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詳細(4)からの続き。

 浅井健一さんを迎えて。

 浅井さんとのセッションはスリリングで面白い。彼は決め事をしっかり考えてきて、いろいろ試すタイプだが、実際の本番では、すでに違うアイデアが浮かんでいるように思う。だから、段取り通りにはいかない、予定調和ではないということ。私は、曲のポイント部分では必ず彼の動きと口元を見逃さないようにはしているのだが、それでも追いつけないところはある。
 でも、それはそれで楽しい部分でもある。裏切りは大事、裏切られるのも、これまた、いとおかし、だ。

e0093608_1656833.jpg 最初にやった"Come Together"は何気なくおなじみの感じで始まるが、浅井さんはギターでアヤシげなフィル・インを入れてくるので、すっきりと歌にはいかない。
 Aメロの1回目も本来よりもオクターブ下で歌い始めるから、ムードはグランジ系の感じに。2回目では通常通りに上がるので、ここでポールがやっている下ハモが付けられる。このハモりのセンス、いつもながらではあるが、ポールにしびれる。
 で、「カム・トゥギャダ~」で突入するサビは、頭のBmから全員で爆音でいけ!との指令は絶対。ちょっとやそっとじゃない、爆で激なサウンドで、どうせなら頭も振れ(これは私の勝手な解釈)。だが、1コーラス目はここは1回しか出てこない。
 再び、オクターブ下でささやくように歌うので、危険な感じが漂うのだが、途中から急に上がってサビ突入、今回は3回やれとの指令。もちろん、爆・激・音を全員で。

 この後はエレピのフレーズとギターのハモによる間奏なのだが、そんなものはおかまいなし。浅井さんはエレピのフレーズをそのまま横取りして、弾きまくる。で、ギター・ハモの部分もそのまま突っ張る。ここはコード展開して普段はDからAに行くのだが、そのままDで突っ張れ。思いっきりハード・コアな気分になってきた。

 だが突然、彼はマイクに近寄ってタムを連打するドラムスだけで3度目のAメロ部分を歌い始める。ルー・リードな感じもあるなぁ、結構好き。もちろん、サビの「Bm-A-G」は超ハードX3で。だが、「オーヴァミー」で戻るタイミングは、わからない。ここで、ちょっとした事故発生。だから、どうした。その後は野となれ山となれ、なのだが、そこまででやりきってるから、意外にスパっと終わるのだ。ジョンの持つ、ナイーブさとの裏返しの過激さを、浅井さんは表現してくれた気がする。

e0093608_16562294.jpg ジャーンと終わって、そのまま次の曲のリフを弾き始める浅井さん。昨年もやった"Day Tripper"ではあるが、今回はテンポがぜんぜん速い。こうなると、かなりパンク色が強くなる。タンバリンを16分で振るのはチトやばい。でも、やっちゃったけど。
 サビのコーラスはすごく難しい。でも、キマルとすごくカッコイイのだ。普通に3度の積みだけど、ファルセットで高い。ポールじゃないとバシっと出てこない。ただ、ウチには押葉くんがいるから大丈夫。
 間奏のギター・ソロの後ろでB7のハーモニーがそのままEのダイアトニックで各自上がっていくのだが、ビートルズもそれぞれ「我が道を行く」感じになっていて、実にあやしいが、今回の我々もかなり混沌としていたかも。昨年はかなり整理整頓されていたが、今年はそんなにお行儀よくはいかなかったよ。


 ここで、バンド・チェンジ。斉藤和義さんが、自身のバンドとともに"Jerous Guy"と"Mind Games"をプレイ。斉藤さんは現在全国ツアー中で、リハのスケジュールが合わず、我々とのセッションはかなわなかった。実に残念だ、私は彼のファンだから。

 再び、鈴木京香さんが登場で、"Imagine"の詞を朗読。


 そして、奥田民生さんを迎えて。

 今年も奥田さんが選んだ曲は時間が短い。昨年の"I'm So Tired"が2分3秒、"Polythene Pam"が1分13秒。で、今年の1曲目の"Glass Onion"は2分18秒だ。

e0093608_17223692.jpg 確かに短いなら、何とかしてライブ・バージョンでも作るかと思うが、なかなかそう簡単にはいかない。
 ちなみにホワイト・アルバムを聴いてみて欲しい。かつては、玉石混淆の失敗作、というような評論があったものだが、実際にはビートルズの多彩さが見事に収められた傑作だと思うし、私の場合、このアルバムのどこから聴き始めても楽しめるし、どこかで聴くのをやめても、それほど申し訳ない(?)気がしない(何?)。
 つまり、「Sgt.Pepper」や「Abbey Road」のようにずっとハイ・テンションじゃなくてもいいということで、実に気楽に聴けて、満足感もあるって感じなのだ。

 で、肝心の"Glass Onion"、かっこいい曲じゃないか。歌詞にある「ウォルラスはボールだった」がとかく話題になったが、それよりも"Strawberry Fields""The Warlus""Lady Madonna""Fool On The Hill""Fixing A Hole"とビートルズの曲名がたくさん出てきて、それだけで楽しい楽しい。要は、ビートルズ研究家達をからかったジョンお得意の「おふざけ」に違いない。

 そして、このベースを聴け、だ。ポールすごいっす。これはホワイト・アルバム全体のベース・サウンドに言えますがね。このベースのかっこよさを楽しむためには音が明解になっているステレオ・バージョンをおすすめする。ただし、ヘッドフォンで聴いておくれ。

 それと、ジョージ・マーティン・アレンジのストリングス。たいした事やってるわけじゃないけど、やけに耳に残る。エンディングでのサスペンス映画風のストリングスも効果満点だ。元々はサウンド・コラージュが入っていたようだ(Anthology 3で聴ける)が、これはボツで正解。

 もう一つ、3コーラス目の歌詞「Fool On The Hill」のくだりで、わざわざリコーダーをダビングしているという細かさ、周到さにもおそれいる。1コーラス目の「Strawberry Fields」コーナーではメロトロン(フルート)をトライした(これもAnthology 3)ようだが、これもボツ。ポルタメントのストリングスの方が断然いい。
 こういうこだわり方をチェックしていくと、なぜ、このアルバムがビートルズ崩壊のきっかけのように言われるのか、わからない。少なくとも、音楽を作ることに関してのジョンとポールの熱意は凄いし、ちゃんと協力しあっている。

 と、ずいぶん長くなったが、つまり、"Glass Onion"はこの長さで十分に言いたい事を言い切っているし、やりたい事やりつくしている、と言いたい。だから、何も足さないでいい。奥田さんのルーズでいながら、ノリを効かせるボーカルはこの手のシニカルな曲にピッタリなのだ。

 ところで、ホワイト・アルバムを一つのメドレーとしてとらえて、アナログ盤の感じで4曲としてライブでやったら面白いだろうなぁ、なんて。おお、いまさらだが、去年やった"I'm So Tired"とつなげてメドレーにしても良かったか?!うーむ。

e0093608_1853689.jpg 2曲目の"Little Child"は1分50秒。さすがにこれはまずいか?

 ということで、エンディング前をブルーズ・コード進行にして、長田くんと奥田さんとで何回か回すことにした。でも、それほど引っ張るつもりはなかった。が、なんと、本番では突然、ステージ袖から「のばせー!」を表すジェスチャーをスタッフが懸命にやっているではないか!
 何事か緊急事態の発生か? とにかく、これは引っ張るしかない。で、奥田さんのギターソロはかなり長くなった。OKの合図が出るまで、やり続けたから、最後はバンド全員大笑いになったけど、奥田さん、お付き合いいただいて本当に感謝しています。ありがとうございました。
 ところで、いったい何が起きたのかは、全く知らない。後がスタッフに聞くつもりが、全てが終わったときにはすっかり忘れてしまっていた。いやはや。

詳細(6)
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by harukko45 | 2010-12-31 00:40 | 音楽の仕事

詳細(3)からの続き。

 LOVE PSYCHEDELICOを迎えて。

 東京スカパラダイスオーケストラの演奏("I Feel Fine"、"Starting Over")、声の出演での吉永小百合さんの朗読、箭内道彦プロジェクトの演奏("How?")が終わり、再び私たちはステージヘ。

 デリコのお二人は3年連続で、我々トリビュート・バンドと競演してくれている。で、いつも彼ら好みの南部風のアレンジでまとまっていく。やったのは"Stand By Me"と"Help!"。

e0093608_2131431.jpg ロックンロール・オールディズをカヴァーしたアルバムとして屈指の名盤と言える傑作「Rock'n' Roll」はサイコーすぎて、何も付け加えることはない。みんなで楽しく聴きましょう。そんでもって、いかにジョンが天才ボーカリストで、最高のロックンローラーかを知りましょう!ハイ、終わり。

 ところが、このアルバムが完成するまでにはさまざまな紆余曲折があったことを最近知り、その複雑怪奇な内情については、別冊カドカワ特別編集による「ジョン・レノン 夢の絆」の全アルバム解説にくわしいので、ぜひご覧になっていただきたい。
 とにかく私が言いたいのは、いろいろグチャグチャあったのにも関わらず、中味は素晴らしいということ。

 デリコのナオキくんは、セッションしながらのヘッド・アレンジで作り上げていくが、それでも結構細かくこだわって仕上げていく。だが今回は、割とラフな感じで、ジョンのバージョンにもあまりこだわらずにやることにした。「何気ないムードから、自然発生的にジャムが始まる風にしたい」ということだったからだ。
 おかげで本番では、そこまでの緊張感から解放されて、実にリラックスした気分になった。会場の方もスカパラの熱演で、ずいぶん温度が上がってきていたから、バッチリのタイミングだったと思う。

e0093608_2511253.jpg もう1曲の"Help!"は、2006年にNHKの番組テーマ曲として発表したバージョンを参考にした。だから、ビートルズの原曲からはずいぶんとアレンジされた仕上がりに。最終的にはナッシュビル風カントリーロック調になったが、ナオキくんのギターのキャラからして、ワイルドな感覚はちゃんと残りましたな。もちろん、クミちゃんのボーカルはカントリー・ニュアンスがいっぱいで良いのです。



 鈴木京香さんによる詞の朗読"Love"。

 そして、ゆずを迎えて。

e0093608_3202820.jpg ゆずは2年ぶりの登場。この時期、彼らは多忙であり、我々との競演は1曲に集中したいとのことだった。で、選ばれたのは"Don't Let Me Down"。ただし、キーはEからFに上がった。ゆずは声が高いのだ。

 前回の時は、1コーラスぐらいを二人だけで始めて、じょじょにバンドが加わるというアレンジをやっていたのだが、今回の曲ではオリジナル通りにやる方向でまとまった。
 我々にとっては慣れた形で出来るのでありがたいのだが、やはり、冒頭に「ゆず」らしい色が出た方がよいと思ったところ、当日までに何かアイデアを出してきますということだった。

 で、本番では北川くんが、亡き忌野清志郎さんを偲ぶように、清志郎さんが日本語作詞した"Imagine"の一部を歌う事になった。これに続けて"Don't Let Me Down"へ入ったわけである。なかなか、素敵な導入部になったが、当日のリハ前に突如として思いついたらしい。

 また、エンディングではエレピによる有名なソロがあって終わるのだが、岩沢くんがハーモニカを吹くことになり、もう1コーラス増やし、プラス北川くんと押葉くん、私でコーラスをつけた。これもかなりうまくいったのではないかと。
 この曲はかならず毎年登場するが、何度やっても飽きない。やはり名曲だからね。

 ただ、1曲で終わってしまったので、会場のゆずっこの皆さんから「エーッ!」の声が。私ももうちょっとやりたかったです。

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by harukko45 | 2010-12-30 03:57 | 音楽の仕事

詳細(1)の続き。

 Bonnie Pinkさんを迎えて。

 オープニングで歌ってくれた3人とともに、Bonnieさんもすっかり常連。女性アーティストではデリコのクミちゃんとともにこのところ毎年参加してくれている。
 でもって、いつものことながら、コンサートの流れの中でいい感じのフックになってくれる存在だと思っている。それは、ビートルズが持っていた類いまれなる「ポップ感覚」を、自然に表現できる数少ない一人だからだ。
 で、そんなBonnieさんが選んだ2曲はサイケデリック時代のビートルズの名曲。これには個人的に大いに燃えた。正直、今回のハイライトが始まってすぐにやってきた気分である。

e0093608_2315372.jpg かつては、世界最高のポップ/ロック・アルバムと評されていた「Sgt.Pepper」は、時代が過ぎるにつれ、じょじょに人気と評価が急落していった。確かに私もすっかり聞かなくなって、ビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」や「Smile」の方を神格化する感じになったことがある。
 だが、今は「Pet Sounds」も「Sgt.Pepper」も大好きだ。特に昨年のリマスターによるモノ・バージョンの「Sgt.Pepper」は本当に素晴らしい。あらためて、このアルバムの偉大さを再認識したし、再度「ビートルズの最高作」としても良いと思っている。それに、今は「Sgt.Pepper」13曲だけでなく、"Strawberry Fields"と"Penny Lane"のモノ・バージョンを最初に置き、"A Day In The Life"の後にアルバム「Magical Mystery Tour」のステレオ・バージョンをつなげておけば完璧なる「サイケデリック・マスターピース集/ザ・ビートルズ'67」となる。この場合、頭においた大傑作2曲がだぶるが、モノとステレオでの違いを楽しめばよい。アルバムとしては「Sgt.Pepper」はモノを、「Magical...」はステレオが好きだ。

e0093608_1131068.jpge0093608_1122638.jpg ちなみにこれはビーチ・ボーイズにも言えて、「Pet Sounds」の後に"Good Vibrations"と"Hero And Villains"、そして"Surf's Up"を続けたいのと同じだ。
 おっと、これでは横道にそれてしまいますなぁ。失礼。
 


 さて我々は、1967年のビートルズから"Lusy In The Sky With Diamonds"と"All You Need is Love"を演奏することになった。この2曲はバンマスの好みを強く反映して、ほぼ「カンコピ」である。ただし、女性ボーカルだからキーは上がった。それ以外はオリジナルの世界を出来るだけ忠実に再現する方向になった。

 まずは、もう一人のキーボードであるフジファブリックの金澤くんが、最高にシビレるサウンドで"Lucy"のイントロを再現してくれた。感謝感激である。元はローリー・オルガンをポールが弾いたものだが、今回の金澤くんの作ったサウンドも負けていない。いきなり67年にタイム・トリップしたかのようだったよ。
 で、イントロで流れるキーボードのワルツ・フレーズはボーカルのラインと良くからんでいて、実に素晴らしい。その裏でルートを弾かないベースとシタールがビヨーンビヨーンとうごめいていて、続くブリッジではワウがかかったジョージのエレキがメロディをユニゾンするのだが、これはまさにインド音楽風。
 そして、誰もが燃えるフロア・タム3発をきっかけにサビは4拍子の8ビートに展開。ジョンの挑戦的な曲作りがサイコーにかっこいい。そんでもって、サビのボーカル・ハモのパートは天にも昇る気持ちよさ。

e0093608_2153349.jpg 一方の"All You Need Is Love"は私が忙しい。金澤くんにはコンプレッサーのかかったようなピアノ・サウンドでベーシックなパターンをお願いしたが、これがかなり良く、モンキーズの"Daydream Believer"風でもあり、ますます私好みな展開。かなり趣味的でしょうか。いや、これでいいのだ!
 なので、他のオーケストレーション部分は私が。イントロのブラス、Aメロのストリングスからサビはトランペットが「パーッパ、パー」でボーカルの合間にサックスの「バッパバララ」、ギター間奏後半のヴィヴァルディ風のストリングス、そして、エンディングではバッハ・トランペットとグレン・ミラーにグリーンスリーヴスと来たもんだ!こりゃ、楽しくってたまりません。これで、コーラス・パートも歌えたらサイコーだったのだが、さすがにそこまでの余裕はなく、これはドラムのシータカくんにお願いした(それにしてもこのサビのコーラスはかっこいい積みだ。彼らの才能に脱帽)。

 それと、Bonnieさんのキー指定がともにB♭になったのも大いにラッキーだった(オリジナルは"Lucy"がA、"All You Need..."がG)。つまり、同じキーなので、自然とこの2曲をつなげたくなり、その感じでリハしているのをBonnieさんが聞いて、気に入ってくれたのだった。これで、サイケ・メドレーがご機嫌にも出来上がった。心の中で万歳三唱であった。

 本番では明るく、パーティ感覚で大いに楽しむことを全員で心がけた。"All You Need..."もあまりルーズなノリになりすぎないようにして、ライブならではのガッツと後半のカオスぶりを強調するようにした。ギターの長田っちは逆回転風のギター・ソロを注入してくれたよ。

 いやぁ、派手で面白かった。Bonnieさん自身が前からやりたかった2曲だということだったから、ほんとにとことんやって大いに満足したのでした。それに、彼女のセンスの良さや洗練されたキャラも生きる内容だったと思っております。

詳細(3)
 
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by harukko45 | 2010-12-29 02:20

詳細(8)からの続き

 ようやく最終回に辿り着き、何とか年内に終わる事ができました、やれやれ。で、(9)でまとめることもできましたわい。

e0093608_15522614.jpg オールラインナップによる恒例のオノ・コードのパフォーマンスから"Happy X'mas"へ。今年も吉井和哉さんの歌いだしでスタートした。
 私がこのイベントに関わり始めた頃は、この曲はロック・ファン、ビートルズ・ファンには有名ではあっても、一般的にはクリスマス・ソングとしてそれほどの認知はされていなかったように思う。だが、いまや12月になると、日本の街中でも何度もこの曲が流れるようになり、すっかり定着してきているのだった。
 また、武道館の前日にはフジテレビの「SmapXSmap」にてヨーコさんとSmapのコラボによる"Happy X'mas"がオン・エアされた。その時のバック・トラックは我々トリビュート・バンドが受け持った。
 とは言え、この曲のメッセージである「War Is Over, if you want it.」はまだまだ人々の中に十分浸透してはいない。だから、ヨーコさんを始め私たちは、これからもずっと歌い続けていかなくてはならない。

e0093608_15293480.jpg 続けて、ジョン・レノンの音楽のメイン・テーマであり、その象徴とも言うべき曲、"All You Need Is Love"を。
 今回は、ビートルズ・バージョンではなく、ブリティッシュ・ロック界の第2世代であるポール・ウェラーとノエル・ギャラガー(ノエルは第3世代だな?)によるバージョンでやってみた。
 サイケデリック色濃厚で、いろいろな要素が満載のオリジナルに比べ、大変シンプルでわかりやすいアレンジだが、その分骨太の力強いロックとして、この曲の新しい魅力を引き出していると思う。押葉くんのナイス・チョイスで、私も聞いてすぐに気に入った。
 実にライブ向きで、すごくノリがいいので、ひょっとするとこの感じはこれからの定番パターンになるかもしれない。

 この曲のエンディングから、"Give Peace A Chance"のサビへつないだ。

e0093608_17323210.jpg そして、最後はいつものように"Imagine"。
 ジョンとヨーコの「ラブ&ピース」は30年以上経っても、全く色褪せない。ノーベル平和賞をオバマに与えるのと、どちらが意義深いだろうか。また、先日のCOP15において、自らの国益しか主張しない政治家達は本当に優秀と言えるのか。中国はオバマの顔をつぶして喜んでいる場合か?
 まだまだ世界に平和は来ないし、愛も足りない。だからこそ、微力ながらこのようなイベントを通じて、少しでも「ラブ&ピース」の精神が理解され、多くの人々に広まって行く手助けになればと心から思う。

 さて、今年も無事にこのイベントを終えることができて、ホっとしている。回数が増えるごとに、自分の力の足りなさを感じ、それでも何とかやれているのは、バンドのメンバーのみならず、多くのスタッフのおかげであることをつくづく思い知る。
 このイベントのために現場スタッフ達は前日から徹夜で作業してくれていた。心から感謝の意を表したい。

 このブログで毎回、あーだこーだとアーティストや曲について語っているが、それを実際に実現させるには、ほんとに多くの人の労力がなくては絶対に無理なのだ。今後はもっともっとそういう一人一人に感謝の気持ちを抱きながら接して行かなくてはならないと思う。

 来年はジョン・レノン没後30年で、スーパーライヴも10回目となる。いろんな意味で重要な年になるに違いない。来年の12月に再び武道館のステージに上がれるように、まだまだ切磋琢磨していかねば。

 ここまで、長々とお読みくださってありがとうございました。そして、皆さんの2010年が良い年でありますように、心よりお祈りします。
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by harukko45 | 2009-12-31 18:25 | 音楽の仕事

詳細(7)からの続き

 吉井和哉さんを迎えて

e0093608_532089.jpg 今回、吉井さんは全曲ギターを弾きながら歌うということだった。曲はこれまで何回かやっている曲が含まれるものの、サウンド面では多少変化があった。
 "I'm Losing You"は吉井さんの定番曲となっているもの。私も2005、2007年の時に演奏しているが、今年は吉井さんのギターが加わって、豪華なトリプル・ギター・サウンドとなった。
 また、キーを3曲とも半音下げたので、これまでよりも全体に野太い感じになった。特にこの曲の場合、男っぽさが強調されたブルーズとして仕上がったように思う。

 しかし、これはある意味ウォームアップ曲だったと言ってしまおう。次の"Yer Blues"がやはり今回の目玉として強力だったからだ。

e0093608_5171762.jpg 1968年のホワイト・アルバムに収録された"Yer Blues"。この当時のイギリスではブルーズ・ムーブメントが起きていて、誰も彼もがブルーズをやり始めていた。ジョンはその「猫も杓子もブルーズ・メン」状況をおちょくって書いたのがこの曲だと発言している。

 また、「インドのきれいな景色のなかで書いた曲なのに、世界で一番みじめな曲ができた」「神に近づこうとして自殺でもしかねない気分を歌った」とも語っている。
 "I'm So Tired"と共通する、マハリシのもとでの修行生活の辛さからくる心情の吐露と言えるが、先の「疲れた」から、こちらでは「寂しくて死にたい」とまで歌っているので、症状はかなり深刻だ。
 
 だが、ブルーズの締めでは「If I ain't dead already, Ooh Girl, you know the reason why? (もし僕がまだ死んでいないとしたら、君はその理由を知ってるだろう?)と歌い、これはヨーコに対して「僕がまだ死なずにいるのは君がいるからだ」と告白しているのだ。なるほど、押葉くん流に言えば「これ以上ない殺し文句」であり、ヨーコだけが自分を救ってくれるという意味になるのだろう。

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 そして、もう一つ解明しておきたいことは、「今すぐ自殺したい気分だ。ディランのミスター・ジョーンズみたいにさ。」の歌詞で、このMr.Jonesはボブ・ディランの「やせっぽちのバラード("Ballad Of A Thin Man")」に登場する人物で、ディランの詞では「ここで何かが起きてるのに、あなたは何なのか知らないんだから。そうでしょう? ジョーンズさん」となっている。

 歌詞の部分ではかなり落ち込んだ内容であるが、実際にレコーディングされたサウンドはワイルドでありながら、ビートルズの一体感が感じられるご機嫌な仕上がりだ。ジョンの「肩が触れ合うような距離で演奏する方が音楽のパワーが増す」との言葉通り、スタジオ脇の小さな部屋に4人が一緒に入ってレコーディングされたのだそうだ。
 また、一応ブルーズ進行ではあるが、やはりそれだけでは我慢できないジョンは、いかにも彼らしいワナやら仕掛けをほどこしていて全く飽きさせない。譜面として書くと、いろんなところに変拍子が入ってくるし、8分の12ビートから4分の4のシャッフルに変化するあたりのアレンジは、かなりクールでしびれるのだった。
 
e0093608_646462.jpg だだ今回、吉井さんはローリング・ストーンズが中心になって収録されたTVショウ「ロックンロール・サーカス」に出演した時の、ジョン・レノンのスペシャル・バンド「Dirty Mac」(ジョン、エリック・クラプトン、キース・リチャーズ、ミッチ・ミッチェル)によるバージョンをベースにしたいとのことで、オリジナル・スタジオ・テイクよりもテンポ・アップしてやることにした。
 確かに、ライブでやる場合は、この方がヘビーになりすぎずに良かったと思う。吉井さんには「このぐらいでやった方が、お客さんには聞きやすいはず」との配慮があったのだ。

 そして、何より良かったのが、吉井さんが自らの日本語訳詞で歌ったことだ。当日ぎりぎりまで英語にするか日本語にするか悩んでいたようだが、当日のリハで合わせてみたところ、日本語でのインパクトが強烈だったので、文句なくそちらに決まった。おかげで、かなりリアリティのある吉井"Yer Blues"が完成したのだった。

 さて、3曲目で本編ラストは"Help!"。もちろん、バラード・バージョンである。今回は彼がギターを弾いたので、これまでピアノでやっていた部分を吉井さんの弾き語り風に変更した。ある意味、これはこれでファンにはたまらないシーンだったかもしれない。
 この曲に関しては、すでに2007/2008年の時に、いろいろ書いてきたので、何も付け加えることはない。もはや吉井"Help!"として完全に確立されたオリジナルと言って良いだろう。
 我々もこの曲をやると、本編最後のクライマックスと感じるようになっていて、「ついに今年もここまで来たか」と思うのだった。
詳細(9)へ続く
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by harukko45 | 2009-12-31 06:55 | 音楽の仕事

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 箭内道彦さん演出による忌野清志郎さんの映像が約20分間流れた。2005年と2007年におけるスーパーライヴでの"Imagine"のパフォーマンスが続けて映し出された。
 冒頭の特殊技術による清志郎さんの姿に、「本物がそこに」と思われた人も多かっただろう。私もリハーサルの時に見てビックリしたし、いたく感動した。

 2005年のドラムとアコギのみでの時も、2007年のチャボさんらを率いたバンドの時も、私はステージ袖からずっと見ていたし、本当に素晴らしいパフォーマンスだった。そして、今回の映像を見ても改めてスゴい人だったことを思い知る。今では、2007年の終演後に少しお話できたのが、最高にいい思い出だ。

 続いて、泉谷しげるさんがラブ・サイケデリコの二人とともに登場。

 清志郎さんの後をおまかせするには、泉谷さんしかいない。そして、そんな思い以上に泉谷さんの"Working Class Hero"は凄かった。

e0093608_22311460.jpg 泉谷さん自身の日本語訳詞による"Working Class Hero"については、何も言う事はない。これまで私が知る中でも、最高のパフォーマンスの一つであったと思う。
 泉谷さんのかき鳴らすアコギのザクザクした響きからして素晴らしかったし、その歌、うなり、叫び、語り、全てが飛び抜けていた。本当に感動した。
 70年代の本物のフォーク・シンガーの生き残り、まさにボブ・ディラン直系などと言ったら、泉谷さんにバカヤロウと怒られるかもしれないが、失礼を承知で大好きなディランに重ね合わさせてもらう。とにかく、本物にしかできないものを聞かせてもらった。

 そして、我々トリビュート・バンドもバッキングに加わって、"You've Got To Hide Your Love Away"を2曲目に。
e0093608_2246569.jpg 前曲の緊迫感ある凄みとうってかわって、大いにはしゃいでお客をいじりまくる泉谷さん、会場は大受けだったなぁ。この曲のサビを会場中で歌うとは思わなかった。もちろん、打ち合わせなんかありません。だから、「こら、バンド!お前らの音がでかすぎて、客の声がきこえねぇんだよ、バカヤロウ!」となりました。
 もちろん、元の曲は良い曲なんですよ。でも、ここは全て泉谷さんにお任せして、楽しい現場に連れて行ってもらいました。ありがとうございます!

 忌野清志郎さんといい、泉谷さんといい、ビートルズ云々をひとまず横において、彼ら自身について語りたくなるアーティストというのはやっぱり素晴らしいんですよ。

 終演後、ちょっとだけお話できて、"Working Class Hero"には参りました!と絶賛すると、「あれだけはキメなくちゃいけないもんね」と。「後は、客をいじくるのは俺しかいないと思ってさ」とも。

 ヨーコさんもパーティの席で泉谷さんに「あなたはスゴイ!」と声をかけられたとのこと。それにつなげて「少し図々しいヒトだわ」とも。
 泉谷さんご自身のブログにもこの日のことや、"Working Class Hero"の日本語詞が掲載されているので、要チェックです。

2009年12月08日 ワーキングクラスヒーロー!
2009年12月09日 HAPPY~X'mas !

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by harukko45 | 2009-12-30 23:05 | 音楽の仕事

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 奥田民生さんを迎えて

 奥田さんは2003年のスーパーライヴの時に"Rain"をカヴァーし、その「通ぶり」を示したが、今回もそれに負けないマニアックな選曲をしてきた。
e0093608_17254032.jpg 1968年の「The Beatles(White Album)」に収録された"I'm So Tired"。ジョンがもっとも好きな作品の一つであると言う曲。
 インド滞在中に書かれており、その時のマハリシ・ヨギとのインド生活がよっぽどひどかったのだろう。とにかく「疲れ果てた、疲れ果てた」と連発していて、その率直な心情にけだるいサウンドがピッタリとはまっている。

 だが、さすがジョン・レノンはただただ「疲れた」とダラダラするのでなく、ちゃんと聴き手の期待に応えるサビを作ってくれた。「You'd say I'm putting you on.」からのくだりは、今聞くとニルヴァーナの"Smells Like Teen Spirit"あたりにまで通じるような、何ともやりきれない感覚や自暴自棄的な危険さを内包しているようにも思う。
 そして、「僕が持ってるものは全てあげるから、わずかな心のやすらぎを与えておくれ」とシャウトしてカットアウト。「切れかかった」何かは一瞬の爆発後に、再び「けだるさ」に戻ってしまう。

 もちろん、時代背景やアーティストとして熟成度も違うから、簡単にジョンとカート・コバーンに共通点を見いだそうとしても、あまり意味がないだろうが、「ゆるさ、だるさ」から急激に「尖って」「爆発する」ロック特有のスタイルは確かに存在する。そして、ツェッペリンやピンク・フロイドのような音楽的に高度で難しい表現ではなく、技術的には簡単に出来て、なおかつカッコイイことが重要だ。「これなら、俺にも出来る」的感覚が多くの若者に刺激を与えるのだ。

 奥田さんは「ゆるさ」が魅力だけに、この手の表現は最高にキマる。それでいて、彼は破壊的な音にはけっしてならない。どこかに、こちらをホっとさせるリラックス感を持ち合わせているので、長く楽しめる。演奏時間は2分程度だが、中身は濃い。

e0093608_18341334.jpg 2曲目はもっと短い曲。ビートルズの歴史の最終章を飾る傑作「Abbey Road」、そのB面に配置されたあまりにも素晴らしいメドレーに含まれていた"Polythene Pam"。
 正直言って、"You Never Give Me Your Money"から"The End"までのメドレーは本当に素晴らしいので、その一部を切りはずしたり、カットしたりするのはかなり強引だし、なかなかうまくいかない。ポールが1990年に来日した時に、ジョンの曲を外してメドレーの後半を演奏したが、確かにライブでアビーロードを聞けたことはうれしかったものの、やはりちゃんと全てを再現できていない不満が残った。

 そもそも、このメドレーの制作はテープ編集によるようなものではなく、録音前にきっちり考え抜かれて構成させていたようで(一部、"Mean Mr. Mustard"と"Polythene Pam"の間にあった"Her Majesty"は後日カットされたとのこと)、実際のレコーディングでも続けて演奏されたのだった。だから、どうやったって"Polythene Pam"は1分13秒で終わりなのである。

 というわけで、私としてはいくらなんでも1分そこそこで終わらすわけにはいかないので、奥田さんが来る前にいろいろとアレンジをしてはバンドでためしてもらったのだが、どうもしっくりこない。なので、半ば放り投げた状態で、奥田さんを迎えてから相談しようと思った。
 が、何の事はない、奥田さんは来て、バァーと歌って、グワァーとギターを弾きまくって、再びギャーと歌って帰ってしまった。「あんまり頭で考えすぎないで、とにかくプレイしましょうよ」って感じ。
 ほんと、そうだった。自分がコチョコチョと小さな視点で曲を捉えすぎていたことに、ハっと気づいた。たとえ荒くてもいい、何か力強いものをシンプルにやりたい。
 だから、何も決めなくても皆でセッションするうちに、自然に始まり自然に終わったのだった。この時のセッションの後、どんなに気持ちがすっきりしたことか。

 さて、とは言えその後、何かとしつこい私は、このシンプルにやり切る"Polythene Pam"の良さを生かしつつも、もう一味付け加えたい気持ちになった。それは、オリジナルでもダビングされていたギターソロで聞かれるパーカッションの存在だ。たぶん、クラベスとタンバリンにシェーカーってあたりだろうが、よりライブ的に強調する意味で古田くんとも相談した結果、ジャンベをローディの佐藤君に叩いてもらう事した。加えて、タンバリンを同じく楽器担当の重鎮、小竹さんに頼み、私もクラベスで参加することに。
e0093608_215045100.jpge0093608_21505623.jpge0093608_2151739.jpg イメージとしてはローリング・ストーンズの"Sympathy For The Devil"、ザ・フーの"Magic Bus"、スペンサー・デイビス・グループの"I'm A Man"のリズム。私個人は"Magic Bus"でのキース・ムーンのクラベスめちゃくちゃ打ちをやりたかったのだ!
 これは、すごく良かった。音楽的にも気分的にも盛り上がって、オリジナルよりも倍以上の時間を確保しつつも飽きない内容になったと思う。

 ここまで書いて、昨年のスーパーライヴに出演して、素晴らしいパフォーマンスを観せてくれたフジファブリックの志村正彦さんが亡くなったことを知った。29歳での急逝はあまりにも早く、驚きとしか言いようがない。志村さんが奥田民生さんをリスペクトしていたことも知られている。とにかく、心よりご冥福をお祈りしたい。

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by harukko45 | 2009-12-30 19:31 | 音楽の仕事

詳細(3)からの続き

 のんびり書いているとこりゃ年を越してしまうわい。ちょっと、急ぎます。

 松山ケンイチさんが登場。さすがにすごい人気ですなぁ。あまりに歓声が大きくて、なかなか集中しずらかったかも。でも、俳優として今が旬の売れっ子だけに、いったん朗読を始めれば独自の世界を作る。まずは「Love」の朗読。私と土屋さんだけがステージに残り、彼のきっかけの言葉を合図に"Love"のメロディをさりげなく奏でた。

 続いては、今回唯一のバンドとしての参加だった、ROCK'A'TRENCH のステージ。彼らは元々スカ/レゲエ系のバンドとしてスタートしているが、今回はそこだけにこだわらない姿勢も見せる選曲で、"Lusy In The Sky With Diamonds"と"Woman"をカヴァーした。"Lusy..."はオリジナルに近いサイケ的な骨太ロックに。方や、"Woman"はブラック系のハネたビートで大胆にアレンジして、ニューソウルっぽい仕上がりが面白かった。

 そして、ラブ・サイケデリコの登場。彼らは、このイベントではすっかりおなじみであり、いつもアーティスト同士の橋渡し的な役割も引き受けてくれる素晴らしい二人。
 で、昨年に引き続き、まずは二人だけで"Dear Yoko"を歌い、2曲目の"Jealous Guy"でトリビュート・バンドがバックについた。

e0093608_011561.jpg ジョンの作ったバラードの名作である"Jealous Guy"をナオキ君は彼好みのナッシュビル風にアレンジしてきた。
 昨年、"Watching The Wheels"で競演したのがすごく楽しかったとのことで、今回も同様の方向性でまとめることになり、ナオキ君のアイデアをベースにスタジオでセッションしながらじょじょに作って行った。
 なので、オリジナルにあるナイーブで憂いのあるバラードの世界ではなく、全体に明るいトーンでリラックスしたムードに仕上がった。結果として、ザ・バンドのようなサウンドになるのが個人的にはうれしい。
 今年のスーパーライヴ全般に通じる「アット・ホーム」な感覚は、このデリコとのセッションあたりで顕著に現れていたと思う。それにしてもデリコの二人は年々包容力を増して、大きくなっているなぁ。

 続いて、浅井健一さんを迎えて。

e0093608_1154843.jpg 70年代初期のジョンは刺激的な作品だけでなく、美しいバラードも多く残してくれた。先の"Jealous Guy"しかり。そして、「Plastic Ono Band」に収録された"Love"は、愛の概念を短く書き綴った歌詞が素晴らしく印象的であり、これが松尾芭蕉の俳句からの影響だというのだから驚く。
 そのせいか、この曲には独特の世界が漂っていて、確かに東洋的な静謐なムードというか、茶や禅にも通じるようなものを感じるのだが、それは大げさだろうか。ジョンのボーカルは優しさにあふれているが、無駄を排したメロディと詞、サウンドが不思議な緊張感を生んでいることも間違いない。

 なので、浅井さんには実にふさわしい曲であったと思う。彼は、静かなピアノとのパートから、じょじょにギターやベース、ドラムスを加えて音圧を高めたが、かといって、ただのパンク指向の激情的な表現になるのではなく、あくまでも内面で燃えるものに留めているあたりがさすがだった。
 そして、再びピアノが奏でる"Love"のメロディが終わり、浅井さんはすぐさま有名なギターリフを弾き始めて、次の曲につなげた。

e0093608_1442568.jpg その印象的なリフで始まったのは"Day Tripper"。1965年リリースのビートルズのシングルで、"We Can Work It Out"との両A面だから強力だ。
 最初はビートルズのオリジナル通りに合わせておいて、浅井さんとのセッションにそなえたが、浅井さんは独自のアイデアを持っていて、まず1コーラスを1オクターブ下の音域で語るように歌い始め、2コーラス目から全員で突入することになった。また、ドラムのパターンを少し変えたりして、随所にこだわりを見せてくれたのだった。

 また、エンディングでは、彼にギターでソロを取ってもらいたかったので、お願いしたところ、慎重に考えながら、こちらが予想したものとは全く違うサウンドで聴かせてくれた。これは実にうれしい展開だったし、本番前のリハでも、この部分でのコード進行に新しいアイデアを持ってきてくれたのだった。

 それと、この曲はコーラスが結構やっかい。「Da~~~y Tripper. One Way Ticket ,Yeah!」からの部分はバッチリキマると最高にしびれるが、とにかく音域が高くて難しい。さすがビートルズ、特にポールの才能にはまいってしまうが、まぁ何とかやれたのではないかと思っている。間奏のギターソロのバックでの3声の「AH」はビートルズもアヤシい感じだけど、やっぱりこれも外せないんだよね。

 この後、トリビュート・バンドは長田くんを残して退場。長田くんはCoccoさんを迎えて、二人で"Out The Blue"を演奏した。
e0093608_21574816.jpg "Out The Blue"は「Out Of The Blue」で「突然に、思いがけなく」なんて意味になり、ヨーコさんとの出会いについての歌と言えるか。美しいアコースティック・ギターのイントロが実に印象的で、曲としても隠れた名曲の一つと思う。バンドでやっても最高に気持ちいい。なので、Coccoさんが次回、バンドのバッキングを望んでいただけたら、うれしいなぁ。
 それにしても、この二人はホノボノとして、とってもいい雰囲気だった。

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by harukko45 | 2009-12-30 02:22 | 音楽の仕事

詳細(2)からの続き

 Bonnie Pinkさんを迎えて
e0093608_1611284.jpg 毎回、洗練されたポップ感覚で、いいアクセントをつけてくれるBonnieさんは、今年も期待通りの「ホッコリ」を生み出してくれた。最優秀選曲賞があったら、間違いなく彼女に差し上げたい。
 1曲目の"Nobody Told Me"はジョンの死後、1984年にリリースされた「Milk And Honey」に収録されており、そのファースト・シングルとしてビルボード5位を記録している。

 ジョンは死の直前まで、ニューアルバムのためのレコーディングをつづけており、81年には「Double Fantasy」の続編として発表する予定だったようだ。だが、それはかなわなかった。よって死後、その時のセッション・テイクにヨーコさんの曲を加えてまとめられたのが「Milk And Honey」となる。
 というわけだから、ジョンの楽曲に関しては残念ながら、すべて未完成品だ。それと、60/70年代のジョンのイメージを第一に考える人々にとっては、この80年代の整いすぎたように思えるサウンド・プロダクションが当時はなかなか受け入れがたいものであったことも事実。
 なので、このアルバムを好きと表明する人はそれほど多くないかもしれない。

 だが、もう一度彼が残した最後の「新作」を聞き返してもらいたい。前作「Double Fantasy」がジョンの作品の中で、もっともマイルドで洗練された「大人な」サウンドだったのに対し、このアルバムでは再び、尖った感性で不良をきどり、やんちゃで皮肉っぽいジョンが随所に垣間みられるではないか。特に、"I'm Stepping Out""I Don't Wanna Face It"、そして今回Bonnieさんが取り上げた"Nobody Told Me"は曲としてもっと高く評価していい。

 さて、とは言え、この"Nobody..."はやはり未完成であることは間違いなく、そのままコピーしてやってもいろいろと不満の残るものだった。なので、リハではバンドのみで一度合わせた後に、ざっくりとアレンジを変えることにした。全体のポップな感覚は残しつつも、サウンド面では80年代のキラキラしたものでなく、ピアノを中心にした70年代風のシンガー・ソングライターっぽい雰囲気でやってみた。
 そこにBonnieさんがボーカルで加わった途端、まさにピタっとハマって、それまで「何だかなぁ」と悩んでいたことがきれいさっぱり消え去った。
 今では、この曲が大好きだ。Bonnieさんはさりげなく新しい扉を我々に開いてくれた感じだった。

e0093608_17102362.jpg MCなしで続けてやった2曲目は、ビートルズ初期のモンスター・ヒット・チューン"I Want To Hold Your Hand"。
 この曲がなくては、彼らのアメリカ制覇はなかったかもしれない。とにかく、ワシントンD.Cでのライブ映像における、この曲が始まった時のオーディエンスの尋常じゃない興奮した反応は、まさに革命が起きたかのようなインパクトを感じるし、そこでのビートルズのかっこよさったら!。私は何度見てもこの瞬間、身震いしてしまう。
 とにかくだ、ビートルズにとって、その後の彼らを大きく決定づける重要曲であることに間違いないし、文句のつけようのない傑作である。
 ちなみに日本でのビートルズのデビューがこの曲。アメリカでの熱狂ぶりが影響し、急遽"Please Please Me"から変更され、第1弾シングルになったという。

 で、何がカッコイイかといえば、まずイントロのギターリフのアフタクトで、拍を取り損ねる人多数。「Oh Yeah I'll(オーイェーアー)」と始まるジョン&ポールのダブル・リードが最高。ユニゾンのピッタリぐあいが素晴らしいし、ところどころでハモに転じるセンスがタマラン。
 Aメロの段階で、突然シャウトする「I wanna hold your hand!」にしびれない人は人生をやり直した方がいい。
 そして、ラテン風ともスタンダード風ともつかない「あま〜い」Bメロは、実はすっごく切ない。だが、彼らはそれをすぐに強烈に「I can't hide」で吹き飛ばす。ボブ・ディランが「I get high」と聞き間違えて、「ドラッグ・ソングだ」と勘違いしたのもわかるほど、興奮するポイントだ。

 また、全体のグルーヴも、この時期のビートルズ特有の「そんなに早くないテンポだが、スピード感がある」「常に前進性を失わずに、ゆったりとした8ビートを刻む」「ハネたノリと、ハネないノリの絶妙な使い分け」があって、最高に面白い。もちろん、当時の彼らは考えてこのようにプレイしていたわけでなく、ごく自然にこうなったに違いないし、ビートの歴史的変化という点でも興味深い。
 ロックのビートは時代が過ぎるにつれ、じょじょに簡単になり、60年代から70年代初期に多く見られたのようなミクスチャー的な感覚はどんどん失われて行ったのである。

 ただし我々は、キーをB♭に上げたので、微妙なニュアンスは変わった。ビートルズのような攻撃性は少し薄れたものの、Bonnieさんの声を生かしてキュンとした感じが強調されたと思う。
 例によって重要なコーラスでもオリジナル通りの積みではいけないので、押葉・土屋・和田の3人組でジョン&ポールのパートをひっくり返したり、分けたりして、頑張ってみた。これも楽しかった。

 そして、エンディングではドラムの締めに合わせて、全員で礼をすることに。これは、演奏よりも絶対に外せないこととして、Bonnieさんも含めたバンドの最重要課題としてのぞんだ。
 本番では、私などちょっと楽しくなりすぎて、危なっかしかったけど、きちんとお辞儀には間に合ったと思うよ。

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by harukko45 | 2009-12-29 17:57 | 音楽の仕事

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 GOING UNDER GROUNDの松本素生さんを迎えて

e0093608_16151250.jpg 松本さんは外見に似合わず(失礼!)、実に爽やかで良く通る声がいい。それに、その表現にはとてもナイーブな一面を感じさせる。私はこのイベントで何回か"Don't Let Me Down"をやらせてもらったが、今回が一番うまくいったように感じた。
 それは、我々トリビュート・バンドのメンバー達がただの寄せ集めでないレベルであり、一つの固まりとして、私たちならではのサウンドを作り出していたからだった。土屋さん、古田くん、押葉くん、和田の4人は2005年からの付き合いであり、十川さんも2007年から、長田くんも昨年から、とメンバー同士の気心があってきたことが大きい。それぞれ会うのは一年ぶりだったりするが、何となく「我が家にお帰り」的感覚が今年は強く感じられたのだった。

 特に、この曲のようなシンプルなサウンドで、それぞれの個性が生きるものでは、自分が思っている以上にこのバンドの「色」が浮かび上がってきたと思う。ビートルズの忠実な再現からスタートしながら、じょじょに各自が自分なりに昇華していく作業こそ、まさにバンドをやる醍醐味と言える。

 そこに、素生くんの声がのってすごく気持ちのいいブレンドが出来上がった。

e0093608_16414958.jpg その素生くんの切ない感じの歌声がより生きたのは、"(Just Like)Starting Over"だった。この曲も選曲する人が多く、必ず毎回登場するが、正直、ジョンのテイクにある「ピュアさ」を出す事はなかなか難しく、それぞれの「再出発」を提示することになる。それはそれで良いし、新たな世界に導いてくれて楽しい。だが、オリジナルにある大事な「何か」をしっかり表現することも音楽家の大きな役割だと思っている。
 また、キーを高く変更したりすると、ジョンが目指した「プレスリー・ロックンロールの現代化(この当時は80年代化)」が出来なくなる。ギターやベースのサウンドがどっしりしなくなり、ピアノでのオールディズ風な3連刻みがやけに可愛いらしくなってしまう。なので、意識的にアプローチを普通のシャッフル・ビートに変えてやったりもしていた。

 が今回、オリジナル・キーで、そういったサウンド面での制約がなくなったので、プレスリー・スタイルのアプローチが出来たし、女性コーラスのサンプリングも効果的に使うことが出来たのだった。これも個人的には大変うれしかった。

 私は押葉くんが歌う"Starting Over"が最も好きだが、今回の素生くんはそこにかなり肉薄するパフォーマンスをしてくれたと思うし、素生くんのピュアな音楽観にとても共感した。天才歌手ジョンの曲を歌いこなすのはすごく難しい。

 続いて、Leyonaさんを迎えて

e0093608_17231949.jpg Leyonaさんは独特の歌い回しで聴き手を魅了する人で、ブラックミュージック系のニュアンスを生まれながらに持っているような自然さがあって、すごく素敵だなと思った。
 彼女が歌った1曲目はおなじみの"Mother"。これも人気曲であり、これまでも何度も取り上げられてきたが、Leyonaさんは大胆不敵にもア・カペラでのパフォーマンスになると聞き、我々も最初驚いた。
 だが、実際にリハーサルでお会いし、そのカッコイイ歌いっぷりを聴くと、なるほど彼女ならア・カペラで十分に観客を虜にする力があると確信した。ただ、より彼女の登場を効果的にしたかったので、ジョンのオリジナルにある教会の鐘の音を流すことにした。これで、お客さん達も曲があの"Mother"であることがわかるし、その音の後に、何と無伴奏で歌われることがより刺激的になると思った。あの時、シーンと静まり返った武道館に、彼女の声と鐘が美しく共鳴しているのを感じたのだった。

e0093608_16271356.jpg 緊張感あふれる中、凛とした姿で"Mother"を歌い終わった後に、今度は我々バンドとともに実に渋い選曲、でも演奏してても聴いてても楽しくてゴキゲンな"You Really Got A Hold On Me"を歌ってくれた。

 この曲のオリジナルは62年のザ・ミラクルズのヒット曲で、当然作曲はスモーキー・ロビンソン。モータウンの名曲の一つであるが、ミラクルズでのタイトルは"You've Really Got A Hold On Me"なのに、ビートルズは"You Really Got..."のタイトルでカヴァー、63年のセカンド・アルバム「With The Beatles」に収録している。
 ビートルズはかなり忠実にモータウン・オリジナルをコピーしているが、キーをCからAに下げている。スモーキー・ロビンソンがファルセットで甘くセクシーに歌っているのに比べると、ジョンは正攻法でけれん味なく歌っている。やはり、横揺れ横ノリするミラクルズの「くー、タマラン」ってムードには一日の長を感じるが、なかなかどうして若いビートルズも健闘していて、特にハモ・パートなどビートルズの方がカッコよくキマっている。

e0093608_16221281.jpg で、我々は最初、ビートルズのバージョンを基にタイトな感じでやっていたのだが、Leyonaさんの歌はより黒っぽく、たぶん彼女もミラクルズの方を意識したような感じだったので、少しテンポを落とし、粘っこいニュアンスを加えるようにトライしてみた。
 もちろん、キーもビートルズのAからCに上げたので、ふむふむ、結局ミラクルズと同じになったわけね。
 ただし、押葉・土屋・和田のコーラス隊はビートルズ風で頑張ってみた。2回出てくる「Hold Me,hold me,hold me」のリードとコーラスの絡みは曲中で最大の聴かせ所だけに、ちょっと緊張したが、本番はすごくうまくいったと思う。いやぁ、実に気持ちがよかったぞい。

詳細(3)に続く
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by harukko45 | 2009-12-28 16:55 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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