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(9)からの続き。

 宮田和弥さんと奥田民生さんのコラボで Come Together、奥田さんとの Girl

 ジュンスカとユニコーンは、80年代後半から90年代に日本のロックシーンを牽引した両雄。そのメイン・アクター同士の共演というのは実にワクワクした。ただ、リハはあっという間に終わるだろうな、と予測していた。二人ともベテランだし気心知れた仲、四の五の言わずにパッとやって、「後は本番で」ってなるのは目に見えてた。
 で、その通りになった。奥田さんがスタジオに着くや否や、宮田さんとの簡単な打ち合わせがあって、すぐに宮田さんがカウント。後はみんな知ってる"Come Together"である。1回やってみて、歌い分けの確認をし、先発をどちらにするかをジャンケンで決めて、さあ、もう一度。ということで「本番よろしく」。あっという間にコラボ・コーナーのリハは終了した。

e0093608_1835743.jpg 事前に、宮田さんからの要望があり「"Come Together"はニューヨークでのライブ・バージョンで」とのことだった。「Abbey Road」との大きな違いは、キーがDからEに上がっていること。どうしてライブでキーを上げたのかは不明だが、よりロック感を出したかったのかも。それによって、全体の音楽的温度は明らかに上がっているし、ヘビーなムードもかっこいい。ただし、サビでのジョンは高い音がちゃんと出ていない。
 宮田さんは、ライブでのジョンの熱さを再現したくて、あえてこのテイクを指定してきたようだ。我々もそのことは容易に理解出来たし、コンサートの後半部であることからもバッチリな提案だった。それに、宮田・奥田両名とも、キーが上がってもサビを問題なく歌い切ってくれていた。

 間奏、エンディングでは宮田さん曰く「奥田君の唸るエピフォンソロ」が本当にサイコーで、大いに盛り上がった。スタジオ版はクールの極みみたいでシビレるが、なるほど、ライブではこっちの方が燃えるわい。ジョンは正しい。

 宮田和弥さんを送り出し、一人奥田さんが残って、もう1曲。「みんな盛り上がってくれたのに、次はすごく暗い曲。Cマイナーですから、こんな響き。」と自らCmのコードを鳴らして、会場大爆笑。「なので、座って聴いてください」という流れから、"Girl"。

e0093608_18381254.jpg 名作「Rubber Soul」は65年10月半ばからレコーディングが開始され、12月3日の発売されるという、信じられないスケジュールで制作された。わずか1ヶ月足らずで全てを仕上げたにもかかわらず、傑作・名曲がズラリと並び、アルバムとしてのトータル性もあり、ビートルズの音楽が一躍「アート」の世界に踏み込んだ記念碑的作品と言える。ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンがこれを聴いてショックを受けたというのも、すごく理解できるし、これによりブライアンは「Pet Sounds」に着手するのだから、素敵じゃないか!
 ここから、ビートルズ対ビーチ・ボーイズ(ブライアン・ウィルソン)のハイ・レベルなアルバム対決が始まるわけだ。

e0093608_16223654.jpg "Girl"はもちろん傑作の一つ。まずは、全体のけだるいムードが最高であり、ジョンの語りかけてくるようなボーカルが絶妙で素晴らしい。12弦ギターを使った地中海風のフレージングもいい。バック・コーラスの「tit,tit,tit...」は「おっぱい」と「バカ者」の両説があるらしいが、いたずらっぽく聴き手を煙に撒くジョンならでは。有名な「吸い込み音」も実に効果的で、「ったく、女ってやつは...」と嘆いた後に一服でキマリだ。
 さらに彼が"Woman"を発表した際に、「ビートルズ時代に作った"Girl"の1980年版だよ」と語っていること。そうなると、"Woman"のフェミニスト・ジョンにはますます裏がありそうな気配だな、うーん面白い。

 と、いろいろと話は広がってしまうが、とにかく、この曲は何回やっても楽しくて楽しくてしょうがない。演奏される楽器は少ないが、全てに意味があるので、緊張感はピンと保たれる。「tit,tit」コーラスは途中で息切れして苦しいが、それでも幸せを感じる。そこから解放されて「グァ〜ア〜ル」とハモるところなどは、まさに失神ものの気持ちよさだ。わずか2分半程度でありながら、極めて充足した気分で満たされ、なおかつ中毒性もある、とんでもない曲だった。

(11)に続く。
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by harukko45 | 2013-01-11 16:25 | 音楽の仕事

(8)からの続き。

 宮田和弥さんを迎えて Across The Universe

 JUN SKY WALKER(S)の宮田和弥さんは、かなりのビートルズ者であるのに、このイベントは初登場とは何と惜しまれることだったか。が、ようやく今回実現したことは、イベント全体を成功に導く大きな要素だったと思う。やはり、彼のような実力あるアーティストが加わってくれると音楽的なレベル・アップにつながるからだ。

e0093608_1717437.jpge0093608_1717963.jpge0093608_17172184.jpg 宮田さんの選んだ曲は"Across The Universe"。ジョンの作品の中でもかなりの有名曲の一つ。ジョン自身も「本当に良い歌は、メロディーがなくても歌詞だけでその価値を見出せる歌であり、それに該当する曲こそが、アクロス・ザ・ユニバースである」と語るほどの自信作だ。しかし彼は、この曲をビートルズとして満足いく仕上がりにすることは出来なかった。それは、いくつもある別バージョン、リミックス、「ゲット・バック・セッション」でのリハーサル・テイクを聴けば分かる。

e0093608_1717268.jpg あえて、その中での一番を上げろと言われれば、「Anthology 2」に収録された"Take 2"となる。結局のところ、弾き語りに近いシンプルな形(ジョンのアコギ、ジョージのシタールとタンブーラ、リンゴのマラカス)が最上と言う事は、その後のアレンジがどれも失敗であったことを物語る。

 ジョンはビートルズでの完成を放棄(?)したが、前述した彼の言葉の通り「良い歌」であるが故に、数多くのカヴァーを生むことになった。デイビット・ボウイからルーファス・ウェインライトに至るまで、最近では不動産会社のCM、などなど。私はフィオナ・アップルのバージョンが大好きだったし、曲の核心をついている気がする。
 スーパー・ライヴでもこれまでに何度か取り上げてきたが、正直、ビートルズそのままの形では、いまいちステージ向きではないと感じていた。なので、何らかの手を加える必要があり、幻想的で宇宙的に膨張していくようなイメージと、バンドっぽいグルーヴ感を合体させたかった。

e0093608_1794279.jpg そんな中、2011年4月に"Across The Universe"が元オアシスのリアム・ギャラガーのBeady Eyeによって、東日本大震災復興支援チャリティーシングルとしてリリースされた。いち早く、日本のために支援活動をしてくれた彼らに感謝したいと同時に、その出来の良さにとても感銘したのだった。なので今回、宮田さんをボーカルに迎える幸運もあり、是非この「Beady Eye」バージョンでやってみたいと強く思うに至った。
 「Beady Eye」バージョンは、とてもオーソドックスなカヴァーであることに好感するし、ビートルズがループ・トップ・コンサートでこの曲をやっていたら、こんな風になったのではと思わせる。それでいて、現代のバンドらしいタイトさがあって、「今」を感じさせてくれるのだった。

 個人的には、これまでで一番納得のいく"Across The Universe"になった。それはBeady Eyeのアレンジ力が大きいが、宮田さんも頭を弾き語り風にするなど、随所に即興的なアイデアを盛り込んでくれたのもすごく良かった。また、武道館という空間で演奏すると、ますますこの曲のデカさを実感できるようになり、ちょっとしたトランス状態になっているようでもあった。特にエンディングの「Jai guru deva om」は、まさにマントラ唱和の世界だったか。

(10)に続く。
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by harukko45 | 2013-01-09 22:49 | 音楽の仕事

(7)からの続き。

 吉井和哉さん、斉藤和義さんについて

 吉井和哉さんは今回、原点に立ち返りたいとのことで、あえてシンプルにピアノとご本人のギターでのパフォーマンスとなった。ずっと一緒にやっていたので、とても残念ではあったが、これもまた、イベント自体の鮮度を保つためには大事なことだったと思う。

e0093608_1653739.jpg 彼が選んだ1曲目は"Walking Class Hero"、これに吉井さんの日本語詞がついた。うーん、この歌が良かった。楽屋でモニターから観ていても、すーっと惹き込まれてしまった。やっぱり彼のステージングは綺麗だな、とも思った。それは、他の日本人アーティストではなかなか見つけ出せないものだと感じる。2009年の泉谷しげるさんの「激烈」さとは真逆の静けさと寂しさが、やけに心にしみた。

 2曲目にはまさに原点と呼ぶにふさわしい、吉井"Help!"。これは、バンドで何度もやってきたバージョンだが、こうしてピアノのみで聴くと、なるほど、最初に渡されたデモはこんな感じだったと思い出した。まさに、私も原点を見直すことが出来た気分だったし、彼の"Help!"がとても新鮮に響いて心地よかった。

 吉井さんは「次は一緒にやりましょう」と言っていたそうだ。こちらとしても是非にお願いしたいし、楽しみに待ちたい。

 斉藤和義さんはこの時、弾き語りによるツアーの真っ最中であり、我々とリハができる状況ではなかった。ただ、1曲だけバンドと一緒にとの話もあり、こちらとしては本番当日に合わせるのでも良かったのだが、残念ながらかなわなかった。
 とは言え、彼の弾き語りはとても魅力的だ。なので、これを聴けるのは楽しみでもあるわけで、ちょっと複雑な気分。

 1曲目は忌野清志郎バージョンの"Imagine"。清志郎さんの日本語詞による"Imagine"は人気曲で、これまでにも何人かのアーティストが歌っている。で、「やりたい曲は、いつも誰かに取られてしまう」とは、ご本人の弁だ。ようやく今回は彼がゲットしたわけだが、この日のパフォーマンスを観て、清志郎さんの跡を継ぐのは和義さん、と強く思った。本当に乗り移っているのでは、と感じられるような瞬間がいくつもあり、目と耳が釘付けになってしまった。ふー。

e0093608_16101015.jpg ひょっとしたらバンドと一緒に、と最後まで悩んでいたという2曲目の題名を聞いた時、何としてでも実現させれば良かったと後悔した。「A Hard Day's Night」のラストを飾る"I'll Be Back"だったからだ。

 正直、多くの音楽ファン、そしてアーティストの皆さんも、もっとジョン・レノンの書いた名曲を聴いてほしい、自分で探して見つけ出してほしい、と思う。特に、初期のビートルズにおける素晴らしい楽曲は、不当にも忘れられている傾向にある。
 「A Hard Day's Night」は、ビートルズが全曲オリジナルでリリースした初めてのアルバムで、13曲中10曲がジョンの作、それも傑作がずらり。言わずもがなのタイトル曲から"I Shoud Have Known Better""If I Fell"の3連発、A面では"Tell Me Why"もある。B面は完全にジョンの独壇場で、ポールの"Things We Said Today"も悪くないんだが、ジョンの勢いに圧倒されて、かなりかすむ。よって、飛ばしてもいい。そんな流れで"Any Time At All"から一気に聴けってぇの!これが後世「パワーポップ」と呼ばれるジャンルの原点であり、これ以上のパワーポップはない。そして、最高のジョン・レノンが炸裂しているのだ。まだまだ宝物はたくさん眠っている。
 
 "I'll Be Back"はメジャーとマイナーを使い分けたり、1コーラスと2コーラスで違う展開をみせる凝った作りで、いかにもジョンらしい。歌詞は、つきあっていた女に呆れて別れようとするも、未練たらたらで「戻ってきてしまうだろうな」というもの。だが実は、長らく行方不明だった父親と1964年に再会したときのことを元にしたとのことである。
 その辺の話も興味深いが、歌詞よりもここでは、アコースティックによるアレンジがオシャレなのと、3人のハーモニーが気持ちいいサビがサイコーなのだ、に尽きる。
 ポールも曲作りにはかなり貢献したらしいが、彼らがいろいろと試行錯誤して完成させていった過程を今は"Anthology 1"で確認できるのは実に楽しい。


 ワルツで試している"Take2"は「It's too hard to sing」ってことでボツ。で、8ビートにしたエレキ・バージョンの"Take3"、どっちも面白いけどね。

 さて、スーパー・ライヴでは、今回大活躍のRoyくんを迎えて、斉藤さんとの即席デュオでのバージョンとなった。かなり異色の組み合わせだったけど、Royくん、なかなか健闘しておりましたな。でも、やっぱりバンドでやりたかった!

(9)に続く。
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by harukko45 | 2013-01-07 18:32 | 音楽の仕事

(6)からの続き。

 絢香さんを迎えて Don't Let Me Down〜All You Need Is Love

 2008年に絢香さんが初めてスーパー・ライヴに来てくれた時は、実に衝撃的だった。とにかく、歌が最高にウマイ! その時は1番手として、"Eight Days A Week"と"Mind Games"を歌ってくれたのだが、私はこのブログにおいて「最高最強のトップ・バッター、まさにイチローばりの存在」と書いた。その考えは今も変わっていない。
 そして4年ぶりに、彼女は帰ってきてくれた。リハ前に打ち合わせで挨拶した時、正直、別人かと思った。4年前の彼女は、確かに凄い新人ではあったが、回りをたくさんの人達がガードしていた印象を持つ。ところが、今の彼女は堂々とこちらの目を見て、しっかりとした口調で話をする女性であり、一人でちゃんと自立しているのが、よくわかった。何だかすごくキラキラしていて、その魅力に圧倒されてしまった。

 前回はこちらが用意した音に、彼女がスッと合わせてくれた感じだったのだが、今回は彼女自身のやりたいことがはっきりしており、そのアイデアを最大限取り入れさせてもらいながら、共に作り上げていく形になった。これはとても楽しい時間になった。

e0093608_1720212.jpge0093608_18402265.jpg まずは"Don't Let Me Down"。ジョンの切実な叫びは、「がっかりさせないで、僕を愛して愛して愛して!」って感じだろう。だが、我々が耳にするビートルズのパフォーマンスは、スタジオ・テイク(69年1月28日)もループ・トップ・コンサート(同年1月30日)も、気持ちのいい開放感があって、何よりバンドとして演奏する喜びを感じるのだ。
 この曲の歌詞は、音楽的なノリの良さで言葉を選んだものだと思う。つまり、まずはバンドでカッコよくシャウトをキメることが最重要項目なのだ。それで、最高の語呂としての「ドン・レッ・ミー・ダーン」を思いついたのではないか。歌いながら偶然に出てきたものかもしれない。そんな流れでなければ、ジョンがリンゴに向かって、「景気付けの為に、最初は思いっきりシンバルを鳴らしてくれ」とは言わないだろう。
 ようするに、この曲ではあまり深読みする必要はない。ヨーコさんに捧げたラブ・バラード?もちろん、それでOKだ。だが、それよりも我々は大いに楽しみたい、バンドでこの曲をやる喜びを。

 絢香さんもちゃんとそれを心得ていて、一言「バンドで行きましょう」であった。

 というわけで、「リードボーカル絢香」を得たバンドが盛り上がらないわけがない。で、私としてはビリー・プレストンのエレピを再現するよりも、土屋さんのエッチなギター・ソロが無性に聴きたかったので、あえてお願いした。それと、もう一度サビでの絢香さんのシャウトを聴きたかったので、これも付け加えることにした。

e0093608_18545435.jpg 2曲目の"All You Need Is Love"は、これまでの経験で言うと、とことん完コピを目指すか、全く別ものにするか、なのだが、今回はそのどちらでもないところでまとめられないか、少々思案していた。とりあえず、オリジナルに近い形で取りかかりながらも、あまりこだわりすぎないようにしておいた。

 そこへ、絢香さんの素晴らしいアイデアが降ってきた。「1コーラスをピアノのみで歌い、2コーラスはオリジナルの感じで、エンディングでは再びピアノのみの『Love, Love, Love』で終わりたい」。彼女はリハ前に自らピアノを弾きながら、このアレンジを練っていたとのこと。「これは、いただき!」とばかりに、すぐにリハを始めた。

 ピアノのみでの絢香さんは、随所に自由なフェイクを交えながら、R&Bバラード風のニュアンスで巧みなボーカル・テクニックを聴かせた。ドラムスのきっかけでバンド全員が参加してからは、「思いっきりいつもの感じで」、その理由は「このイベントでないと出来ないビートルズ感を楽しみたいから」であった。
 そして、「Love is all you need」の繰り返しを「バーン」とあっけなく突き放して、再びピアノのみになる部分は、いろいろとトライして良いものを見つけ出した。結果としてパート2(ビートルズ編)が、夢の中にいるような印象になり、素敵なクリスマス・プレゼントのようでもあった。

 絢香さんとバンドの個性をお互いに生かした形になっただけでなく、まるで短編映画でも観るような、小さな組曲が出来上がった。個人的には、リハの段階で勝利を確信したのだった。

 本番では、会場中からの絢香さんの歌への期待の大きさが否応なく感じられ、それが、こちらの気分をますます高めてくれ、すごく集中してプレイすることができた。もちろん、彼女の歌は最高だった。だから、2曲が終わってステージを降りても、各メンバー達は高ぶっていて、絢香さんとハイタッチして盛り上がったのだった。古田くんの「思わず目頭が熱くなった」との言葉に、私も大きくうなづいた。

(8)に続く。
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by harukko45 | 2013-01-06 19:46 | 音楽の仕事

(2)からの続き。

 杏さんを迎えて Norwegian Wood〜I Want To Hold Your Hand

 昨年は詩の朗読で参加してくれた杏さんは、今年は歌手として戻ってきてくれた。今や超売れっ子となった彼女は、その過密スケジュールの中、2度もスタジオにやってきて、我々とリハをしてくれたのである。テレビを中心に多方面で活躍する杏さんが、歌うことにこれほど情熱があるとは思っていなかったので、その頑張りには驚かされたのと、このイベントへの真摯な取り組みに深く感謝したい。

 ヒッピー風の衣装で登場した杏さん。さすがモデルさんだ、着こなしが本当に素敵。彼女の合図で始まる1曲目は"Norwegian Wood"。

e0093608_18164348.jpg 私は「Revolver」よりも「Rubber Soul」の方が断然好きだし、ひょっとしたら最高傑作かも、と思いつつ、やっぱり「Abbey Road」や「Sgt.Peppers」の方を上にしておいて、このアルバムはそっと後ろに隠しておこうって感じ。それに、このアルバム全体に「隠れた/隠された」良さってもんが存在すると言えないだろうか。

 "Norwegian Wood"はジョンによる「他の女性との情事」がテーマであるのに、日本では邦題の「ノルウェイの森」から連想される、何とも幻想的なイメージとなり、その本当の意味が隠されてきた。しかし、タイトルとしては「森」の方が断然よく、この曲の素晴らしさをしっかりと表しているのだった。最初から「ノルウェイの木=ノルウェイ材の部屋」じゃ、ノラナイでしょ。
 それに、メロディがミクソリディアン・モードになっていて、エキゾチックというかエスニックというか、なので、シタールとのマッチングもピタっと来るのだった(まぁ、後づけ解釈で、現場はもっと直感的なもの)。

 今回、キーがEからDに下がり(女性ボーカルだから上がりか)、より不思議な響きになった。その影響もあって、私がメロトロン風フルートとコンボ・オルガン、十川さんがタブラの音を加えることにした。これでサウンドの色彩がより艶やかになったと思う。

 また、杏さんの声と押葉くんの声のマッチングが良く、Bメロでのハーモニーが実に気持ち良かった。アイルランド民謡でもやっているようでもあるし、彼女のコスチュームと相まって、フラワームーブメント的な感触もあり、すごく楽しい仕上がりになった。

e0093608_1735761.jpg "I Want To Hold Your Hand"は言わずもがなのビートルズ初期の代表作であり、彼らがアメリカを席巻し征服するきっかけとなった曲でもある。そして、ジョンとポールが一体となった最上の結果の一つだろう。なので、もちろんオリジナル・バージョンへの思いはとても大きいのだが、今回は全く違う方向性からのアレンジで、この曲の新たな魅力に気づくことになった。

e0093608_1545817.jpg 杏さんが提案してきたのは、2007年の映画「アクロス・ザ・ユニバース」の中で使われたバージョン。この映画はジュリー・テイモア原案・監督によるもので、33曲ものビートルズ・ナンバーを使い、歌詞とストーリーをリンクさせてミュージカル仕立てにした作品。よって、全曲アレンジしなおされ、出演者自らが歌っている。
 私は、遅ればせながらDVDで観たのだが、正直、この手の青春ミュージカル系は照れくさい。なので、前半はなかなか入り込めなかったのだが、ジョー・コッカーによる"Come Together"で目が覚め、"Dear Prudence"から"Walrus""Mr.Kite""Because"と続くあたりは夢中になり、その他にも"I Want You""Strawberry Fields""Happiness Is A Warm Gun"のシーンは、テイモア監督が意識したと言うミュージック・ビデオ風のアプローチが冴えて、かなり楽しめたし感心する部分も多かった。私が特にいい出来だったと感じたのが、ジョンの曲での映像ばかりだったのは、やはり彼の詞の世界が妖しくも深くて、映像的な刺激に満ちているからにちがいない。

 さて、映画ではバイ・セクシャルのチア・リーダー(役名:プルーデンス)が歌うシーンで使われた"I Want To Hold Your Hand"は、オリジナルとは全く違うバラード調。淡々とベースとギターでビートを刻みながら、12弦ギターやオーケストラ風のシンセが印象的に使われていた。これはこれで、なかなか新鮮であり、特に女性ボーカルを生かすにはとても良いと思った。
 その分、ビートルズの持っていた爆発的なエネルギーはなくなったが、杏さんのピュアな歌声が合わさることで、何とも言えないファンタジックな世界が生まれたようだった。この曲がこんなにも切ないとは、初めて感じた。

(4)に続く。
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by harukko45 | 2012-12-30 20:17 | 音楽の仕事

(1)からの続き

 Royさん(The Bawdies)を迎えて Dizzy Miss Lizzy〜All I've Got To Do

 毎年、オープニングには何人かのアーティストに参加してもらい、その年のテーマに沿ったジョン・レノン作品を演奏しており、ここ数年は奥田民生、吉井和哉&斉藤和義によるコラボが定番化していた。だが、今年は一切なし。したがって、トップバッターのRoyくんは、いきなりの大役となった。が、彼は昨年のスーパー・ライヴでのパフォーマンスで、観客席だけでなく、同じステージ上の我々バンドをも魅了して、その実力を示してくれたので、全く心配していなかった。
 それよりも、プロデューサーのNaokiくん(Love Psychedelico)のヘッド・アレンジによるいろいろな変更の方が心配(?)。

e0093608_16131353.jpg まず1曲目はラリー・ウィリアムズ作の"Dizzy Miss Lizzy"。ラリー・ウィリアムズはジョンの敬愛するロックンローラーで、ビートルズとして"Dizzy"以外にも"Slow Down""Bad Boy"と3曲も取り上げている。また、75年リリースの「Rock 'N' Roll」でも"Bony Moronie"を大胆なスロー・ ブギーにしてカヴァーしている。

e0093608_1372177.jpge0093608_16151359.jpg ジョンが惚れ込むだけあって、確かに彼の曲はカッコイイのだ。正直、"Dizzy"に関しては、オリジナルの方がしびれる。ビートルズはキメのギター・リフを延々とリピートしていて、ちょっと飽きるが、オリジナルはイントロと間奏のみで、アレンジのバランスがいいし、ラリー自身が弾くピアノがグルーヴィでサイコーなのだ。ポールもHohnerのPianetで頑張っているが、これはさすがにかなわない。とは言え、サウンド全体にビートルズ特有の洗練さがあることも確か。
 この曲と同じ日(65年5月10日)に録音された"Bad Boy"の方は、圧倒的にビートルズに軍配。それに、ジョンのボーカルは完全にラリーを上回る。

 ちなみに、"Dizzy"はオリジナルがB♭で、ビートルズはA。また、ギター・リフをビートルズはドミナントのところだけ、着地音が2度に行っているが、オリジナルは全て同じ(ルート音)でつっぱっていた。最初、Naoki君はこのパターンで弾いていて、私はビートルズの方しか知らなかったので、フレージングを直してもらったのだが、あらためてラリー版を聴いたら、最初の方でも正解だったわけだ。

 さて、ともかく。Naokiアレンジでは、オープニングということもあり、より積極的に観客へのアプローチするために、いろいろな仕掛けがどんどん加わったのと、基本的なグルーヴ感も60年代メンフィス風に変わっていったので、前述のギター・リフ以外ではビートルズ色は無くなった。だがその分、Roy君のキャラにはピタっとはまったと思うし、「会場の温度を上げる」というNaoki君の意図は明確に伝わった。

e0093608_13452875.jpg 続く、"All I've Got To Do"は、ビートルズの2nd「With The Beatles」に収録されていて、当時のジョンのR&B好みが反映された曲。本人曰く「もう一度スモーキー・ロビンソンに挑戦してみたんだ」は、同アルバムに入っている"You Really Got A Hold On Me"(63年7月18日録音)に続いて(同年9月11日録音)、ということだろう。いずれにしろ、かなり「それ」っぽい仕上がりに、「R&B曲のカヴァーでは」とも思える瞬間も。ここではジョンのソウル・シンガーとしての色っぽさに惚れ惚れしつつ、ポールのコード弾きベースにもしびれる。
 「With The Beatles」は、彼らのアルバムの中で一番「黒い」とされていて、ファーストでのカヴァー曲とともに黒人アーティスト達の作品を積極的に白人社会に紹介した功績は大きい。また、ライブっぽい荒さが魅力だったファーストから、わずか数ヵ月後のレコーディングで、オリジナル曲の質、サウンド作り、ジャケット・デザインに至るまで、格段の洗練と落ち着きを獲得していることに驚く。単に、飽きが来ないという点でも名作に違いない。

 さて、今回のNaokiアレンジでは、あえてアコギだけで始めて、Roy君のボーカルを際立たせるのが狙い。それを後半にも持ってきてライブっぽくサイズを長くした。元々、ソウルフルな曲調だけに、Roy君は実に気持ち良さそうに歌ってましたな。個人的には、サビに入ってるポールとジョージによる「アー」コーラスが好きで、それを歌えたのが至福の喜びでありました。
 この2曲に関しては、リハ後にあらためて譜面に書いて整理し、バンドだけでも練習を重ねた。それによって、我々自身の演奏もよりグルーヴィになったと思う。

(3)に続く。
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by harukko45 | 2012-12-28 14:27 | 音楽の仕事

詳細(4)からの続き。

 斉藤和義さんを迎えて。

 昨年、斉藤和義さんの活躍ぶりはすごかった。震災直後における、政府と電力会社を批判した"ずっとウソだった"の発表とUstreamでのライブは、かなりセンセーショナルだったし、一方で年末にかけては、人気TVドラマの主題歌が大ヒットしていた。そして、スーパーライヴ2011では、3年ぶりにトリビュート・バンドとのコラボとなり、こちらのモチベーションは大いに跳ね上がった。

 で、彼の1曲目、来た!来た!来た!"Rain"だ! 
 
e0093608_7354952.jpg これぞサイケ時代の金字塔の一つであると同時に、「シングル・カットしたものはアルバムに入れない」という方針の犠牲となった曲でもある。だから"Rain"は、ビートルズ史上一番レアな名曲だったのだ。うーん、力が入るわい。
 私にとっては、どこからどのように聴いても、どれだけ考えても、アルバム「リボルバー」よりシングル「ペーパーバック・ライター/ レイン」の方が価値が高い。それは、「『サージェント・ペーパーズ』にストロベリー・フィールズとペニー・レインを入れときゃ良かったのに!」という気持ちと同じ。まぁ、今は自分でアルバムを編集すれば良いわけだが、それはともかく、このような作品は1曲で10曲以上の内容を持っているということ。

e0093608_7375123.jpg そういう「レインの発見者達」の熱い気持ちを見事に表現したのが、トッド・ラングレンだ。彼は76年のアルバム「Faithful」で、恐ろしいほどの執着ぶりを見せるカヴァー・ヴァージョンを作った。実は、世間で言われるほど完コピではないのだが、肝となる所はしっかり押さえているし、オリジナル以上に迫力を感じさせる部分もあって、カッコイイことこの上ない。そして何より、ビートルズへの深い敬意のほどに、ものすごく感動する。天才トッドがここまでやるなんて、「レインは、何てすげぇ曲なんだ!」と思わずにはいられない。

 私は、2003年に奥田民生さんのバックでも"Rain"をやったのだが、その時はもう一つ掘り下げることができなかった。だが、時間の経過でこちらの準備も整い、今回はより踏み込んだ意識で曲にのぞめたように思う。それに、斉藤さんの少しダルな歌い回しがハマってたし、エンディングで彼の過激なギターソロも加えて、ライブらしい内容になったのは良かったと思っている。でも、もっとやりたいし、何回でも演奏したい。

e0093608_7382228.jpg 2曲目は、一転してシンプルなロックンロール、タイトルもそのままの"Rock And Roll Music"で、まさにノリ一発勝負となった。基本的には延々と繰り返しなので、途中にソロをはさんで変化をつけたりしたが、そんなことよりも、曲にモノごっついインパクトを与えたのは、斉藤さんが書いた日本語詞だった。
 これは単なる和訳ではない創作で、その精神は「キヨシロー的」。2コーラス目以降で彼は「安全と言いながら〜放射能をまき散らし〜汚染水を垂れ流しやがって〜」とシャウト、正確には覚えていないし、書かれたペーパーもないが、とにかく、"ずっとウソだった"を彷彿とさせる、いや、それを上回る覚悟と気迫を武道館のステージで見せつけたのだ。こっちだってシビレたし、燃えないはずがないだろう。ロックの本質をいきなり思い出させた斉藤和義、すごい。

 
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by harukko45 | 2011-12-19 07:40 | 音楽の仕事

詳細(3)からの続き。

 BONNIE PINKさんを迎えて。

e0093608_2511253.jpg BONNIEさんとやった2曲は、共にビートルズ1965年の名曲。ビートルズには傑作がズラっと並ぶが、その中で「最高」の文字が上につけられる作品も、かなりの数になる。ただし、人によって選曲への意見は異なるだろう。だが、"Help!"に「最高」の爵位を与えることに異議を唱える人がいるか?少なくともビートルズ愛好者で"Help!"にいちゃもんをつける奴は絶対にいないはずだ!いたとしても、「私は信じない!」とジョン風に切り返してやろう。

 聴いている分には常に最高で常に感嘆するこの曲だが、演奏している時は楽しい気分を満喫できる反面、高いプレッシャーも感じる。だから、バンドとしてはかなり練習した。特にコーラス部分。冒頭の「ヘルプ!」3連発から「ヘーエルプ!」のファルセットまで、ビートルズの完璧さには平伏すのみで、最初から難度が高い。
 Aメロだって油断ならない。ジョンのリードに絡み合うカウンターメロを歌うポールとジョージ、この付かず離れず、最後には合体するアレンジはニクい。
 サビでは「Help me get my feet back on the ground」で、ジョンの上にふたりの声が乗って、3声ハモがいきなり構築され、続く「Won't you please, please help me」ではジョンとポールのみで頂点に達して一気に下降する。ここは一番の難所だが、同時に最高のエクスタシーを感じる瞬間でもある。
 そして、エンディングのA6の和音を形成するまでの「Help!」(ポール&ジョージ)「me」(ジョン)の掛け合いから、3人による「me-e-woo」への流れは、「優雅」でさえある。

 ギターも不思議だ。イントロとサビの最後で印象的なジョージのアルペジオは、うまく弾けずに間違えたようにも思えるが、やっぱりこれしかない。
 A7のコード内での「ミ・ソ・ソ・シ」「ミ♭・ファ#・ソ・シ」「レ・ファ・ソ・シ」「ド#・ミ・ソ・シ」のうち、最初の「ミ・ソ・ソ・シ」が一瞬構える感じになって、たぶん普通なら(ピアノ的には)「ミ・ファ#・ソ・シ」、もしくは「ド#・ミ・ソ・シ」としてしまいそうだ。しかし、演奏的にはなめらかではあっても、音楽的には普通でしかなく、ジョージの方が断然カッコイイのだった。

 コーラス部分を最初は私と押葉くんだけで歌っていたが、BONNIEさん用にキーが上がり、どうしてもパワー不足を感じたため、ピアノの斉藤有太くんとギターの土屋さんにも加わってもらい、うまく厚みが出すことが出来た。ギターに関しては、名手・土屋さんにお任せである。

 BONNIE PINKさんのボーカルは、いつもハマリ具合がいい。それは彼女の声質の良さが大きいのだが、実は歌い回しやニュアンスの付け方にも細かい工夫が成されていて、毎回感心する。それでいて、素直で自然体な印象も受けるのだった。

 もう1曲、同じくアルバム「Help!」に収録されている"You've Got To Hide You Love Away"も楽しかった。わずか2分12秒の曲だが、他に何かを足して長くする気分にはならなかった。オリジナルの長さで演奏するだけで、十分に満足できたからだ。とは言え、私のパートはある意味、曲のカラーリングが役割なので、少しだけ60年代風のエッセンスをふりかける感じにした。BONNIEさんには、スウィンギング・ロンドンが似合うと思う。

 それと、ここでも彼女に感心させられたのが、サビでの「Hey!」のキメっぷりの良さだ。正直こういうのって、ジョン以外ではイマイチになる典型だし、この曲の最大の魅力は、あの部分でのジョンの歌い方にあるわけで、たぶんポールが歌ってもダメだったと思う。なのに、BONNIEさんは実に軽妙にこなして、とっても素敵だった。ギターの長田くんが「最後のサビだけ繰り返したら?」と提案したので、それをすぐに頂いた。もちろん、気持ちよかったからだ。

 ちなみに、BONNIEさんとのリハーサルは2時間の予定だったのだが、実際には18分で終了してしまい、スーパーライヴ史上の最短記録となった。これは、我々がこの2曲をよく練習してあったことと、彼女とのマッチングの良さとの相乗効果だと言えるでしょうな、フムフム。

 さて、本番ではこの後、我々トリビュート・バンドも引っ込み、3組のパフォーマンスとなった。

 まずは、曽我部恵一さんが、復活したバンド、サニーデイ・サービスとして登場。3ピースによる骨太なロックで"The Ballad of John and Yoko"と日本語による"Imagine"を聴かせてくれた。曽我部さんはいつもながらの熱唱ぶりだった。

 続いて、今回の目玉コーナーとも言えた桑田圭祐さんの登場。自らのバンドを率いて、ビートルズの名曲8曲を「完コピ」で再現してくれた。歌・演奏のみならず、当時のギター、服装、髪型にまでこだわってのパフォーマンスは、まさに完璧だった。
 曲は、"She Loves You""You Can't Do That""All I've Got To Do""I Should Have Known Better""I'm A Looser""It's Only Love""I Feel Fine""Slow Down"。楽屋のモニター見ながら、こっちも盛り上がったよ。

 3組目は、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND。独自の世界観とサウンドを持つ彼らが、新鮮な"Across The Universe"と"(Just Like) Starting Over"を聴かせてくれた。なかなか充実したプレイぶりは、前2組に負けていなかったし、後半を引き継ぐ我々にも大いに刺激になった。

詳細(5)へ。
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by harukko45 | 2011-12-18 00:16 | 音楽の仕事

詳細(1)からの続き。 

 ROYさんを迎えて。

 THE BAWDIESのボーカリストで、バンドではベースも弾くROYくんは、実はかなりのR&B好きとのこと。なので、選ばれた2曲は共に60年代の有名なソウル・ナンバーだった。彼らのプロデューサーであるLOVE PSYCHEDELICOのNAOKIくんも加わってくれることになったので、リハーサルでの仕切りも彼に任せ、何回かセッションしながら、あれやこれやとヘッドアレンジしていく流れになった。

e0093608_0505987.jpg "Twist And Shout"は、「必殺極めつけ」「泣く子も黙る」ジョンの偉大なるシャウトによる大傑作。ビートルズは、アイズレー・ブラザーズのバージョンを元にしているが、出来上がった音は完全に自分達のカラーに塗り替えられていて、実に見事。初期ビートルズのシグネチャー・チューンとも言えるほどの強いインパクトを残した作品だ。
 ただ、アイズレーのバージョンもかなり良く、ROYくんのイメージはこちらのニュアンスの方が近いようだった。で、プロデューサーNAOKI氏は、ボーカルはソウルフルな路線で行くように指示し、バンドは「いつものように」、つまりビートルズ風に演奏することを求めた。と言うことは結局、「まぁとにかくやってみよう」ってことね。

 歌い始めるとROYくんは、声を随所に歪ませながら、地声でシャウトする正統派ソウルマンで、最近のR&B系ボーカルにありがちな裏声使いではなかった。だから、「オーティス・レディング meets ザ・ビートルズ」的なムードになり、バンド・メンバー達もみんな「Yeah!」連発で大いに盛り上がってしまった。
 とは言え、ただのセッションで終わるのは安易すぎるので、NAOKIくんはギターソロなどをはさんだり、アクセントを強調したりと、細かい配慮も忘れなかった。私は押葉くんとのポール&ジョージの「Woo~!」再現に喜々としており、回りで何が起ころうとも常に「サイコーです!」だったけど。

 ちなみに、"Twist And Shout"のオリジナルはThe Top Notesによる61年のシングルで、プロデュースはフィル・スペクター。聴くと分かるが、イメージは全然違ってやったら軽いドゥーワップ、コード進行も別物。作曲したバート・バーンズ(aka/バート・ラッセル)は、この出来に納得せず、翌年アイズレー・ブラザーズを自らプロデュースしてリリース、スマッシュ・ヒットとなった。バート・バーンズがここで再アレンジしなければ、ビートルズも取り上げなかったろう。そして、ビートルズがカヴァーすることで、この曲は完全に歴史に残ったわけ。

 YouTubeで聴き比べ。The Top Notes (1961)、これはこれで楽しいけどね。映像はTop Notesとは関係なし。


 The Beatles (1963)、王室主催の演奏会でのライブ。ジョンのmc「次の曲では皆さんも協力してください。安い席の人は拍手を、高い席の人は宝石をジャラジャラ鳴らしてください」がクール。歌・演奏ともレコーディングとかわらぬハイ・レベル。この時の3曲は「Anthology 1」で聴ける。


e0093608_2131431.jpg 次にやった"Stand By Me"は、昨年、デリコと演奏したし、過去のスーパーライヴでも何回か取り上げられている。それだけこの曲が、ジョン・レノンの代表曲の一つとして認知されているということ。個人的にはベン・E・キングのオリジナルをすっと追い越すし、アルバム「Rock 'n' Roll」は大好きなので、全曲オリジナルよりも良い、実は全てジョンが書いたんじゃないの、って言いたいぐらいだ。

 なんてことを思っていながら、今回の我々はイントロから1コーラスまでは、かなりベン・E・キング風だったっけ、おいおい。でも、ベースとボーカルだけで始める感じは、ROYくんにはピッタリだったのです。その後、間奏はスライドありブルージィなギターソロありで、じょじょにロック色を強めていった。
 ROYくんは最後まで堂々としたシャウトぶりで、こちらもすっかり楽しませてもらいました。
 
 この際だからチョット悪のりして、こっちも聴き比べ。Ben E.King (1961) 、歌素晴らしいです。間奏のストリングスは激甘すぎるなぁ。


 John Lennon (1975)、ビデオ・クリップ。間奏で「ハロー、ジュリアン!」。エンディングで「ハロー、イングランドのみんな、元気かい?ニューヨークからこの歌を贈るよ」。「僕のそばにいて」がいちいちキュンと来るんだなぁ。


詳細(3)
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by harukko45 | 2011-12-16 17:07 | 音楽の仕事

詳細(6)の続き。

 吉井和哉さんを迎えて。

e0093608_15123545.jpg 1曲目は昨年もやった"Yer Blues"。ただし、キーはオリジナルのEに戻った。なぜ、昨年よりも半音上げたのかはわからないのだが、演奏する立場では断然やりやすい。
 今年も、吉井さんがエレキ・ギターを弾いたので、トリプル・ギターの競演となった。吉井、土屋、長田の順番でソロを回すという豪華なセッションでありました。こういうブルーズものはそれぞれのギタリストの色がよく出て面白いです。

 それと、仕掛けをビートルズ・バージョンからダーティ・マック(ロックンロール・サーカスで登場したジョンを中心としたスーパー・セッション・グループ)・バージョンに変えてみた。具体的にはブルーズの頭4小節の1拍目にブレイクして、ビートルズは4拍目に4分でドンとやるのを、ダーティ・マックでは3拍目の裏でくっているわけで、演奏的にはこちらの方が自然で、みんなのグルーヴが止まらず、ビートに推進力を加える感じにもなる。
 ビートルズの方はレコーディングということもあり、彼らっぽく、きっちりと作り込んだ感じだが、この4拍目だけっていうのは結構むずかしい。もちろん、キマると独特なヘビー感が生まれるのだけど。

 逆に、3人のソロのあと、もう一度ボーカルに戻る場面では、昨年はダーティ・マックの、1クッションおいてからドラム・フィルに入るやり方だったのを、ビートルズによる「突然のグルーヴ・チェンジ」パターンに戻した。これで、吉井さんの英語による怒濤の乱入シーンに、よりインパクトが出たのだった。

e0093608_646462.jpg ところで、ちょっとだけ「ロックンロール・サーカス」について付け加えると、これは、1968年に収録されたローリング・ストーンズのTV作品だったが、放映されることなく長年お蔵入りになっていたもので、ストーンズの他にジェスロ・タル、ザ・フー、タジマハール、マリアンヌ・フェイスフル、ダーティ・マックとなかなかの内容。今はDVD等で見れる。当時ボツになった理由は主役であるストーンズの出来が良くなかったことにつきる。

 この時、ダントツに凄いのはザ・フーで、彼らが演奏するミニ・ロック・オペラ"Quick One"は彼らのライブ映像の中でも屈指の傑作で必見と言っていい。これをやられた後では、ストーンズが意気消沈してしまうのはわかる。おまけに、キース・リチャーズはダーティ・マックに入りたいがために、ビル・ワイマンを追い出して、まんまとベーシストとして参加した、という話は十分あり得る。
 ビル・ワイマンはストーンズの出来についても、「ミックのパフォーマンスがお粗末だったからで、バンドに非はない」となかなか辛辣。

 で、肝心のダーティ・マックはなかなか面白いのだが、やはり「その場限り」の域を出ない。とは言え、ジョンのボーカルはさすがの安定感であり、エリック・クラプトンは圧巻にうまいし、かっこいい。ミッチ・ミッチェルも実に「らしい」感じ。だが、誰よりも気合いが入っているのはキースで、ギターソロをかき消すかごとくにベースを弾きまくっている。が、ジョンがせっかく締めのコードを変えているのを無視して、普通のブルーズ進行で突っ張るので、その辺りはグッチャリしております。
 エリックが余裕でかわしているのが、またかっこいいけど。ナイーブなジョンは「ったく!」って感じじゃないのかなぁ。

 吉井さんの2曲目、そして本編ラストは"Across The Universe"。

e0093608_17384015.jpg "Across..."にはCDだけでも4つのバージョンがある。まずは1969年の「バード・バージョン」、次はフィル・スペクターによる「レット・イット・ビー・バージョン」、96年のAnthology2でのアコギとシタール、マンドリン(?)による最初期のバージョン、そして2000年の「ネイキッド・バージョン」である。 で、どれが好きか。うーむ、どれも一長一短、それが答えだろう。とにかくだ、ジョンが「本当に良い歌は、メロディーがなくても歌詞だけでその価値を見出せる歌であり、それに該当する曲こそが、アクロス・ザ・ユニバースである」とまで語っていたにもかかわらず、決定版と言えるものは残念ながら、ない。
 
e0093608_17432057.jpg で、前にこのイベントでやった時は「ネイキッド・バージョン」風だったが、今回は久々に「バード・バージョン」が新鮮に聞こえた。で、吉井さんにどのようにやるか、新たにアレンジを加えるかを事前に相談してみた。彼は「レット・イット・ビー・バージョンで」とのことだった。
 ということで、フィル・スペクターばりのオーケストラ風を目指していたのだが、なかなかシブい感じで、こういう終わり方も新鮮かも、と思いつつも、ちょっと地味か?という不安も同時にあった。吉井さんが歌うことですべてOKになる場合もあるわけだから、決定は彼が来てからにした。

e0093608_17434859.jpg で、吉井さんが登場してのスタジオ・セッションで合わせてみると、やはり「本編最後」には物足りない気分が強くなった。そこで、吉井さん中心に解体と再構築の開始である。それに、吉井さん自身が日本語詞を書いてきたので、そのムードにも合わせていきたかったのだ。

e0093608_17442969.jpg 基本的には4年前の"Help !"でのアプローチに近くなったものの、吉井さんの個性を全面に引き出すことになって、これは正解だった。ただ、もう一つ何か劇的な要素が欲しくなったのだが、その時は浮かばなかった。

 後日、吉井さんが電話をくれ、その「足りない」部分でのアイデアをくれた。「なるほど!」ということで、休憩中だったにもかかわらず、バンド全員を再招集して合わせてみた。そして、ギターの間奏前に、一瞬静かなパートを作ったことで、このアレンジはバッチリきまったのである。これで、自信を持ってやれる気分になった。
 もちろん、吉井さんとは、その変更部分は本番前のリハで初めて合わせて、OKをもらったのだった。なんだかんだ言っても、こういうやりとりを経て、曲が完成していく過程は最高に楽しいのだった。


 さて、このあとは、アンコール。オノ・コードによる会場一体によるパフォーマンスがあり、おなじみの"Happy X'mas (War Is Over)"、続けて"Power To The People"、そして"Imagine"である。

 これらの曲に関してはもう何も言う事はない。言いたい事があるとせれば、世の中はますます不穏で不条理であり、戦争の危機は我々にも身近になりつつあり、それでも相変わらず人間達は傲慢だということ。
 ジョンは「70年代は、みんな最悪だった」と言っているが、今を生きる我々にとっては、あの頃の方がずっと素晴らしかったかもしれないと思うほど、現代はひどくないだろうか?
 そろそろ、私たちも怒らなくてはいけないのでは、勇気を持って。



 今年もたくさんの人々の力を借りて、一年を過ごすことが出来たと思っています。本当に心からお礼したいと思います。ありがとございました。
 そして、皆様にとって来年がよりよい1年であることを願っております。どうぞ、よいお年を。
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by harukko45 | 2010-12-31 18:06 | 音楽の仕事

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