詳細(5)からの続き。

 まったく、この詳細シリーズを長々と中断したまま、だらだらしてしまった。一応、言い訳すると、パート6ではチャカ・カーンを中心にしたレポを書くつもりだったので、彼女のこれまでのアルバムを久しぶりに聴きだしたところ、これがまぁ、どツボにはまったというか、すっかり魅了されてしまい、毎日毎日、聴きこんでしまった。正直、チャカ・カーンという人をちょっと過小評価しすぎていたのではないか、と反省しきりの今日この頃といった感じ。つまり、簡単に「プリンセス・オブ・ソウル」「クイーン・オブ・ファンク」と書かれてしまう彼女こそ、実は女性ポップ・ボーカル史上に革命を起こした人なのではないか、とさえ、今は思っているのだった。
 それほど、彼女の後世への影響は大きかった、と確信するにまで至っている。

 とは言え、ルーファスの10数枚、ソロの10数枚を聴き倒すのはなかなかの作業(?)、いや凄い喜び。おまけに、偉大なるプロデューサーであるアリフ・マーディンのこともチェックしはじめると、これはもっともっと大変なことになる。アリサ・フランクリンに始まって、ダニー・ハサウェイ、ラスカルズ、AWB(アヴェレージ・ホワイト・バンド)、ビージーズ、スクリッティ・ポリッティ、でもって、とどめにノラ・ジョーンズと。いやいや、まだまだ....。
 奥深いアメリカ音楽界においても、まさにProdecer's Prodecerと言えるのはクインシー・ジョーンズとアリフ・マーディンだと思っている。これは、単にヒット作の数ではない、商業的な部分とともに、音楽的にパーフェクトな仕事をしているのか、どうか。

 というわけで、いろんな音楽を聞きすぎて、簡単にまとめることができなくなった。だが、それではいっこうに終わらないので、とりとめのない流れになってしまいそうだが、なんとかやってみる。

 m7.Disco Medley_b: What Cha' Gonna Do For Me

e0093608_21541935.jpg アリフ・マーディン・プロデュースによるチャカ・カーンのアルバムの数々は、チャカ自身のキャリアの中でも、最も成功していた時代の傑作集と言えるだろう。
 特に1978年のファースト・ソロ「Chaka」(左)、80年の「Naughty」(右下)、81年の「What Cha' Gonna Do For Me」(左下)の3つは、「アリフ・マーディン3部作」として高く評価したい。というか、誰が文句つけるってぇの、これらに。
 強いて、どれが好きかと言うと、「What Cha' Gonna Do For Me」の音楽性の高さにはノックアウトだが、当時一番繰り返し聞いていたのは「Chaka」、やっぱり"I'm Every Woman"がいい!(アシュフォード&シンプソンの名作、リチャード・ティーのピアノもカッコイイ。)

e0093608_21542579.jpg 両側をプラチナ・アルバムにはさまれて、どうしても地味な存在だった「Naughty」の良さは最近になって開眼。アシュフォード&シンプソン作の"Clouds"や、"Nothing's Gonna Take You Away"と"So Naughty"の2曲つなぎにシビレまくっております。全体にソウル度が高いのもいい。後半に行くにしたがって、その濃度はどんどん上がり、"Papillion (aka Hot Butterfly)"で昇天。

e0093608_16195269.jpg シンセ・ベースが冒頭から大活躍だった3枚目は、音楽的に凝りまくっていて、ジャズやフュージョン・ファンをも巻き込んでの人気作となった。それはビートルズの"We Can Work It Out"やディジー・ガレスピーの"A Night In Tunisia"で特に顕著だったが、やはりこのアルバムでの最高のキラー・チューンはタイトル曲の"What Cha' Gonna Do For Me"に違いない。シングルとしてもR&Bチャート1位をとった大ヒット曲で、"I'm Every Woman"とともに、この時期の彼女を代表する名曲である。

 だが、この曲に含まれる高い音楽性は、単にディスコ/ダンス・ミュージックとして片付けられない。R&B、ファンク、ジャズ、AORらのさまざまな要素が最高に洗練された形で1曲に集約されているのだから。そういう点においては"Ai No Corrida"以上にレベルの高い曲だと思う。

 とにかく、こういうシンプルなリズム・パターン(16ビートを内包する8ビート)でファンキーなグルーヴを出すのって、けっこうむずかしい。それでいて、70年代前半のファンクのように、「汗臭い」だけじゃ駄目で、極めてオシャレで都会的でなくてはカッコ悪い。そこら辺に、ミュージシャン側に知性も求められるわけだ。
 
e0093608_18585853.jpg この曲を作ったのは、AOR系シンガー・ソングライターとしてデビューしていたネッド・ドヒニーと、AWB(アヴェレージ・ホワイト・バンド)のヘイミッシュ・スチュアート。で、AWBのアルバム「Shine」(80年)に収録されていた。面白いのは、このアルバムのプロデューサーがデイビッド・フォスター。
 それまでのAWBは、アリフ・マーディンのプロデュースで、"Pick Up The Pieces"や"Cut The Cake"のヒットがあるスコットランドのファンク・バンドだったのだが、時代の流れでAOR的方向に変化する必要に迫られ、デイビッド・フォスターに任せたわけ。ところが、フォスターはワンマンに、どんどんアレンジと演奏を進行させたらしく、そういう彼の姿勢にメンバーは反発。しまいにコンテンポラリーな音楽性にも嫌気がさしたとのことで、この後、分裂・解散への道を辿ることになった。(この後、82年にシカゴが同じように、フォスターの力を借りて、80年代の変革に成功した。とは言え、シカゴもその後、彼との作品に対してあまり良い発言していない感じだしなぁ。)

 それじゃこの「Shine」がひどいか、と言うと、そうでもないんですなぁ。特にAORファンの多い日本では、評価と人気が高い。もちろん、初期のAWBのファンクが好きな人(私も)には、かなりショッキングなサウンドなんだけど、今聞くと「これはこれなり」って思える。意外に楽しめるここ数日であります。
 
 というわけで、"What Cha' Gonna Do For Me"のオリジナル・アレンジは、たぶんデイビッド・フォスターとAWB。これをチャカ・バージョンでは、グレッグ・フィリンゲインズとアリフ・マーディンがアレンジをやっていると思われるが、イントロのシンセ・フレーズあたりは残しつつも、いろいろと手を加えて、全体的には(AWBの狙いとは逆に)、より「ファンキー」で、より「ゴージャス」な方向性でまとめられている。仕上がりは圧倒的にチャカの方がカッコイイ。AWB版は、まぁ「軟派」で、あんまり盛り上がらない。特にチャカでは至福の喜びとなる大サビ部分が、全然サッパリなのだ(それが良いとも言う人も多いでしょうな)。

 それにしても、この曲がチャカに合うとよんだ、アリフ・マーディンの耳はすごい。

e0093608_1983350.jpg ちなみに、もう一人の作者であるネッド・ドヒニーもセルフ・カヴァーしていて、88年の「Life After Romance」で堂々の1曲目を飾っている。で、このバージョン、チャカのハイテンションとは全く違うレイドバック感が、かなり良いのだ。さすが、ビバリーヒルズの大富豪家出身、何とも言えない「ゆるさ」と「余裕」がたまらない。


 おっと、YouTubeで面白いビデオを発見。ネッド・ドヒニーがバンドとともに、この曲をリハしているところが撮影されていて、これがまたサイコーにゆるい!必見です。



 さて、チャカの方にちょっと話を戻すと、この頃のアルバムではドラムスはスティーブ・フェローンでキマリ!(ジュンコさんの「Point Zero」にも参加)なのだが、これは当然、アリフ・マーディン〜AWB人脈。ただし、彼とヘイミッシュ・スチュアートのみ、78年の「Chaka」から重用されているので、彼らだけがお気に入りだったのかも。
 また、この曲のイントロでのドラム・フィルは最高にカッコ良くて、チョーしびれるのだが、AWBバージョンもチャカ・バージョンも全く同じだった。だが、ミックスの違いで、これまたチャカの勝ちである。

e0093608_20114254.jpg
e0093608_1938784.jpg ついでに、ドラマーつながりで、78年にチャカがいたバンド、ルーファスの「チャカ抜き」アルバム「Numbers」(左)でデビューしたのがジョン・ロビンソン。そして、翌79年には「チャカ入り」アルバム「Masterjam」(右)をリリースするが、そのプロデュースをクインシー・ジョーンズが担当。これにより、ジョン・ロビンソンは彼から「ロスで最高の若手ドラム奏者だ!」との評価を受け、晴れてクインシー一派にも参加するわけですなぁ。
 肝心のルーファスの方はどうだったかというと、個人的にはクインシーとの組み合わせは、セールス的にはともかく、音楽的には失敗だったと思う。

 とは言え、ルーファス自体はすごくカッコいいバンドだった。ロック色の強い73年の1st「Rufus」から、"Tell Me Something Good"を生んだ2nd「Rags to Rufus」、トニー・メイデンとボビー・ワトソンが加わってファンク色が濃くなった「Rufusized」、「Rufus Featuring Chaka Khan」。マデュラ(Madura)のデイビッド・ウォリンスキーも加わって、意欲的な音楽性が発揮され始めた「Ask Rufus」、「Street Player」と、どれも良いのだ。今は、こちらの方を興味深く聴き返すのでありました。と同時に、ジュンコさんが美乃家で目指したものって、彼らのような形に近かったのか?、とも思うのだった。
e0093608_2328552.jpge0093608_23293882.jpg e0093608_23304424.jpge0093608_2331177.jpg
e0093608_2331963.jpge0093608_23311559.jpg 


e0093608_206510.jpge0093608_2062877.jpg さてさて、偉大なるシンガー、チャカ・カーンは現在でも活躍中、最近は作品がめっきり少なくなったが、2004年のオーケストラをバックにしたスタンダード集「Classikhan」、2007年のファンク大復活の「Funk This」はなかなかの力作だ。特に、「Funk This」はかなりゴキゲンで、ジミヘン、プリンス、ジョニ・ミッチェル、ドゥービー・ブラザーズらのカヴァーが収録され、ルーファスのセルフ・カヴァーもあって(トニー・メイデンとの競演)、実に興味深い。

e0093608_2354838.jpg おお、そういえば、ここでマイケル・マクドナルドをゲストに"You Belong To Me"をやっているのだが、マイケル・マクドナルドと、この曲を共作したカーリー・サイモンが78年にヒットさせた時、プロデュースしていたのは、またまたアリフ・マーディン先生だった!


 そして、偉大なるプロデューサー、亡きアリフ・マーディン氏の偉業をちょっとだけのぞく意味合いをこめて、これもご覧ください。


 まだ続く、と。
[PR]
by harukko45 | 2011-09-07 20:08 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31