Brian Wilson Reimagines Gershwin

 この前のアップではいかに昨年、ポップス系のCDを聴いてなかったかが、バレバレでした。そう、ほんと自分でも呆れるぐらい、いわゆる洋楽ってやつに興味がなくなっていたのでした。
 ところが、12月になってエルビスのリ・ミックスにやられるわ、ジョン・レノンの「Stripped Down」に刺激をうけるわで、「お、何てこった!油断しまっくてた」ということに気づきました。とは言え、お若いアーティストの作品には、やっぱりピンとこないままですが。

 で、このところちょっと熱が冷めていたブライアン・ウィルソンのことが急に気になって、昨年の秋に出ていたアルバムを最近聴いてみたら、とんでもなくガツンとやられてしまいました。
 「バカバカバカバカ!」前はとてつもなくのめり込んでいたブライアン先生、2004年に「Smile」を出し、その後コンサートも観て、もうすっかり自分の中では一つけじめがついてしまったようで、その後のアルバムに興味が沸かなかったのでした。それを今や大いに恥じ入る次第なのでした。

e0093608_56079.jpg 「Brian Wilson Reimagines Gershwin」、要はブライアンが最も好きな作曲家であるジョージ・カーシュウィンの名曲をカヴァーするって内容なんですが、これがただのカヴァーじゃない。もう、一体化、いや、ガーシュウィンのブライアン/ビーチボーイズ化をものの見事にやっちゃまった。だからといって、原曲へのリスペクトを忘れているわけじゃない。
 でも、とにかく、ビーチボーイズが戻ってきた。って心から感動してしまった。そんでもって、これはガーシュウィンの曲なんだ、すごい曲ばっかなんだけど、リスペクトしすぎて無難に(ジャズ・ビッグ・バンドやらオーケストラで)こなすなんてことは一切なし、さすがブライアン・ウィルソン。

 ということで、心が全く持って穏やかじゃなくなってしまった私は、まだ未聴だった2008年の「That Lucky Old Sun」も急いで聴いてみたのでした。
e0093608_519631.jpg かー!これもすでに素晴らしいじゃないの、何で聴かなかったんだろう。実を言うと、「Smile」大騒ぎの後、やったら「ブライアン神」みたいな人が突然あちらこちらから現れて、そこらじゅうで「傑作!傑作!」って言うは、しまいには「アルバムを出してくれるだけで、幸せ」みたいな評価が飛び交っていたので、個人的には何だか引いてしまう感じだったのでした。
 海賊版の「Smile」や「Sweet Insanity」見つけてきて、一人イジイジ聴いていた時代が懐かしい、なんて。

 とは言え、とにかく遅ればせながらここ最近の2枚を聴いて、ブライアンの才気はまだまだ健在、その才能は全く枯渇してはいなかった。比べてみると、「Gershwin」の方が好きです。「Lucky Old Sun」の方が「ビーチボーイズが帰ってきた」感は強いけど、ちょっと「どこかにあったなぁ」っぽいニュアンスも。「Gershwin」にはそれがもう一歩突き抜けていると思います。でも、もっと聴きこまないとね。

e0093608_5411888.jpg それと、「Smile」とともに幻の傑作で、ブライアンの不運を象徴していた「Sweet Insanity」の新しい版がいくつか出ていたことにも驚き。こちらも早速、仕入れて久々に聴いて涙しております。

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by harukko45 | 2011-01-04 05:45 | 聴いて書く

 昨日に引き続きブライアンのコンサートについて。約20分程の休憩後に第2部は“Smile”の全曲演奏、3部構成のトータル約47、8分にもおよぶ大曲だ。一切のMCなしで一気に演奏された。それはそれは大変素晴らしいものだった。全く持って文句のつけようのない、あら探しもする必要もない、充実しきった内容とパフォーマンスに感無量の思いだ。ブライアン・ウィルソンをこれまで精神的に苦しめつづけたと同時に、その反面ファンにとってはずっと答えを探し続けた謎であった“Smile”、今やこの大組曲は彼の最高傑作として堂々と永く語り継がれていくだろう。

 “Pet Sounds”とともに、これこそがブライアンの内面を深く映し出した世界なのだろう。彼には、職業作曲家としてキャッチーなポップチューンをたやすく書いてしまう面と、もう一つとても内省的で芸術的な面があるのだが、その影ともいうべき部分の代表(つまりヘンな曲の集大成)がこの“Smile”であり、それをついに彼は見事に完成させ、レコーディングのみならずライブでも完璧に披露してくれたことに大いなる敬意を表したいと思う。
 
 そして、私はものすごく幸せな気分である。アカペラの“Our Prayer”から“Cabin Essence”が第1楽章、“Wonderful”から“Surf's Up”が第2楽章、“I'm In Great Shape” から“Good Vibration”が第3楽章。各楽章の間に拍手がわき起こったが、我々観客はほぼ50分間、ひたすら音楽のみに集中して聴き入った。こういう体験はクラシック・ミュージックを聴くのに似ているが、ポップスのコンサートではめずらしいことかもしれない。しかし、スタイルの問題ではない。とにかく、良い物は良いのだ。“Good Vibration”が始まると我慢できずに立ち上がった人達もいたが、私はこの時はこのポップミュージック史上最高の名曲をじっくりと聴きたかった。そして、大エンディングを決めて全曲終了した瞬間、私も含め全ての人が立ち上がって拍手をした。それは、ただノリたいのではなく、真に心からの敬意と感動の証であった。

  1部と2部では感動の質が全然違う。この2部の素晴らしい体験は筆舌にしがたいものがある。ひょっとすると伝説になるのかもしれない。正直、1部ではPAのサウンドに不満を感じていた。ある意味PAを通して音楽を鑑賞するのには限界を感じている。そのことをこのブライアンのコンサートでも感じたのだが、結局2部のような圧倒的な内容の音楽であれば、それも些細なことに思えてくるのだった。逆に、これが特別だったからとも言えるのか。
 
 さて、アンコールは大騒ぎのロックンロール・ショウで、“Do It Again”から誰でも知ってる“Help Me Rhonda”“Barbara Ann”“Surfin' USA”“Fun Fun Fun”とくれば大盛り上がりでしょう。そしてダブル・アンコールに“Love & Mercy”でこちらは大満足のフルコース・メニューを堪能させていただいた。
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by harukko45 | 2005-02-02 00:00 | 聴いて書く

 1月31日東京国際フォーラムでブライアンの「スマイル・ツアー」を観た。ブライアンのコンサートに行くのは99年の初来日以来、あの時は「もう見られないかも」との思いから3回ぐらい行ったような記憶があるなぁ。とにかく伝説の天才を生涯の思い出にこの目に焼き付けておこう的要素が大きかったのだが、なんとその後のブライアンは予想に反して(?)どんどん元気になって音楽活動を本格化、そして去年、ついに“Smile”まで完成させてしまったのだから、ファンとしては驚き以外ないよね。

 正直、ブライアン・ウィルソン/ビーチボーイズ・ファンというのは、ちょっとひねくれたオタク的部分が美徳とされるところがあって(それは私だけの思いこみ?)、大天才でありながら、これまで不遇な扱いを受け続け、精神的にも肉体的にもボロボロの「かわいそうな」ブライアン、そんなあなたを僕は世界中の誰よりも尊敬し共感し愛しているのです!あなたの素晴らしさを他の連中にわかってたまりますか!……と、ほぼ確信犯的に各自がそう思っているのだ。しかしながら、こういうファン・研究家というのは上には上が横にも前にもゴマンといるわけで、たぶん今夜はそういう60年代からめんめんと連なる「ブライアン教」信者の“Smile”御開帳の儀式ともいうべきイベントでもあったのである。

 さて、まったくシンプルな舞台でメンバーがぞろぞろ出てきて、ステージ上手側にまとまりアコースティック・セットによる“Surfer Girl”でオープニング。かつてのアルバム“Party”やビデオでのたき火をかこんだビーチボーイズを彷彿とさせるシーンで美しく完璧なコーラス・ワークでまずはグっと引き込まれた。続いて“Wendy”“Add Some Music To Your Day”“Good To My Baby”“Please Let Me Wonder”“Drivin'”(メモは取っておらず記憶をたどりながらなので、間違いがあったらお許しを。)と懐かしい名曲がシンプルな形で歌われた。コーラス主体なのは当然とはいえ、そのうまさにはあらためて感心する。個人的には“Add Some Music To Your Day”をやってくれたことが驚きでもありとてもうれしかった。そして、このセットの最後はア・カペラ“And Your Dream Come True”。このトラッド曲におけるコーラス・アレンジは本当に最高だし、みんなうまい。耳が洗われるとはこのこと。

 そのまま「You're welcome」云々とアカペラで歌いながら、各自が本来の楽器を持つ。バンドによるセットは“Sloop John B”から。“Pet Sounds”からは他に“God Only Knows”もやったのだが、ブライアン自身はあまり唄の調子が良さそうではなかった。正直、弟のカールがここにいたら、と思ってしまった。アルバムでのカールの繊細で美しい声の抗しがたい魅力を越えることはむずかしい。

 その後(順は不正確)も“Desert Drive”“Don't Worry Baby”“Dance Dance Dance”“I Get Around”“California Girls”“Good Timin'”“Forever”と新曲は“Desert Drive”だけで、ビーチボーイズ時代の名曲オンパレードだったが、特に今は亡き二人の弟、デニスとカールに捧げた“Good Timin'”“Forever”の2曲はこのコーナーのハイライト、とりわけデニスの名曲“Forever”はバンドのアンサンブルも良く、ひじょうに心に残った。バンドは各曲で、ブライアンが作った偏執狂的なオケのパートをかなり忠実にこなし(楽器もいろいろ持ち替えて)、その上あのコーラスワークも見事に再現して本当に頭の下がる思いだが、と同時にこれらの曲をビーチボーイズによるパフォーマンスで聴きたかったという切ない思いがどうしてもわき起こってしまう自分もやはりいたのだった。
 
 しかし、ここで“Sail On Sailor”“Marcella”と私としては喜ばしい意味での超驚きの選曲!うーむ、やられました。おそれいりました。また家帰ってから昔のアルバム聞き返したくなるじゃないか!ともに一般的にはヒット曲ではないが、ファン涙ものの傑作。こういう選曲のセンスはたまらないね。もう、さっきのことは撤回します。やはりブライアンの曲のすごさ、深さを改めて思い知るのであった。で、第一部は終了でしばし休憩。第二部はお待ちかね“Smile”の全曲演奏となるわけだ。それは、また明日に。とりあえずこの辺で。
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by harukko45 | 2005-02-01 00:00 | 聴いて書く

 新潟の大震災といい、アメリカ大統領選挙でのブッシュ氏の予想外の大勝利といい、もう世の中これからどうなってしまうのか皆目わからなくなってきてしまった。そんな中、10月後半に発売された「Brian Wilson Presents Smile」を私は先日、ようやく手にした。私はブライアンの大ファンであり、ポップス界で最も尊敬するアーティストである彼の作品は常に私にとって「最優先」なのだが、今回は少々事情が違った。仕事が忙しかったこともあるが、すぐに買い求めなかったのは“Smile”であるがゆえに少しとまどったのである。

 Smile-このロック史上最大の未完成アルバムは、永遠に届くことがないと思われていたのが、今年に入ってブライアンはまずライブで(ロンドン2月)、その後37年ぶりに全曲ニューレコーディングしてついに完成させたのだった。そのことについてはただただ驚くばかりだったが、それ以上にニューレコーディングならば、その出来はどうなのか心配になるのも当然なのだ。なぜなら、“Smile”に収録予定だった作品は、その後のビーチ・ボーイズのアルバムで何曲か発表されていて、それら1曲1曲の素晴らしさに感動しつつも、未完の“Smile”自体は海賊盤などによってその内容の破綻・崩壊ぶりがじょじょに明らかになっていたからだ。つまりゴミ箱に捨てたはずのビーチ・ボーイズによる前のテイクをもう一度まとめるのなら理解できるが、何で30年以上もたって今さら新たにやり直すのか?

 とは言え、アーティストとは気まぐれなもの、やると言ったらやるし、やめたと思ったらさっさと放り投げてしまうのだ。特にブライアンのような天才についていくにはファンにもある種の忍耐が必要だ。と、くどくどと余計な事を考えつつも、やっぱり聴きたい!だって、Smileの完成盤だぞ!!

 そして、私は“Smile”を毎日聴いている。最初の1回のみ、あまりに大きな期待と不安ゆえにちゃんと内容を把握することが出来なかったが、その後何度も聴くうちにもはや“Smile”の虜である。この感覚は久々のもの。ビーチ・ボーイズの“Pet Sounds”も最初わからなかった。が、気になる何かがあって、再び聴く。それを繰り返すうちに、ある時とんでもない感動がわき起こってきたのだった。マイルス・デイビスの“Bitches Brew”を聴いた時も、モーツァルトの「フィガロの結婚」を聴いた時も、そうだった。

 真の傑作と出会うこと、真の感動を味わうことは、決して簡単ではない。最初は自分が理解できないことにとまどい、苦しみながらも、耐えながら芸術家についていく。そしてついに自らで理解し共感する地点にたどり着く。そうやって味わうことが出来た作品は必ず自分の一生に不可欠なものとなるのだと思っている。

 “Smile”はまさしくそういう作品だ。時代性に基づく安易な価値観を超越した、永遠の美を持つ豊かな音楽。これこそが、私に必要な音楽だ。音楽を聴く理由は「好き嫌い」ではない。「必要」だからである。

 今までバラバラだった“Smile”の断片は見事に結合し、すでに1曲としても素晴らしかった‘Heroes And Villains’や‘Surf's Up’‘Wind Chimes’そしてあの‘Good Vibrations’などが、より偉大な組曲となって蘇ったのである。ブライアンの頭の中にはこのように美しい世界が描かれていたことに感動するとともに、またあらためて彼の天才ぶりにひれ伏すのみだ。

 さて、90年代後半のイギリスの雑誌Mojoでは、ミュージシャンが選んだ最も偉大なシングルに‘Good Vibrations’、音楽評論家が選んだ最も偉大なアルバムが“Pet Sounds”と、ビートルズを抑えてビーチ・ボーイズが2冠を征したそうだが、この“Smile”はどう位置づけられるのだろうか。ブライアン自身は“Pet Sounds”が7点で、 “Smile”は10点とのこと。私は両方とも10点。もうファンとしては大満足だ。ブライアンが長生きしてくれて、本当に良かった。
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by harukko45 | 2004-11-07 00:00 | 聴いて書く

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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