タグ:水越けいこ ( 84 ) タグの人気記事

(1)からの続き。

e0093608_6421936.jpg m7.あなたがいたら

 89年の「Dramatically」からの"あなたがいたら"は田中章さんのアコースティック・ギターのサウンドが素敵で、他には何も入らないほど曲にマッチしている。竜真知子さんの詞もすごく良くってさすがだと思う。曲は、けいこさんの別の側面でもある「不思議」系と言えるだろうけど、あえて感情を殺したような歌い方が、何とも言えない非現実的なムードを作っていて、手を離したらどこかへ行ってしまいそうなボーカルを、アコギがやさしく包むことで、現世に留まっているような感じ。それにしても深く、切ない。
 今回のライブではピアノのみでやったので、オリジナルとはちょっと違ったニュアンスになったかもしれない。スタジオ版の暖かい感じよりも、寂寥感の方が強調されていたかも。私はアコギの印象が強くて、ピアノでやるのはいかがなものかと心配していたが、実際には新しい刺激があって、個人的に"32階""黒いドレス"からの3曲の流れが、今回一番のお気に入りコーナー。

 東京・名古屋ではこの曲は"黒いドレス"からつながるように組まれていて、ライブ前半をしっとりと終えることで、とても印象的になったと思う。この後私は引っ込んで、けいこさんの弾き語りコーナーへ。曲はその場その場で3〜4曲ピックアップされ、ファンの皆さんのリクエストにも応える内容だった。私は、東京の2部(ファンクラブの集い)での"流れるままに"を久々に聴けてしびれましたね。ファルセットの高音が素晴らしかった。

 大阪では、バンドのメンバーはいったん下がり、私だけが残ってピアノのみのコーナーの1曲目に"あなたがいたら"を演奏した。

e0093608_1149691.jpg m8.For Myself

 91年の「Humane」収録の"For Myself"は、前曲以上に「不思議系」で、演奏的にはつかみどころがないフワフワさ。こういう曲は、歌のムードについていくことが大事で、アレンジ上で何かを仕出かしてやろうなんて思わない方が、うまく行くようだ。けいこさんの声に導かれるように、かなり即興的に二人で作っていく感じが楽しかった。歌詞が心静かに自分の内面に語りかけていく内容だから、このやり方で良かったと思う。

e0093608_19405861.jpg m9.波に寄せて

 アコギに我らがプロデューサーである森崇さんを迎えての"波に寄せて"は、もはや説明不要の名作。ひょっとしたら、発表当時よりも今の方がファンに方々の思いが重なり合って、より深く大きな存在の曲に成長しているのかもしれない。
 私個人も、つねに敬意を持って演奏にのぞむ感じであります。それにしても、波がドーンを寄せて、スーッと引いていく感じがうまく音化されてますなぁ。曲とアレンジの両方でね。毎回、関心する。

e0093608_9321461.jpg m10.カーニバルの終わりに

 後半はノリのある楽曲が並び、ファンの皆さんの熱い手拍子も加わっての、ライブならではムードが盛り上った。ただし、東京では私と森さんのギターだけだったので、少々パワー不足を感じた。そこで、名古屋では打ち込みのリズム・トラックを組んで、それに合わせることにした。そして、大阪ではリズム・セクションにサックスも加わってくれたので、本来の形に近い演奏をすることができたのでありました。これは、文句無く楽しかった。

e0093608_19405861.jpg m11.Africa

 前曲から続けるように、リズム先行で"Africa"に突入。東京と名古屋ではスタジオ版のイントロで聴こえるドラムスをループにして、そこにパーカッションを新たに打ち込んだトラックを使った。これは、あくまでオリジナルに沿ったアプローチだったが、大阪の時は、かつてのツアーでやっていたレゲエ・バージョンにしてみた。この方が全体にバンドっぽい自由さや、ライブならではワイルドさが加わり、ノリも良くなったと思う。
 リハをやっていて、なかなかいい感じだったので、途中でメンバー紹介のソロ回しを入れて長くすることにした。これもライブならではで面白かったけど、何と言っても、けいこさんが長い付き合いであるはずの、森崇さんの名前を「イノウエ?崇さん」って飄々と間違えたのがハイライトでしたね。

 東京・名古屋では、この後に"Dear Summer Time"を続けた。

e0093608_7275087.jpg m12.シンガポール

 大阪のみで演奏した曲で、これはバンドでやるために選ばれた。

 85年の「Actress」は80年代のニュー・ウェイヴ感覚をうまく処理しながら、けいこさんのボーカルのポップさが生かされた作品で、かなり良いです。それで、この中の曲はライブでもずいぶん取り上げられてきたのだが、私が唯一やっていなかった曲が、この"シンガポール"。
 三越正幸さんの曲は、思いっきりニュー・ロマンティック。けいこさんの歌詞もこれまた思いっきりキャッチ・コピー風で、どっぷり80'sしてる。シンガポールってタイトルだけど、それは単に暗示的な意味合いだけで、その軽さがいい。ちょっとBOØWYっぽいニュアンスも。
 それにしても、けいこさんがこの手のニュー・ウェイヴにピタっとはまるのが面白いし、それもなかなか相性がいいと思った。これは新発見。
 で、バンドによるパフォーマンスも、ことのほかうまく行ったと思う。会場の皆さんのノリも良かったし、ライブで実に映える曲でありました。エレキ・ギターなしでもそれっぽいニュアンスが出ていたのは、バンドのメンバーのおかげ。ギターとシンセのテクノっぽいフレーズをサックスとエレピでやったのも、なかなかクール。そして、曲のエンディングのためだけに、ドラムスの井上さんはドラを仕込んでくれた。これもサイコーでした。

e0093608_117441.jpg m13.Only One

 けいこさん以外の作家の作品を多く収録した「Precious」のオープニングであった"Only One"は派手さも十分で前向き歌詞を持つポップ・チューン。ライブ向きの明るい曲だから、本編の後半にピッタリだった。ただし、東京・名古屋でのアコ・バージョンでは、さすがに手が足らない感じで、良さを引き出すのが難しく、十分にやりきれなかった。大阪で3人のミュージシャンが加わってくれたことで、やっとちゃんとした"Only One"をお聞かせ出来たように思う。こういう、ガンガンに行ける曲は生ピアノを引っぱたけるので、個人的にも大いに盛り上がる。

詳細(3)へ続く。
[PR]
by harukko45 | 2013-06-03 01:27 | 音楽の仕事

 27日に大阪より帰宅しました。車で名古屋・大阪を巡った水越けいこさんの「Spring Tour 2013」は無事に終了しました。初日であった東京・江古田マーキーでのライブが4月27日だったので、1ヶ月の時間があいてしまい、モチベーションの維持がちょっと心配されましたが、実際には新しい試みによる出会いがあったり、ファンの皆さんとの交流の場があったりと、かなり充実した3泊4日でありました。
 江古田マーキー、名古屋ムジカ、大阪・高槻ミュージック・スクエア1624天神にお越し下さったファンに皆さんには、心よりお礼申し上げます。皆さんの力なしでは、ライブの成功はありません。

 さて、今回もいろいろと思い出多い内容となったステージをセット・リストにそって振り返っていきたいと思いますので、どうぞおつきあいのほど、よろしくお願いします。
 なお、東京と名古屋は同じ曲目でのパフォーマンスでしたが、大阪では、ベース、ドラムス、サックスの地元ミュージシャンとのバンド編成で、曲目・曲順が少し変更されました。ここでは、大阪の曲順にそっていきます。

e0093608_14393442.jpg m1.Love Song For You

 81年の「Jiggle」はアレンジを大村雅朗さんが8曲で、佐藤準さんが2曲。この後の「I'm Fine」が全曲、大村さんのアレンジなので、この時期は大村さんとのコラボが中心と言えるか。が、80年の「Like You!」は佐藤さんが全曲アレンジ、79年の「Aquarius」では二人が5曲ずつということで、これは偶然だったのか、単にスケジュール的な問題だったかもしれないものの、私には当時のプロデューサーが、なかなか絶妙な配分で能力の高いアレンジャー二人を使い、けいこさんの世界を豊かに色付けていたのだなぁ、と感心するのでした。

 かなりザックリ言って、けいこさんの楽曲で、サトジュンさんか大村さんがアレンジしているものにハズレはない。それどころか、かなりの名曲、驚くべき傑作、く〜たまらんの連発曲がそろっていることは間違いない。それぐらい、けいこさんと、この二人の相性は良いのだ。

 で、"Love Song For You"は、さすがロック系に縁の深い佐藤準さん(元「SMOKY MEDICINE」)の特色がうまく出ていて、ちょっとポール・マッカートニーの"Live and Let Die"風とも、ソフト・プログレとも言えそうなドラマティックな流れは、演奏しているものもワクワクさせられて実に楽しい。なので、こういう曲は、やっぱりバンドでドカーンと派手にかましたい。だから当然、そういう思いは大阪での2ステージではある程度果たされたのだった。もちろん、欲を言えばキリがない。ディストーションの効いたエレキ・ギターも欲しいし、コーラスも欲しいってことになる。

 ところが、ピアノだけでやった東京・名古屋では、アレンジの骨組みだけで演奏する感じになってしまうにもかかわらず、それでも十分満足できる内容であることに気づくのだった。あらためて、けいこさんの歌詞の方に目を向けると、ステージでのボーカリストが主人公の曲でありながら、彼女の心は失った恋の哀しみでいっぱいなのだから、やっぱり、けいこさんの曲は簡単ではない。だから、ピアノのみで、時にミニマムさを意識していくことで、「特定のあなただけ」に捧げる愛の歌の世界に浸ることになった。

e0093608_1125865.jpg m2.ジェラシー

 82年の「I'm Fine」は大村さんのアレンジで、演奏はTOTO。この当時の最先端であるアダルト・コンテンポラリーな(AC/日本ではAORと呼ばれる)サウンドと素晴らしい演奏に文句などないのだが、あえて惜しいと思うのは、時にLAのミュージシャン達の持つ根っからの陽気さが、けいこさんの音楽を「明るくしすぎた」部分が少し見られる点だろうか。そこが、「I'm Fine」の小さな弱点かも。

 実際に、この"ジェラシー"では、エンディングでのスティーヴ・ルカサーのギター・ソロがテイク1では明るすぎていたとのこと。それで、けいこさんはスティーヴに「この曲は"ジェラシー"なのよ」と注文したのだそうだ。それを理解した後のテイク2がOKテイクになっているわけだが、確かに彼にしてはいくぶん影のある泣きのフレーズも聴こえてきて興味深い。それでいて、きっちりとテクニカルな速弾きも披露しているし、音楽的な構成力も見事だ。
 とにかく、この頃のルカサーは「どんなスタイルの音楽だろうが、一発で最高のプレイをキメる」ギタリストとして有名だったわけで、たぶんどのテイクを選んでも完璧だったろうが、それでも歌詞の世界観を一番に考えた、けいこさんはエライ。

 今回のライブにおいては、大阪でサックスの山本さんをフィーチャアして、曲本来のAOR感を出せたと思う。期待に応えて、山本さんはメローなプレイでキメてくれた。

 このあと大阪のみ2曲、バンド編成を生かした曲が加えられた。

 m3.Dear Summer Time

 同じく「I'm Fine」からの曲で、これはLAっぽさとTOTOの演奏を意識した曲、アレンジだと思うし、その意図が十分に生かされたテイクがアルバムに収録されている。アメリカ人ミュージシャン独特のグルーヴィな8ビートが気持ちいい。この当時20代だった私のようなミュージシャンには、こういう「ゆったり」しながら「スムース」に流れていくグルーヴ感を出すのがむずかしかった。とにかく、ジェフ・ポーカロの歌うようなドラミングが、ほんと、素晴らしい。

e0093608_10111.jpg m4.少し前、恋だった。

 83年の「KAREN-NA-KISS」は、全体にニュー・ウェイヴ的なニュアンスが強いアルバムで、「I'm Fine」のようなAORサウンドはなくなってしまったが、その中では唯一この曲は、どちらかと言えばオーソドックスな「夏っぽい」サウンド作りが、逆に時代を感じさせずに良いのかもしれない。
 78年から80年代、ほぼ毎年1枚から2枚のペースで制作されている、けいこさんのアルバムを年代順に聴いていくと、当時の音楽的傾向の大きな変化がすごくよくわかって、実に面白いです。

e0093608_19405861.jpg m5.32階のBAR

 「I'm Fine」と「KAREN-NA」にはさまれた「Vibration」はAOR的な要素とニュー・ウェイヴ的な要素が共存しているアルバムで、アレンジャーが4人もいるのだが、それよりも何より、このアルバムに収録された曲には、面白さと強さがあり、個人的には前述の2作よりも好きだ。
 "32階のBAR"は、以前にも書いたが、どことなく「昭和」的で「バブリー」な感じでもあり、およそ現代の作家では書けないような内容の曲。
 かつて音楽業界の人達が好んで使っていた言葉「ゲセワ」は、ある意味、今なら「ヤバイ」ってことに近いかも。つまり「ゲセワでクサイ」ムードを曲が持っていて、その危険な香りがたまらんのです。

 実は、私はこの曲をずっと一人だけで演奏してきたので、今回初めてバンドでやって、すごく楽になってうれしかった部分と、その分スリリングな気分がなくなって残念な部分を両方体験した。音楽って、何年やってもホントむずかしいもんですわ。
 
 m6.黒いドレス

 続けての"黒いドレス"は、最初から最後まで「危うい/アブナイ」。アレンジした萩田光雄さんは、もちろん日本を代表する名アレンジャーの一人だが、その彼が思わず自画自賛した曲なのから(スタジオでは先生自らタンゴを踊りだす場面もあったとのこと)、随所に演奏する喜びがあるし、むずかしさもある曲。
 音楽の中にストーリーを感じるようにしたいのだが、それが自己中な押しつけにもなりかねないので、そのバランスが求められのではないかと思う。

 元々、タンゴとかフラメンコとかファドとか、ジプシー系の音楽には強く惹かれるので、弾いてて楽しかったし、やりがいもあった。イントロからAメロでのタンゴ、Bメロでの崩れた感じから、サビはハバネラ(いわゆる「カルメン」のあれです)になる流れが、特に大好き。
 ただし、私としてはスタジオ版は、少しお行儀が良い、と感じる。たぶん今だったら、もっと崩れた部分を強調したいかもしれない。ハバネラの部分も、もっとデフォルメして「クサみ」を出したいかな。
 たぶんに、ポップスであることを大事に考えれば、ドラムスとベースでリズムを刻むことで、万人向きに安心感を作れるわけだが、今だと本物のバンドネオン奏者と弦楽とピアノで、揺れたリズムでやるかも。いろいろと想像力をかき立てるのは、それだけ曲の出来が良いからに違いない。

詳細(2)に続く。
 
 
[PR]
by harukko45 | 2013-05-30 01:57 | 音楽の仕事

水越けいこSpring Tour 2013

 ずっとブログ更新してませんでした。とりあえずは、元気にやっておりましたが、5月は自宅での打ち込みと譜面書きをやっておりました。

 さて、明日より水越けいこさんの「Spring Tour 2013」の再開です。名古屋と大阪での3ステージですが、名古屋ではピアノ、アコギによるバージョン、大阪では現地のミュージシャン達とコラボしてのバンド編成でのバージョンとなります。なかなか濃い内容ですし、初めての方々と演奏も楽しみであります。はてさて、どうなりますやら。

 まずは明日の名古屋ムジカで。
[PR]
by harukko45 | 2013-05-23 16:07

4月のライブ

 もう早4月。ライブ関連のお知らせをさせてもらいます。

 今月は、タケカワユキヒデさんとのライブが3回ありますが、企業向けのイベントなので、一般の方々は残念ながらご来場できません。ただ、久しぶりのタケさんとの演奏は大いに楽しみです。

 タケさんの前に16日には王様が今年2回目の横浜降臨。この日は私のバースデイだったか。大いに燃えたいと思います。

王様
 4月16日: 横浜フライデイ

 今月後半には、水越けいこさんの新作リリース記念のスプリング・ツアーが始まります。お馴染みの江古田マーキーでのライブを皮切りに、5月に名古屋・大阪と続きます。

水越けいこ Spring Tour 2013
 4月27日: 江古田マーキー

 それでは、どうぞよろしくお願いします。
[PR]
by harukko45 | 2013-04-01 23:53 | 音楽の仕事

(3)からの続き。

 m14.In My Life

e0093608_14172943.jpg 本編最後には、97年の「In My Life」から、そのラストを飾るタイトル曲を。私はこの曲をやった記憶がなく、それでも譜面が手元にあったということは、かなり前に演奏したからなのだが、それが思い出せない。たぶん、けいこさんと初めてご一緒した頃の最新アルバムがこれだったので、当時はライブで選曲されていたのだろう。それにしても、ずいぶん久しぶりの登場だった。
 でも、今さらながらに曲の良さを再認識できた感じだ。今は、けいこさんの音楽への思いがずいぶん深まったので、あの時には聴き取れなかった良さを理解できるようになっている。これって、人生における喜びが増えているってことで、実に幸せな事だなぁと思いますね。
 で、小山薫堂さんの作詞の素敵さも、今なら「なるほど」と思えるわけですしね。

En1.僕の気持ち〜2.私への誓い

 アンコールに応えての2曲は、まもなくリリース予定の4曲入りシングルと、ニューアルバムからの新曲。今回は、実際にレコーディングされたオケを使いながら、この2曲をお届けしました。ファンの皆さんには、待望久しい新譜の香りを少しだけ感じていただけたかも、ってところでしょうか。
 まずは、"僕の気持ち"を含むシングル盤が先行してリリースされるようです。私はこの曲には関与していないのですが、一緒にカップリングされている曲では、アレンジと演奏で加わっています。私自身もここでの楽曲の発表をずっと待ちかねていた一人なので、ついに形となることに大きな喜びを感じます。早く、CDを手にしたいものです。
 そして、アルバムの方もかなり最終段階のようです。けいこさんは歌入れに邁進中のようですし、プロデューサー森さんの手腕で、是非とも、待ったかいのある仕上がりを大いに期待したいと思います。

En3.Too Far Away

e0093608_1202840.jpg この曲については、とにかく「心を込めて」としか言いようがありません。いつも、そのようにありたいし、必ずそのように導いてくれる曲です。

 名古屋では、アンコールの最初に"Feeling Blue"をリクエストに応えて演奏しました。ただ、譜面の準備をしていなかったので、ところどころ危なかったですが、リラックスしたライブの雰囲気が楽しかったです。
 そして、最後の最後にもう一度出て行って、"ほほにキスして"をやりました。これは、もちろん完璧な手拍子とともに大盛り上がりでありました。


 
 
[PR]
by harukko45 | 2013-02-09 00:50 | 音楽の仕事

(2)からの続き。

 m8.Throw A Kiss〜9.モナムール〜10.Loneliness and Blue

e0093608_6421936.jpg ライブの後半戦は、8ビート系のオリジナル3曲つなぎ。まずは89年「Dramatically」のm8は爽やかな80年代ロックなんだけど、間奏に妖しげな仕掛けが来るのが、この当時っぽい。ヘンっていやぁヘンなんですけど、これで良いって言えばこれで良い(何じゃ?)。
 とにかく、ここの部分は演奏してると順当な流れで行かないから、かなり意識して立ち向かっていかないと見失う危険があるのです。この曲以外でもアルバムでは、森園勝敏さんが個性的なサウンド・メイクしているのが耳に残ります。なので、やっぱりギターが欲しい。

e0093608_2310161.jpg ヘンさ加減では、小島良喜さんのm9も負けてない、というか、これはかなりカッコイイでしょ。テクノ・ポップっぽいニュアンスとジャズ・フュージョンぽさが、ビミョーなスレスレ感でミックスされていて、間奏のジェフ・バクスターみたいなギター・ソロもいい。イントロの大げささ加減もゲセワで大変よろしい。
 そして何より、サビのシンセによるバッキングがすごく気持ちいい。この部分のグッド・アレンジさ加減は演奏してみて、より実感できるのです。それらの上に乗っかるボーカルが、全く別次元でフワフワと漂っている感じになっているのがミソで、タイトルのイメージどおり「フランス」風。ただし、この当時の打ち込みリズムはタイトすぎるので、よりエスプリを効かせるには、今なら少しチープなリズム・トラックにしてるかな。
 と、そんな事を考えながら、ピアノとアコギだけで頑張るのはなかなか楽しいです。ひょっとしたら、少ない人数だからこそ、その良さが見えてくることもありますから。

e0093608_1149691.jpg このコーナーの最後は、ライブではおなじみのm10。前の曲のインパクトが強いので、最初はバラード風に静かに始めて、じょじょにリズムを強調するようにしてみました。哀愁感あるサビがとても印象的なので、あまり小細工せずに流れに任せればうまくいく曲です。そうしていると、前の2曲よりも淡々としたニュアンスになるのが面白かったです。

 m11.ゆるやかな時間〜12.ゆれて二人〜13.apartment

e0093608_2310161.jpg 森さんが下がって、再び、私とけいこさんのみでの3曲で、濃いめの内容を持ったものが並びました。最初に、今回のメニューのキーは「Proportion」の曲だと書きましたが、その3曲目である"ゆるやかな時間"は、ライブでやるのは初めてでしたが、実にやりがいのある曲で、自然と集中力が高まる感じでした。けいこさんが父上に捧げた曲とのことですが、それに相応しい深みがあり、幻想的なムードに包まれていて、とても好きです。
 スタジオ・バージョンはサビでドラムとベースが入ってきてロックぽくなるのですが、今回のようにリズムがない方が、幻想性が壊れないで良いと思いましたし、全体に曲を支えているアルペジオもシンセでの打ち込みよりもピアノ一色で弾いたことで、少しクラシカルな感じにもなったと思います。

e0093608_9321461.jpg "ゆるやかな時間"の余韻が残っているところで、"ゆれて二人"につないでみました。この曲は本当に名曲で大好きです。まず詞が最高です。完璧と言ってもいいでしょう。この歌詞の中の恋の行方は果たしてどうなるのか、ものすごく気になります。こんなにも幸せそうな二人なのに、どことなく悲恋の香りもするではありませんか。もしくは、女性の妄想、夢の世界にも思えるし。それでいて、ちょっとした描写が細やかでリアリティを感じます。そして上品にセクシーなのです。
 メロディもこの歌詞によく合っていて、聴き手に言葉がすんなり入っていくスムースさがあります。全体に、歌謡曲的なのが良いのです。サトジュンさんのアレンジはムーディですが、ちゃんと洗練されていて、とてもセンスが良いです。なので、ピアノ一本でも最大限の効果を出さなければならないと強く思います。
 基本的にはボサ・ロック風なのですが、Bメロの部分では2コーラス共に、歌詞とメロディがダンスを強く想起させるので、思わずこちらのバッキングもよりラテン色が強くなります。でも、それも自然に導かれるように変化していくのは、曲自体に強さがあるからです。
 もちろん、「く〜たまらん」リストの上位にランク・インです。

e0093608_22414119.jpg 94年の「The Sketch Of A Woman」に入っている"apartment"もなかなか深みのある曲で、ちょっと映画的でストーリー性がある歌詞が素敵なのと、シンプルながら前向きなムードを感じさせる、塩次伸二さんのアレンジに好感を持ちます。それに彼のギターの音色とプレイが実に良いです。それは、このアルバム全体に言えるのです。
 同じ8ビートの刻みによるロックでも、80年代の楽曲とはムードが全然違うのも面白い。とてもシブめなのですが、それがカッコイイです。

(4)に続く。
[PR]
by harukko45 | 2013-02-07 22:39 | 音楽の仕事

(1)からの続き。

 m6.上を向いて歩こう〜7.テネシー・ワルツ

 アコギとコーラスにプロデューサーの森さんを迎えての中盤戦。ここでは、カヴァー曲で少しリラックス・モードへ。

e0093608_13343036.jpg m6は言わずもがなの坂本九さんの大ヒット曲。ウィキペディアによると、当初は日本歌謡界での評価はあまり高くなかったとのことで、それは、九ちゃんの歌い回しが耳に合わなかったらしく、作詞の永六輔さんも、『「ウエヲムーイテ」が「ウヘホムフイテ」に聞こえ、「何だその歌い方は!」と九さんに向かって激怒し、「これでは絶対ヒットしない」と言った』という、今では信じられないような話が残っている。また、爆発的な売り上げ(3ヶ月チャート1位)だったにもかかわらず、日本レコード大賞の候補にも選ばれなかった。
 ところが、1962年にフランス、イギリスなどヨーロッパでヒットし、63年にはアメリカにおいても1位となり、翌64年には100万枚突破でゴールドディスクを獲得する大ヒットとなった。これら世界での大成功により、日本での不当な評価は覆されたのだった。

 永さんが最初気に入らなかった、九ちゃんの独特な歌い回しは、プレスリーやバディ・ホリーといったロカビリーからの影響だけでなく、彼の母上から教えられた小唄や清元の影響だと言われていて、永さんも後に、九ちゃんと邦楽の歌い方を結びつけて、それがこの歌の世界的なヒットと関係があると考えたとのこと。
 それは、東洋的なエキゾチックさが西欧に受けたということもあるだろうが、基本的にメロディに字数をきちっと合わせた結果が「ウヘホムフイテ、アールコウホウホウホウ」であり、それによって八大さんのメロディの良さが生かされ、言語・文化を越えて世界で受け入れられたのだと思う。

 中村八大さんが亡くなった時の追悼番組の映像がYouTubeにあり、ここでの永六輔さんの話がすごく面白い。(5分24秒から)


 この追悼番組はとても良いので、絶対に観る価値ありです。残念ながらパート4が削除されていますが、それ以外は残っていますので、一度ご覧あれ。「六八九」の偉大さを再確認しましょう。

 上を向いて歩こう~中村八大 こころのうた
2/6 3/6 5/6 6/6

 続いて、"テネシー・ワルツ"。きしくも2013年1月1日にパティ・ペイジが亡くなった。今回、この曲を演奏できたことで、個人的にはこの偉大な歌手への敬意と追悼の気持ちを少しでも表せたかと思う。
 この曲は1948年に作られたもので、大スタンダード曲だが、最もヒットして有名なのが、1950年のペイジによるバージョンで、ここではボーカルを彼女が多重録音しているのが特徴。彼女は1947年に"Confess"において多重録音によるボーカルを世界で初めて行った人だが、この時は予算がなく、他のパートを歌う歌手を雇えなかったためだった、というのだから面白い。
 もちろん、そのような話を知らなくとも、彼女の歌の素晴らしさの価値は変わらない。一度聴けば、その美しさに夢中になるだろう。



 もう1曲、彼女のマルチトラック・レコーディングの代表作"With my eyes wide open I'm dreaming"もお聴きください。レコードに「Voices by Patti Page, Patti Page, Patti Page, Patti Page」って書いてあります。それでも足らずに、「Patti Page Quartet」ってダメ押ししてあります。



e0093608_13375644.jpg テネシー・ワルツに戻りましょう。日本でも江利チエミさんが1952年にカヴァーしてこちらもヒットした。12歳から進駐軍のキャンプ回りをしていたチエミさんが、自ら決めたデビュー曲が"テネシー・ワルツ"だったのだ。この時のレコーディングが14歳である。
 チエミさんの"テネシー"の特徴は、何と言っても英語と日本語の「チャンポン」であるということ。これは、その後の洋楽カヴァーブームへの先駆けとなった。

 翌53年にはアメリカに招かれて、キャピトルで「ゴメンナサイ / プリティ・アイド・ベイビー」をレコーディング、ヒットチャートにもランク・インしたのである。つまり、日本人で初めてのアメリカ進出を成功させたのは、江利チエミさんだったのだ。
 "ゴメンナサイ"はいわゆる「進駐軍ソング」のひとつで、リチャード・パワーズのものがYouTubeで聴ける。

 そして、これをアメリカで日本人歌手が歌うことになり、抜擢されたのが Chiemi Eri であった。だが、この時の"ゴメンナサイ"が、検索してもどこにもない。そうしたら、こんな記事が。
「江利チエミ:幻のレコード 没後30年、米で発見」毎日新聞 2012年08月08日
 今まで、この曲は日本では発売されず、その存在もずっと忘れられていた。それが、ようやく発見されたということだが、キング・レコードもずいぶん怠慢だったのでは?まぁ、その辺はいろいろ事情もあるのかもしれないが、いずれにしろ、アメリカのコレクターからSP盤を取り寄せて確認したというのだから、今後は正式な日本リリースに是非ともこぎ着けてほしいものだ。
 これにより、江利チエミさんへの再評価が起こるかもしれない。現在の由紀さおりさんにつながる第一歩は彼女だったわけだし。
 
 また、江利さんはその時のアメリカ訪問ではロサンゼルスなどでのコンサートが大好評で、「JAPANESE AMERICAN NATIONAL MUSEUM」にも書かれておりました。

 他にも、この頃のチエミさんについてのくわしい記述は「その2 ゴメンナサイ - 江利チエミファンのひとりごと」をどうぞご覧ください。
 また、進駐軍ソング"ゴメンナサイ"関連ではこちらも「進駐軍ソング EP盤:pei's-discs ・ガロート珈琲の音源:So-netブログ」
 いやぁ、今回いろいろと勉強になりました。ネットよ、ありがとう。そうだ、美空ひばりさんの"The Soba Song/チャルメラ・ソバ屋"とか細野晴臣さんやディック・リーがカヴァーしてた"ジャパニーズ・ルンバ"もなかなかイケますよ。





 と、カヴァー曲からいろいろと大脱線していきましたが、これまで知らなかった事柄も多く、長々となってしまいました。やれやれ。

(3)に続くっと。
[PR]
by harukko45 | 2013-02-06 18:58 | 音楽の仕事

 一昨日、昨日と2日間に渡った水越けいこさんとの名古屋ライブ・ツアー、無事に終了しました。お越し下さったファンの皆様には厚く熱く御礼申し上げます。そのおかげもあって、先月19日の江古田マーキーと同じセットによるワンマン・ライブであった1日と、地元・名古屋のミュージシャン、アーティスト達とのジョイント・ライブだった2日の両日ともに、満足の行く内容でやれたと思っています。
 また、名古屋でのライブでは毎回お世話になっているヤイリギターの松尾さん、それに「New✩StarRing」のtokuxuさんとsakkoさんのお二人に大感謝です。こういう方々に支えられての我々ですから、本当に幸せ者です。

 さて、ここでは江古田と名古屋初日でのセットにそって、今回のライブについて書いていきます。いつものようにかなり自分本位な私見をダラダラと書くのみですが。

 m1.飛べるかもしれない〜2.朝やけのメモランダム

e0093608_2310161.jpg オープニング曲となったm1は87年の「Proportion」からですが、今回はこのアルバムから3曲選ばれました。けいこさんが意識していたのかどうかは不明ですが、セット・メニューのポイントとなる部分に「Proportion」からの曲が配置されて、重要な役回りを担っていたのは確かだったと思います。
 アルバムでも1曲目だった"飛べるかも..."は、スケールの大きな曲調と80年代の明るい色彩を持っているので、歌詞の「かもしれない」はあくまで前向きにとらえるべきでしょう。ボーカリストにとっては、サビをビシっと張って歌い切らないといけないので、1曲目からプレッシャーがかかると思いますが、そのバックをするものにとっては堂々と真っ向勝負な感じが実に気持ちいいのでした。
 この曲に関しては、あまりオリジナル版を意識せずに、かなり感覚的なアプローチでやっています。元のアレンジにこだわりすぎると、小さくまとまってしまう危険があるように感じます。だから、毎回微妙に変わってしまうのですが、それも二人だけのライブらしくて面白いと思います。

e0093608_074836.jpg m2は実に不思議な曲。初めて聴いた時は普通に思えたんだけど、演奏している時にすごく「不健康感」を感じたんですなぁ。で、もう一度CDを聴き直してみると、おお、やっぱり普通じゃない。どこから、この不思議さが生まれるのかも不思議なんだけど、サトジュンさんのアレンジはさほどヘンじゃないので、これは歌詞の妖しさとけいこさんの声による惑わしによるものと思うのです。

 詞だけを読むとタイトル通り「メモ書き」のごとく、その場の状況や印象を表す言葉やフレーズが並んでいるんだけど、それがきちんと筋が通るような文章にはなっていない。だが、そのつながっていない隙間に、複雑な感情が横たわっているのでは?そうやっていろいろと想像力を働かせて行くと、どんどんこの曲が官能的に思えてくる。
 だから、淡々としたAメロでのThe Police風なアレンジが、曲にうまく絡んでいるのだなぁ、と思え、何とも言えない気怠さが心地よく感じるようになるわけで。ただし、この部分を演奏している時は、じーっと耐え忍ぶようにキープしていくので、苦行でもあります。その分、Bメロでのちょっとした開放感がうれしいものの、その後も随所に扱いが難しい部分が登場するので、なかなか気が抜けない楽曲。とは言え、私の「くー、たまらん」リストに入る曲であることは間違いないです。

 m3.My Guy〜4.ミラクル・タウンへ(幸せを戻すために)〜5.さよならは本気じゃないの

e0093608_11154334.jpg "My Guy"はちょっとハードボイルド系な男性を想像しちゃいます。アルバム「Actress」は全体に映画や演劇的な要素がベースにあって、架空のイメージが各曲に設定されていたように思います。さて、この曲をピアノだけでやると、かなり酒場っぽいイメージが強くなったかも。おっと、それは奏者の趣味嗜好に関わることかな。


e0093608_1837214.jpg 続けてのm4は初めてやりました。90年の「Sepia」は全曲アレンジを小島良喜さんが担当していて、アルバム全体のトータル性を感じます。それがタイトルの「セピア」に象徴されているのでしょう。
 そのラストに置かれた"ミラクル・タウン"は曲名のSF的なイメージとは違う静謐で幻想的な世界観を持つ曲で、小島さんの自由で卓越したキーボード・プレイに惹き込まれました。なので、彼の美味しい演奏部分を大いに参考にしています。元々、キーボードとボーカルのみで十分成立しているので、他に余計なものは入らないのでした。

e0093608_117441.jpg そして、3曲つなぎのラストで、前半戦の締めくくりが、今回の中での一番の難曲"さよならは本気じゃないの"。92年の「Precious」収録で、アレンジャーは山川恵津子さん。彼女はプロ中のプロと言える人で、まさに「出来る」人であります。だから、仕上がりがどれも良い。「Precious」に入っているもう1曲、"第二章"の方も完成度が高い。
 なので、どこもかしこもちゃんとやらないと良さが生きない感じがするわけで、どうしても、いろんなところを再現しないとならない気分になるのでした。だから、ピアノだけでやるのは大忙し。多少無理があっても今回はとにかくやり遂げることにしました。
 ただし、「水越けいこ」という方向から見ると、"第二章"も"さよなら..."も「っぽくない」と感じる部分があります。それもそのはずで、"さよなら..."の作曲はけいこさんじゃないし、"第二章"は来生兄弟による作詞曲ですから。
 なので、「既製服を着た」けいこさん的な印象がどうしても残るんです。ならば、デビュー当時の伊藤薫さんの曲にそれを感じるかというと、そうじゃない。こちらはちゃんとフィットしてる、オートクチュールなんです。だからこそ、余計にちゃんとその通りに弾くって気分が強くなったのかな。結局、そのためにずいぶん時間を割いたのでした。まぁ、本番では何とかうまくやり切れたと思いますが、少し自己満足的だったかもしれません。

 (2)へ続く。
[PR]
by harukko45 | 2013-02-04 01:14 | 音楽の仕事

 昨日、水越けいこさんのライブが無事終了しました。江古田マーキーでの昼・夜2回公演にお越し下さったファンの皆様には厚くお礼申し上げます。今回は、これまであまり取り上げられなかった曲を多く選曲してあって、私も初めて演奏するものが多く、まだまだ熟れていない部分もありました。なので、いくつか悔やまれる部分があったのですが、逆に、いい意味での緊張感の持続もあり、コンサート全体の流れは良かったとのことでした。
 個人的には、1部でうまく行かなかった部分を、2部では何とかまとめられたとは思っています。初日を大事故なくクリアできたことで、2月1日の名古屋では少しリラックスしながら、内容にもこだわったライブを目指そうと思います。

 新年明けながら、たくさん集まっていただいた皆さんにはあらためて感謝ですし、名古屋でお待ちの皆さんには乞うご期待です。もろもろの詳細・雑記はその後に。
[PR]
by harukko45 | 2013-01-20 15:44

 明日は水越けいこさんのライブが、江古田マーキーにて行われます。今年最初のライブで私も参加します。お越しになるファンの皆さん、新年一発目を大いに楽しんでくださいませ。私も頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
[PR]
by harukko45 | 2013-01-18 22:20 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31