タグ:R&B/HipHop ( 29 ) タグの人気記事

グラミー賞2013

 毎年楽しみであるグラミー賞の発表が2月11日にあり、朝からテレビ中継に見入っておりました。でもって、今回はある意味で大きな転換点とも言えるイベントだったと感じました。つまり、昨年のアメリカ音楽業界では大きな地殻変動があったのだという証明。
 それが象徴的に表れたのが「最優秀アルバム部門」で、ノミネートされた作品がどれも力作・秀作揃いで、かなり面白い「アルバム・オブ・ジ・イヤー」となりましたわい。
 
 ここ数年のアメリカ音楽の傾向は、R&B/ヒップホップ&ダンス・ミュージック系vsアメリカン・アイドルを含むカントリー・ミュージック系による2分化が顕著だった。しかし昨年は、ずっと低迷していたロックがついに復権のノロシを上げ、大きなヴァイブを生み出すようになった。
 とは言え、今注目される各アーティスト達は、それほど時代性を意識せずに地道に音楽制作してきた人が多く、確実に支持者を増やしてきた彼らのことを、保守的だった業界関係者がついに認めるようになったと言う事かも。

e0093608_1552040.jpg まずは、ザ・ブラック・キーズ(The Black Keys)。彼らは2001年結成なので、もはや10年以上のキャリア。だが、俄然注目されたのは2010年の6thアルバム「Brothers」ぐらいからで、私もここから。これもかなり良いんですが、まだガレージっぽさ、オタクっぽさが強いかも。ところが、昨年出た7作目「El Camino」が文句なしでイイ!1曲目の"Lonely Boy"を聴くだけでもサイコー!PVもサイコー!ブラック・キーズを聴け!



 今回のグラミーでは、この"Lonely Boy"が『最優秀ロックパフォーマンス』『最優秀ロックソング』受賞。「El Camino」が『最優秀ロックアルバム』受賞。でもって、ギターとヴォーカルのダン・オーバックが『最優秀プロデューサー』をも取ってしまった。プロデュースということでは、「El Camino」だけでなく、ニューオーリンズの生けるレジェンド、ドクター・ジョンの最新作「Locked Down」が彼のプロデュースで、これまた良い。だからの受賞だと思うし、ブラック・キーズとドクター・ジョンのコラボでのパフォーマンスも楽しかった。おっと、ドクター・ジョンは『最優秀ブルース・アルバム』を受賞してました!



e0093608_15522853.jpg ブラック・キーズと比較されることの多いにジャック・ホワイト(Jack White)。これまでに、The White Stripes、The Raconteurs、The Dead Weatherとして素晴らしい作品を出し続けて、私は2000年以降の唯一無二の大天才として敬愛しているのだが、そのジャックが、昨年ついに初めての完全ソロ・アルバム「Blunderbuss」をリリース。これが、実にクールな出来で、もう。
 ただし、彼の場合はこれぐらいは軽々やってしまえるので、私には少し期待外れだったことも確か。彼にしては、ちょっと慎重な仕上げだったのでは、とも思う。だが、それでもかなりカッコイイのですがね。
 残念ながら、今回はノミネートのみで終わってしまったものの、授賞式でのパフォーマンスは圧倒的に凄くて、2010年以降のロックにおいても、彼の存在は最重要であること証明したのでした。ジャック・ホワイトを聴け!



グラミーでのパフォーマンスはコチラ

e0093608_15522548.jpg 3人目は唯一のブラック系である、フランク・オーシャン(Frank Ocean)。彼のデビュー・アルバムである「channel ORANGE」は本当に素晴らしい。だが、実は2011年のミックステープである「Nostalgia, Ultra」も良くって、個人的にはこちらの方が大好き。



 とは言え、今回賞賛されている「Orange」もきっとブラック・ミュージックの歴史に残る作品。とにかく、このところ「マッチョ」ばかりが売りだった気配のR&Bの流れを大きく変える力を持っている。彼の繊細で幻想的な世界は、ジャンルの垣根を越えてしまう豊さと深みがある。それに、何と言っても聴いていて「気持ちがいい」。
 今回は主要3部門を含む6部門にノミネートされる快挙だったけど、残念ながら『最優秀アーバン・コンテポラリー』『最優秀ラップ/ソング・コラボレーション』の2つのみの受賞だったのが「?」。

e0093608_15521351.jpg フランク・オーシャン同様に6部門のノミネートだったファン.(Fun.)は、『最優秀ソング』と『最優秀新人』を受賞。これで、アルバムも取ったらオジサンは怒っちゃうけど、まぁ、そうはならず。
 彼らは2008年の結成ながら、それまで個々にキャリアを積んできた人達で、最優秀新人賞と"We Are Young"で最優秀ソングを獲得した時のスピーチが「僕らは実は若くはないんだ。12年間音楽活動をしている。ファンのみんなのおかげでやってきました」。頑張ってやってきたことが見事に報われたのでした。
 ポップで親しみやすいメロディだし、歌もパワフルでウマイし、曲全体がミュージカルっぽい作りなのが特徴。どことなくクイーン風かな。アルバム「Some Nights」は楽しいし、元気いっぱいで良いんだけど、長く聴いていると疲れので、評価は微妙。ただ、ロックとしては久々に売れに売れて「ニッケルバック以来の歴史的快挙」とか「ロックバンドではコールドプレー以来」ということだから、受賞は当然か。



e0093608_15522243.jpg でもって、『最優秀アルバム』を受賞したのは、マムフォード&サンズ(Mumford & Sons)の「Babel」。これはかなり意外。昨年のアデルに続いて、またしてもイギリス勢とは。
 ただ、彼らはイギリスのバンドなのに、やっているのはアメリカのブルーグラス、カントリー&フォークをベースにしているし、ライブでのパフォーマンスもなかなか素晴らしいんですなぁ。そこら辺がアメリカでも熱狂的に受け入れられているのでしょう。
e0093608_19264080.jpg 何しろドブロ・ギターの神様で、あのUnion Stationのメンバーであるジェリー・ダグラスさんのアルバムにも呼ばれるぐらいだし、ライブでも共演してるし。
 私としてはちょっと力が入りすぎに見えるのと、「実はものすごくナイーブです」的ムードが、ちょっと引くんですけどね。

 でも、結局のところ売り上げが凄くて、全米チャートに6曲もランク・インし、ビートルズに並んじゃったんだから、これはもうかないません。ザ・ルミニアーズ(The Lumineers)なんかと共に、こういうバンドがまさにトレンドでもあるのでしょう。エコ志向というか、ナチュラル志向というか。



e0093608_18461319.jpg 「アルバム・オブ・ジ・イヤー」にはノミネートされてなかったけど、出来れば新人賞をあげたかったのは、アラバマ・シェイクス(Alabama Shakes)。彼らのデビュー・アルバム「Boys And Girls」は結構聴いてますし、大好き。ボーカルのBrittany Howardがサイコー。グラミーでは、ザ・バンドのリヴォン・ヘルム・トリビュートで、名曲"The Weight"をエルトン・ジョンやメイヴィス・ステイプルズとともに、堂々たる歌で聴かせてくれた。
 まだまだ、伸びしろのあるバンドだから、新人賞なんかで終わる感じじゃない。だから、結果オーライかも。アラバマ・シェイクスを聴け!



グラミーでの"The Weight"はコチラ
[PR]
by harukko45 | 2013-02-14 19:32 | 聴いて書く

D'Angelo 2000年のライブ

 昨年は、ディアンジェロが12年ぶりにライブに復帰しヨーロッパ・ツアーを敢行、アメリカでもいくつかのイベントに登場し、それらの映像もずいぶんアップされて、その内容の素晴らしさに狂喜乱舞したものだった。そして、待ちに待たされたニュー・アルバムも97%(!)完成したとの情報もあって、個人的にはジャック・ホワイトの初ソロ・アルバム、ノラ・ジョーンズのDanger Mouseプロデュースでのニュー・アルバムとともに、2000年代のお気に入りアーティストそろい踏み3部作になるはずだった。

 が、また、ディアンジェロにはだまされた(?)ようだ。「James River」は結局まだリリースされない。ということで、私はその代用(?)として、フランク・オーシャンの「channel ORANGE」を聴いていたのでした(いやいや、これも良い作品!)。

 ところが、最近になって2000年の「Voodoo」ツアー時の映像があることを知った。何たることか。それも、音質・画質かなり良し。でもって、この時の内容がもう圧倒的。いろんな意味で残念なことではないか、本当にこの天才は何をやっているのか!

 というわけで、このライブをここにリンクして、しばし溜飲を下げることにする。とりあえず昨年、ミュージック・シーンに復帰してくれたのだから、まずは喜ばなくては。そして、近々の完全復帰をじっと願うのであります。









July 16, 2000 North Sea Jazz Festival – The Voodoo Tour

D'Angelo: vocals, keyboards
The Soultronics:
Ahmir “Questlove” Thompson: drums
Frankie “Knuckles” Walker: percussion
Pino Palladino: bass
June Bervine (or sometimes James Poyser): keyboards
C. Edward “Spanky” Alford & Samuel “Norris” Jones: guitars
Anthony Hamilton, Shelby Johnson & Jack King: background vocals
Jacques “Brother Jacques” Schwarz-Bart: tenor saxophone
Russell Gunn (or sometimes Roy Hargrove): trumpet
Frank “Root” Lacy: trombone & trumpet

Sam Champ x Okayplayer – D’Angelo Live! [Mixtape]
[PR]
by harukko45 | 2013-01-26 19:19 | 聴いて書く

詳細(10)からの続き。

 En1.サファリ・ナイト
e0093608_22283336.jpg "サファリ・ナイト"に関しては、詳細(2)のコーナーでも少し触れているし、曲もアレンジも歌も、まさに「キマッテル!」んだから、何も付け加えることはない。それに、ライブでは特に演奏効果の高い内容なので、必ずと言っていいほど盛り上がるのだった。今回のようにアンコールに応えてのパフォーマンスになると、より熱気倍増って感じでありました。それに、サビでの会場から熱唱ぶりもうれしかったですねぇ。

 それにしても、あらためてオリコンのチャートなんかをチェックしてみると、この"サファリ・ナイト"、"たそがれマイ・ラブ"(最高位2位)、シルエット・ロマンス(7位)に続いての3番目(20位)で、"愛は時を越えて"(30位)よりも上だった。
 ちなみに、続くのは"ビューティフル・ミー"(40位)、"シンプル・ラブ"(44位)。ただし、売り上げ数で見て行くと、"愛は時を越えて"が3位に浮上して、"サファリ・ナイト"は4位となるが、それでも10万枚以上ですから、たいしたもんです。

 もちろん、ジュンコさんも美乃家も、アルバムを中心にした活動をしていたのだから、ヒットチャート云々で評価するのは的外れなんだけど、私が思っていた以上に、"サファリ・ナイト"が一般的にも支持されていた事を、ちゃんと数字が物語っていたのでした。これからも大事にしていかにゃいけませんな、ウム。

 En2.You've Got A Friend

e0093608_2333756.jpg ライブの大ラスは、キャロル・キングの名作クラシック曲。たくさんの人がカヴァーしていて、あまりにも有名だが、ジュンコさんは昔からダニー・ハサウェイのバージョンをやっていた。
 このダニー・ハサウェイのライブ盤は、「一家に一枚」級の名盤であるし、ここに入っている"What's Goin' On"と"You've Got A Friend"は、ミュージシャンにとっては、ちょっとしたセッションでよく演奏するもので、それほど、このアルバムでのアレンジは人気が高いし、カッコいい。
 特に、ソウルフルな歌唱が出来る人には、聴かせどころ満載で、まさにうってつけなのだった。

e0093608_5161596.png で、アルバムのプロデューサーは再びアリフ・マーディン師匠で、ほんとに、名盤の影に彼の名前あり、だ。
 それにしても、「Donny Hathaway Live」の臨場感って最高。これがライブだ!って感じ。そして、彼が弾くウーリッツァー(Wurlitzer)・ピアノがこれまた最高に気持ちいい。だから、我々がカヴァーする時も、どうしてもウーリッツァーっぽいサウンドでやりたくなるのだった。

e0093608_016754.jpg とは言え、"You've Got A Friend"の本家本元は、キャロル・キング大先生。1971年の"Tapestry"での弾き語りがまずはオリジナルとなるが、ヒットしたのは、同じ年にリリースされたジェームス・テイラーのシングル盤。その後、アルバム"Mud Slide Slim and the Blue Horizon"に収録されるわけだけど、この2枚の制作はほぼ同時期で、お互いにレコーディングに参加しあっているので、どっちが先だ後だ、ってことはどうでもいいかも。


e0093608_0162961.jpg e0093608_0161647.jpgだが、このジェームス・テイラー・バージョンも、本当に素晴らしい仕上がりで、さすがなんです。その年のグラミーで、最優秀男性ポップボーカル賞、最優秀楽曲賞も当然。とにかく、テイラー自身が弾くアコギの素晴らしさにまずはやられて、優しい彼のボーカルには涙するよ。ラス・カンケル、リー・スクラーらのバックも文句なし。永遠の傑作です。


e0093608_0163596.jpg ところが、今回ウィキペディアをのぞいてみたら、ジェームス・テイラーよりも先に、この曲をカヴァーしていた人がいた。それはイギリスの女性歌手、ダスティ・スプリングフィールドだそうだ。
 しかし、レコーディングされたものの、理由はわからないがお蔵入りとなり、長く未発表だった。が、彼女の代表作であり、これまたアリフ・マーディン氏プロデュースの「Dusty In Memphis」が1999年にデラックス・バージョンとしてリイシューされた時に、めでたくボーナストラックとして収録されていた。

 私は、本編の方ばかり気にして、ボーナストラックの方はほとんど見向きもしなかったのだが、今になって聴いてみたら、なるほど、60年代のブルー・アイド・ソウルの代表格ともいえるダスティらしい出来で、これはこれで、なかなか。で、イントロのピアノが、ダニー・ハサウェイっぽい感じだけど、そこまでは行き切ってない、って具合。
 ひょっとすると逆に、ダニー・ハサウェイが、これを参考にしたかも?なんて。とりあえず、同じアトランティックだし、アリフ・マーディンがらみで、ありうるかも。うーん、また眠れなくなっちゃうなぁ。(ちなみに、ダスティの"You've Got A Friend"はマーディン氏ではなく、Jeff Barryのプロデュース)

 まぁまぁ、とにかく、どんな形であろうとも、この名曲"You've Got A Friend"は常に素晴らしいということです。

 そして、ジュンコさんは今年、震災で苦しむ被災者の皆さん、そして、いつまでたっても明るい希望を持てないでいる日本人すべてに、この曲の持つ、シンプルでありながら、常に深いメッセージを贈るように歌い切った。
 私は、名古屋でのステージで、演奏前のジュンコさんのMCで、この曲の歌詞の暖かいメッセージにあらためて感じ入り、思わず熱いものがこみ上げてきてしまった。何度もやっている曲であるのに、これほど感動して演奏できたことはなかった。

 さて、これで、クラブサーキット2011の詳細は終了です。長々と最後まで読んでくださった方には厚くお礼を。そして、各会場にお越し下さった、たくさんの方々にも、厚く熱くお礼申し上げます。本当にありがとうございました。来年もまた、再会できますように。


 
[PR]
by harukko45 | 2011-09-25 00:45 | 音楽の仕事

詳細(8)からの続き。

 m7.Disoco Medley_d.Boogie Wonderland

 長々と引っ張ってきた「ディスコ・メドレー」をネタに昔の音源を掘りまくるコーナーも、いよいよ最後か。"Boogie Wonderland"はそれほど広がりはないか?どうなりますか。

e0093608_6413090.jpg 1970年代も最後の年の6月にリリースされたEW&Fの新作「I Am」は、前作同様に大ヒット、シングル・カット第1弾であった"Boogie Wonderland"は、スペシャル・ゲストにエモーションズを迎えた、実に華やかな曲で、まさに「ディスコ」そのものだった。とにかく理屈抜きで、楽しく盛り上がれ!ビートを感じるだけでウキウキしちゃうんだから。
 「ブギー・ワンダーランドで踊りだせば、ロマンスが生まれる」
 「すべてのレコードが演奏され、私の心はずっとつぶやき続ける『Boogie Wonderland!』『Wonderland!』って」

 天下のアース、怖いものなしのEW&Fの「ディスコ賛歌」は、それまでの凝ったアレンジを抑えて、シンプルで力強く、こむずかしいメッセージも一切なし、よって心から楽しむべし。70年代後半のいわゆるディスコ・クラシックのナンバー1ソングは、"Boogie Wonderland"でいいじゃないのかな。

e0093608_717359.jpg で、もちろんEW&Fの曲ではあるんだけど、この曲のカッコよさを生み出している半分以上は、エモーションズにあると思う。何てったって、彼女達のコーラス・ワークは最高にキマッてる!さすがのフィリップ・ベイリーもあまり出番がない。
 77年に"Best Of My Love"で全米1位になったのだから、大きな態度で主役を奪ったって、文句なし。

e0093608_6481811.jpg "Best Of My Love"ほど、全てがツボにはまって、見事に仕上がったポップスって、なかなかないと思う。今聴いてもちっとも古くない、ご機嫌にグルーヴィで何回でも聴きたくなるよ。モーリス・ホワイト・プロデュースのベスト3に入る傑作。ひょっとしたら、最高作かも。
 これを含むアルバム「Rejoice」もいいんだ。日本のアイドルものみたいなところもあって、結構可愛らしくて面白いのだ。モーリスのプロデュースといい、Tom Tom 84のアレンジ、バックをつとめるアル・マッケイやヴァーディンも絶好調ですな。


 そんな彼女達のもう一つの代表曲が"Boogie Wonderland"なわけ。当然、我々「チーム大橋」も、女性ボーカル陣、(山下)ユキコ・ネーサンと(佐藤)ヒロシ・ヒロチャンの二人が大活躍。ここにジュンコさんも加わって、エモーションズの3声ハーモニーを見事に再現したのでありました。おまけに間奏部分では、ベースのロクさんと4人で、ステップ、ステップ、ステップ。足がつりそうになっても、ビートがあるかぎり、ダンスは止まらないのでした。
 老体にムチ打った、我々の頑張りのかいもあって、どの会場、どのステージでも、大いに盛り上がっていただきました。年齢に関係なく、みんな立ち上がってリズムに乗ってる姿を見れるのは最高にうれしかった。本当にありがとう。ライブで皆が一つになれる感覚って、何度やっても感動するし、何もかもが吹っ飛んでサイコーの気分でした。

 こんな喜びを与えてくれる曲を生み出してくれたアース・ウインド&ファイアーには心からの感謝と敬意を表したい。
 極めて意図的に「ディスコ」「ダンス」をターゲットにしながらも、ちゃんと音楽作品としての品位を失わずにいるところが、やはりさすがアースだと思う。

e0093608_7272678.jpg そこで、この曲の制作において、モーリス・ホワイトのプロデューサーとしての目利きの良さが光る部分を指摘しておきたい。
 "Boogie Wonderland"は、モーリスらメンバーの曲ではなく、完全に外注で、メロディを作ったのは、ジョン・リンド(Jon Lind)という人物。彼は74年にモーリスとともに、"Sun Goddess"をラムゼイ・ルイスのために書いた実績を持つ。EW&Fもライブでのレパートリーに入れており、75年のライブ盤「Gratitude」に収録されている。
 アース以外では、85年のマドンナの大ヒット曲"Crazy For You"が有名だろう。

e0093608_7264635.jpg で、彼は作曲家として売れる前、今でも多くの支持者を持つ伝説のバンド、フィフス・アヴェニュー・バンドの一員だったのだ。フィフス・アヴェニュー・バンドは68年にニューヨークで結成され、70年に解散して、アルバムも「Fifth Avenue Band」1枚のみなのだが、これが時代を先取りしたようなクロスオーヴァー感覚と洗練さを持つサウンドで、演奏のみならず、コーラスワークの巧みさも光った。


e0093608_7295470.jpge0093608_730397.jpg また、各メンバーがそれぞれソングライティングのセンスが良く、高い音楽性を持った、まさに「早すぎた」バンドだった。
 日本では、はっぴえんどやシュガーベイブなどに大きな影響を与えたようで、この「Fifth Avenue Band」、リーダーだったピーター・ゴールウェイが解散後結成した「Ohio Knox」、ゴールウェイ自身のソロ「Peter Gallway」の3枚は、山下達郎さんに「三種の神器」と言わしめた名盤として知られていた。また彼らを「AORへの先駆け」「プレ・AOR」と評価する向きもある。

 で、何と、モーリス・ホワイトが、このバンドのファンであったらしく、特にケニー・アルトマン(Kenny Altman)とジョン・リンドの曲が気に入っていたらしい。彼らは本国アメリカでは全く売れなかったというのに、まして黒人ミュージシャンであるモーリス・ホワイトが、ちゃんと彼らの才能に目をつけていたいうのが驚きだ。なるほど、私もケニー・アルトマンの書いた"One Way Or The Other"は大好きだし、確かに69年にこのサウンドは進んでいる。
 そして、モーリスは74年の「Open Our Eyes」で、彼にボサ・ロック調の"Feelin' Blue"を書き下ろしてもらっている。

 また、ジョン・リンドの方は、フィフス・アヴェニュー・バンドでは大ラスの"Angel"1曲だけしか作っていないのだが、これが、なかなかグルーヴィなブラス・ロック調で良いんだ。中盤ではコーラスをフィーチャアする感じも、その後のアースとのつながりを予感するものがあって面白い。
 
e0093608_7301697.jpg そして、これは今回初めて知ったんだけど、ジョン・リンドはその後ハウディ・ムーンという3人組のユニットを結成して、74年にアルバム「Howdy Moon」を発表。ここのメンバーに、ヴァレリー・カーターがいるのだった!
 プロデュースはリトル・フィートのローウェル・ジョージで、全体にはアコースティック中心のフォークぽいムードに、少しハネた感じのリズムが加わって、ボーカル陣が少しずつ、R&Bぽいニュアンスがあるのが、なかなかいい。今後ちょくちょく聴きそうな好盤。だが、彼らもこれ1枚で終わってしまうのだった。
 
e0093608_7302499.jpg この後、77年に彼女のファースト・ソロ「Just A Stones's Throw Away」でもローウェル・ジョージがプロデュースをやっており、そこにモーリス・ホワイトも何曲かプロデュースしていて、EW&F軍団をはじめ、当時のL.Aの一流ミュージシャンが勢揃いしていた。
 この時代は、LPの裏ジャケを見て、どういうミュージシャンが参加しているかを確認して購入するのが、ほぼ常識だったので、このアルバムなんかはまず問題なく、AOR系に興味ある人は、みんな買った口ではないかな。結構、仲間うちでも評判になっていたのを思い出す。

 個人的には、前回紹介した2nd「Wild Child」の方が好みなのだが、1stの1曲目"Ooh Child"がやけに印象的だったような。今は持ってないんで、何とかしたくなってきた。

e0093608_8243148.jpg それから、彼女は「I Am」につづくEW&Fのアルバム「Faces」に"Turn It Into Something Good"をモーリスらと共作しておりました。これ、なかなか良い曲だし、アレンジもカッコイイ。私は、「I Am」よりも「Faces」が大好きなのだが、80年当時はシングル・ヒットがなく、2枚組だったこともあり、あまりセールスが伸びず、アース帝国失速の原因みたいな言われ方だった。けど、私は、当時も今も「Faces」は傑作だと思っている。

 おおっと、実は「I Am」を中心に、このアルバム制作での重要人物であるデイビット・フォスターも話題にしたかったのだが、それはまたの機会にします。

 それでは。

 
 
[PR]
by harukko45 | 2011-09-19 08:35 | 音楽の仕事

詳細(7)からの続き。

 m7.Disoco Medley_c.Fantasy

 じょじょに"Fantasy"に近づきます。
 
 チャールズ・ステップニーという大参謀を突然失ったモーリス・ホワイトのショックは大きかったと思う。だが、まさにトップスターの道を歩んでいるEW&Fに停滞は許されない。すぐに、ステップニーに代わるアレンジャーが必要になる。ここで、指名されたのは、再びシカゴ人脈からの人選で、Tom Tom 84(本名トム・ワシントン、「Tom Washington」「Tom Tom Washington」の名義でのクレジットもある)である。

e0093608_18205410.jpg 彼のことは当然、77年の「All 'N All」で大々的に知るわけだが、前作の「Spirit」でも、ステップニーの代役としてタイトル曲"Spirit"(フィリップ・ベイリーのボーカルが素敵!)で、アレンジャーとして参加していた。そして、「All 'N All」では、ストリングスとホーンのアレンジをほとんど担当するのだった。
 ただ、ステップニーが、バンドの「父親」「コーチ役」として細部にわたって影響を与えていたのに比べて、たぶん、彼はもっと職人アレンジャー的に関わっていたのではないかと思う。なので、特別に自分の個性を押し出すようなことはせず、もうすでにスター・バンドとなっていたEW&Fにおけるステップニー・サウンドをうまく継承するように、きっちりとした仕事をしていたと感じる。もちろん、これは今だから言えることで、当時は、彼のアレンジがどうのこうのよりも、バンド全体が「すげぇ」で終わっていたわけ。

e0093608_18165844.jpg Tom Tom 84はこれ以降、「アースっぽい」サウンドが売りになって、各方面で大忙しになった。が、その後いろいろと聞いてみると、彼の本質は、やはりシカゴ時代、70年代のザ・シャイライツ(The Chi-Lites)などの、ユージン・レコードによるプロデュース作品にこそ、出ていると思う。というか、個人的に好きってこと。ただし、ここでも裏方としてのわきまえた仕事に徹しているのだが、それが、王道とも言えるサウンドとして、実に好ましいというわけ。
 それにしても今の時期、ユージンの作り出すメローでスイート(ありきたりな表現でスンマセン)なシカゴ・ソウルがすっごく新鮮。こういう音楽も楽しめるようになるなんて、年齢を重ねるのも悪くないって感じね、うんうん。

e0093608_1532771.jpge0093608_1543448.png で、シャイライツのアルバムでは、72年の「A Lonely Man」(左上)あたりから彼の名前が登場し、彼らの大ヒットである"Oh Girl"や"The Coldest Days Of My Life"にも貢献したのだと思われる。もちろん、シャイライツの名作も良いのだが、ユージンがグループを離れてのソロ・アルバム、77年の1st「The Eugene Record」(左)2nd「Trying To Get To You」(右)がなかなかで、今はこちらの方に惚れ込んでいる。シカゴ・ソウルの顔役を前に、Tom Tom 84も大活躍で、ユージンの片腕のごとき存在だ。そしてその中味は、まさに熟練の味とでも言えるかな。甘さでは1st、優しさでは2nd、どっちもヤバくって子供には聞かせられない。ただし、CD化されているのは1stのみだ。

e0093608_4553220.jpg ちなみに、2ndのタイトル曲"Trying To Get To You "は翌78年に女性ボーカリストのヴァレリー・カーターが「Wild Child」の中でカヴァーしてる。このテイクでも、Tom Tom氏がホーン・アレンジを担当し、ベースをヴァーディン・ホワイトが弾いている。こういう発見(?)こそ「レコード掘りの楽しさ」って感じ。内容的には、深さからいけば、圧倒的にユージンに決まってるんだけど、ヴァレリー・カーターが何とも癒される声で、こういうのもタマランってところなんです、ハイ。

e0093608_5511839.jpg ところで、Tom Tom 84は82年リリースされたジュンコさんの「黄昏」にも参加している。ジュンコさん初のL.A.レコーディングで、彼は例によって、ホーンとストリングスのアレンジを手がけ、EW&Fのホーン・セクションが演奏している。他にも一流ミュージシャンが勢揃いで、実に豪華なレコーディング・セッションだ。

 で、各ミュージシャンの演奏はどれも良いし、若きジュンコさんの歌声も素晴らしい。だが、正直、このアルバムは、聴いていて何となくよそよそしい感じがしてしまう。それは、ミックスのせいなのか、楽曲なのか、アレンジなのか、よくわからない。たぶん、時代がそろそろAORやフュージョンから次に進もうとしていたことが大きいような気がする。
 それは、何もジュンコさんやケンさんだけでなく、当時のポップス先進国であるアメリカとイギリスでも起こりつつあった流れだった。今ここで、話題にしているEW&Fでさえ、この時点ですでに帝国の崩壊が現実になりつつあったのだから。

 だから、ジュンコさんは「何かもっと新しいものを」やりたがっているようで、少し持て余しているようだし、ケンさんも日本ですでに十分やり尽くした音楽を、最後にLAのスタジオ・ミュージシャンでやってみた、というムードか。要するに、二人にとって真の海外レコーディングでの冒険は、翌年のニューヨークとなるのは必然だったのだろう。

 おっと、またどんどん脱線しそうなので、何とか踏ん張る。

e0093608_085231.jpg さて、さて、さて、77年に戻ります。だから、「All 'N All」なのだ。ここでは、アース帝国崩壊の序曲はまだ聞こえてこない。今聴いても、捨て曲なしの好アルバムに間違いない。ただ、前作までと違う要素と言えば、制作前に旅行したブラジルとアルゼンチンでの体験が、プロデューサー・モーリス・ホワイトに少なからぬ刺激を与えたことだ。それによって、かなりはっきりと南米音楽のエッセンスが随所に表れている。

e0093608_6391068.jpg とは言え、EW&Fは初期から、南米音楽の影響があった。例えば、4作目の「Head To Sky」のラストで、エドゥ・ロボの"Zanzibar"を取り上げ、13分の長尺で、ラテン・ジャズ・ロック風に仕立てていた。まぁ、出来としては残念ながら、エドゥ・ロボの最高にクールなオリジナルにはかなわない(Edu Lobo "Cantiga de Longe"、おすすめ!!)が、フィリップ・ベイリーのファルセットによるスキャットをダブリングして、曲のフックに使うというアイデアは、すでに試されていた。

 で、アルバム2曲目の"Fantasy"、キーボードの導入部が何ともドラマチックなムードを漂わせて、いかにも大仰なのだが、続くイントロダクションがやったらカッコイイ。ちょっと出来過ぎじゃないかってぐらい。ところが、歌に入ったら、あら驚き、サンバじゃねぇか!でもって、この哀愁のメロディと、少々説教っぽい歌詞が、アースのキャッチフレーズの「宇宙」「エジプト」「占星術」やら何やらと結びついてくるんですなぁ。よく考えると、ムチャクチャなイメージの展開なんだけど、曲自体は良いのよ。
 特に、日本人はこういう哀愁のムードに弱い。だから、日本でのこの曲の人気はすごい。当時のディスコ・ブームでの象徴的なヒット曲として、この"Fantasy"を上げる人も多いと思う。今回、各会場でのお客さんの反応も、この曲で俄然ヒートアップしてくる感じがよくわかった。
 それから、Tom Tom 84のホーン・アレンジも気が利いていて、実際に演奏していると、サビのボーカルとの絡みで、かなり燃えるのだ。ほんと楽しかった。

e0093608_7543862.jpg そこで、この曲を作ったのは?

 まぁ、モーリス&ヴァーディンのホワイト兄弟はともかく、もう一人クレジットされているエドゥアルド・デル・バリオ(Eduardo del Barrio)って誰?

e0093608_824584.jpg 早速調べてみると、彼はアルゼンチン出身のキーボード奏者で、コスタリカ出身のギタリスト、ホルヘ・ストランツとともに、カルデラ(Caldera)という多国籍ラテン系のフュージョン・バンドを結成し、75年にデビューした。そして、彼らの2枚目「Sky Island」(右上)、3枚目「Time And Chance」(左)をEW&Fのキーボードのラリー・ダンがプロデュースしておったのである。

 何か、いろんなことが出来過ぎみたいに組み合わせっているようにさえ思うけど、やっぱり、こういう人脈を形成するあたりが、モーリス・ホワイトの「やり手」度の高さを物語っているではないか。

 とにかく、この曲に正しいラテンの血を注入したのは、デル・バリオに違いない。また、彼は9曲目の"Runnin'"でも共作者として名を連ねているが、これは、まさにカルデラみたいなラテン・フュージョン。ただ、前述の"Zanzibar"同様、ファルセット・ボイスによるメロディがここでも登場するのが、かろうじてアースか。

 そして、そして、もう一つ。この「All 'N All」において、インタールードに使われている"Brazilian Rhyme"というタイトルの小曲が二つあって、共にミルトン・ナシメントの作とクレジットされていたが、一つは、クラブ系で人気の高い"Beijo"で、これは実はモーリスの作らしく、もう一つの"Ponta de Areia"はまさしくミルトン作の名曲。

e0093608_8364589.jpg ただし、これに関しては、ジャズ系のレコードを聴いていた人なら、すでにおなじみの曲で、74年に発表されたウェイン・ショーターの「Native Dancer」でのオープニング曲だった。このショーターのアルバムも大好きで、よく聴いたっけ。ショーターのソプラノ・サックスとミルトンの「宇宙人」的ボーカルの融合が、まさに、この世のものとは思えないもので、今聴き直しても最高だ。

 だから、アースがこの曲を取り上げたのを聴いて、あまりにも時間が短いのにがっかりした。それに、ここでのアレンジはTom Tom 84ではなく、エウミール・デオダートがやっているというのに、わずか52秒でフェイドアウトなのだ。

e0093608_902332.jpg ところが、1992年に発売された3枚組のベスト盤「The Eternal Dance」に、このデオダート編曲の"Ponta de Areia - Brazilian Rhyme"が2分10秒のバージョンで収録された。これが完全版なのかどうかはわからないが、少しは気持ちも収まった感じになった。ちなみに、この「The Eternal Dance」は面白い未発表テイクがいろいろ入っているのと、各時代の代表曲を年代順にきちっとまとめてあるので、なかなか優秀なベスト盤であり、彼らの歴史をザックリ知る上でも、また入門盤としても最適だった。

 それにしても、当時はアースの新譜を興奮して聴いていただけだったが、今さらながらに、チャールズ・ステップニーの死をきっかけに、EW&Fは音楽の方向性を変えざるを得なかったのだ、ということがよく理解できた。

 次は"Boogie Wonderland"。まだ、続きます。
[PR]
by harukko45 | 2011-09-17 10:12 | 音楽の仕事

詳細(5)からの続き。

 まったく、この詳細シリーズを長々と中断したまま、だらだらしてしまった。一応、言い訳すると、パート6ではチャカ・カーンを中心にしたレポを書くつもりだったので、彼女のこれまでのアルバムを久しぶりに聴きだしたところ、これがまぁ、どツボにはまったというか、すっかり魅了されてしまい、毎日毎日、聴きこんでしまった。正直、チャカ・カーンという人をちょっと過小評価しすぎていたのではないか、と反省しきりの今日この頃といった感じ。つまり、簡単に「プリンセス・オブ・ソウル」「クイーン・オブ・ファンク」と書かれてしまう彼女こそ、実は女性ポップ・ボーカル史上に革命を起こした人なのではないか、とさえ、今は思っているのだった。
 それほど、彼女の後世への影響は大きかった、と確信するにまで至っている。

 とは言え、ルーファスの10数枚、ソロの10数枚を聴き倒すのはなかなかの作業(?)、いや凄い喜び。おまけに、偉大なるプロデューサーであるアリフ・マーディンのこともチェックしはじめると、これはもっともっと大変なことになる。アリサ・フランクリンに始まって、ダニー・ハサウェイ、ラスカルズ、AWB(アヴェレージ・ホワイト・バンド)、ビージーズ、スクリッティ・ポリッティ、でもって、とどめにノラ・ジョーンズと。いやいや、まだまだ....。
 奥深いアメリカ音楽界においても、まさにProdecer's Prodecerと言えるのはクインシー・ジョーンズとアリフ・マーディンだと思っている。これは、単にヒット作の数ではない、商業的な部分とともに、音楽的にパーフェクトな仕事をしているのか、どうか。

 というわけで、いろんな音楽を聞きすぎて、簡単にまとめることができなくなった。だが、それではいっこうに終わらないので、とりとめのない流れになってしまいそうだが、なんとかやってみる。

 m7.Disco Medley_b: What Cha' Gonna Do For Me

e0093608_21541935.jpg アリフ・マーディン・プロデュースによるチャカ・カーンのアルバムの数々は、チャカ自身のキャリアの中でも、最も成功していた時代の傑作集と言えるだろう。
 特に1978年のファースト・ソロ「Chaka」(左)、80年の「Naughty」(右下)、81年の「What Cha' Gonna Do For Me」(左下)の3つは、「アリフ・マーディン3部作」として高く評価したい。というか、誰が文句つけるってぇの、これらに。
 強いて、どれが好きかと言うと、「What Cha' Gonna Do For Me」の音楽性の高さにはノックアウトだが、当時一番繰り返し聞いていたのは「Chaka」、やっぱり"I'm Every Woman"がいい!(アシュフォード&シンプソンの名作、リチャード・ティーのピアノもカッコイイ。)

e0093608_21542579.jpg 両側をプラチナ・アルバムにはさまれて、どうしても地味な存在だった「Naughty」の良さは最近になって開眼。アシュフォード&シンプソン作の"Clouds"や、"Nothing's Gonna Take You Away"と"So Naughty"の2曲つなぎにシビレまくっております。全体にソウル度が高いのもいい。後半に行くにしたがって、その濃度はどんどん上がり、"Papillion (aka Hot Butterfly)"で昇天。

e0093608_16195269.jpg シンセ・ベースが冒頭から大活躍だった3枚目は、音楽的に凝りまくっていて、ジャズやフュージョン・ファンをも巻き込んでの人気作となった。それはビートルズの"We Can Work It Out"やディジー・ガレスピーの"A Night In Tunisia"で特に顕著だったが、やはりこのアルバムでの最高のキラー・チューンはタイトル曲の"What Cha' Gonna Do For Me"に違いない。シングルとしてもR&Bチャート1位をとった大ヒット曲で、"I'm Every Woman"とともに、この時期の彼女を代表する名曲である。

 だが、この曲に含まれる高い音楽性は、単にディスコ/ダンス・ミュージックとして片付けられない。R&B、ファンク、ジャズ、AORらのさまざまな要素が最高に洗練された形で1曲に集約されているのだから。そういう点においては"Ai No Corrida"以上にレベルの高い曲だと思う。

 とにかく、こういうシンプルなリズム・パターン(16ビートを内包する8ビート)でファンキーなグルーヴを出すのって、けっこうむずかしい。それでいて、70年代前半のファンクのように、「汗臭い」だけじゃ駄目で、極めてオシャレで都会的でなくてはカッコ悪い。そこら辺に、ミュージシャン側に知性も求められるわけだ。
 
e0093608_18585853.jpg この曲を作ったのは、AOR系シンガー・ソングライターとしてデビューしていたネッド・ドヒニーと、AWB(アヴェレージ・ホワイト・バンド)のヘイミッシュ・スチュアート。で、AWBのアルバム「Shine」(80年)に収録されていた。面白いのは、このアルバムのプロデューサーがデイビッド・フォスター。
 それまでのAWBは、アリフ・マーディンのプロデュースで、"Pick Up The Pieces"や"Cut The Cake"のヒットがあるスコットランドのファンク・バンドだったのだが、時代の流れでAOR的方向に変化する必要に迫られ、デイビッド・フォスターに任せたわけ。ところが、フォスターはワンマンに、どんどんアレンジと演奏を進行させたらしく、そういう彼の姿勢にメンバーは反発。しまいにコンテンポラリーな音楽性にも嫌気がさしたとのことで、この後、分裂・解散への道を辿ることになった。(この後、82年にシカゴが同じように、フォスターの力を借りて、80年代の変革に成功した。とは言え、シカゴもその後、彼との作品に対してあまり良い発言していない感じだしなぁ。)

 それじゃこの「Shine」がひどいか、と言うと、そうでもないんですなぁ。特にAORファンの多い日本では、評価と人気が高い。もちろん、初期のAWBのファンクが好きな人(私も)には、かなりショッキングなサウンドなんだけど、今聞くと「これはこれなり」って思える。意外に楽しめるここ数日であります。
 
 というわけで、"What Cha' Gonna Do For Me"のオリジナル・アレンジは、たぶんデイビッド・フォスターとAWB。これをチャカ・バージョンでは、グレッグ・フィリンゲインズとアリフ・マーディンがアレンジをやっていると思われるが、イントロのシンセ・フレーズあたりは残しつつも、いろいろと手を加えて、全体的には(AWBの狙いとは逆に)、より「ファンキー」で、より「ゴージャス」な方向性でまとめられている。仕上がりは圧倒的にチャカの方がカッコイイ。AWB版は、まぁ「軟派」で、あんまり盛り上がらない。特にチャカでは至福の喜びとなる大サビ部分が、全然サッパリなのだ(それが良いとも言う人も多いでしょうな)。

 それにしても、この曲がチャカに合うとよんだ、アリフ・マーディンの耳はすごい。

e0093608_1983350.jpg ちなみに、もう一人の作者であるネッド・ドヒニーもセルフ・カヴァーしていて、88年の「Life After Romance」で堂々の1曲目を飾っている。で、このバージョン、チャカのハイテンションとは全く違うレイドバック感が、かなり良いのだ。さすが、ビバリーヒルズの大富豪家出身、何とも言えない「ゆるさ」と「余裕」がたまらない。


 おっと、YouTubeで面白いビデオを発見。ネッド・ドヒニーがバンドとともに、この曲をリハしているところが撮影されていて、これがまたサイコーにゆるい!必見です。



 さて、チャカの方にちょっと話を戻すと、この頃のアルバムではドラムスはスティーブ・フェローンでキマリ!(ジュンコさんの「Point Zero」にも参加)なのだが、これは当然、アリフ・マーディン〜AWB人脈。ただし、彼とヘイミッシュ・スチュアートのみ、78年の「Chaka」から重用されているので、彼らだけがお気に入りだったのかも。
 また、この曲のイントロでのドラム・フィルは最高にカッコ良くて、チョーしびれるのだが、AWBバージョンもチャカ・バージョンも全く同じだった。だが、ミックスの違いで、これまたチャカの勝ちである。

e0093608_20114254.jpg
e0093608_1938784.jpg ついでに、ドラマーつながりで、78年にチャカがいたバンド、ルーファスの「チャカ抜き」アルバム「Numbers」(左)でデビューしたのがジョン・ロビンソン。そして、翌79年には「チャカ入り」アルバム「Masterjam」(右)をリリースするが、そのプロデュースをクインシー・ジョーンズが担当。これにより、ジョン・ロビンソンは彼から「ロスで最高の若手ドラム奏者だ!」との評価を受け、晴れてクインシー一派にも参加するわけですなぁ。
 肝心のルーファスの方はどうだったかというと、個人的にはクインシーとの組み合わせは、セールス的にはともかく、音楽的には失敗だったと思う。

 とは言え、ルーファス自体はすごくカッコいいバンドだった。ロック色の強い73年の1st「Rufus」から、"Tell Me Something Good"を生んだ2nd「Rags to Rufus」、トニー・メイデンとボビー・ワトソンが加わってファンク色が濃くなった「Rufusized」、「Rufus Featuring Chaka Khan」。マデュラ(Madura)のデイビッド・ウォリンスキーも加わって、意欲的な音楽性が発揮され始めた「Ask Rufus」、「Street Player」と、どれも良いのだ。今は、こちらの方を興味深く聴き返すのでありました。と同時に、ジュンコさんが美乃家で目指したものって、彼らのような形に近かったのか?、とも思うのだった。
e0093608_2328552.jpge0093608_23293882.jpg e0093608_23304424.jpge0093608_2331177.jpg
e0093608_2331963.jpge0093608_23311559.jpg 


e0093608_206510.jpge0093608_2062877.jpg さてさて、偉大なるシンガー、チャカ・カーンは現在でも活躍中、最近は作品がめっきり少なくなったが、2004年のオーケストラをバックにしたスタンダード集「Classikhan」、2007年のファンク大復活の「Funk This」はなかなかの力作だ。特に、「Funk This」はかなりゴキゲンで、ジミヘン、プリンス、ジョニ・ミッチェル、ドゥービー・ブラザーズらのカヴァーが収録され、ルーファスのセルフ・カヴァーもあって(トニー・メイデンとの競演)、実に興味深い。

e0093608_2354838.jpg おお、そういえば、ここでマイケル・マクドナルドをゲストに"You Belong To Me"をやっているのだが、マイケル・マクドナルドと、この曲を共作したカーリー・サイモンが78年にヒットさせた時、プロデュースしていたのは、またまたアリフ・マーディン先生だった!


 そして、偉大なるプロデューサー、亡きアリフ・マーディン氏の偉業をちょっとだけのぞく意味合いをこめて、これもご覧ください。


 まだ続く、と。
[PR]
by harukko45 | 2011-09-07 20:08 | 音楽の仕事

詳細(4)からの続き。

 m7.Disco Medley

 今年のクラブサーキットの目玉は、やはりこれだったか。ジュンコさんが今年の始めからやりたいと言っていたディスコ・メドレー。我々は過去に2つのディスコ・メドレーを作っていて、1997年から98年にかけて「Part 1」、98年から99年に「Part 2」をメニューに入れていた。
 特に「Part 1」は親しみやすい曲が並んでいて、つながりも良く、お客さん達の反応も良かったので、その後も2001年ぐらいまで、何回かセットに取り上げられていた。その時の曲目は「Ai No Corrida〜Got To Be Real〜Sunshine Day〜I'm Every Woman〜Boogie Wonderland」。
 「Part 2」は「1」の好評を受けて、その勢いで作り上げたのだが、少々通っぽい曲が並んでしまい、また演奏面でもかなり集中力の必要な内容で、実を言うとむずかしい仕上がりになってしまった。それは、我々バンド側はやりがいのあるものだったが、いかんせん、聴き手の皆さんには少々ハードだったようだ。その曲目は「We Can Work It Out〜What Cha' Gonna Do For Me〜Lady Marmalade〜Fantasy〜Getaway」。この「Part 2」は残念ながら、1ツアーぐらいでオクラ入りとなってしまった。

 今回ディスコ・メドレーを復活させるにあたり、一応参考までに当時の音をチェックするために事務所に探してもらったところ、幸運にもMDが残っており、皆で聴くことになった。
 聴いてみて驚いた。何と、「Part 2」のパフォーマンスが凄まじかった。「こりゃ、曲を良く知らない人は引くか?でも、音楽好きが聴いたらブっとんで喜ぶ」というのが、我々の感想であり、10年前の自分達の尖った、勢いのある内容に驚喜したのであった。

 ということで、この二つのメドレーから特に美味しい部分を合体させることになり、5曲が選ばれたが、今の気分や時代性を考え、より充実した内容を目指すべく、細かい部分の修正を行いながら、4曲にしぼられた。それが「2011バージョン」で、曲目は「Ai No Corrida〜What Cha' Gonna Do For Me〜Fantasy〜Boogie Wonderland」となった。

e0093608_23214955.jpg a: Ai No Corrida(愛のコリーダ)

 クインシー・ジョーンズの81年の大ヒット・アルバム「The Dude」の1曲目で、ディスコ・チューンとして最も洗練された内容となった作品の一つと言っていい。オシャレにかっこ良くきまったアレンジだが、サビの日本語がやっぱ、しびれるわけで。さすがクインシー大先生のプロデュース、実にうまくまとめておられます。

 この曲を元々作ったのはイギリス人のチャス・ジャンケルで、彼のオリジナル・バージョンを聞くと、クインシーが意外にもかなり忠実に再現していることがわかる。ただ、やっていることは同じでも色づけが違うって感じ。クインシーはジャズ・フュージョン系の名手と、豪華なボーカル陣を適材適所に配置して、それはそれは見事なアンサンブルで「都会のダンス・ミュージック」を演出。文句のつけようがない。
 だが、今聴くとチャス・ジャンケルのバージョンの何ともエグい感じ、シンセやビートの適度なダサさや下世話さが、より「ディスコ色」を醸し出していて、なかなか良いのだ。個人的にはチャスに1票である。

e0093608_0131069.jpge0093608_0132618.jpge0093608_0143060.jpg さて、クインシー・ジョーンズはこのアルバムの前後に、マイケル・ジャクソンの2大傑作「Off The Wall('79)」「Thriller('82)」をプロデュースしており、85年には「We are the World」も作っているわけで、まさに絶頂期でしたな。

e0093608_0241945.jpg とは言え、私が好きなクインシー・ジョーンズは70年代。「The Dude」と同じディスコ・ダンス系の作品なら、78年の「Stuff Like That」がいい。スティーヴ・ガッド、リチャード・ティー、アンソニー・ジャクソン、マイケル・ブレッカーらニューヨークの一流ミュージシャンが中心で、それまでのLAの制作(「The Dude」は再びLAに戻る)とは一味違う。とにかく、彼らのプレイは本当にサイコーだし、それを生かし切って、ポップ・ファンもフュージョン・ファンも満足させてしまうクインシーのプロデュースが素晴らしい。チャカ・カーン、ルーサー・ヴァンドロス、パティ・オースティンのボーカル陣も凄い。

e0093608_040429.jpg だが、もっと好きなのは74年の「Body Heat」。リオン・ウェアを中心としたボーカル陣(ミニー・リパートン、アル・ジャロウら)がチョー・カッコイイ。もう1曲目のタイトル曲だけでしびれまくり。この曲のイントロのカッコ良さたらっ!!! ラストの"If I Ever Lose This Heaven"もいいし、"Everything Must Change"もこれがオリジナル・バージョンで作曲家ベナード・アイグナーが自ら歌っている。このアルバムは、クインシーがマービン・ゲイやスティービー・ワンダーらのニュー・ソウルに最も近づいた作品、リオン・ウェアはマービン・ゲイの大傑作「I Want You」のプロデューサーだから、当然か。

e0093608_0515934.jpg でもでも、もっともっと好きなのが73年の「You've Got It Bad Girl」。クインシー自身はあまり気に入っていないアルバムだとの発言があり、CD化もどういうわけか、ようやく最近になっておこなわれた。だが、私はこのアルバムが一番好きだ。
 クインシーが初来日(たぶん73年)したさい、何とNHK(ん?TBSかも)が彼の特集を組み、彼のオーケストラがスタジオ・ライブをやったのをテレビで見て、私は大感激大興奮。その頃に、一番新しいアルバムとしてリリースされていたのが、これだったのだ。来日メンバーはレイ・ブラウンがベース(彼はクインシーのマネジャーでもあった)、サックスとフルートがジェローム・リチャードソン、ハーモニカとギターでトゥーツ・シールマンスもいたと思う。で、ピアノはデイブ・グルーシンだったらしい。じゃぁ、ドラムスはグラディ・テイトだったのかも。

 その時聴いた"Manteca"(アルバム7曲目)がかっこ良くてかっこ良くって。

 それから、このアルバムの1曲目、ラヴィン・スプーンフルの"Summer in the City"なんだけど、これが何とも言いようの無いほど、オシャレで、センスのいいインスト(中盤からヴァレリー・シンプソンのボーカル登場、これもたまらん!)に仕上がっているのです。クインシーはこの曲でもグラミーをもらってますね。
 それから、アレサ・フランクリンとロバータ・フラックに捧げるメドレーと称して"Day Dreaming"と"First Time Ever I Saw Your Face"をやっているんだけど、このアレンジがもうサイコー、サイコー。いや、別に何やっているわけじゃないんだけど、もうたまらんのです。歌っているのは、これもヴァレリー・シンプソンだと思うんだけど、これが本当に大好きです。ヴァレリー・シンプソンは作曲家としても素晴らしいけど、ボーカル、バック・コーラスとしても最高ですよ。

 ついでに、もう一つ。私のクインシー初体験はアメリカの刑事ドラマ「鬼警部アイアンサイド」。そのテーマ曲が彼の作編曲。これも超名曲です。毎週火曜夜10時にTBSでした。必ず見てた。で、このテーマ曲にしびれまくっていたのでした。いつのまにか、「ウィークエンダーのテーマ」みたいな言われ方してたけど、じょうだんじゃない!「アイアンサイド」はドラマ自体も面白かったんだ。ペリー・メイスンやってたレイモンド・バーが主演で、若山弦蔵さんの吹き替えも良かったなぁ。




 まだまだ続くと。

 
[PR]
by harukko45 | 2011-09-01 01:23 | 音楽の仕事

グラミー賞

 第52回のグラミー賞、なかなか面白かったです。今年は何やらショウの演出家が代わったそうで、そのせいか、全体に良いパフォーマンスが多かったし、見せ方にも驚きがあった気がします。

 で、非常に顕著に感じる事は、「ヒップホップ・ソウル系」と「カントリー系」の二大勢力が今のアメリカン・ミュージックってことでしょうか。

 最多の6部門を獲得したビヨンセは正直、最後の「アルバム・オブ・ジ・イヤー」を獲れなかったが痛いのでは?つまり、数はもらったけど、肝心なものはテイラー・スウィフトに持ってかれた、って感じ。
 個人的な思いとしても、確かにビヨンセはここ近年で最も素晴らしいボーカリストの一人だとは思うけど、そのパフォーマンスが何か今ひとつガツンと来ないんですね。だから、レディー・ガガ(特に後半のエルトン・ジョンとのコラボは良かった)や、水に浸かったあげくにシルク・ド・ソレイユばりにぐるぐる回されたP!nkとかの方が印象に強く残っちゃったのでした。

 そんでもって、賞レースのライバルとなったテイラー・スウィフトは、緊張からかピッチなんかはあやしいところがあったものの、何とも心地よい歌声と曲のムードが予想以上に好印象。しかし、2曲目に登場してコラボしたスティービー・ニックスのあまりの変貌ぶりには驚いた驚いた!御年61歳か、いやぁフリートウッド・マックが一番売れた70年代後半、そしてソロとして活躍した80年代初頭の「妖精」イメージは全くありませんでしたなぁ。
 なので、しばし唖然として見ておりましたが、妖精ならぬ妖怪(失礼!)のような彼女に負けないテイラーちゃん、なかなかやりますよ。

 同じくカントリー系では、最優秀新人となったザック・ブラウン・バンド、こいつらはウマイ!年間200回のライブをこなして来たという実力はホンモノだわな。これはライブでウケるでしょう。途中で、レオン・ラッセルが加わってのコラボでしたが、正直レオンさんはおまけでしたね。彼らだけでガツンとやってほしかったかと。とは言え、イイッ!

 ヒップホップ系では、ブラック・アイド・ピーズが実績通りの貫禄を見せたけど、まぁ予定調和とも。それはエミネムらにも言える。ただ、この時のドラマーのパフォーマンスは面白かったけど。

 それよりも、何と言っても悲惨だったのはロック系。まずはグリーン・デイのミュージカル?まぁ、勝手にどうぞって感じか。もういい加減パンク風の売りはやめて欲しい。
 スペシャル的な扱いだったボン・ジョヴィは今回の中で最も場違いで、地味ーな内容でした。とにかく、1曲目のイントロだけで、サウンドもアレンジも「古くさっ!」と思ったよ。

 そこ行くとジェフ・ベックはレス・ポールへのトリビュートとして登場で、さすがに颯爽としたプレイを聴かせてくれたのだが、企画としては面白かったけど、いかんせん"How High The Moon"1曲だけであっさりとした内容だったので、ちょっとガッカリ。

 マイケル・ジャクソンへのトリビュートも、同じくあっさりめで、期待したほどでは。映像を3Dで見れたら、もっと凄かったのかもしれないが。

 おっと、忘れるところだった。マックスウェルの復活はめでたい。彼こそ、現代のマーヴィン・ゲイ、彼のボーカルも作り出すサウンドも実にユニークだし、すっごく惹かれる。あまり長く休憩しないで、もっとコンスタントに制作していってほしいです。
 パフォーマンスではオリジナルの後に、ロバータ・フラックが登場して、まぁオキマリとも言える「Where Is Love?」のデュエットとなり、確かにロバータへの敬意はわかるけど、ザック・ブラウンと同じく、彼だけで構成してほしかったと感じた。でも、今後に期待したいアーティストです。

 というわけで、出来不出来はあるものの、いろいろ盛りだくさんで、全体としては例年以上に楽しかった今年のグラミーでした。
[PR]
by harukko45 | 2010-02-01 23:34 | 聴いて書く

e0093608_2349448.jpg 私が2年前にかなり惚れ込んでこのブログでも紹介した女性ボーカリスト、クリセット・ミッシェルの2ndは今年の3月に出ていたのね。うっかり、全くチェックしていなかった。あらあら。

 デビュー作の"I Am"ではグラミーでも最優秀R&Bボーカル・パフォーマンス部門で受賞し、アメリカでは一躍期待の星となっていたわけですが、どちらかと言えば、歌唱力とともにダンスやら、セクシーな外面などが売れる必須条件となっている現在のアメリカでは、彼女のような歌一本で勝負する人はしんどい部分もあるか?と余計な心配をしておりました。
 ですが、2年後の今年リリースとなった待望の2ndは、何とビルボードTop200で初登場1位だったとはうれしい驚きであります。

 で、このアルバム"Epiphany"は全体に曲の出来が格段に良くなりました。前作はとてもジャズ的な要素を感じさせていて、彼女自身もビリー・ホリディやエラ・フィッツジェラルドら偉大のボーカリスト達へのリスペクトと影響を語っておりました。私のような古めの音楽嗜好の者は、彼女の「ジャズっぽさ」「クラシック・ソウル風の歌声とルックス」にギュっと心をつかまれてしまったわけですが、その分楽曲に「今」「これから」を感じさせるツカミが弱かった。
 プロデュースの面でもWill.i.amあたりはいい仕事をしていましたが、それでも割と渋めではありました。

 それが、今回は人気絶頂の売れっ子Ne-Yoをエグゼクティブ・プロデューサーに迎えての制作の効果か、俄然ポップな仕上がりになっていて、気になっていた「ツカミ」をちゃんと作り出していると感じました。かなりの曲に関わっているChuck HarmonyはNe-Yoがらみの人らしいが、この人に大々的にプロデュースを任せたことで、アルバム全体の統一感も生まれましたな。うーん、良かった良かった。

 それでいて、クリセットの良いところと言っていいと思いますが、「この1曲がサイコー!」という感じでなく、気持ちのいいボーカルをそれぞれの曲で堪能しながら、アルバムを通して聴き続けられるということ。
 正直、最近のR&B系に代表されるポップ・チューンは、音質のうるささや音像の平坦さ、またそれ以前に打ち込みのつまらなさから、ずっとアルバムを聴き通す事がなかなか厳しいというのが現実。少なくとも私はそう。

 さて、そんなこんなで話が脱線しそうなのでやめますが、この"Epiphany"は最近では珍しくスルっと最後まで楽しめたのでした。それと、1stの"I Am"をもう一度聞き返したくなるという効果もありました。でもって、聴いてみると、うーむ、この初々しいくもちょっと古っぽい感じも結構好きに思えるなぁ。ひょっとすると、新作は洗練され過ぎか?と少しだけグラグラしている自分がおります。
[PR]
by harukko45 | 2009-09-29 00:42 | 聴いて書く

グラミー賞

 ここ数年の中では、けっこう面白かった方ではないかな。全体的にパフォーマンスで楽しめたものが多かったのが良かったです。

 フランク・シナトラ(映像)とアリシア・キーズのデュエット(さすがアリシアだけど、ちょっとニュアンスつけすぎかも、この手はナタリー・コールがやっぱいいかなぁ)に始まって、

 シルク・ドゥ・ソレイユらによるビートルズへのトリビュート・ライブ(黒人少年のアカペラとゴスペル隊による"Let It Be"が新鮮)、

 キャリー・アンダーウッド(どうしちゃったんでしょうか、ブリトニー・スピアーズになるつもりか、つまんない)、

 おっと懐かしいザ・タイムが再結成してリアーナと競演(タイムの軽快なノリがプリンス全盛時を思い起こさせて楽しかった)、

 カニエとダフト・パンクのコラボ(まぁまぁ。ダフト・パンクは好きだけど、カニエは私には別段どうもねぇ)、

 ファーギーの歌にジョン・レジェンドがピアノで伴奏(ジョンはちゃんと弾いてたのかなぁ?でも好きだからいいや。ファーギーの"Finally"は年間ビルボード・チャートNO.1だったはずだけど、グラミーは何もあげないの?)、

 ティナ・ターナーとビヨンセという骨盤系の競演(ティナはやっぱ最高、"Proud Mary"での競演楽しかった。)、

 フー・ファイターズ(相変わらずの力みすぎ、音楽的には嫌いじゃないんだけど、最近段々興味がなくなってきた)、

 ブラッド・ペイズリー(ここ例年のカントリー・パフォーマーの充実ぶりに比べるとちょっと役不足、しかしこの人はギターめちゃウマなんです、実は!)、
 
 アレサ・フランクリンのゴスペル・パフォーマンス(アレサに大感動、声も衰え高音も出ないが、それでも素晴らしい。本物の偉大さに敬服。相手役のビービー・ワイナンズも立派。だが、その後のパフォーマンスはいらなかったし、つまらなかった。最後に再びアレサが登場してくれたのは良かったが、とにかくアレサだけにしぼって、もっと敬意を込めた作りにしてほしかった)、

 ファイスト(よかった。カナダ人アーティストらしい繊細さが好感持てたなぁ)、

 アリシア・キーズとジョン・メイヤー(大活躍のアリシアはもうアメリカ音楽界の新しきリーダーですな。ジョン・メイヤーはグラミーのパフォーマンス部門では引っ張りだこって感じで、毎回登場ね。使いやすいのかなぁ)、

 ハービー・ハンコックとラン・ラン(つまんないラプソディ・イン・ブルー、こういう教養ぶった演出がグラミーの保守性の現れね。何の意味もないのに、有り難がる感じで、全然良くなかった)、

 エイミー・ワインハウス(今回、全てに特別待遇のエイミーはロンドンから。はっきり言ってそんなに高く評価する人じゃない。これはプロデューサーの勝利。彼女はたいして良いパフォーマーとは言えない。今回、いっぱい賞をあげ過ぎて次はかなり苦しいね。とにかく、ライブの出来の悪さにがっかり)、

 アンドレア・ボチェッリとジョシュ・グローバンによるルチアーノ・パヴァロッティ・トリビュート(つまらん、ちっとも感動的じゃない。こんな歌で癒されるなんてどうかしてる。パヴァロッティの素晴らしさを知っているなら、もっと敬意を持ってほしい。こういう安直な企画を恥ずかし気もなくやってしまうところがアメリカの大らかさということか?)、

 ジョン・フォガティ、ジェリー・リー・ルイス&リトル・リチャード(素晴らしい!ジョン・フォガティ62歳?!それでもこの歌かよ!すごい。で、ジェリー・リー・ルイスはちょっと化石っぽかったけど、リトル・リチャードの凄みは何だこりゃ!70越えてる?80歳?凄い、力強いピアノとシャウト。感動です。リトル・リチャード、ほんと大好き!)、

 ウィル・アイ・アム(やっぱ、才能あるね、この男。カニエ・ウェストにはあまり共感できない私には、今はウィル・アイ・アムが最高。で、実はここにマイケル・ジャクソンが来る予定だったのに、本番すっぽかすなんて!リハまでやってたって言うのに、すごいね)、

 で、最優秀アルバムがハービー・ハンコック、これには全世界がブっ飛んでしまうほどの驚きでしたね。評論家の松尾潔氏が思わず「グラミーは空気読めてない」と言ったことに、大きく賛同です。
 正直、エイミー・ワインハウスの過大評価といい、今年のグラミーは妙だった。でも、全体的は楽しめましたよ。
[PR]
by harukko45 | 2008-02-12 16:25 | 聴いて書く

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31