詳細(7)からの続き。

 m7.Disoco Medley_c.Fantasy

 じょじょに"Fantasy"に近づきます。
 
 チャールズ・ステップニーという大参謀を突然失ったモーリス・ホワイトのショックは大きかったと思う。だが、まさにトップスターの道を歩んでいるEW&Fに停滞は許されない。すぐに、ステップニーに代わるアレンジャーが必要になる。ここで、指名されたのは、再びシカゴ人脈からの人選で、Tom Tom 84(本名トム・ワシントン、「Tom Washington」「Tom Tom Washington」の名義でのクレジットもある)である。

e0093608_18205410.jpg 彼のことは当然、77年の「All 'N All」で大々的に知るわけだが、前作の「Spirit」でも、ステップニーの代役としてタイトル曲"Spirit"(フィリップ・ベイリーのボーカルが素敵!)で、アレンジャーとして参加していた。そして、「All 'N All」では、ストリングスとホーンのアレンジをほとんど担当するのだった。
 ただ、ステップニーが、バンドの「父親」「コーチ役」として細部にわたって影響を与えていたのに比べて、たぶん、彼はもっと職人アレンジャー的に関わっていたのではないかと思う。なので、特別に自分の個性を押し出すようなことはせず、もうすでにスター・バンドとなっていたEW&Fにおけるステップニー・サウンドをうまく継承するように、きっちりとした仕事をしていたと感じる。もちろん、これは今だから言えることで、当時は、彼のアレンジがどうのこうのよりも、バンド全体が「すげぇ」で終わっていたわけ。

e0093608_18165844.jpg Tom Tom 84はこれ以降、「アースっぽい」サウンドが売りになって、各方面で大忙しになった。が、その後いろいろと聞いてみると、彼の本質は、やはりシカゴ時代、70年代のザ・シャイライツ(The Chi-Lites)などの、ユージン・レコードによるプロデュース作品にこそ、出ていると思う。というか、個人的に好きってこと。ただし、ここでも裏方としてのわきまえた仕事に徹しているのだが、それが、王道とも言えるサウンドとして、実に好ましいというわけ。
 それにしても今の時期、ユージンの作り出すメローでスイート(ありきたりな表現でスンマセン)なシカゴ・ソウルがすっごく新鮮。こういう音楽も楽しめるようになるなんて、年齢を重ねるのも悪くないって感じね、うんうん。

e0093608_1532771.jpge0093608_1543448.png で、シャイライツのアルバムでは、72年の「A Lonely Man」(左上)あたりから彼の名前が登場し、彼らの大ヒットである"Oh Girl"や"The Coldest Days Of My Life"にも貢献したのだと思われる。もちろん、シャイライツの名作も良いのだが、ユージンがグループを離れてのソロ・アルバム、77年の1st「The Eugene Record」(左)2nd「Trying To Get To You」(右)がなかなかで、今はこちらの方に惚れ込んでいる。シカゴ・ソウルの顔役を前に、Tom Tom 84も大活躍で、ユージンの片腕のごとき存在だ。そしてその中味は、まさに熟練の味とでも言えるかな。甘さでは1st、優しさでは2nd、どっちもヤバくって子供には聞かせられない。ただし、CD化されているのは1stのみだ。

e0093608_4553220.jpg ちなみに、2ndのタイトル曲"Trying To Get To You "は翌78年に女性ボーカリストのヴァレリー・カーターが「Wild Child」の中でカヴァーしてる。このテイクでも、Tom Tom氏がホーン・アレンジを担当し、ベースをヴァーディン・ホワイトが弾いている。こういう発見(?)こそ「レコード掘りの楽しさ」って感じ。内容的には、深さからいけば、圧倒的にユージンに決まってるんだけど、ヴァレリー・カーターが何とも癒される声で、こういうのもタマランってところなんです、ハイ。

e0093608_5511839.jpg ところで、Tom Tom 84は82年リリースされたジュンコさんの「黄昏」にも参加している。ジュンコさん初のL.A.レコーディングで、彼は例によって、ホーンとストリングスのアレンジを手がけ、EW&Fのホーン・セクションが演奏している。他にも一流ミュージシャンが勢揃いで、実に豪華なレコーディング・セッションだ。

 で、各ミュージシャンの演奏はどれも良いし、若きジュンコさんの歌声も素晴らしい。だが、正直、このアルバムは、聴いていて何となくよそよそしい感じがしてしまう。それは、ミックスのせいなのか、楽曲なのか、アレンジなのか、よくわからない。たぶん、時代がそろそろAORやフュージョンから次に進もうとしていたことが大きいような気がする。
 それは、何もジュンコさんやケンさんだけでなく、当時のポップス先進国であるアメリカとイギリスでも起こりつつあった流れだった。今ここで、話題にしているEW&Fでさえ、この時点ですでに帝国の崩壊が現実になりつつあったのだから。

 だから、ジュンコさんは「何かもっと新しいものを」やりたがっているようで、少し持て余しているようだし、ケンさんも日本ですでに十分やり尽くした音楽を、最後にLAのスタジオ・ミュージシャンでやってみた、というムードか。要するに、二人にとって真の海外レコーディングでの冒険は、翌年のニューヨークとなるのは必然だったのだろう。

 おっと、またどんどん脱線しそうなので、何とか踏ん張る。

e0093608_085231.jpg さて、さて、さて、77年に戻ります。だから、「All 'N All」なのだ。ここでは、アース帝国崩壊の序曲はまだ聞こえてこない。今聴いても、捨て曲なしの好アルバムに間違いない。ただ、前作までと違う要素と言えば、制作前に旅行したブラジルとアルゼンチンでの体験が、プロデューサー・モーリス・ホワイトに少なからぬ刺激を与えたことだ。それによって、かなりはっきりと南米音楽のエッセンスが随所に表れている。

e0093608_6391068.jpg とは言え、EW&Fは初期から、南米音楽の影響があった。例えば、4作目の「Head To Sky」のラストで、エドゥ・ロボの"Zanzibar"を取り上げ、13分の長尺で、ラテン・ジャズ・ロック風に仕立てていた。まぁ、出来としては残念ながら、エドゥ・ロボの最高にクールなオリジナルにはかなわない(Edu Lobo "Cantiga de Longe"、おすすめ!!)が、フィリップ・ベイリーのファルセットによるスキャットをダブリングして、曲のフックに使うというアイデアは、すでに試されていた。

 で、アルバム2曲目の"Fantasy"、キーボードの導入部が何ともドラマチックなムードを漂わせて、いかにも大仰なのだが、続くイントロダクションがやったらカッコイイ。ちょっと出来過ぎじゃないかってぐらい。ところが、歌に入ったら、あら驚き、サンバじゃねぇか!でもって、この哀愁のメロディと、少々説教っぽい歌詞が、アースのキャッチフレーズの「宇宙」「エジプト」「占星術」やら何やらと結びついてくるんですなぁ。よく考えると、ムチャクチャなイメージの展開なんだけど、曲自体は良いのよ。
 特に、日本人はこういう哀愁のムードに弱い。だから、日本でのこの曲の人気はすごい。当時のディスコ・ブームでの象徴的なヒット曲として、この"Fantasy"を上げる人も多いと思う。今回、各会場でのお客さんの反応も、この曲で俄然ヒートアップしてくる感じがよくわかった。
 それから、Tom Tom 84のホーン・アレンジも気が利いていて、実際に演奏していると、サビのボーカルとの絡みで、かなり燃えるのだ。ほんと楽しかった。

e0093608_7543862.jpg そこで、この曲を作ったのは?

 まぁ、モーリス&ヴァーディンのホワイト兄弟はともかく、もう一人クレジットされているエドゥアルド・デル・バリオ(Eduardo del Barrio)って誰?

e0093608_824584.jpg 早速調べてみると、彼はアルゼンチン出身のキーボード奏者で、コスタリカ出身のギタリスト、ホルヘ・ストランツとともに、カルデラ(Caldera)という多国籍ラテン系のフュージョン・バンドを結成し、75年にデビューした。そして、彼らの2枚目「Sky Island」(右上)、3枚目「Time And Chance」(左)をEW&Fのキーボードのラリー・ダンがプロデュースしておったのである。

 何か、いろんなことが出来過ぎみたいに組み合わせっているようにさえ思うけど、やっぱり、こういう人脈を形成するあたりが、モーリス・ホワイトの「やり手」度の高さを物語っているではないか。

 とにかく、この曲に正しいラテンの血を注入したのは、デル・バリオに違いない。また、彼は9曲目の"Runnin'"でも共作者として名を連ねているが、これは、まさにカルデラみたいなラテン・フュージョン。ただ、前述の"Zanzibar"同様、ファルセット・ボイスによるメロディがここでも登場するのが、かろうじてアースか。

 そして、そして、もう一つ。この「All 'N All」において、インタールードに使われている"Brazilian Rhyme"というタイトルの小曲が二つあって、共にミルトン・ナシメントの作とクレジットされていたが、一つは、クラブ系で人気の高い"Beijo"で、これは実はモーリスの作らしく、もう一つの"Ponta de Areia"はまさしくミルトン作の名曲。

e0093608_8364589.jpg ただし、これに関しては、ジャズ系のレコードを聴いていた人なら、すでにおなじみの曲で、74年に発表されたウェイン・ショーターの「Native Dancer」でのオープニング曲だった。このショーターのアルバムも大好きで、よく聴いたっけ。ショーターのソプラノ・サックスとミルトンの「宇宙人」的ボーカルの融合が、まさに、この世のものとは思えないもので、今聴き直しても最高だ。

 だから、アースがこの曲を取り上げたのを聴いて、あまりにも時間が短いのにがっかりした。それに、ここでのアレンジはTom Tom 84ではなく、エウミール・デオダートがやっているというのに、わずか52秒でフェイドアウトなのだ。

e0093608_902332.jpg ところが、1992年に発売された3枚組のベスト盤「The Eternal Dance」に、このデオダート編曲の"Ponta de Areia - Brazilian Rhyme"が2分10秒のバージョンで収録された。これが完全版なのかどうかはわからないが、少しは気持ちも収まった感じになった。ちなみに、この「The Eternal Dance」は面白い未発表テイクがいろいろ入っているのと、各時代の代表曲を年代順にきちっとまとめてあるので、なかなか優秀なベスト盤であり、彼らの歴史をザックリ知る上でも、また入門盤としても最適だった。

 それにしても、当時はアースの新譜を興奮して聴いていただけだったが、今さらながらに、チャールズ・ステップニーの死をきっかけに、EW&Fは音楽の方向性を変えざるを得なかったのだ、ということがよく理解できた。

 次は"Boogie Wonderland"。まだ、続きます。
[PR]
by harukko45 | 2011-09-17 10:12 | 音楽の仕事

詳細(4)からの続き。

 m7.Disco Medley

 今年のクラブサーキットの目玉は、やはりこれだったか。ジュンコさんが今年の始めからやりたいと言っていたディスコ・メドレー。我々は過去に2つのディスコ・メドレーを作っていて、1997年から98年にかけて「Part 1」、98年から99年に「Part 2」をメニューに入れていた。
 特に「Part 1」は親しみやすい曲が並んでいて、つながりも良く、お客さん達の反応も良かったので、その後も2001年ぐらいまで、何回かセットに取り上げられていた。その時の曲目は「Ai No Corrida〜Got To Be Real〜Sunshine Day〜I'm Every Woman〜Boogie Wonderland」。
 「Part 2」は「1」の好評を受けて、その勢いで作り上げたのだが、少々通っぽい曲が並んでしまい、また演奏面でもかなり集中力の必要な内容で、実を言うとむずかしい仕上がりになってしまった。それは、我々バンド側はやりがいのあるものだったが、いかんせん、聴き手の皆さんには少々ハードだったようだ。その曲目は「We Can Work It Out〜What Cha' Gonna Do For Me〜Lady Marmalade〜Fantasy〜Getaway」。この「Part 2」は残念ながら、1ツアーぐらいでオクラ入りとなってしまった。

 今回ディスコ・メドレーを復活させるにあたり、一応参考までに当時の音をチェックするために事務所に探してもらったところ、幸運にもMDが残っており、皆で聴くことになった。
 聴いてみて驚いた。何と、「Part 2」のパフォーマンスが凄まじかった。「こりゃ、曲を良く知らない人は引くか?でも、音楽好きが聴いたらブっとんで喜ぶ」というのが、我々の感想であり、10年前の自分達の尖った、勢いのある内容に驚喜したのであった。

 ということで、この二つのメドレーから特に美味しい部分を合体させることになり、5曲が選ばれたが、今の気分や時代性を考え、より充実した内容を目指すべく、細かい部分の修正を行いながら、4曲にしぼられた。それが「2011バージョン」で、曲目は「Ai No Corrida〜What Cha' Gonna Do For Me〜Fantasy〜Boogie Wonderland」となった。

e0093608_23214955.jpg a: Ai No Corrida(愛のコリーダ)

 クインシー・ジョーンズの81年の大ヒット・アルバム「The Dude」の1曲目で、ディスコ・チューンとして最も洗練された内容となった作品の一つと言っていい。オシャレにかっこ良くきまったアレンジだが、サビの日本語がやっぱ、しびれるわけで。さすがクインシー大先生のプロデュース、実にうまくまとめておられます。

 この曲を元々作ったのはイギリス人のチャス・ジャンケルで、彼のオリジナル・バージョンを聞くと、クインシーが意外にもかなり忠実に再現していることがわかる。ただ、やっていることは同じでも色づけが違うって感じ。クインシーはジャズ・フュージョン系の名手と、豪華なボーカル陣を適材適所に配置して、それはそれは見事なアンサンブルで「都会のダンス・ミュージック」を演出。文句のつけようがない。
 だが、今聴くとチャス・ジャンケルのバージョンの何ともエグい感じ、シンセやビートの適度なダサさや下世話さが、より「ディスコ色」を醸し出していて、なかなか良いのだ。個人的にはチャスに1票である。

e0093608_0131069.jpge0093608_0132618.jpge0093608_0143060.jpg さて、クインシー・ジョーンズはこのアルバムの前後に、マイケル・ジャクソンの2大傑作「Off The Wall('79)」「Thriller('82)」をプロデュースしており、85年には「We are the World」も作っているわけで、まさに絶頂期でしたな。

e0093608_0241945.jpg とは言え、私が好きなクインシー・ジョーンズは70年代。「The Dude」と同じディスコ・ダンス系の作品なら、78年の「Stuff Like That」がいい。スティーヴ・ガッド、リチャード・ティー、アンソニー・ジャクソン、マイケル・ブレッカーらニューヨークの一流ミュージシャンが中心で、それまでのLAの制作(「The Dude」は再びLAに戻る)とは一味違う。とにかく、彼らのプレイは本当にサイコーだし、それを生かし切って、ポップ・ファンもフュージョン・ファンも満足させてしまうクインシーのプロデュースが素晴らしい。チャカ・カーン、ルーサー・ヴァンドロス、パティ・オースティンのボーカル陣も凄い。

e0093608_040429.jpg だが、もっと好きなのは74年の「Body Heat」。リオン・ウェアを中心としたボーカル陣(ミニー・リパートン、アル・ジャロウら)がチョー・カッコイイ。もう1曲目のタイトル曲だけでしびれまくり。この曲のイントロのカッコ良さたらっ!!! ラストの"If I Ever Lose This Heaven"もいいし、"Everything Must Change"もこれがオリジナル・バージョンで作曲家ベナード・アイグナーが自ら歌っている。このアルバムは、クインシーがマービン・ゲイやスティービー・ワンダーらのニュー・ソウルに最も近づいた作品、リオン・ウェアはマービン・ゲイの大傑作「I Want You」のプロデューサーだから、当然か。

e0093608_0515934.jpg でもでも、もっともっと好きなのが73年の「You've Got It Bad Girl」。クインシー自身はあまり気に入っていないアルバムだとの発言があり、CD化もどういうわけか、ようやく最近になっておこなわれた。だが、私はこのアルバムが一番好きだ。
 クインシーが初来日(たぶん73年)したさい、何とNHK(ん?TBSかも)が彼の特集を組み、彼のオーケストラがスタジオ・ライブをやったのをテレビで見て、私は大感激大興奮。その頃に、一番新しいアルバムとしてリリースされていたのが、これだったのだ。来日メンバーはレイ・ブラウンがベース(彼はクインシーのマネジャーでもあった)、サックスとフルートがジェローム・リチャードソン、ハーモニカとギターでトゥーツ・シールマンスもいたと思う。で、ピアノはデイブ・グルーシンだったらしい。じゃぁ、ドラムスはグラディ・テイトだったのかも。

 その時聴いた"Manteca"(アルバム7曲目)がかっこ良くてかっこ良くって。

 それから、このアルバムの1曲目、ラヴィン・スプーンフルの"Summer in the City"なんだけど、これが何とも言いようの無いほど、オシャレで、センスのいいインスト(中盤からヴァレリー・シンプソンのボーカル登場、これもたまらん!)に仕上がっているのです。クインシーはこの曲でもグラミーをもらってますね。
 それから、アレサ・フランクリンとロバータ・フラックに捧げるメドレーと称して"Day Dreaming"と"First Time Ever I Saw Your Face"をやっているんだけど、このアレンジがもうサイコー、サイコー。いや、別に何やっているわけじゃないんだけど、もうたまらんのです。歌っているのは、これもヴァレリー・シンプソンだと思うんだけど、これが本当に大好きです。ヴァレリー・シンプソンは作曲家としても素晴らしいけど、ボーカル、バック・コーラスとしても最高ですよ。

 ついでに、もう一つ。私のクインシー初体験はアメリカの刑事ドラマ「鬼警部アイアンサイド」。そのテーマ曲が彼の作編曲。これも超名曲です。毎週火曜夜10時にTBSでした。必ず見てた。で、このテーマ曲にしびれまくっていたのでした。いつのまにか、「ウィークエンダーのテーマ」みたいな言われ方してたけど、じょうだんじゃない!「アイアンサイド」はドラマ自体も面白かったんだ。ペリー・メイスンやってたレイモンド・バーが主演で、若山弦蔵さんの吹き替えも良かったなぁ。




 まだまだ続くと。

 
[PR]
by harukko45 | 2011-09-01 01:23 | 音楽の仕事

久々にJazzにはまり(3)

 HMVの「ジャズ定番入門」に合わせて、律儀にジャズを聴く3回目はジャッキー・マクリーン。ウヒョー、これは意外でした。ロリンズ、コルトレーンとテナー二人続いたので、次はアルトっていうのはわかるが、こんなに早くマクリーンを聴くというのは、自分の中にはなかった。
 でも、好きですよ、ジャッキー・マクリーン。この方のプレイは、情熱的で説得力があるのです。ちょっと力みすぎたり、ピッチが悪い時もあるけど、不思議と聴いているうちに応援したくなる感じなのだ。

e0093608_22404499.jpg で、まずHMVのジャズ担当者の方が推薦するのは59年10月録音のブルーノート「Swing,Swang,Swingin'」。これは私、聴いたことありませんでした。YouTubeにも2曲ぐらいしかなかったので、TSUTAYAでレンタルしてきました。なるほど、なかなかの好盤ではありますな。ワンホーン・カルテットで、スタンダードばかりを気持ちよく流すという感じで、リラックスして楽しく聴けました。確かにマクリーン入門には最適でしょうし、おしゃれにジャズを聴きたい感覚にはピッタリかも。
 が、実を言うと私は、60年代になってからのハードなマクリーンの方が好みですなぁ。


e0093608_22491790.jpg 特に昔、かなり聴いたアルバムがこちらの67年12月録音の「Demon's Dance」。上の「Swing...」のいかにもジャズィーなジャケットとは全く別物のオドロオドロしさ。マクリーンはこの2枚のアルバムの間に、どんどん変化をとげて、いわゆるモードやらフリーやらという「ジャズ来るべきもの」へ果敢に挑戦していったのでした。その辺の過程をたどるのも個人的にはなかなか楽しいのですが、とにかく、その結論として示されたのが「Demon's Dance」だったのでは、と思うのでした。
 彼は再びオーソドックスなプレイに戻ってきました。だが、ここでの彼はもはやただの「くぐもった」「泣きの」プレイヤーではありません。いろんなものを昇華しきって堂々たる姿になったマクリーンにホレボレします。ジャック・ディジョネットのドラムもかっこいい。

e0093608_125686.jpg さて、マクリーンは、サイドメンとしても多くの名作に参加していることでも有名。
 ソニー・クラークの「Cool Struttin'」やチャールス・ミンガスの「直立猿人」、マル・ウォルドロンの「Left Alone」が定番ってとこでしょう。(そのまんま、HMVでも推薦されてます。個人的にはミンガス以外はそれほど好きじゃないですが、ジャケットがいいからここにも飾っておきます。)
 もちろんこれらも良いですが、私としては今回いろいろ聞き返したところ、フレディ・レッドの60年ブルーノートの「The Music from the Connection」、「Shades of Redd」を推したいです。

e0093608_035347.jpg フレディ・レッドはピアニストでありますが、それよりも作曲家として素晴らしい才能をみせております。彼自身は、その後不遇のようでしたが、ブルーノートに残されたこの2枚は素晴らしい名作であることに間違いないです。(もう一枚の「Redd's Blues」はオクラ入りだったが、復刻された。これも悪くない)
 内容はどれも典型的なハードバップですが、それぞれの曲がしっかり練られているので、そこらのジャズとはちょっと違う、って感じ。

e0093608_044086.jpg とにかく、リーダーがちゃんとしているので、一つのドラマを見るかのようにアルバムを聴けるのでした。特に「The Conection」は演劇の為に書かれた音楽だけに当然と言えば当然なのですが。
 ここでのジャッキー・マクリーンは実に生き生きとしたプレイで、彼の生涯のベスト5に入ると言っても良いのでは。
 ある意味、「Cool Struttin'」と聴き比べても面白いかも。
[PR]
by harukko45 | 2011-03-06 23:59 | 聴いて書く

久々にJazzにはまり(2)

 HMV OnLineのジャズ・コーナーにある「ジャズ定番入門」にそって、律儀にジャズを聴く2回目はジョン・コルトレーン。HMVの門澤さんは一応初回がソニー・ロリンズだったので、同じサックスつながりでコルトレーンを選んだようだが、個人的には今トレーンを聴くのはちと辛い。
 蘇る10代の頃、その当時の日本のジャズ・ジャーナリズムではジョン・コルトレーンは「神」として崇め立てられておりました。で、すぐに感化される私は、すぐにトレーン教に入信して、ありがたく苦行のように聴いておりました。この苦しみを乗り越えた時に、輝かしい感動の世界が待ち受けていると信じて。

 何しろ、初めて買ったコルトレーンのアルバムは4枚組だったか、「Live In Japan」でありますよ。ほんと、辛かった。でも、頑張って聴いて、すべて聴き終わった後には、何とも言えぬ達成感から涙しておりました、うむ。
 その他では、「Live At The Village Vanguard」「A Love Supreme」「Transition」「Ascension」「Kulu Se Mama」等々ね。このあたりのヘビーな作品群にこそ価値があったので、「コルトレーンはインパルス・レーベルに限る」、同じインパルスであっても「Ballad」「Duke Ellington & John Coltrane」「John Coltrane & Johnny Hartman」なんか聴いちゃいけないように思い込んでましたっけ。

 もちろん、その頃はずっと尊敬していたのですが、二十歳すぎたら何だか洗脳から目覚めて、すっかりイヤになっちゃって。ただし、例外的にマイルス・デイビスのアルバムに入っているコルトレーンは大好き。でも、これはマイルスがすごいリーダーだからに違いないわけです。
 というわけで、マイルスのプレスティッジでの4部作、CBSでの「'Round About Midnight」から「Kind Of Blue」までが、私のコルトレーン・ライン(おっと忘れてた、「Someday My Prince Will Come」でゲスト参加してレギュラー・メンバー達を圧倒するソロ吹いてましたっけ。初めて聴いた時はぶっ飛んで感動してたけど、今聴くと、ちょっと吹き過ぎじゃないかと)。

 とは言え、56年前半までの録音では正直、「ヘタ」です。よくもまぁ、マイルスがこの男を雇ったものだ、と思うぐらい。
 基本的に、この頃の彼は「口」と「指」が合ってない。サックスをやったことのある人なら、何となく分かると思いますが、要は吹こうとする口に指が追いついていない。つまり、スケール練習をしろ、ということです。
 だが、この男はなんと、本当に猛烈にその後練習するのでした。そこが凄い。なので、56年の秋にはとんでもないテクニシャンになり、それまで表現出来なかった「すさまじい情熱」を一気に解放する技を身につけて復帰しておるのです。

 その後、コルトレーンは67年に死ぬまで、とことんサックスを吹きまくり、自分の音で全てを埋め尽くしていったのでありました。

e0093608_0542256.jpg さて、これが現在の私のコルトレーン観でありますが、今回、HMVの推薦にしたがって、57年9月録音のブルーノート「Blue Train」を聴いた。このアルバムは年代的には、私のコルトレーン・ラインの中に入るものの、正直ずっと敬遠していたもの。ブルーノート・レーベルのイメージとコルトレーンは合わない、と思う。だからじゃないだろうが、彼のブルーノート作品はこの1枚だけだ。それと、1曲目のタイトル曲のメロがちょっとダサイ感じで嫌いだったのだ。
 ところが、今回聴いてみたら、なかなか楽しかった。さすがブルーノートではある、実によく作り込まれているし、各プレイヤー達の白熱の演奏がちゃんととらえられていて、素晴らしかった。それに、コルトレーンはもうすでにその後のインパルス時代と同じように吹いていた。

 だが、それでもなお、やっぱりマイルスみたいに「クール」な気分になれなかったなぁ。


e0093608_103178.jpg それは、アトランティックでの有名な「Giant Steps」にも言えて、こちらはもうコルトレーンの演奏には完全に脱帽なんだが、全体的にはもうひとつピンとこない感じが残る。
 だいたい、アトランティックはロックでは最高なのに、ジャズではどのアルバムも今一つなサウンドしているように思う(その後、思い返してみるとMJQやチャールス・ミンガスは良かったかも、いい加減でごめん。とりあえず、少なくともトレーンのアルバムでは物足りない)。
 それに、元々マイルスやロリンズのように垢抜けない、どちらかといえば「イモっぽい」コルトレーンには、それまでのハードバップな感覚じゃうまくキマラナイ。


e0093608_132993.jpg で、もう一枚推薦されているインパルスの「Impressions」を聴くのでした。ここに来て、完全に60年代のジャズのムードが全面に登場します。で、蘇るコルトレーン教の呪術がムワーっと広がるのでありました。うー、結局、これが一番ピタっと来る。エルビン・ジョーンズ、マッコイ・ターナー、ジミー・ギャリソン、そしてボブ・シールのプロデュース、おなじみルディ・ヴァン・ゲルダーの録音によるインパルスこそが、コルトレーン!うー、また戻っちまった。

 
[PR]
by harukko45 | 2011-03-05 01:29 | 聴いて書く

久々にJazzにはまり

 久々の更新です。このところ、大いにはまってしまったことがあり、まさにブログも忘れて、そのこと一途に邁進しておったのでした。

 それは、よくネットで訪れるHMVのサイトをいつものようにブラブラしていたところ、Jazzのコーナーで「ジャズ定番入門」というコーナーを発見、ちょっと冷やかし半分でのぞいてみたのが始まりだった。
 まぁ、いわゆる高名なる評論家の方や、うるさ方のジャズ・ファンが執筆されているのだろうし、登場する内容もお決まりの流れかいな、と思いきや、全く違った。
 そこでは現在HMV-ONLINEの洋楽担当課長である門澤英夫さんという方が、ジャズの名盤を紹介するというものだった。

 この手のものは、ネット上にも本屋にもいっぱいあるのだが、今回このコーナーにひかれたのは、書き手である門澤さんが、根っからのジャズ・ファンではなく、HMVにおいてもロック&ポップス部門を歩んできた人で、前にジャズを聴くことに挑戦したものの、ものの見事に失敗している経験の持ち主であること、にもかかわらず、今更なんでジャズなのかと言ったら、40歳を過ぎ「悲しいかな、この年になると流行りの音楽についていくのもなかなかに頑張りが必要」で、「つい往年のロック名盤の再発売ものばかりに耳が行きがちだが、それもいささかマンネリ気味」、「似たようなリスナーも多いはずだから、昨今の洋楽市場の低迷もいたしかたないとは思う今日この頃」、ところが「売り上げデータを見るとジャズ周辺だけは元気」、「老いも若いも惹きつけるジャズの魅力とは何か?」「担当者によると、大きな魅力のひとつに、体系化された歴史のある音楽を、知識を深めて掘り下げて聴いていく楽しさがあるそうだ。」

 私はここにぐぐっと共感、「ほほう、これはちょっと面白そう」となったわけだ。
 
 ということで、ジャズ初心者である門澤さんが、身内であるHMVのジャズ担当者から推薦盤を選んでもらい、その中から、あまり脈略なく(小難しい「歴史的体系」を実は考えず)自ら購入し、その感想を書いているのだった。

 で、この連載は2009年の9月からほぼ2週間おきにアップされ、もうすでに32回となっている。なので、先月になってそれに気づいた私は大急ぎでチェックしながら、その音源を「HMVでCDを買う」ことはせずに、「YouTubeで聴く」という反則技(?)をおこなうことにしたのだった。
 これが、はまった。何と、ほとんどの音をYouTubeで聴けるのだった。何と、素晴らしい時代になったことか、CDの売り上げには全く貢献できないものの、これほど手軽にかつての名盤をチェックできるというのは、やはりありがたい。いやいや、サイコーでしょう!
 
e0093608_16294759.jpg で、まずは「ジャズ定番入門」の順番通りに聴きこんでいくことにして、第1回目がソニー・ロリンズ。いやぁ、「マジに」50年代ジャズを聴くなんて何十年ぶり?高校生の時に、アルト・サックスをやってて、まさにジャズ・プレイヤーに憧れていた時がジャズ・フリークのピークだから、35年は昔のこと。
 だけど、やったらめったら新鮮。それに最初に紹介されていたのが57年9月録音のブルーノート「Newk's Time」。はっきり言って、「Saxophone Colossus」が来てたら私の興味は一気に半減していただろう。いやいや、「Saxophone Colossus」も素晴らしい大傑作でありますが、それはもう「ごちそうさま」。「Newk' Time」、いいセンスじゃない。フィリー・ジョー(Drums)サイコー、ウィントン・ケリー(Piano)大好き。
 これですっかり楽しくなってしまい、立て続けにロリンズの名盤を聴き漁ることに。正直、10代の時は血気盛ん(?)で、同じサックスでももっとハードなプレイヤーに興味があって、それはチャーリー・パーカーであり、コルトレーンであったわけです。だが、今はロリンズの「大らかな」歌いっぷり、そうまさにつねに「歌う」ロリンズが素晴らしく感じちゃう。やっぱ、若いうちじゃ理解できないことはある、だから、今もう一度ロリンズを聴いて感動できることがうれしい。

e0093608_16352647.jpg 56年11月録音のプレスティッジ「Saxophone Colossus」は昔からの超名盤の大定番。演奏に文句はないが、個人的には近い時期のルディ・ヴァン・ゲルダーの録音でもブルーノートの方がかっこよく聞こえる。これは、アルフレッド・ライオン(ブルーノート)とボブ・ワインストック(プレスティッジ)のプロデュースの差としか言いようがない。

e0093608_1651062.jpg 
 57年4月録音のブルーノート「Vol.2」は内容もさることながら、何と言ってもこのジャケットにしびれる。「Colossus」と比べれば一目瞭然。ここら辺もブルーノートのセンスの良さってわけ。フレッド・ウルフの写真ってほんと「これぞ、ジャズ」って感じ。ブルーノートが常に特別なのは、「ライオンと狼」コンビのおかげですなぁ。

e0093608_19485496.jpg 10代の時に、一番好きで聴いていたロリンズのアルバムはこのコンテンポラリー「Way Out West」、57年の3月の録音だが、場所がLA、バックも西海岸のミュージシャンで、レイ・ブラウンとシェリー・マン。共に良いのですが、特筆すべきは録音がロイ・デュナンで、「東のヴァン・ゲルダー、西のロイ・デュナン」とジャズ界で呼ばれたほどの名エンジニアですよ。もちろん、それは後から知ったことだけど、子供の耳でも、このアルバムの音には惹かれるものがあって、ロリンズを聴こうと思うとついこのLPを引っ張りだしてた。
 それと、このアルバムにはピアノがいない。それが、いいのだ。コードがないのが何ともかっこいい。もちろん、ジャケットもいいす。もちろん、ロリンズ素晴らしい、おお、レイ・ブラウンも素晴らしい!

e0093608_2045265.jpg ピアノレスがかっこいいので、やはり57年11月録音のブルーノート「A Night Of The Village Vangard」も大好きでした。これはライブで、それもヴィレッジ・ヴァンガード初のライブ盤。その後、たくさんの名作ライブ盤を生み出してきたジャズ史上最も有名ライブハウスでの最初のレコーディングはロリンズであったのです。
 もちろん、こちらはルディ・ヴァン・ゲルダーによるザックリしたサウンドですが、やっぱブルーノートらしいというか、これがニューヨークなんだろうな、って感じ。ドラムがエルビン・ジョーンズなんで、より刺激的。うーん、それにしてもこの時期のロリンズは本当にどれも良いです。

e0093608_20175252.jpg おっと、先述の門澤さんが特集の1回目にロリンズを選んだ理由に上げている、ローリング・ストーンズの81年の「Tatoo You」では2曲でロリンズがソロを吹いているが、これがまた「クー、たまらん」なのだ。
[PR]
by harukko45 | 2011-03-04 20:22 | 聴いて書く

レス・ポール氏死去

 偉大なギタリストであり、音楽制作の分野でも数々の功績を残したレス・ポール氏が13日に亡くなった。94歳だったとのこと。このところライブの予定がないことを徳武さんがすごく心配していたのだが、やはり体調を崩していたのだった。

 彼の偉大さに関しては、日本ではまだまだ熟知されているとは言えないが、こと音楽業界、ミュージシャンの世界に身を置くものにとっては、いくらリスペクトしても足らないほどの存在だったと言えよう。心よりご冥福をお祈りしたい。

 これを機に、多くの人がレス・ポールの素晴らしい音楽に触れてほしいし、彼の伝記映画である"レス・ポールの伝説(Les Paul Chasing Sound!)"を見てほしい。これを見れば、彼なしでは現代のマルチ・レコーディングは存在しえないことがわかるし、何より自らの音楽をどんよくに追求し続ける姿勢に圧倒されるだろう。
 私が過去にアップした"レス・ポールの伝説"についてはコチラを
[PR]
by harukko45 | 2009-08-14 15:58 | 聴いて書く

レス・ポールの伝説

e0093608_774677.jpg もうすでに今年の夏に公開されていたのだが、ギターの徳武弘文さんを始めとする先輩ミュージシャンの方々から「絶対ミルベシ!!」と言われていた"レス・ポールの伝説(Les Paul Chasing Sound!)"をようやく観ましたよ。
 で、私のようなものが言うのもおこがましいが、まだ観ていない人、特に映画ファンというよりも、音楽、ポップ・ミュージックが好きな人、実際関わっている人は「絶対ミルベシ!!!!」と強く言いたい。

 そして、今自分達がポップ・ミュージックをこんなにも楽しめているのは、レス・ポールという偉大な人物のおかげだったんだ、っていうことをしっかり認識してほしい。
 なんて言っている私も、この映画を観たことで、あらためてその偉大さに脱帽した口だから、そんなに大口叩けないわけで、今日を境に私も、レス・ポールに最大限の敬意を払いたいと思ったのでありました。

 レス・ポールの偉大さは、単にギタリストのみだけに留まらない。そのサウンドの飽くなき追求心が生み出したエレキ・ギターの開発、多重録音の発明と研究、レコードのカッティング技術やアナログ・テープ・ディレイの発明などはどれだけ現在の音楽界の発展に貢献していることか。要は、彼がいなければ現代のオーバーダビング・レコーディングによる音楽制作など有り得なかったし、豊かなギター・サウンドによるロックの発展などもなかったのだ、とも言えるのです。

 もちろん、そういった発明や探求の中から生み出された音楽、それそのものが真に素晴らしいものであったからこそ、その影響力は絶大で永遠だということ。
 そして、90才を越えた今でも現役でニューヨークのクラブで毎週自らのトリオを率いて演奏し続けている。そのバリバリの演奏をする姿を見ると、自分などまだまだとんでもなくガキであることに気づかされたのだった。ほんと、恐れ入りました。

 ただ、1人の偉大な音楽家の歴史映画としては、掘り下げがもう1つだろう。だから、いわゆる映画ファンにはすすめない。しかしながら、音楽関係者としては、この程度のTVドキュメンタリー・タッチの方が彼の音楽への功績をちゃんと勉強できるので有り難い。

e0093608_77579.jpg さて、映画も必見だが、CDでもまた聴き直さなくては。やはりメリー・フォードと組んだオーバーダビングによる大傑作群は絶対に外せませんわな。
 うー、感動して眠れなくなってしまったわい。
[PR]
by harukko45 | 2008-10-13 07:16 | 映画・TV

Sam Cooke/Night Beat

 私はすぐに人に感化されやすい。11日のJabBee主催のライブで、リーダーのシゲルさんが、「今日はサム・クックの命日だから」と各バンド・セットのインターバルにBGMとして彼のアルバムをかけまくっていた。で、この1963年の"Night Beat"を何と初めて聴いた。

 お恥ずかしいながら、私のサム・クック体験はかつて出ていたベスト盤"The Man and His Music"のみで、確かにこれは2枚組に彼の代表作が並んでいるのだが、いわゆるティンパンアレー風の豪華なオーケストレイションによるサウンドの印象が強く、その甘い感じのバックにあって彼の歌のうまさはわかったものの、じっくりその音楽に入り込むことはなかった、というか、サラっと聴き流していたという具合だった(今考えるともったいない)。

 が、この"Night Beat"は全曲スモール・コンボによるブルーズ感覚満載の音だった。まずはそれにしびれる。特にピアノのレイモンド・ジョンソンとオルガンの若きビリー・プレストンのプレイが最高にかっこいい。だが、やはり何と言ってもサム自身のボーカルの素晴らしさに脱帽だろう。何で今までわからなかったのでしょう!バカじゃないの!

 m1のゴスペル・ソングはこのアルバムのコンセプトである「午前2時頃、ダンスを踊りまくった後」にいきなりグッと引き込まれる魅惑的なムード。だが、歌っている内容は深い。彼のボーカルが心にダイレクトに伝わってきて、もうそれだけで虜になってしまう。
 m4"Mean Old World"も最高のボーカルにレイモンドのピアノの絡みが実にたまりません。
 m5のチャールズ・ブラウンのブルーズも、独特のサム・クック節で完全に自分の世界にしてしまう。甘さと渋さが絶妙のブルーズ。ビリーのオルガン、レイモンドのピアノ、どちらも最高のバッキング。
 m6のバラード唱法もすごいが、全体のパフォーマンスが最高にゴキゲンなのが、m7"Little Red Looster"。文句のつけようのない演奏と歌。ビリーのオルガンがほんとに最高。サムもそれを聴いてすごく楽しそうなのが伝わるよ。
 
 で、それをさらに上回って最高にしびれるのはm7"Laughin' And Clownin'"。これぞブルーズの名演です。その後も素晴らしいブルーズが続き、ラストにジョー・ターナーの"Shake,Rattle And Roll"がこれまたニクイ感じの出来なんだけど、曲調がイケイケでもちゃんと「午前2時」の雰囲気で、気持ち抑えめにしているのがクールでカッコイイわけね。この辺のトータル・コンセプトをちゃんと持って作り上げてるところも素晴らしい。
 結局、ここまできてまた頭に戻しちゃうんですよ、どうしても。最高!(この文章に何回出てくんの?!それしか言えない自分の貧相な語彙が恨めしいわい)
[PR]
by harukko45 | 2006-12-22 13:42 | 聴いて書く

Robert Johnson

 ディアンジェロのような音楽を聴き続けると、その毒性の強さゆえに、他のものがひどく軽く聴こえて困ってしまう。とりあえず、どれもこれも面白くなくなってしまう。
 こういう時は「目には目を」「毒には毒をもって制す」。マイルスの"Sorcerer"かボブ・ディランの"Blonde On Blonde"あたりも考えたが、ロバート・ジョンソンを聴くことにした。こりゃ、かなり毒強いでしょ!

 とにかく、この人は27才でもろに毒殺されてしまって、残っているのはその2年前(36年)と前年(37年)の全部で29曲41テイク、2枚組のCDだけしかない。だが、70年前の演奏なのに、やたらめったらリアルの音なんだよね。それにギターがとんでもなくうまい。キース・リチャーズが初めて聴いた時に、ギタリストが二人いると思ったという話には、こちらも納得しちゃう。
 今回聴いて思ったけど、36年のテイクより37年のものの方が、歌に包容力がある。ギターにもやさしさがあるように感じる。たった1年でも彼は深みを増したということかな。その分36年には尖った勢いがあって、これはこれで凄いわけです。にしても、内容は絶望的なものだったりするんだろうけど、えらくノリのいい歌と演奏だよなぁ。
 ジャンルは違えど、モーツァルトも「音楽は常に楽しくなくてはいけません。」って言っている。悲しくたって辛くたって、楽しく聴かせる。だからこそ、その裏にある暗闇を聴き手が発見した時に衝撃的な感動となるのだった。

 でもまぁ、細かいことよりも、全ての曲に一貫して存在する「何か」にうっとりしてしまうわけ。何と言うか、死者の霊魂が語るのを聞いているのだな、これは。彼の声、歌、ギター、録音された部屋の臨場感、すべてが一つなんだ。録音された時は当然彼は生きてたんだけど、音楽自体は霊魂そのものがやっていたのかもしれない。だから、時間を越えちゃうのだった。
 
 ますます生きてる自分の小ささに嫌になる。こういうすごいものを聴くと自分の死ってやつがとっても身近に感じるのだった。
[PR]
by harukko45 | 2006-05-27 02:26 | 聴いて書く

e0093608_232037.jpg スキップ・ジェイムスはデルタ・ブルーズの巨匠。私は映画「ソウル・オブ・マン」で初めてその偉大さを知ったので、全くの初心者。しかし、今や毎日彼の声を聴かないと落ち着けないほど中毒になりつつある。とにかく、とても危険な音楽だ。彼のファルセット系の高音の歌声が流れると、空気がどんよりするよ。
 簡単に言えば、これぞブルーズの深淵、解説の小出斉氏の言葉を借りれば「ブルーズの向こうにある、何か邪悪なもの、ブルーズの持つ根源的な恐ろしさを感じさせる」のだった(簡単には言えませんね、やっぱり)。

 で、確かに深くて恐い音楽なのだが、聴いててとても安らぐ。スキップの声が私には「癒し系」となるようだ。ボブ・ディランも同じ理由で、中学生の時からずっと聴き続けている。ともに、その歌われている歌詞や内容にはあまりこだわらない。とにかく、歌声だけでいいのだ。その声にじっと耳を傾けていたいだけなのだ。(特にギターの弾き語りによる13曲までがたまらんのよ。)

 聴いているのは1931年2月にたった2日間で録音されたSPものの復刻CD。今はこれだけでも満足しているが、60年代に「再発見」されてからのものも、聴いてみることになるだろう。ブルーズにハマると大変だよ、って言われるけど、私の場合はロバート・ジョンソンとスキップ・ジェイムスだけでかなり十分かもと思っている。

 ちなみにクリームが彼の"I'm So Glad"をカバーしたことで、その印税で彼は病気の治療代を払える事が出来たという。エリック・クラプトンの話では、その当時不遇な扱いを受けていた偉大なブルーズメン達のために、意図的に彼らの曲をロック的にアレンジしてアルバムに収録し、印税がわたるようにしたという。大変素晴らしい話だが、それにしても60年代のイギリスのロック・ミュージシャン達がすさまじく強力なブルーズ・オタクだったことの証しとも言える。
[PR]
by harukko45 | 2006-03-08 02:52 | 聴いて書く

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる