOCHORD」によるパフォーマンスで「みんな一つになろうよ」ってムードが盛り上がり、この"All You Need Is Love"を通して本当に一体になったと思いました。

 そして、その"She Loves You"の大合唱にのって、ヨーコさん登場!だったのかな?実は曲に夢中になりすぎて、ヨーコさんがいついらしたのか、私にはわからなかったよ。ただ、私のイメージでは、そうなると良いなって思っていた。

e0093608_13132928.jpg "Happy X'mas"はもはや定番の曲。出来るだけ長く"War is over,if you want it. War is over now."は繰り返してかまわないだろう。まるで、念仏やなんかみたいに唱えていたっていいじゃないか。

e0093608_1314924.jpg そして、"Imagine"。ここでは、まず阿部君がこだわったピアノのサウンドが本当に素晴らしかったことを書いておきたい。スタジオ盤で聴かれる、あの印象的な「サウンド」にマジに近かった。そこから、ヨーコさんを中心に全員で歌ったのだが、いつもサラサラと終わってしまいがちなこのバラードが、何故か、この日はとても重厚な趣きを持っているように感じたのは、いつもより充実した気分だったからだろうか。それと同時に終わってしまうのが寂しいという思いも。

 全曲演奏し終わって、スクリーンにはジョン自身による"Imagine"の映像が流れ、我々バンドもアーティストの皆さんも会場のお客さんも、それをじっと見るというのも不思議な光景だね。まるで、ジョンとの別れを一人一人がかみしめているみたいだった。

 さて、我々トリビュート・バンドの面々はハイタッチしたりハグしあったりして、お互いの健闘を讃え合うと、無事にやり遂げた充実感と疲労で、その後は楽屋でしばしボー然って感じだった。でも、そんな様子がやけにおかしくってニヤニヤ笑ってしまうのでありました。
 押葉君曰く「炭坑夫仲間」となって奮闘したのですからねぇ。でも、ちゃんと長いトンネルの先に光を見いだしたごとく、コンサートを成功に導いたのですから、皆エラかった!短い時間だったけど、やっぱりバンドという形態で人が結びつくことって素晴らしいことなのです。これは、ミュージシャン同士に許された特権だね。

 もちろんバンドだけでなく、舞台監督の中村さんをはじめスタッフの皆さんやプロデュース・センターの斉藤さん川島さんら、皆さんにも大きな拍手をしなくちゃ。本当にお疲れさまでした。素晴らしい仕事ぶりでしたし、皆さんの力があってこその我々でした。
 そして、会場にいらしてくれた皆さんに、心の底から厚く熱くお礼を申し上げます。ほんとにほんとに、ありがとうございました!!!
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by harukko45 | 2006-11-08 00:00 | 音楽の仕事

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 いよいよ、終演に近づいて来た。ここまで、演奏する立場からするとアッと言う間だった気がします。あんなに長くリハーサルしたのに、本番はこうも早く過ぎ去って、幸せな時は何と短いのでしょう。

 本編最後にお迎えしたのは、佐野元春さん。佐野さんの登場に、我々バンド側にはピリっとした空気が流れましたね。なぜなら、スタジオでのリハの時からすでに、彼はこちらの予想を上回るエネルギーで、本番さながらのパフォーマンスを披露していたからです。私達は、彼の動き、合図、声を絶対に見逃したり聞き逃すことは許されません。初対面だろうと、古田君のように旧知の中だろうと、すべてのコントロールは佐野さん次第なのです。
 だからといって、借りて来た猫のような演奏でおとなしくなんかしていられない。スタジオだろうとステージだろうと、いようがいまいが彼にはお客が見えていて、その見えない相手を常にあおり続けているし、背中から我々にも強烈なオーラでプッシュしてくるのだった。

e0093608_1391161.jpg 曲はお馴染み"Come Together"のみ。しかし、魂を込めてこれ1曲ですべてを出し切りたいという主旨のメールをご本人から本番日前にいただいた以上、こちらにもそれなりの覚悟と気合いが必要なわけです。ですから、やはりピーンとした緊張感が生まれたのも当然でした。

 去年のオノ・ヨーコさんとのステージを思い起こしました。あの時も同じような緊張感と、一瞬たりともヨーコさんの動きを見逃さないように集中しようとしていました(それでも、いろいろあったけど)。

 そういう時って、集中が高まることで、逆に本能的な演奏になっていくところがある。特にこういうシンプルで扇動的なロック・チューンならなおさらなのだ。だから、どこをどう演奏したかより、どこまでも熱く深く音楽に入り込んでいたか、と同時に氷のように冷静に全ての動きを理解できていたか、となるのだった。こういう体験は麻薬的なので、ずっと浸っていたいのだ。もっと演奏したい。もっと、もっと...。

 音楽って時間に司られた芸術で、エンディングに向かってその興奮や感動は頂点に導かれていくわけだけど、その「約束の地」とも言えるエンディングは同時に文字通り「終わり」であって、残酷にもそこで音は消え、もう二度と戻ってこない。

 その時間は7,8分あっただろうか。短かった、だが濃密なひと時だったと感じる。

 さて、次で最終回。詳細(6)へ続く
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by harukko45 | 2006-11-07 14:02 | 音楽の仕事

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 11/4の詳細レポートの4回目。しつこいね。なかなかコンパクトにまとめられないのだが、まぁ自分のブログなんだから遠慮はいらない? ということで、まだ中盤戦です。

 斉藤和義さんを送り出して、再びパックンマックンによるチャリティ活動の概要の報告。この辺にこのイベントの「真面目さ」が出ていると思う。正直、実際に集められたお金が何処に渡り、どのように使われ、その結果どれだけの人々が救われているのか、そんなに大げさでなくても、このイベントによって少しでも恵まれない子供達が喜んでくれているのか、誰もが知りたいし、知る必要があるわけだ。そこをきちっとオープンにしているプロデュース・センター/Dream Power事務局の姿勢は立派だと思う。
 そして、その具体的な成果は過去5回のコンサートでアジア・アフリカ17国に54の学校建設を支援してきたのだった。

 さて、そういった流れにそって、日本の子どもたちからアジア・アフリカの子どもたちに贈られた「愛の絵はがき」をバックにしながら、押葉君が再び歌った。曲はアルバム"Mind Games"に収録されて、特にジョンのやさしさが伝わる"I Know(I Know)"。映像ともピッタリだったけど、それ以上に押葉君の歌いだしはジョンが乗り移ったかのようで、何だか不思議な気分におそわれて、フンワリした状態になってしまった。

e0093608_1323832.jpg 一般的にはあまり評価されていない"Mind Games"だが、今聴くと70年代初期の反戦運動に疲れたジョンの何とも言えない脱力感が、逆に新鮮に感じられるのは変だろうか。現在聴くことのできるリミックス、リマスタリング盤はオリジナルよりも格段の良さに仕上がっており、もう一度再評価するに値する作品であることを証明していると思う。

 "I Know"もそうだが、カントリー風味を随所に取り入れたり、それまでと違いニューヨークのスタジオ・ミュージシャン達による安定したバック演奏が、全体に心地よいリラックス感を生んでいるのだった。

 この曲のサビでは押葉、黒沢、阿部の3人衆によるハーモニーが曲の良さをより引き立てたと思う。その間、ドラムの古田君は微妙な変拍子に細心の注意を払ってバンドをコントロールしていたことを忘れてならない。

 続いては再び、宮沢りえさんが登場して"Imagine"の詩を朗読。そして、今回大活躍のLOVE PSYCHEDELLICOのステージだ。とにかく、彼らは本当に「Nice Guy」だ。そしてちゃんと大人でもあるし、プロフェッショナルとしての自覚も持ち合わせている。なので、自分達のパフォーマンスはもとより、出演者全員によるシーンでも全力で取り組んでくれる。また、今回は特にヴォーカリスト達のリーダー役を買って出てくれた。ある意味、いつもだとオールキャストのシーンではまとまりなくなってしまうムードを彼らが一つの方向に引っ張っていってくれたとも言える。この場を借りてNaoki&Kumiにお礼を言いたいと思います。「お前ら、サイコー!」

 さて、レアな選曲とハードな演奏の去年とはうってかわって、今年の彼らはおなじみの曲を斬新なアレンジで聴かせてくれた。"Help!"は予想外のコード展開が、個人的にはブロンディのように感じて、思わずニヤリ。"Stand By Me"も彼らにかかると別物の魅力が出て来て楽しませてもらった。だいたい、オジサン達がこの曲やると、どうしてもあるパターンに収まっちゃうんだよね。
 デリコにはこれからも頑張って、もっとビッグになってほしいな。

 そんな彼らの熱気を引き継ぎながら、老体にむち打って(それって、俺とオッサンだけかな?)再びステージに向かうトリビュート・バンドであった!!
 次にお迎えするのは、今が旬のスキマスイッチのお二人。ボーカルの大橋君はなかなかのビートルズ・マニアとのことで、今回の選曲にその深さが伺われるのだった。つまり、オジサン的には「ん? 若いのになかなかやるじゃん!」って感じ。

e0093608_1331094.jpg まずは名作"Rubber Soul"のラストにおさめられた"Run For Your Life"。クー!タマラン!!ワタシャ、初期からサイケ前のビートルズが大好きなの!よくぞ、選んでくれました。センスがいい!それだけで大絶賛。おまけに、"Please Please Me"や"A Hard Day's Night"からの有名曲じゃないところがニクすぎます!
 それに、大橋君はイントロのアコギの入り方にまでチェックしながら、自ら弾きこなす、かなりの「こだわり」を見せておりました。うーむ、こいつらもただ者じゃないのぉ。

 演奏面では、ギターの土屋さんの真骨頂が聴かれるわけで、キーボードなどは必要ないし、阿部君はこの曲のみギターを弾いて器用なところ見せてくれた。なので私は、古田君のローディの佐藤君がやるはずだったタンバリンをバンマス権限で奪い取って叩いておりました。それでも、最高。曲よし、サウンドよし。本当にこの頃までのビートルズの完成度は実に高い。最近のリスナーの中にはビートルズは下手だの、レッド・ツェッペリンの方がロック・バンドとしては上だの、訳の分からんことをほざく奴らを見かけるが、そんなことを語るのは10年早い、おととい来やがれ、と言いたい。
 ビートルズは60年代のバンドとしてはダントツにうまい!特にボーカルの完成度の高さは圧巻だ。レコードとライブとで歌の出来に大差ないことに、まずは感動すべきだ。
 それに加えて美しいメロディと斬新なコードワークやベースライン、そしてある意味革新的とも言えたリンゴのドラミングに敬意を払ってほしい。
 また、私もZEPは大好きだし尊敬するバンドではあるが、ビートルズと比較して何になる。時代が違うのだ。ビートルズがあってZEPがある。モーツァルトがいてベートーベンがいてワーグナーが登場するのと同じである。

 余計なことで興奮してしまった、失礼。

 で、スキマスイッチだ。とにかく、私は大橋君の声のかっこよさには心底参りました。エー、声や! 久々に男らしいボーカルの登場にウキウキさせられるし、見事に自分を生かす選曲だったと思う。

e0093608_1323832.jpg そして、もう1曲。再び"Mind Games"から"Out The Blue"。この曲、知ってた?ごめん、私、こんなにカッコイイ曲があったなんて今回気づきました。お恥ずかしい。でも、バンドのメンバーも最初に演奏した時に、皆それぞれ「カッコイイー」って示し合わせたように発したんだから、認識としては私とさほど変わらなかったんじゃないかな。

 どこがいいか? まずは哀愁のアコギによるイントロで、いかにもジョン風の「ひねくれた」コード展開にキュンとする。そして、ボーカルがやさしさに満ちたメロディを歌いだすと、もうすでにかなりやられるのだが、すぐにやってくるサビに入る瞬間が「まいった!たまらん!」心境になるのだった。はっきりいって、ここのGのコードを思いっきり気持ちを込めて弾くのが楽しみでしょうがないのだ。一度、バンドで演奏してみればわかる。素晴らしい隠れた名曲だったのだ!

 土屋さんのソロによるアコギのイントロとバッキングは、ほんとにハートフルで素晴らしい。いつだって信頼でき、尊敬に値するプレイヤーだよ、オッサンは。
 そして、間奏ではスキマスイッチの常田君がピアノでビシっとソロを取ってくれた。最初はソロはあまり得意じゃない、なんて言っていたがとんでもない、ちゃんとしたピアニストとして盛り上げてくれたし、我がバンドの阿部君もエレピで参戦して豪華な3キーボード・サウンドが実現したのでありました。
 そして、ここでも大橋君のボーカルが秀逸でした。特に1コーラス目のサビ前で少しポーズして入りをためたあたりは、再びニクイ演出だった。

詳細(5)へ続く
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by harukko45 | 2006-11-07 00:12 | 音楽の仕事

詳細(2)からの続き

 押葉君の"Yer Blues"をやり倒した後は、バンドはいったん休憩に。楽屋に戻るさいに各メンバーがハイ・テンションではしゃいでおりました。というか、私が一番はしゃいでいたのかな。でも、とにかく皆気持ちよくここまでやれているという感じで、まずはバンマスとしてはウレシいのでありました。

 その間、ステージでは宮沢りえさんの朗読、映像、そしてCoccoさんのパフォーマンスと続いた。Coccoさんは何回かこのイベント出演を打診されていたらしいが、いわゆる「チャリティ・コンサート」に不信感を持っていたとのこと。学校を建てるという主旨も納得がいっていなかったのだそうだ。そこで、彼女のすごいところは、今回主催者であるプロデュースセンターの方々とともに、ベトナムに建った学校を実際に見学に行ったのだそうだ。それにより、このイベントによる成果と意義を自分の目で確認、納得し、出演してくれることになったと言う。
 こういう姿勢で物事に関わるCoccoさんの真摯で筋の通った生き方には、私も感動させられた。そして、彼女はギターの長田さんとともに"Rubber Soul"収録の超名曲"Norwegian Wood"を歌ってくれたのだった。

 続いては、逆にこのイベントでは毎年熱心に関わってくれている曽我部恵一さんの登場。昨年同様、自らのJazz風(?)なユニットでのユニークなパフォーマンス。彼のビートルズ、ジョンへの熱い思いと、独自の表現をトライする姿勢も素晴らしいと思った。今回は特にジョンの曲の中でもおなじみのナンバー"Jealous Guy""Mother"ときたから、その料理の仕方が実に興味深かった。でも、たまには我々とも一緒にやってほしいなぁ。是非お願いしたいアーティストであります。

e0093608_12563538.jpg そして、再び我々のセットになって、斉藤和義さん登場。斉藤さん、実に良かった! まずは選曲自体にある意味大胆さがあって不気味ではないか! 1曲目の"Free As A Bird"はジョンの死後、彼の残したボーカルとピアノが録音されたカセットテープを元に、残った3人がダビングして完成させたもの。"Anthology 1"が出た時の目玉の新曲として注目された曲だった。

 ただ、マニアの間ではプロデューサーのジェフ・リンの個性が出過ぎであるとの批判もあったし、ポールもあまり納得していなかったとの噂もあった。が、いかにもジョンの後期らしい「やさしさ」やある種の「悟り」のようなムードを十分持った内容だと思う。

 そんな流れからか、発売当初は注目されたものの、その後は比較的忘れられていた感じだったし、現にこのイベントでも初登場となったのだった。演奏面においては極めてシンプルであり、多少ルーズなムードを感じながらもキチっとプレイすることが大事。全体的には音数が少ないような印象を与えるが、結構シンセのパッドやギターやコーラスがいろいろ絡み合っているのだった。それと、面白いのがジョンのパートの後、1コーラス目のサビはポール、2コーラス目はジョージが歌うのだが、そこへの受け渡しのコードをわざわざ変えているという微妙な配慮(?)があったりする。それと、間奏のスライド・ギターにかぶる美しいコーラス・ワークはちょっとビートルズっぽくなくて、まさしくジェフ・リンっぽいかもね。
 ただ、個人的にはこのコーラス・ラインは大好きなので、是非やってみたかった。今回は黒沢君がよく各パートを理解していて、阿部君とともにばっちりハモってくれた。私はボイス系のシンセで彼らをサポートしてダブリングしたような効果をねらった。
 それと、オッサン(土屋さん)のスライドは、いつ聴いてもタマラン。本物より良いんじゃない、いやマジに。

 でもって、斉藤さんのボーカル、根っからのダルでちょいワルな感じ(人間性はとっても素敵な人だったけど)が、オモシロイ世界を醸し出してくれる。勝手な見解で失礼かもしれないが、ニール・ヤングのような孤高のオーラがあって本当に魅力的だった。そして、そのユニークさがより浮かび上がったのは、2曲目の"I Am The Walrus"であった。

e0093608_12564746.jpg これは個人的には「激燃え」したよ。とにかく、やっかいな曲。"Magical Mystery Tour"はすべてのサイケ・アルバムの中でも1,2位を争うだろうし、ビートルズ中期の代表曲を集めたベスト盤としてもゴキゲンだと思っていて、"Sgt.Peppers"よりも好きだ。ただ、その中のどの曲もライブでやるにはそれなりの覚悟と試練が待っているのだった。

 だいたいにおいて、この時期はビートルズというよりも、ジョージ・マーティンのオーケストレイションや音処理・ミキシングの異様さが際立つわけで、それをジョンやポールが意図していたかどうかはともかく、バンドよりもサウンドそのものが大きな比重を持っているのだ。

 で、どこまでやるかが問題。まずはチェロなどのストリングスとホルンのフレーズをコピーし、途中の意味不明なノイズをサンプリング、後はひたすら練習しながら、どこをどうするか整理していった。ただ、音色的にはビートルズのような過激なサウンドはむずかしかった。もちろん金と時間をかければ何とでもなろうが、今回のトライにはかなり満足している。現状の最善は尽くしたと思う。
 今聴くと、チェロのパートはかなり自由にやっており、譜面には書いてなかったのかもしれない。この時の奏者が実に優秀であり、よくビートルズを理解していたのかもしれない。フレーズだけ追っていくと、まるでヘビメタのリフのようで、カッコイイのだ。
 それと、極めてオンマイクで残響のない録音とその後のコンプレッサー処理によって、ますます異様な音質になっているわけで、こればっかりは実際に本物のチェリストにお願いしても再現はできないだろう。
 だから、とことんライブ演奏として楽しんだ。本当に楽しかったし、演奏しててワクワクのしっぱなしだったよ。こういう風にいろいろとやることが多く忙しい曲はキーボーディスト魂に火がつく訳よ。

 しかし、何と言っても、斉藤さんが日本語で歌い、終わり間際のコーダでは過激なギターを弾きまくってくれたのが、トドメになった。日本語訳を自らすることは、それなりのプレッシャーがあったと思うが、ギリギリのところで自らの個性とビートルズを両立させて、なおかつ単なるコピーに終わらず、ライブ・パフォーマンスの醍醐味を見せてくれたことは大いに賞賛したい。

詳細(4)に続く
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by harukko45 | 2006-11-06 16:45 | 音楽の仕事

 詳細(1)からの続き...

e0093608_12470100.jpg オープニングに続く、ソロ・コーナーのトップバッターは平川地一丁目。うー、若い。何しろ18と15の兄弟だからね。彼らはまず、"Don't Let Me Down"を歌った。正直、ここでこの曲を演奏できたのは、バンドとしても良かった。異常に緊張感のある内容とオープニングというプレッシャーの元だった"A Day In The Life"から一気に解放されて、のびのびしたかったからだ。それと、私としては歌うお二人が若いこともあり、この曲へのアプローチは最近になって発表になった"Let It Be~Naked"におけるバージョンをお手本とすることした。

 従来のテイクとどう違うかは、簡単に言えばテンポが早いこと(テープの回転をあげているらしい?)、それにより、全体にまったりしてルーズな良さがあった前テイクよりも、アグレッシブな仕上がりで若々しい印象になった(正確には前テイクの2日後の屋上ライブでのテイクがNakedに収録された)。そんな理由からということで、ドラムの古田君には"Naked"的なニュアンスで引っ張ってもらうことにした。
 また弟の直次郎君が結構炸裂した感じで歌ってきたので、作戦は成功。兄ちゃんの龍之介君もきっちりエレキ・ギターを予習してきて、リハではところどころ土屋さんにアドバイスしてもらったり、なかなか微笑ましかった(親子みたいな年の差ですから!)。
 後半の阿部義晴さんのフェンダー・ローズのソロはオリジナルに準じた感じのトライだったが、やはり本物の楽器のトーンが良い。この辺の阿部君のこだわり方はさすがだったな。彼の足下はまるでギタリストのように古いエフェクターが並んでいたし、ローズもきっちりアンプでならしてマイクで拾っていた。

e0093608_12471377.jpg 平川地の2曲目は同じ"Let It Be"がらみの"Across The Universe"。ビートルズ後期のジョンを代表する作品と思うが、当時の彼はどのテイクにも満足していなかったというこだわりの曲でもある。
 当初これも、"Naked"風のシンプルなサウンドにして、ほぼ二人だけのパフォーマンスでもいいと思ったのだが、彼らからはシェイカーとストリングスを加えてほしいとのリクエスト。たぶん、彼らはフィル・スペクターによる"Let It Be"のテイクをイメージしていたのだろう。

 私としては土屋さんにジョージ風のアプローチを是非加えてほしかったので、じょじょに広がりのあるサウンドになっていった。私はあまり大仰なストリングスはさけて、ストロベリー・フィールズ風のフルート音を多用してみた(フィオナ・アップルがそんなムードでこの曲をカヴァーしていたのを思い出した)。全体には直次郎君の素朴な歌声もあって、甘ったるい感傷的なムードに陥らず、ザックリいったと思う。

 だいぶ落ち着いたムードになってきたところで、平原綾香さんの登場。ミリタリー調の衣装にビックリ。彼女のイメージってどうしてもヒット曲の雰囲気に結びつけちゃうんだけど、もっと多角的にアーティストのことを見なくちゃいけないね。そして、リハの時に書いたように、彼女は実はR&B系の音楽も大好き。そんなニュアンスがよく出たのが、1曲目に歌った"In My Life"。

e0093608_12472626.jpg もちろん、"Rubber Soul"に収録されたあまりにも有名な傑作曲。だが、女性が歌うためにキーをAからDに変更した。故に、ビートルズのギターサウンドのおいしい部分は薄まった。だから、あえてオリジナル通りのアプローチはやめ、ドラムのサウンドも抑えめに、雰囲気は「Swinging London」のガールポップ風を目指してみた。少しサイケな(メロトロンのフルート音やヴィブラフォンのような)音色を加えたりしたが、オリジナルの良さからあまり遠ざからない世界でこの曲を成立できたのでは、と思っている。

 それに、綾香さんの歌い回しがソウルフルなので、ますます「あの時代」ぽくなったんじゃないかな。
 ジョージ・マーティンによるバッハ風の有名な間奏は、今回は上のパートを阿部君に、下を私と分け合って演奏した。正直、この部分だけで妙なプレッシャーをバンドが抱えるより、確実なアンサンブルを実現する方が良いと判断したからだ。

e0093608_12473934.jpg 平原さんの2曲目、"Mind Games"も"In My Life"同様キーの変更があり、やはりオリジナルにあるジョン独特の「深みにはまっていくような」ザックリしたロックにはなりにくかった。なので、こちらは完全にイメージを変え、しっとりとしたバラード風に始めてじょじょに盛り上がってオリジナルの世界に近づいていくことにした。ここでも、阿部君のフェイザーのかかったローズが効果的だった。たぶん、曲をよく知っている人には意外な展開だったかもしれない。が、元々ある曲の核心部分はアレンジの変更などにはビクともしないことを証明したような気がする。

 さて、ここでパックンマックン登場で少しなごんだ(?)ムードの後、押葉君がWhite Albumに収録されたヘビー・ブルーズ、"Yer Blues"を歌った。

e0093608_1252519.jpg ある意味、押葉君が歌う曲は「オレたちゃバンド」って感じになる。当然気合いも乗って来て当たり前。もちろん曲のせいもあるけど。だから、間奏をのばして私のオルガン、阿部君のローズ、土屋さんのギターとソロ回ししてそれぞれをフィーチャアすることにした。1968年にローリング・ストーンズが制作した"Rock'n Roll Circus"における、エリック・クラプトンやキース・リチャーズ、ミッチ・ミッチェルを率いたバージョンも参考にしながらも、かなり自由度を増してトリビュート・バンド色がよく出たと思っております。前半戦のパフォーマンスでは一番満足行く仕上がりだったかも。やっぱ、皆ロック好きね。変拍子だってオチャノコサイサイ、ニュアンス一発で最高に楽しかった。

 あー、また長くなりました。今日のところはこの辺で、...まだ続く。詳細(3)へ
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by harukko45 | 2006-11-05 23:11 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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