夏の陣(6)からの続き。

 長々と続いた「夏の陣」も最後。クラブ・サーキット2012については前回で終了だが、このツアーの前後に別の編成によるライブもあって、その事についても簡単にふれておきたい。

 今年のツアー用のリハが終わって、いざ本番を迎える前に、ある企業主催のイベントがあり、そこで70分ほどのライブを行った。その時はフル・メンバーではなく、コーラスとサックス抜きの4リズム編成。曲目も、ヒット曲をふくむオリジナル中心のものだった。
 この時は、クラブ・サーキットのためのシュミレーションが出来るチャンスと思い、メニューの違いはあるものの、ツアーと同じセッティングで演奏することにした。私個人はこのおかげで、新しいシステムで本番をやりきる自信がついただけでなく、4リズムのみの演奏で、曲の核となる部分がよくわかり、新しく加えた効果も良かったので、ハード・ソフト両面で安心することができたのだった。

 そして、クラブ・サーキット終了後に、同じイベントがあり、今度はツアーでの成果を再確認するというシチュエーションになった。正直、クラブ・サーキットでの、「いい緊張感を保ちながら、音楽を楽しむ」というわけにはいかないし、人数が減って物足りない部分もあったが、それでも、明らかにいろいろトライした部分はいい効果につながったと確信したし、1ヶ月集中して取り組んだバンドの完成度の高さに自ら感動した。これは、私以外のメンバー達の凄腕ゆえのことと、あらためて敬服したのでありました。

 また、先月末には秋田にてFM放送の公開録音があり、この時はベース抜きの3人編成でのライブとなった。これは、昨年暮れ以来の編成で、私は左手でシンセ・ベースを弾きながら、右手で他をコントロールするって形だ。
 こういう演奏に眉をひそめる人もいるだろうが、昔からオルガン・トリオは、オルガニストがベースも担当してたし、特にジミー・スミス系の奏者は教会オルガン風に足鍵盤を使うやり方ではなく左手でベースを弾く。ロックではドアーズのレイ・マンザレクがVOXオルガンの上にローズのピアノ・ベースを置いて、左手で弾いていた。
 というわけで、編成が問題なのではなく。何をやるのかが大事で、それについてステージ上で全員が共通意識を持っていれば大丈夫なのだ、と思っている。

 とは言え、ギターの土屋さん、ドラムスの植村くんが実に堂々と責任を果たしてくれるので、私は大いに助けられていた。と同時に、これほど素晴らしいプレイヤー達の生かすために、私は出来るだけのお膳立てをすべきなのだ、とも思っている。そうすることで、ジュンコさんの音楽への貢献に少しでもつながるのでは、と考えるようになった。
 昨年暮れでは、この3人編成にはあまり納得していない部分もあったのだが、今は、自分のアプローチに迷う必要はないと思っている。どんと来いである。だって、この秋田のライブ、ちっとも悪くないんだもの。いい意味での引き算によるプラス効果が出来ているとさえ思ったのだった。

 それと、この時共演した、かまやつひろしさん、なんと73歳。彼の素晴らしいパフォーマンスには、心底驚かされた。まだまだ元気どころか、あくまで前向きで好奇心旺盛、今みたいなところでモタモタしている私に強烈な刺激をいただいた。
 また、かつて一緒にやっていた、中村あゆみさんと鎌田ジョージくんとも久々に再会して、こちらにも心を動かされた。まだまだ、やれることはあるし、やらないでどうする、って教えられた気分だ。

 でも、そもそも、私には目の前に大橋純子さんというお手本があることだけで、かなりの幸せ者だった。どんなバンド形態であろうと、つねに最前線で頑張っているのはジュンコさんであり、こうして同じ音楽に関わっていけることに心から感謝せねばならないと思う。

 そして、ずっと応援してくれているファンの皆様にも感謝を。残念ながら、お会いする機会がなかなか多くない現状ではあるが、少しではあっても、そんな時間をより充実させるために、こちらも頑張っていきたいと思います。それと、ここまで長々と読んでつき合ってくれたことにもお礼を。本当に、ありがとうございました。
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by harukko45 | 2012-08-19 19:58 | 音楽の仕事

大橋純子/夏の陣(6)

夏の陣(5)からの続き。

 m9.愛は時を越えて

 「アイトキ」は、これまでとあまり変わらない状態で、今回ものぞんだ。しいて言えば、ストリングスをソフト・シンセから出したので、音質が良くなった程度か。リハの時までは、いろいろ想像力を働かせて、考えていたアイデアを試してみたのだが、それにより、肝心の演奏への集中力がとぎれとぎれになり、これでは本末転倒になるように感じた。なので、これは「変えない」ことにした。

 それと、こちらの思い入ればかりが前面に出て、ボーカルを大事に扱う配慮に欠ける部分が出始めていた。そういうエゴは、この曲では禁物だった。いつもそうなのだが、私は「やり過ぎ」なところがある。時には引き算することで、プラスの効果があることも理解しているが、自分勝手なエゴがそれを消し去ってしまう危険が常に潜んでいるのだった。

 ただ、そういう時は必ず、どこかで失敗する。先日の安倍なつみさんとの仕事でも、自意識過剰ぎみの自分が勝手につまづいた。よく言えば、そうやって失敗することで理解できるのだから、少しは成長したとなるのだが。
 最初は、純粋に「もっと良いものにしたい」という気持ちから始まったチャレンジが、ある時、自分本位な欲に変わってしまうのだろう。とは言え、何もしないで同じ事を続けるのみで、進歩をあきらめるなんて御免だ。結局は、つねにリスクを意識して、それでも挑戦を忘れるな、しかない。

 本番では、前よりもバランスの取れた内容だったと思う。また、エンディングで六川さんが少し絡んでくれるようになり、とても良くなった。正直、同じフレーズの繰り返しに物足りなさを感じていたところだったので、絶妙なタイミングでの助け舟に大いに感謝したのだった。

 En1.シンプル・ラブ〜サファリ・ナイト

 ジュンコさんのライブで、"シンプル・ラブ"も"サファリ・ナイト"もなしなんてあり得ない。それなら、今回はつないでみようというジュンコさん、ケンさんのアイデアは大成功。ひょっとしたら、ディスコ・メドレーをも上回るか、と感じるほど、会場中が熱狂的に支持してくれた時もあったのでした。
 もはや、鉄板すぎて解説不要。永遠のジュンコ・スタンダードへの敬意はけっして消えることはない。

 En2.In My Life

e0093608_17253343.jpg ライブの最後の曲はビートルズの有名曲である"In My Life"。他にも何曲か候補があり、ジュンコさんにお任せしていたが、最終的にこれになったのは、うれしい驚きだった。アレンジもオリジナル通りでない形になったので、新鮮な気分で名曲に関われることが出来て楽しかったし、ジョン・レノンが書いた歌詞についての、ジュンコさんの解釈が素敵だなと感心した。
 ジョンが人生を回想し、さまざまな思い出に浸りながらも、今の恋人への思いでまとめたものを、より普遍的なテーマに広げたと思う。ジョンの持っていた前向きさは、単純なプラス指向ではなく、ちゃんと失った過去への情愛や敬意を忘れていないものであり、だからこそ、今のあなたをもっと愛する事に意味があるのだった。

 全体的には80年代風のサウンドでまとめ、私はあの当時っぽいDXエレピ系をベースに、トレモロ・エフェクトのローズ系を加え、それに2種類のパッド音を用意して使い分けた。幻想的で映像的なバックグラウンドを作れれば最高だな、と思っていたからだ。女性コーラスのお二人も素敵にからんでくれて、なかなか美しく仕上がったと思っている。
 土屋さんにはギター・ソロをお願いしたが、彼はアドリブ・ソロにせず、ビートルズ・オリジナルにある、ジョージ・マーティンによるバロック風のソロを再現してくれた。やはり、この間奏部分は曲として切っても切れない部分であるので、すぐにそれを取り出してきてくれたことに感動した。
 私は、下のパート(左手部分)をカヴァーしようかとも思ったが、それこそ余計なお世話と思い、あくまでベーシックに豊かなバックグラウンドを作ることに専念した。少しは、大人だったでしょ?

 昨年の"You've Got A Friend"に比べて、かなりしっとりとしたエンディングとなったが、個人的には深みにおいて圧倒的に良かったと思うし、この選曲に感謝したい。
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by harukko45 | 2012-08-19 17:26 | 音楽の仕事

大橋純子/夏の陣(5)

夏の陣(4)からの続き。

 m8.Disco Medley 2012_a.Funky Stuff〜b.Play That Funky Music〜c.Jungle Boogie〜d.Fantasy〜e.Boogie Wonderland

e0093608_527988.jpg 昨年の好評を受けて、今年も70年代から80年代にかけてのR&B曲のメドレー。Discoというキーワードで括ってしまうと、ウルサ方からはクレームが来そうだが、私のような世代のミュージシャンには、70年代前期のファンク・ムーブメントとニューソウルの台頭、後期のディスコ・ブームは、一つの流れとしてリアルタイムで経験してきたので、一緒にすることにさほど抵抗はない。

e0093608_5271680.jpg あえて言えば、今回のメドレーの前半(a.b.c.)はファンク系、後半(d.e.)がディスコ系。各曲のリリース時期を調べてみると、73年・クール&ザ・ギャングが"Funky Stuff"でブレイク。翌74年に"Jungle Boogie"で初のTop10入り。76年・白人ファンク・バンド、ワイルドチェリーの"Play That Funky Music"が全米1位の大ヒット。78年・E,W&Fが"Fantasy"、79年"Boogie Wonderland"をリリース。となる。
 結果として、このメドレーは70年代のR&B/ファンク・バンドの歴史をザックリ振り返る感じにもなったのでした。

 この時代で思い出されることの一つに、75年頃(?)から東京12チャンネル(今のテレビ東京)で、「ソウル・トレイン」の放送が開始されたこと。時間は深夜12時近くで、アパレルの「Jun」の提供、それも「トム・ジョーンズ・ショウ」や「ミッドナイト・スペシャル」なんかと週ごとに入れ替わる放送だったと記憶する。
 とにかく、ロックに比べて、ブラック・ミュージックへの知識があまりない時だったから、黒人アーティストのパフォーマンス(ほぼ全て口パクだったけど)が観れるのは楽しかったし、レコードに合わせて踊っている観客達もすごく刺激的。ペアでライン・ダンスするコーナーなんかも面白かったし、彼らのファッションもなかなかでしたなぁ。

 そしてこの番組で、初めてクール&ザ・ギャングを発見。はっきり言って、黒人バンドにしちゃ、ルックスがダサかったんだけど、曲は最高にカッコよかった。それが、"Funky Stuff"と"Jungle Boogie"。この2曲を含む「Wild And Peaceful 」は傑作。
 ちなみに、クール&ザ・ギャングが本当の意味で成功したのはJ.T.テイラー参加後の80年代。ヒット曲連発で、そういう点ではアースよりも上かもしれない。ただ、ファンク時代が好きだった者には、どうにも受け入れ難い軟弱路線に見えた。今聴くと、これがなかなか楽しいんだけど、当時は「原理主義者」だったから。





 さてさて、これらの曲をチーム大橋でやるにあたっては、けっこう打ち合わせとリハを重ねた。そもそも、男が歌う曲をカヴァーするんだから、リスキーな部分もあるわけです。で、皆であーだこーだと試行錯誤したし、男性ボーカルもかなり頑張ってみたのでありました。

 それに、実は音楽的にかなり凝っているんだ、これが。"Funky Stuff"でのベースとキックのリズム・パターンなんか、しびれまくり。こりゃ、ベーシストは楽しくてしょうがないでしょ。(この辺の曲を持ち込んできたのは、もちろん六川さんです。)それに、ギターのカッティングも「くー、たまらん」の極致。ブラスのリフもカッコイイんだ。でも、それらを一体化して強靭なグルーヴを生み出さなきゃいけない。ファンクは全体でノリを作っていくもので、ドラムが、とか、ベースが、とかはまずありえない。ボーカルも含む全員でポリ・グルーヴしてかなきゃ、だめ。全員攻撃・全員守備のトータル・フットボール的意識の共有ですな。

 ワイルド・チェリーの"Play That Funky Music"は、クール&ザ・ギャングに比べると軽いんだけど、曲としてはこちらの方がちゃんとまとまっていて、メロディアス。なので、ジュンコさんのボーカルをフィーチャアするにはバッチリだった。個人的には、この曲から"Jungle Boogie"への突入はなかなかスリリングで気に入っております。ジュンコさんの激シャウトで、万事OK。

 "Jungle Boogie"は、イントロからリフそのものがシビレるんだけど、それを途中でひっくり返したりして、上と下でぶっつけ合う仕掛けにしているなんて、ニクイ、ニクすぎる。彼らのライブ盤を参考に、間奏でゴトウさんのソロをフィーチャアしたんだけど、この時のバック・リフもアッパーでヤバかった。何から何までガンガンに燃えてくるんですよ、ほんまにもう。

e0093608_15203055.jpg 前半のファンク系が完成した時、あまりにもパワフルだったので、後半の曲がすごく軽く思えてきてしまった。しかしながら、さすがにアースの曲にはそんな心配など必要なかった。逆に、"Fantasy"のイントロなんかは、やけに美しく感じられたし、"Boogie Wonderland"は鉄板でしたな、まさに。お客さん達の反応も、昨年以上に盛り上がったし、かなりの人が立ち上がって踊っていたから、本当にサイコーでした。

e0093608_15203330.jpg 演奏面では、私は前半にクラビとブラスとコーラスに、ちょっとだけオルガン、後半はピアノにブラスにストリングス、その他もろもろで、大忙しではあるんだけど、こういうノリでリズム・セクションにプッシュされまくると、忙しければ忙しいほど燃えるものだし、夢中になって演奏できているから、ハッピーの極みなのだった。

夏の陣(6)へ続く。
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by harukko45 | 2012-08-19 05:20 | 音楽の仕事

大橋純子/夏の陣(4)

夏の陣(3)からの続き。

e0093608_17355030.jpg m5.季節の中で

 2007年リリースの邦楽カヴァー・アルバム「Terra」に収録されている曲が、未だに色褪せずにライブのレパートリーになっているのは、それぞれの楽曲の認知度の高さだけじゃなく、ジュンコさん以下バンド・メンバーの解釈の深まりによる部分も大きいと思う。正直、私の場合、松山千春さんや中島みゆきさんの楽曲・アルバムをじっくり聴きこむという経験はなかったが、こうして演奏していくうちに、元々の曲の素晴らしさを理解できるようになったのだから。

 特に松山さんの"季節の中で"は掛け値なしに名曲。歌詞もいい。ずいぶん前に北海道で松山さんとイベントでご一緒した時に、生で聴く彼の歌に完全ノックアウトされた記憶がある。やっぱり本当の本物には感動以外ないのだ。

 ジュンコさんによる「Terra」バージョンは、抑制の効いたボサノヴァ・アレンジとなっているが、その素朴さゆえに、バンドとしては時間が経つにつれて、いろいろなアイデアを盛り込むようになった。もちろん、ここでも「変えちゃいけない」部分は存在する。クールな装いで無駄を排したプレイを心がけることで、ジュンコさんの名ボーカルを堪能したい。松山さんの持つ熱い心情を、ジュンコさんは静かな歌声で包み込んで表現してしまうわけで、そのテクニックの見事さとセンスを賛辞しないで、何を聴くのか。
 ケンさん曰く、「北海道出身同士にある、何か」が、一見相容れないような個性と個性を美しく共鳴させる。ある意味、北海道のソウルを感じる瞬間なのかもしれない。

 この曲はこれまで同様に、土屋さんの素晴らしいガットを中心にして、ピアノがさりげなく絡む。土屋さんは時に過激なエッセンスを、これまたセンスよく醸し出すのだが、今回はソロの終わり部分での速弾きにしびれた。これが、毎回違うからたまらん。
 私にはとてもじゃないが、あんなスリリングな事は出来ない。心からリスペクトしちゃう。同じバンドにいながら、ファンでもあるのでした。

 私はいつものようにコソコソと準備して仕込んでおいた音を登場させる。今回は、メロトロンのサウンドをどこかで合わせてみたかった。いつも同じようなストリングスではつまらんので、有名なMkIIモデルから「3-Violins」のサンプリングを使った。これは、AKAIのサンプラー時代から持っていたもので、かのムーディ・ブルースのマイク・ビンダー氏が制作した音源で、こちらの求めるエグ味がちゃんと残っていて、大変オイシイ。
 で、これをコーラス等のエフェクトでステレオ化すれば、バンドとの馴染みも良い。いいリバーブも加えれば、独特の「ミャー」的な音質が絶対的な存在感を示しながらも、少しマイルドになって、"季節"のような曲でも使える。ただ、調子こいて、ついついこの音のボリュームを上げそうになって、注意を受けることに。さりげない使い方が出来るかどうか、それが生命線じゃった。

 大阪でのリハーサルの時に、モニター担当のスタッフが何気なくやってきて、"季節のなかで"で聞こえる「あの」音は何なんですか?と尋ねてきた。「待ってました」ってわけじゃないけど、それをきっかけにメロトロンの話に花が咲いたのは言うまでもない。
 どういう音なのか、興味のある人はキング・クリムゾンの"エピタフ"や"クリムゾン・キングの宮殿"を聴いてください。ガビーンと圧倒される「あの」音ですから。この時、イアン・マクドナルドはダブルで録ってステレオにし、TDの時は二つのフェーダーを微妙に動かして、いろいろとニュアンスをつけていたとのこと。だから、クリムゾンの「あれ」は特別だったのか、ふむふむ。

"クリムゾン・キングの宮殿"


"エピタフ"


 ところで、この"エピタフ"を先日亡くなった伊藤エミさんのザ・ピーナッツがカヴァーされているのをご存知だろうか。ピーナッツは数々の名曲・名歌唱で日本音楽史上に残るデュオだが、クリムゾンをカヴァーしていたのには驚いた。それも、完璧に!バックの演奏も素晴らしい。必聴!




 m6.地上の星(名古屋1日目では"時代")

 中島みゆきさんの曲に関しては説明不要。オリジナルの認知度の高さはもちろんのこと、「Terra」バージョンはアルバムの中でも随一の出来だし、それをバンド・アレンジして毎年アップグレードしている我々のバージョンも自画自賛できる内容だと思う。特に名古屋・大阪ですごく盛り上がる、何でだろう?曲といい、演奏といい、ずっとドヤ顔してる感じがウケるのか?

 とは言え、内容は実に繊細な部分の積み重ねで、基本の「3・3・2」ビートで突き進みながらも、各自のラテン感覚がいろんな色彩を生んで、演奏している私は実に楽しい。

 全体としては、CDのフラメンコ的なニュアンスよりも、カリブ海、南アメリカ方面に近づくのは、ドラムとベースを擁するバンドのごく当然の帰結。それでも、当初はジプシー・キングス風味があったものの、最近ではよりキューバ的、ブラジル的、アルゼンチン的なフュージョンとなってきたと思う。もちろん、細かい部分を言えば、それほど深いラテン指向ではないが、いわゆる「オイシイとこ取り」の「ごった煮」感こそがポップ・ミュージックの面白さに違いない。

 名古屋初日では、"地上の星"ではなく"時代"がセットに入っていたのだが、ここ最近の"時代"は、かなりAOR色を強調したものになっていたので、本番でやってみると"季節の中で"との流れに少し違和感が感じられた。そこで、ラテン・エスニック的なフレーバーでこのコーナーを統一する意味もあり、"地上の星"に変更となった。"地上"には、ある種の「やりきった感」もあるので、ライブとしてはこれで正解だったと思う。

 m7.シルエット・ロマンス

 今年の"シルエット"では冒頭の部分の音色をがらりと変えた。他の曲での変化には気づかなくても、さすがにこの曲での変化はわかっていただけた方も多かった。
 これは、私自身のわがままに由来する変化だったが、実際の効果が良かったかどうかはともかく、今後もより美しい内容を目指してチャレンジは続けたいと思う。
 
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by harukko45 | 2012-08-17 19:37 | 音楽の仕事

大橋純子/夏の陣(3)

夏の陣(2)からの続き。

 m3.たそがれマイ・ラブ

 "たそがれマイ・ラブ"をもう少しだけゴージャスにしたい気がした。うーん、ちがうなぁ。もうちょっとミステリアス、というか映画音楽風かな。全体のビート感や自然な流れはそのままに、曲の後ろにある景色をもっと広げてみせたい気分になった。
 具体的には、これまでよりも高い音、これまでよりも低い音、これまでよりも厚みのある音を加えてみたくなった。

 で、リハでは、他のメンバーは同じようにやってもらいながら、自分だけ勝手にいろいろ小細工していた。イントロ、歌中、間奏、エンディングとね。そうすると、勘のいい我がメンバー達は、私のやっている過不足分にちゃんと反応するので、それらを補うようなプレイもしてくる。でも、それだと私の考える意図とは違ってしまうので、自分のやり方がまずいことに気がつく。
 つまり、「変えていいもの」と「変えちゃならないもの」があるわけで、それをちゃんと見極めていかなきゃならないということだった。
 なので、イントロ部分は半分元に戻して、残り半分に木管と金管によるオーケストラ風の音で厚みをつけ、歌中では逆にシンプルなバッキングに徹し、ボサノヴァ・ビートの気持ちよさに任せた。サビ部分では、ストリングスを1オクターブ上げて、女性コーラスとのユニゾンに幅をつけてみた。これは良かったと思う。

 問題は間奏部分。ここは結構イッチャっていい感じなのだが、あくまでフィーチャアするのはゴトウさんのフルートであることは変えちゃいけない。でも、ゴトウさんがいなくて、ソロがなくても成立するようなアンサンブルは作っておきたいじゃないか。
 過去の素晴らしいアレンジャー達の仕事、例えば、A&MやVerve、CTIあたりのイージーリスニング風味のジャズ・アルバムなんかで聴かれるソロイストとオーケストラの関係なんかが理想。ラロ・シフリン、クラウス・オーガーマン、ドン・セベスキー、もちろん、御大クインシー・ジョーンズなどなど。

 もちろん、キーボードだけでそれを目指すのは、多少無理があるのは百も承知。でも、今回は頑張って何とかしたい。

 私が試行錯誤していた部分を聴いていたゴトウさんが、「ベン・ハーみたいだね。」と言った。うむうむ、さすが、するどいご指摘。そうなんですよ、そういうスケール感もありながら、もうちょっと洗練させた感じにならないものかと。

e0093608_2336420.jpge0093608_23361019.jpg 前記のアレンジャー達の音以上に憧れるのは、マイルス・デイビスのアルバムでのギル・エヴァンスの仕事。「Porgy And Bess」とか「Sketch Of Spain」ね。こういうものは、ちゃんと学校に行って勉強してこなきゃいけない部分もあるし、元々才能豊かな人なら、自ら音を細部まで聞き分けて再現できるだろうが、私のような感覚だけの人間は、「あのイメージの、こんな音」って調子だから、大外れと大当たりの繰り返し。まぁ、ずっとコツコツと探してきた人生だからしかたがない。

 "たそがれマイ・ラブ"モカ・ジャバ・バージョンの間奏部分は、元々ケンさんが作ったもので、二つのマイナー・コードの繰り返しなのだが、バッキングでは4度の響きがするフレーズがあり、その締めにも4度使いがあって歌に戻る。その効果で、ここにはモード・ジャズっぽいムードも感じられる。だから、「Porgy And Bess」でのマイルスのソロ部分を思い出したのかも。

 マイルスがこのレコーディングの時、ギルから渡された譜面にはコード・ネームがなかった。そのかわりに、音階(モード)が書かれていて、それに使ってアドリブするように言われたとのこと。ギルは、マイルスをコードから解放し自由なアドリブを引き出したのだ、というのがジャズ界の伝説・定説だが、まぁ、そこまでカッコイイ物語だったのかどうかはわからないけど、実際の音は最高にクールなので、全く文句ないです、ハイ。



 で、"たそがれ"の場合は、二つのマイナー・コードを、それぞれドリアン・モードなり何なりに読みかえてみるって感じ。はっきり言って、そんな大層な事じゃないんです、今の音楽世界においては。昔のジャズ界(特にジャズ・メディア、評論家筋)では、すごく崇め奉られていたことなんだけど。

 ちなみに、ピアノがあったら、左手でDm7(レ・ファ・ラ・ド/レ・ソ・ドとかでもいいけど)を押さえて、右手でCのスケール、つまり白鍵のみ(一応、基音はDになるので、レミファソラシドレ)を使って、適当にパラパラやってみてください。それでDドリアンになりますよ。もし、少しジャズの感覚が分かっている方だったら、右手と左手をできるだけくっつけて、すべて白鍵のみを押さえて適当に動かしてみてください。昔、タモリがやっていた「誰でも出来るビル・エヴァンス」になります。

 と、まぁ、本当にたいした話じゃないんだけど、私は最終的にイントロで使ったオーケストラ・ブラス音で、横向きの動きにハモをつけながらやってみた(コード分解だと縦方向の動きって感じ、スケールは横方向?)。「ベン・ハー」風(私としては「アランフェス風」)のフレーズも残した。
 とは言え、あくまでこれはバックで、主役はゴトウさんのフルート。彼にはとても繊細で自由な感性があるので、私の思惑などは軽く飛び越えてしまうから、結局はフルートの後ろが暑苦しくなっただけだったかもしれない。

 その分、ケンさんからの提案で、エンディングを短くしたので、こちらはスッキリした形になったと思う。

 m4.大人の恋をしましょう

 続く"大人の恋をしましょう"は、けっこう個人的には好きな曲で、とにかく、上手に仕上げたい気持ちが一番強い作品。今年は、もっとゆったりとしたノリの中で、サロン・ミュージック的なムードを作りたいと思った。
 サロンというと、ヨーロッパの宮廷音楽や室内楽のイメージが強いが、ジャズにもMJQのような音楽がある。モダン・ジャズ・クァルテットはまさにサロン風ジャズの最高峰、これほどまでに典雅で気品にあふれたジャズってどこにもない。それに、ちゃんと頭使ってグループとしての音楽をコントロールしつつも、ジャズの醍醐味やカッコ良さを失っていない。
 と同時に、エレベーター・ミュージックみたいな妖しさ・いい意味での軽さもあると思う。



 エレベーター・ミュージックっていうのは、要はBGMのこと。ホテルやスーパーなんかで流れてるやつや、劇や映画、芝居なんかの付随音楽なんかも含んでもいい。そういうことなら、人類史上最も使われているエレベーター・ミュージックの作曲家はモーツァルトで間違いない。

 ちなみに、アメリカの人気ドラマだった「Sex And The City」のテーマ曲って、チョーかっこいい。この辺はゴトウさんと意気投合したんだけど、あのカッコよさとアヤうさ、インチキ臭さって実にオイシイ。ラテン・ビートの中で、ピアノとヴァイブとサックスの絡みが最高だった。



 とにかく、私はヴァイブの音が大好きなんだ。それって、MJQのせいと、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンがこれまたヴァイブの使い方が素晴らしかったせい(彼は他にも思いがけない楽器を使い分ける天才)。



 そして、ジュンコさんの"大人の恋"にもヴァイブが入っているのだが、これまではピアノとストリングスを中心にプレイしていたので断念していた。が、今回は是非とも加えてみることにしたわけで、ペダルを使って抜き差ししながら、ピアノに重ねる形で演奏した。一応、ピアノの音も他の曲よりも抑えめなトーンにしてみたし、もう一台の方でフルートを設定して、ゴトウさんとハモるのは変わらずだ。名古屋においては、そんな形での演奏だった。サウンド面ではある程度満足していたが、私が遅くしたいイメージでありながら、自分の入りのテンポが不安定で、バンド側には動揺が伝わったようだ。

 その後、ウエちゃんがこの曲のアプローチにおいて、フランク・シナトラのディナーショウをイメージしていたのがわかり、それもなかなか好ましい趣味だったので、曲の後半はゴトウさんのサックス・ブローも含め、じょじょにゴージャスな方向性になった。
 となると、それまでの私のアプローチだと、若干シブすぎていたように思い始めた。いいタイミングで、ケンさんから、ストリングスの広がりが欲しいとのリクエストがあり、もう一度、CDにあるような感じに戻すことにした。

 大阪では、ペダルの上げ下げでヴァイブとストリングスを同時に動かすことになったので、スムースさがなくなって、少しバタバタしてしまった。後々よーく考えてみると、冷静にうまく組めば、二つの音色をもっと的確に上げ下げ出来ることに気がついたのだが、時すでに遅しだった。東京では、何とかバランスを取ったが、もうちょっとだったなぁ。でも、この曲はもっと良くなるはず。

夏の陣(4)へ続く。
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by harukko45 | 2012-08-16 23:54 | 音楽の仕事

大橋純子/夏の陣(2)

 夏の陣(1)の続き。

 大橋純子さんとの活動を振り返る2回目。前回は、キーボードのシステム云々の話ばかりになってしまったので、今回からはクラブ・サーキット2012のメニューにそって書いていきます。

e0093608_10561998.jpg m1.夢を見ようよ〜2.Smile Again

 1979年の美乃家セントラル・ステイションのアルバム"Full House"を久々に聴いているが、飽きないなぁ。何回か繰り返してみても、スっと聴ける感じがいい。このアルバムから、美乃家は「第2期」となるんだけど、メンバー構成(現バンドと3人が一緒、ケンさんも入れば、すでに「ほぼ美乃家」状態)からして現在につながるジュンコ・サウンドの全てはここにあると言ってもいいわけ。

 特に面白いなぁと思うことは、このアルバムの場合、A面(Funky Side)では、メンバーの個性を強調したサウンドが生かされ、B面(Mellow Side)では、きちっとしたスタジオ・ミュージシャンによる職人的な仕上がりになっていること。これを両方とも同じミュージシャンがやっているのが、興味深い。
 それは、この時のメンバーがバンドとしての表現を一番に考えながらも、同時に一人のミュージシャンとして職人的なアプローチもこなせるだけの技量と意識を持ち合わせていたということ。まぁ、これはこの当時のミュージシャン達全般に求められていたことだけど、残念ながら現在ではほとんど忘れられてしまった美徳と言えるんじゃないかな。

 小田健二郎さんが大活躍のA面は、まさにバンド、それもルーファスっぽい感じだ。彼が弾くアナログ・シンセが随所で耳をひくし、オダケンさんの曲・アレンジは今の時代にすごく新鮮に映る。方やB面では、佐藤健さんの3曲が圧倒的で、いい意味でバンドがどうのということを忘れて、歌と曲に浸れる。
 サトケンさんは、この前のアルバム「Flush」でも"サファリ・ナイト""傷心飛行""マイ・ソング"と強力な3連発をかましたが、「Full House」においても無敵の3連発"ビューティフル・ミー""9月になったら GOOD-BYE""Smile Again"をやってのけた。

 さらに、何回か聴いていて気づくのは、六川正彦さんのベースが両サイドの橋渡しを見事にやっているということ。実は、このアルバムの心地よい統一感は、彼のベースによる貢献が大きいのかもしれない。
 アルバム全体にはそれほど派手さはないものの、噛めば噛むほど味が出る佳曲が揃っている「隠れ名盤」だと思う。

 で、この中から"夢を見ようよ"と"Smile Again"が選ばれて、ライブのオープニングとなった。

 "夢を見ようよ"は、元美乃家メンバーにとっても20数年ぶりだし、もちろん私は初めての演奏。でも、すぐにピタっとはまる感覚っていうのがあって、ベーシックな音はすぐに仕上がった。問題はコーラス部分で、特にサビは男性陣がメロディで、ジュンコさんはフェイクにまわり、女性コーラスのお二人は助っ人に入るという段取りに。
 最初のうち、リード・ボーカルを取ることに慣れない男性陣が四苦八苦して、なかなか決まらず、ケンさんからのシゴキ、いやいや指導により、何とかかっこがついていった。最終的にはヒロコちゃんが男性側に来て芯になってくれたので、うまくまとまった。さすがプロは違うね(あたりまえじゃ!)。彼女が我々のパートに入ってくれただけで、段違いに自分がうまくなった気がして、急に余裕かます男達でありました。

 私は、ヤマハのピアノ音と左右に動くトレモロ・エフェクトのエレピを基本に、アナログ系のパッドをサビなどで加えた。ゴトウさんとのセクションのパートでは、コルグでのサックス音に、アナログ・ポリ系の音を加えて厚みをつけた。
 
 美乃家時代をあまり知らない人にとっては、馴染みのない曲によるオープニングだったので、面食らった方も多かったかもしれないが、シンプルなリフの繰り返しによるグルーヴィな曲調なので、すぐにノリをつかんで楽しんでくれるに違いないと思っていた。
 全員コーラスによる厚みのある音でのエンディングでは、名古屋初日から熱狂的な拍手をいただいたので、大いに手応えを感じ、すっかり自信をつけたのだった。

 2曲目の"Smile Again"は、昨年もやっていたが、より自由なアプローチでのパフォーマンスとなり、ゴトウさんのサックスを大フィーチャア。テンポはCDよりもだいぶ遅くなっているが、それによりAOR的なニュアンスが濃くなり、ビートも粘っこい感じになった。

 私はエレピを中心に、アナログ系のパッドを加えたのと、ところどころにモノ・シンセのリード音でオブリを入れたりした。やはり、オダケンさんのアプローチに触発された部分は大きい。
 そして、この2曲の存在は、我々にあらためて、バンドで音を作っていくとは何だったのかを思い出させてくれた気がする。
 
 大阪公演では、現在関西に拠点を置く、元美乃家のドラマー、マーティン・K・ブレイシーさんが観に来てくれて、本当に美乃家再結成か!って感じだった。マーティンさんには、当時の曲をやることは全く知らせていなかったので、楽屋では「マーティン、きっと泣いちゃうよ。」って盛り上がっていた。案の定、終演後には「パオ!ヤラレタヨー」とかなりのハイテンションでありました。

 夏の陣(3)へ続く。
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by harukko45 | 2012-08-15 23:48 | 音楽の仕事

大橋純子/夏の陣(1)

 7月が早くも終わりに近づいてしまい、6月以降の大橋純子さんとの仕事について、全く総括しておらずに、今日まで来てしまったことに深く反省。正直、今回は個人的にいろいろと集中して考え、トライし、実際にやり切ることが多かったので、本番が一つ終わるたびに、何ともいえぬ虚脱状態になる感じで、それらを冷静に振り返る気分にならなかった。
 だが、ここに来てようやく、それらの成果についてちゃんと理解できるようになったので、自分の記録としてブログに残しておきたいと思う。

 ここ数年のジュンコさんとの活動は、夏のクラブサーキット・ツアーが中心となるのだが、実際には、そこに至る過程を含め数ヶ月におよぶ内容と言える。
 それは、全体の方向性の決定と選曲、バンド全体でのアレンジとリハ等は当然のことながら、ジュンコさん自身はもちろん、加わるメンバー各自の思いやこだわりを全員の共通意識として高める作業であるからだ。

 で、今年、個人としてある決意に達して、何としても実行しようとしたことは、これまでのサウンド・アプローチを一度リセットして、1曲1曲を再度洗い直しながら、音色を一からプログラミングしてみることだった。音色が変われば、フレーズも弾き方も変わる。それにより、新たな音楽的な発展が生まれることを目指した。
 実際に数々の本番を終えてみて、うまく行った部分とそうでなかった部分もあったし、システム変更によるトラブルも何回かあり、全てをコントロールできたわけではなかったが、リスクをとりながらも新しい試みをやれたことへの満足感は大きかった。

 さて、何をどうしたのか。ここからは、あくまでキーボーティストとして何を考えて何をやったのかばかりになるので、つまらんかも。

 でもかまわず進めるとして。まず、今回の一番の特徴は、コンピューターを導入して、多くのソフト・シンセを積極的に使ったこと。それは、ジョン・レノン・スーパーライヴにおいては、すでに毎回やっていたことだが、一人のアーティストのツアーでそれをやることは、かなりリスキーと思っていた。が、ここに来て、安定したパフォーマンスを実現できるノウハウは十分身に付いたと思い、決断した。
 具体的には、ヤマハ・S-90(70)XSをメインのキーボードとして弾く一方、これをシステムの司令塔とし、もう一台のコルグ・Tritonもリンクさせて、こちらからもPCのサウンドをコントロールした。コルグの音色には、かなりユニークなものが多くて面白いので、今回は特に積極的に使った。逆にソフト・シンセにはかつてのアナログ・シンセ系などの極めて「伝統的」なサウンドがたくさんあり、いい意味で「安心感」のある「いかにもそれっぽい」良い音が選べるので、コルグとの組み合わせはかなり楽しい。

 ヤマハの方をSシリーズにしたのは、同じ系統でありながら、ここ最近どんどん「パキパキ」傾向にあるMotifシリーズよりも音質がナイーブな気がしたのと、より中音域が充実していると思ったから。それに、シークエンサー機能のような余計なものを省いたことも気に入った。

 PCはマック・ミニを持ち込んで、演奏中は横目でディスプレイを見るって感じ。ノートブックを使わないのはスマートじゃないとも言えるが、この方が「音楽専用」ぽくって、自分には合っている。使うのはLogicのMainStageで、ここでソフト・シンセの管理をし、曲ごとに複数の音色、エフェクト、キーボードのスプリット、ペダルやスイッチの設定が出来る。それらを組んでいくのにはそれなりに時間がかかるが、一度決まってしまえば、本番ではヤマハ側のプログラム・チェンジ・スイッチを押せば、瞬時に全てが変化してくれる。
 MainStageの導入によって実現するのは、過去にたくさんのシンセサイザーやラックマウントされた機材をステージ上に並べていたことが、コンピューター上で出来るということ。もちろん、アナログ時代へのこだわりや、そこに抗し難い魅力があることも理解しているが、それを今の時代に「スマートグリット」化することの方に興味がある。

 とは言え、これらをつなぐのはMIDIという昔ながらのシステムで、複数の機器の設定を曲ごとに変えるにはMIDIパッチベイが絶対必要になる。で、これまた昔ながらのローランド・A-880を使っているのだが、要は、いろいろ細かく設定したって、その情報のやり取りにはこれがなきゃ始まらない。実は一番重要なのが、A-880だとも言える。私の持っている機材の中で、一番古くから現役で、他に代わりがないのが、これなのだ。

 さて、私は1995年に大橋純子さんのバンドに再加入してから、もうすでに17年目となっている。こんなに長い時間、ジュンコさんの音楽に関わってこれたとは、あらためて驚くとともに自分の幸運に感謝したいと思う。もちろん、これだけ長ければ、自分自身の好不調の波はいろいろあったし、このブログのタイトルになっている「バンマス」という仕事も、当初の頃に比べてずいぶん変わってきた。
 現在の「チーム大橋」は、ジュンコさんとプロデューサーの佐藤健さんを中心に、バンドメンバーも大いに加わる合議制と言える。それと、長い時間の中で、メンバー各自のやるべきことがじょじょにはっきりしてきて、「自分の居場所」みたいなものがほぼ確立されている。
 だから、他の現場ではいわゆる「バンマス」としてのリーダー的役割と責任を意識して、時に強引に仕切ってしまう自分も、「チーム大橋」ではファミリーの一員としてのスタンスでいるのだった。

 そういう意識の変化が、今回、自分自身の一体改革への導きとなったのかもしれない。バンドのような小さな社会の中にも安定・安心はあり、それは場合によってはマンネリ化し、予定調和した状況へと陥ることもあるわけで、自分への喝の意味を込めて、断固として変革に挑戦することにしたのだった。
 と、やけに大げさだが、実際にステージを観ていただいたファンの方、お客さんたちにとっては、さして意味のあることではなく、あくまで結果として良かったかどうかなのだから、ひどく厚かましい話だな。だが、ここは「バンマスのぼやき」なのだから、ご勘弁願おう。

 次回からは、実際に演奏された曲をテーマして書いてみることにします。

夏の陣(2)へ続く。
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by harukko45 | 2012-08-15 18:42 | 音楽の仕事

詳細(1)の続き。

 6月2日の渋谷O-EastにおけるSparkling Liveから2ヶ月後、8月10日渋谷AXで行われた安倍なつみさんのBirthday Liveについて書いていきます。

 AXのライブへの準備として、7月18日に最初の打ち合わせがあり、その前にはメニューの概要と音源が送られてきたので、いつもよりも余裕のある始まりとなった。ただ、細かい内容はバースデイ・ライブの性格上、シークレットな部分も多く、実際にはどういう流れになるのかは、当日にならなければ私にもわからないのだった。
 そんな中、曲については彼女の代表作と言えるものがずらっと並び、そこに大きな変更を加えるのでなく、じっくりと歌い聴かせるという意図が感じられた。6月の「ハジケ・バージョン」とは対称的な内容を目指すわけだ。
 
 m1.トウモロコシと空と風〜2.くちびるで止めて

 ライブの前に行われた会場のみんなとのバースデイ企画については、我々バンドもよく知らずに参加していて、「おー」「へぇー」って感じで見守っていたわけです。で、司会の方のキューでライブ・ステージとなったのでした。
 m1は、なっちコン・夏の定番でありますが、O-East同様、そんな定番曲を頭に置き、メンバー紹介もやり、会場とのフリツケ・コーナーもありという、まさにフル・コース仕様となった。
 ライブでの「トウモロコシ」は、CDとは違う岩崎はじめさんのアレンジが定着していて、今回もそれを踏襲する形。
 そもそも、CD版はイントロのキーがF#で、歌に入るとAになる進行。リズムもキメキメのベース・ラインで、R&Bぽいグルーヴ感を強調している感じ。これはこれで悪くないのだが、ライブではちょっとキーが低く、ボーカルが少し暗い印象。なので、キーをBに上げた現在のバージョンになったのだろう。

 ただ、オリジナルにも捨て難い部分があり、特にBメロの部分のベースの動きは面白い。ただ、グルーヴ感が違うので、その辺をしょーこちゃんがうまく処理してくれ、これは実に良かった。また、2コーラス後にブラスのセクション・パートも取り入れたし、ブラスのフレーズはサビでも効果的だったので復活させた。そんなこんなで、私はいきなり頭から忙しい。他の曲でもやることが増えたので、キーボードが2台から3台になり、音源も増え、システムも複雑化した。
 しかしこれは、私としては最初から意図していたことで、この2ヶ月の間に経験した大橋純子さんとのツアーでの成果を、なっちのコンサートにも生かしたいと思ったのだった。
 言わば、やれそうなことは全部やる準備をし、そのためにはシステムを拡大し、なおかつトライすることに留まらず、完全にやり切る。これが今年のモットーとなったわけ。

 具体的には、曲のオーケストレーション、色づけは私一人でやってしまうということ。その上で、他のメンバーは生き生きとした個性を発揮してもらい、それを大きくフィーチャアしたいと思った。それはギター・ソロだったり、コーラスだったり、リズムのグルーヴだったり。
 この構想は、なかなかビューティフルなのだが、その分、自分自身への課題が増えて、責任も重くなった。まぁでも、これも楽しむことが大事。

 とは言え、1曲目の「トウモロコシ」からプレッシャーを感じてしまい、全体に固くなっちゃったところもあった。メダルを前に足が止まるってムードか、いやはや。

 m2は6月にもやっていたので、かなりスムースでノリも良かったね。バンド全体に自信が感じられて頼もしかった。

 m3.晴れ雨のちスキ〜4.雨上がりの虹のように

 「さくら組」のシングルであるm3は、つんく氏の名曲の一つでしょう。私には、オリビア・ニュートン・ジョン的な70年代後半の良質な女性ポップ・ソングのエッセンスが感じられて好きだ。
 初めて聴いた時は、Bメロ冒頭のベース音がおかしく思った(最も保守的に考えると、コードはA♭が無難だが、ベースだけAを弾いている)んだけど、ここの響きは、聴けば聴くほど病み付きにやる。だが、単にコードネーム(例えば、Adim▵7)通りに鍵盤を押さえるというよりも、Adimのコードの上に、8分でC・E♭・A♭と弾くことでクールな感じになる。
 こういうちょっとしたところにアレンジャー(鈴木Daichi秀行さん)のセンスの良さが見えてくる。

 続くm4と合わせて、このブロックは「雨」コーナーで、私は意図的かと思ったら、選曲したご本人は、全くの偶然だったとのこと。
 その「雨上がり」は、岡村孝子さんの曲で、萩田光雄さんのアレンジ。こちらは音楽的には実に明解でやることがはっきりしている。萩田先生のアレンジはほぼ全て指定の書き譜で、その通り弾かないとちゃんと成立しない。とは言え、この曲ではちょっと作り込みすぎて、窮屈な印象がある。(だからミスっちゃった?、そうじゃねぇだろう!)今回はオリジナル通りにやったが、次回やる時は少し変えてみたい。

 m5.さよならさえ言えぬまま〜6.恋

 今回のメニューの中で、バンド的に一番難しかった部分がm3から5の3曲。決め事が多いのと、あまり感情の起伏を出さずに淡々とやることが必要。とは言え、特にm3と5では、「なっち/モー娘。/つんく」の重要ファクターの一つである「ちょっぴり、切ない」感じは絶対に外せないので、大事に扱わなければいけないのだった。
 この3曲でのキーボードの演奏は、いろいろな音色を設定していたので、かなり忙しくなってしまった。もう少し簡略化しても、対外的にはたぶんOKだったのだが、個人として今回は妥協したくなかった。その辺のバランスの取り方は次回までに整理しなくては。

 よって、曲調とは裏腹に切迫した状況でm5が終わったあとに、松山千春さんの「恋」を弾き始めるのには、十分に落ち着かなくてはならなかった。まぁ、何とかうまくいったと思う。

 m7.灯

 ライブ前半の最後を締めるのは、奥華子さんのカヴァー曲。弾き語り調が基本だが、ところどころ歌詞や気分に合わせてメロディやサイズが変わっていくのが特徴。あくまで自然な流れを大事にしている感じで、作為的にダイナミクスをつけるのは合わない。
 全体としては歌詞をよく聞いてもらえるように心がけた。なっちも歌詞を通じて、感謝の気持ちを伝えようとしていた。

 m8.せんこう花火〜9.真夏の光線

 後半戦は、モー娘。時代の曲が続いて、華やかさが広がった。ここでの2曲、本当によく出来てる作品。製作陣に敬意を表したい。m8は、全体にギター・サウンドが心地よく、ザ・バーズのようなフォーク・ロック系の響きだと思う。私は、ザ・バーズが大好きなので、それだけでもこの曲は神棚行きだ。イントロや間奏、また歌中でもボーカルにからむボトルネック・ギターも印象的だが、個人的にはペダル・スティールだったら、もっと最高。
 というわけで、私は一人盛り上がって、シンセでペダル・スティールっぽいサウンドを作ってみた。久保田くんのリードと一緒に弾くことで、ずいぶんいい効果になったと思う。そのかわり、この音色を弾いている時は、常にアフター・ビブラートをかけてないといけないので、鍵盤を押しながら左右に揺らし続けていた。
 
 続くm9は、タイトル通りの夏っぽさと、アイドル・チューンらしさと、70年代風のR&Bをうまくブレンドしていて素晴らしい。ぶち込まれている音が多すぎる部分もあるが、生のブラスとシンセ・プログラミングを併用して、ここまでやり切ったことに頭が下がる。
 間奏でのフュージョン〜E,W & Fっぽい仕掛けも、なかなか面白いし、ただのアイドル・ソングに終わらせない心意気がいいじゃん。当然、ライブでのダンス・シーンも想定してただろうし。

 この曲はさすがにコンピュータを使って、パーカションだけでなく、ストリングスやブラスなども打ち込んだ。ただ、かなりの部分を人力でも対処したので、3台のキーボードはフル稼働だった。その分、コーラスはAsamiちゃんに任せた。彼女と久保田くん、しょーこちゃんのコーラスで、サビの厚みとポップ感を強調してくれたのは大きかった。Asamiちゃんは、なっち以外のソロ・パートもやっていたから、大活躍。

 m10.I Wish〜11.夕暮れ作戦会議〜12.微風

 ロンドン・オリンピック開催中との絡みもあったのか、m10はシドニー大会時のキャンペーン・ソングだった曲。で、アレンジが「真夏」と同じ河野伸さんなので、何かと共通点が見いだせる。この人はかなりきちっとオーケストレーションを構築する人のようだ。特に間奏は、オリンピックっぽい感じもちゃんとあって、これまたよく出来ている。
 で、これをやるには人手が圧倒的に足らんので、打ち込みを使った。前半のヒップホップ系のビートはもちろん、その後の速弾きアルペジオのストリングスやホルンなどはコンピューターにまかせ、ブラス・セクションは手弾きで合わせた
 CDでは、モー娘。メンバーが入れ替わり立ち代わりフィーチャアされるが、もちろん今回はなっち一人だけで歌い切ったので、また違ったイメージになって面白かったのでは。
 
 スケールの大きな「I Wish」の後、全く違う曲調の2曲が続くので、一瞬も気の抜けない終盤戦であります。

 m11は、歌詞があどけない要素で一杯なのに、サウンドは完全なるハードロック、そのギャップがかなり面白い。それと、Aメロのベースの動きが相当カッコイイ。しょーこちゃん、いい感じでCDの良さを再現してくれました。私は、大忙しモードから一瞬解放されて、思う存分ロックできるので、大いに楽しむつもりだったが、イントロ部分でシステム・エラー発生。オルガンが最初出なくて、ガックリ。演奏しながら、対処して復活させた。やれやれ。

 そんなドタバタを引きずったか、次の「微風」では間違って「ふるさと」のプログラミングを呼び出してしまった。これは、完全なる凡ミス。イントロではストリングスのみで演奏する予定だったが、エレピの音も一緒に鳴ってしまった。かなりショックではあったが、こういう時は意外に冷静になるもの。指は動いているが、頭ではどこでプログラム・チェンジするかを考えていたのだった。いやはや。
 ただ、全てが復活した後は、激燃え状態になるので、何だかやけに盛り上がってしまった。それが影響を与えたかどうかはわからないが、バンドも呼応してくれて、この時の演奏は今までで一番ロックした「微風」になった。特に後半のサビはかなりハイテンションでありました。

 En1.ふるさと

 さて、正直、個人的にはちょっと苦い後味を残してのアンコールとなったが、Asamiちゃんのワイルドなビートにしびれた2小節で、気分は全快。なっちの最高傑作と言っていい「ふるさと」は、ものすごく新鮮な気分で大いに楽しんだ。
 この曲に関しては、どうのこうの言う必要もない。やれることを全てこなして、曲の良さを最大限引き出すことに集中したし、冒頭のドラムスに刺激されたメンバー全員のパフォーマンスは素晴らしかった。

 En2.空LIFE GOES ON〜3.愛しき人

 「微風」「ふるさと」「空LIFE GOES ON」と壮大なバラードが3曲も並ぶと、かなり重厚。でも、今回はじっくり歌い切ることがテーマ、それを真っ正面から取り組んで、やり切ったことを讃えたい。そういう、なっちの思いに引っ張られて、緊張感のある「空」があり、そこから一気に解放されての「愛しき人」もまた格別でありました。

 というわけで、先日のAXでのライブを振り返りました。個人的には多少悔いを残す部分がありますが、今回は妥協せずに、自分がやろうと思ったことは、全てやり切ったことは評価したいと思います。もちろん、安倍なつみさんのコンサートとして、それが音楽的に良かったかどうかは別物、ファンのみんなが楽しんでくれたかどうかが一番大事で、その辺りは今後冷静に考えていかなくては。

 とは言え、何とか無事に終えることが出来て、ほっとしていると同時に、あらためてファンの皆さんに感謝したいと思います。本当にありがとうございました。また、なっちのライブで再会出来たら幸せです。
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by harukko45 | 2012-08-14 20:47 | 音楽の仕事

 安倍なつみさんの6月2日O-Eastでのライブと、8月10日AXでのライブには相関関係というか、ある種の連続性があったので、まとめて書いていきたいと思います。まずはO-Eastバージョンから。

 5月の中旬にライブ・アレンジのためのミーティングがあり、そこで話された方向性は「Pop性を強調して、思いっきりはじけたい」ということ。選ばれた曲もそういった流れに十分沿っていると思った。
 で、これまでに何度も登場している曲の、おなじみのフレーズなんかも、よりアグレッシヴなムードで強調してほしいとのことだった。確かに、そろそろ何かしらの変化をつけたい気分であったので、私も大きくうなづいた次第。

 m1.愛しき人〜2.恋のテレフォンゴール〜3.恋にジェラシー申し上げます

 いつもアンコールでの大ラスが定位置の曲を、ど頭に持ってくるというのも、「のっけから、はじけたい」という意志の現れ。ただし、「愛しき」とすぐに分かってしまうのでは芸がないので、全く違うムードのオーバーチュアを付けることになった。私はちょうどその頃、ザ・フーの「Tommy」や「Quadrophenia」なんかを聴きまくっていたので、そんな大仰なムードを引きずっていたかも。でも、「何がくる?おー、最初からこれか!」って驚いてもらって、爆発する感じにはピッタリだったと思う。

 本編に入って、イントロ・ヴァンプ・エンディングと何度も登場する、ファンにはおなじみのフレーズはこれまで、オルガン系の音で演奏されるのが常だったが、今回からディストーションのギターを芯に、オルガンとモノ・シンセ系のキーボードで太めにユニゾンすることにした。もう、こうなると昔には戻れないね。なっちの歌が入っても、バンドは常にプッシュする感じを忘れないように心がけた。

 間髪入れずに続けた「ピロリン」は、私としてはかなり好きな世界。つんく氏の作るコミカル系の曲は、どれもなかなか味があって飽きないし、「うー、やるなぁ」と感嘆させられる瞬間も多いのだ。そもそも、こういう曲の方が、真剣に作りこんで、マジに演奏しきらないと中途半端になっちゃう。だから、実際に演奏すると秘かにかなり燃える。
 今回は、ブラスやストリングス、間奏のホンキートンクっぽいピアノなどを出来るかぎり生かしたので、それはそれは大忙し。鍵盤の上下はもちろん、右手と左手も別音色。他のメンバーもモータウン系のソウル・ビートを基本に、速いテンポに巻き込まれていく感じになるんだけど、でも、そんなギリギリ感が楽しい。

 そして、そんな流れでの「恋ジェラ」という構成には、リハの前の準備段階ですでにシビレたし、前やった時から好きな曲だったので、扱いもおのずと濃いめになる。基本はギター中心のサウンドなのだが、今回は新たに、サイケっぽいシタールの音色や、アナログ系のシンセ・ブラス音も加えてみた。より派手目にしたかったし、とても効果的だったと思う。まぁ、とにかく「ネギ」のところがたまらんわけ。

 m4.恋の花〜5.スイートホリック〜6.小節の中の二人

 個人的には最初のブロックとともに、このブロックも好きだった。これまで、いろいろなアレンジでやっているm4,5は、打ち込みのビートを併用して、CDにある「パキパキ感」を適度に保ちながら、ライブバンドっぽい良さも引き出せたと思う。特に、「スイートホリック」は個人的に今までの中で最高の出来、久保田くんとAsamiちゃんのコーラスが実に効果的で、よりポップになったのと、キーボードでラテン色を強めたのも、曲にあっていた。
 m6は、いつもピアノ中心だったのを、あえてガット・ギターでのバラードにしたのが新鮮で、チェンジ・オブ・ペース的役割をうまく果たしてくれた。これは、久保田くんに感謝です。

 m7.くちびるで止めて〜8.愛ひとひら

 今回のバンドはちゃんと歌える人が揃ったので、m7でもコーラスがいい感じにキマった。途中のメンバー紹介でのソロ回しではベースのしょーこちゃんのグルーヴがかっこ良かったぞ。
 m8は、ハネるノリが難しい曲で、こういうのはベテランのメンバーには一日の長あり、ってところかな。

 m9.糸〜10.Rosier〜11.NO.N.Y.

 3曲のカヴァー・コーナーのうち、LUNA SEAのm10は、かなり激しい内容だったけど、なっちは元々ロックものが好きなのだから、どうせ「はじけたい」のなら、好きな曲で思いっきり爆発しよう、ということ。ただし、オリジナルを丸々コピーするだけじゃつまらんので、「今回のメンバーの」解釈でOKとした。だいたい、50過ぎのオジサンが、ヴィジアル系ハードコアをそのままやるのはおかしいでしょ。私の世代だと、こういうものは「パンク」と「メタル」の合体的な感覚の方がしっくりくるわけ。というわけで、ピアノもオルガンもギター以上に歪ませました。それにしても、スラッシュ系の急速ドンタン・ビートを叩きながら、なっちのボーカルにハモをつけてたAsamiちゃん、恐るべし。
 BOOWYのm11は文句なく楽しい。基本のロックンロール魂が根底にあるから、自然に盛り上がれた。

 この中で最も意外性があったのは、中島みゆきさんの「糸」だったが、Bank Bandによるバージョンのアレンジがなかなか良かったので、オリジナルではなく、こちらを参考にカヴァーした。ただし、なっちの大掛かりな着替えをはさんだので、エンディングをかなり長くしなければならなかった。で、オリジナルのインスト部分などを加えたりして引っ張ることにした。
 みゆきさんのオリジナルには、どの曲にも何とも言えない「毒」があるので、Bank Bandで消えていた、そういう要素を戻すことで、次のLUNA SEAに違和感なくつなげられたと言えるかも。

 m12.シャイニング・バタフライ〜13.浪漫〜14.あなた色

 後半もまだまだイケイケ。m12はドリームモーニング娘。の最新曲なのだが、けっこう演奏的にはややこしい曲。なっちによる冒頭の歌いだしあたりでは、かなり期待させる内容なのだが、個人的にちょっと残念なのは、過去のモー娘。曲を、つんく氏が自らコピーしているような仕上がりになってしまったこと。だからこそ、悪い曲ではないんだ、とも言えるけど。

 それは、続けてm13に突入したので、余計そう感じちゃうのかもしれない。これは完全に、布袋系メロディを持つ80年代風ロックで、リンドバーグ、レベッカにバービーボーイズのメンバーがレコーディングに入ってるという徹底ぶりからして、つんく氏の80年代J・ロックへのオマージュとして、よく出来た作品。それと、モー娘。バージョンは「なっち後」なので、今回の安倍ソロ・バージョンはかなり新鮮だったし、曲の強さが増したと思う。
 ただし、込み入った間奏は少し勢いをそぐ感じがするという、なっちの意見だったので、流れを止めないように、シンプルな形にした。

 本編ラストの「あなた色」も、こんな流れを受けて、かなり攻撃的な出来に。ジプシー・キングス風のアコースティック感を無視したことで、よりストレートに爆発する感じになった。若いリズム・セクションが思いっきりはじけてくれたし、打ち込みのパーカッションなどが常に煽ってくる感じにしたのが効果的だった。私もピアノ、ぶっ叩く感じになってたし。

 En1.息を重ねましょう〜2.大人へのエレベーター

 アンコールでは、なっちがバンド・メンバーを紹介、なごみ、いじるコーナーから、「息かさ」にすっと入るように、との要望に加え、オリジナルのレゲエ・アレンジから離れて、本編に通じるようなポップ・ロック感でまとめてほしい、とのことだった。
 曲自体はとてもフックのあるサビが印象的だから、どのようにやっても大丈夫。ハネたグルーヴ感をやめて、フォーク・ロック風にしてみた。

 で、最後の「大人」は、個人的にはローリング・ストーンズっぽいイメージでのぞんでいる。時にブルース・スプリングスティーン風でもあるけど。いずれにしても、どの世代の人にも受け入れられるであろう王道ロックを目指したい。とりあえず、四の五の言わずに盛り上がろうが大事。

 というわけで、駆け足でO-Eastのライブを振り返ったけど、私はこの時のセットリストが今でも好き。よく出来た構成だと感心したし、演奏していても実に楽しかったし、バンドの良さもうまく引き出せたと思っているのでした。

 さて、次は8月のAXバージョン。詳細(2)へ。
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by harukko45 | 2012-08-13 14:44 | 音楽の仕事

 どうもブログ更新が止まりっぱなしでしたが、昨日、安倍なつみさんのコンサートが終了し、私自身の夏の大仕事も終えることが出来たので、いろいろ書き残していたことをまとめていこうと思います。

 あと、オリンピックの影響もあるわな。

 さて、まずは昨夜の「安倍なつみBirthday Live2012 〜thanks all〜」にお越し下さったたくさんのファンの皆さんに心より感謝です。いつもながらに応援してくださって、本当にうれしいかぎりです。もちろん、そんな皆さんが目一杯楽しんでくれたかどうかが一番ですが、ステージ上ではいろいろと細かい問題が発生しつつも、なっちを含むメンバー各自が強い忍耐力で乗り切り、最後まで前向きにやり切ってくれたので、その思いは会場のみんなにも伝わったのではと思っています。
 今回のバンドは6月以来なのですが、お互いへの信頼がすでに感じられたのと、各自がより積極的にバンド・サウンドにアプローチしてくれたのが良かったです。そういったことが積み重なって素晴らしいチームが出来てくるわけですから。

 とは言え、個人的に昨夜は、6月のライブに比べて、より取り組むべき課題を多くしていたので、その分不安もあり、それを克服する時間が少し足りなかったことが悔やまれます。それにより、自分の凡ミスと言える部分が実際にあり、そこはきっちり反省しなくちゃいけません。

 それは、他のメンバーもなっち自身にもあるようでしたが、それでもバンドとしてはタフだったことがうれしいわけです。特に20代女性ふたりによるリズム・セクションは前回よりも格段にたくましくなったし、ギターの久保田くんは全体を見渡すことが出来る人で、私が行き届かない部分を的確に指摘してくれるのが助かります。私は比較的、自分のことしか考えていない時間も多いので、若いリズム・セクションに「ちゃんとした」アドバイスをしてくれたのは彼でした。
 まぁ、私が自分のことを考えられるということは、他のメンバーを信用しているから、とも言えます。

 せっかく、このような若いミュージシャン達とチームが組めるのは、私にとっても素晴らしい経験になるので、もっとたくさんの機会で音楽したいのですが、それについては私が決めれることではなく、もろもろの今後に期待したいと思います。次回は、6月と8月の成果について書いていこうと思います。
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by harukko45 | 2012-08-11 18:32 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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