谷口守/ラグーン

 28日が今年最後のライブ演奏でした。場所は横浜センター北のライブ・バー「ラグーン」で、シンガーソングライターの谷口守さんとのステージでした。3月の震災後に一番最初に参加したライブが、谷口さんや染谷由紀乃さんらが企画したイベントだったし、今年最後も谷口さんとの演奏となりました。これも、何かの縁ってもんでしょうか。
 メンバーは、ドラムに濱田尚哉さん、ベースに六川正彦さん、ギターに黒沢KAZくん、コーラスに染谷由紀乃さんと伊田良子さん、に私。みんな同窓会みたいな顔見知りメンバーで、楽しかった。

 やったのは、谷口さんのオリジナルにプラス、イーグルスやビートルズ、スティービー・ワンダーにTotoといったカヴァーを交えてで、なかなか盛り上がっちゃいましたなぁ。結局、演奏し始めると皆集中高まって、一致団結していく感じがあるわけで、今年一年のゴタゴタした気分をすっかり忘れさせてくれるのでした、ウムウム。
 また、来年も是非やりたいものです。この日も満杯でしたし、お客さんたちもずいぶん楽しんでくれていましたしね。

 そして、家に帰ってからは、11月前半に制作していた楽曲のためのピアノによる伴奏譜を作っておりました。とりあえず、何とか仕上げて、これで今年は終了。いつもは、もっと早くに仕事納めすることが多いのだけど、今年はギリギリまでになってしまいました。でも、これも逆にありがたいことと感謝せねば。おっと、すっかり仕事にかこつけて「ジョン・レノン・スーパーライヴ2011」の詳細は書けませんでしたが、年が明けたらボチボチやってみます。

 いろいろあった2011年、正直、3.11以前と以後ではガラっと変わってしまいました。たとえ、今後の復興と再生がうまくいったとしても、自分の意識はあの時から変わったと思っています。ただ、意識の変化に実際の行動がちゃんとリンクしていなかったことも事実。それにより、今年は強く深い「むなしさ」が自分の中にありました。
 自分自身の無意味さを感じ始めるというのは、ひどくネガティブな印象を受けるかもしれませんが、だんだん、それとうまくつき合うコツもつかみ始めました。要は、意味が無いなら、失う物もないのですから。

 さて、そんなわけで、来年は少しでも新しい自分を目指して、ちゃんと行動したいと思います。まぁ、どうなりますか。

 今年一年も、たくさんの方々に支えられてきたことに、深く深く感謝したいと思います。そして、どうぞ皆様も良いお年を。
 
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by harukko45 | 2011-12-30 14:57 | 音楽の仕事

 昨日は、大橋純子さんとの今年最後の仕事で、松崎しげるさんとのジョイント・ショウでありました。場所は、横浜ベイシェラトン・ホテルで、昼夜公演どちらもチケット完売・満員御礼という状況でした。その華やかなムードにも後押しされて、ジュンコさん、松崎さんが2回ともいいパフォーマンスを繰り広げ、個人的にもジュンコさんとの2011年を締めくくるに相応しいステージになったな、と思っております

 1回目が13時30分始まりで、バンドはサウンドチェックのために朝7時に集合だったので、長い一日ではありましたが、ショウの成功による満足感が体の疲れを吹き飛ばしてくれたように感じました。このステージから、ジュンコさんのセットに"大人の恋をしましょう"と"愛は時を越えて"が新たに加わり、松崎さんのバンド・パインツリーファミリーバンドの皆さんにもお手伝い願ったわけですが、彼らの的確で大人なバッキングの効果が、よりクリスマス・ナイトにマッチしていたと感じましたし、私も新鮮な気分で演奏することができました。こういうところがジョイント・コンサートの楽しみでもあります。

 もちろん、チーム大橋として参加している私と土屋さんが、逆に松崎さんのバッキングにも加わるわけで、これはこれで、ちょっとしたスパイスになっていれば面白いかと思っています。

 もう、このジョイント・ショウ自体は長くやってきているので、メンバー・スタッフはすでに気心通じ合った仲間ですが、それに甘えずに、来年はより進化をとげるべく、内容も新しくして意欲的なショウ作りが企画されているとのことで、ますます楽しみな感じになってきました。
 
 さて、ということで、今年のジュンコさんとの仕事は無事に終了、今年もファンの皆様のサポートには深く深く感謝の言葉をお伝えせねばいけません。本当にありがとうございました。
 そして、また来年。少しでも、ジュンコさんの活動がより充実していくように、我々バンド側もますます頑張って行きますので、どうぞ引き続きの応援をよろしくお願いいたします。
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by harukko45 | 2011-12-26 17:37 | 音楽の仕事

 18日は岩本町のエッグマン東京イーストにて、水越けいこさんのクリスマス・ライブがあり、昼夜2回公演、それぞれ2時間弱のステージでした。共に、たくさんのファンの方々が詰めかけてくれて、本年最後にふさわしく、盛り上がったラスト・イベントとなりました。まずは、ファンの方々に感謝感謝であります。

 けいこさんとは10月の秋ツアー以来でしたが、この間に事務所移籍という出来事があったりして、ご本人はいろいろと精神的に大変だったことと思います。なので、いつものツアーの時のように、セット・リストを入念に煮詰めてから、リハーサルを行うという時間が、今回はあまり作れませんでした。バック・メンバーである私とギターの田口くんのスケジュールも合わずに、全員で最終形を合わせるのが、本番直前になってしまった曲もあり、ちょっと不安な始まりになってしまいました。
 そういったことで、昼の部では、ところどころ危なっかしい部分が露呈してしまう状況があり、これについては残念な気分でしたし、今後に向けて反省をしなければいけないでしょう。
 ですから、このところのライブでは、実に積極的に参加してくれるようになったファンのみんなの熱さに大いに助けられて、何とか昼の部をやり切ったようにも感じました。

 それで、昼の部終了後に、気になった部分をスタッフとともに検討して、変更を加えたのが夜の部となりました。
 こちらも、ぶっつけ本番的な要素はありましたが、それでも、流れがずいぶん良くなり、集中も高まって、みんなが納得できるものになったと思っています。もちろん、これを最初からお見せ出来ていれば最高だったのですが、それでも、何とかより良いものを作ろうとした前向きの姿勢は、けいこさんを始め我々全員に息づいていたことはお伝えしておこうと思います。

 さて、で、そのセットリストです。

 昼の部: Overture/ A Day〜m1.In The Stars〜2.愛を聞かせて 3.a sonnet〜4.ペルシャン・ブルー 5.幸せの昼下がり〜6.ワインナイト〜7.Dear Summer Time 8.きよしこの夜(Silent Night) 9.もろびとこぞりて(Joy To The World) 10.夏草の道〜11.モナムール 12.Loving You En1.心の扉〜2.この夜に En3.Imagine 4.Merry X'mas with You

 夜の部: Overture/ A Day〜m1.Feeling Blue〜2.愛を聞かせて 3.幸せの昼下がり〜4.モナムール〜5.夏草の道 6.a sonnet〜7.ペルシャン・ブルー 8.きよしこの夜(Silent Night) 9.もろびとこぞりて(Joy To The World) 10.Dear Summer Time〜11.ワインナイト 12.ビューティフル・デイズ En1.心の扉〜2.ほほにキスして 3.Too Far Away En4.Imagine〜5.Merry X'mas with You

 ここでは、夜の部にそって書いて行きます。

 オーバーチュアとして使われたのはけいこさんの1stアルバムの1曲目である、佐藤準さん作曲のインスト"A Day"、今聴いてもなかなかカッコいいです。それに、これから「水越けいこ」がスタートするって気持ちが十分伝わってくるのでした。

 m1.Feeling Blue
e0093608_10325790.jpg ここは「Lady」の曲順通りに"Feeling Blue"となりました。ファンの方々にとっては、ごくごく自然な流れと言えるでしょう。我々にとってもそうです。アルバムの曲順というのは、どなたにも最も慣れ親しんだ流れなので、全く抵抗なく入っていけるのでした。
 ファーストを代表する曲で、竜真知子&水越けいこコンビによる完成度の高さが光ります。佐藤準さんのアレンジはどこかしらにロックぽさが感じられるので、そういう部分を拾いだして強調したくなります。なので、ライブの方がブルージーな印象がするかもしれません。
e0093608_1149691.jpg 昼の部では、"In The Stars"でしたが、これはこれで、なかなかシブい始まりでした。それにしても、やっぱり変な曲ですね。でも、けいこさんにはピタっと似合うわけで、90年代特有のアンニュイさと、音数の少ないザックリ感が面白いのでした。

 m2.愛を聞かせて
e0093608_22414119.jpg そういった意味では、94年の「The Sketch of a Woman」も、同傾向のサウンドを持ったアルバムと言えるでしょう。その中で、シンプルなボサノバ・ビートにのせて、コード使いが凝っている"愛を聞かせて"はシブいけど、演奏しているとなかなか楽しい楽曲です。スルメみたいに、やればやるほど味が出るって感じで、好きです。

 m3.幸せな昼下がり
e0093608_2253452.jpg 1980年の「Love Time」は個人的に"踊り子"と"移る季節(とき)に"がお気に入りなのですが、この2曲にはさまれた"幸せな昼下がり"は今までノーマークでした。ですから、今回初めて演奏しました。曲自体はとっても愛らしいカップルの幸せなひと時の話で、あったかい気分になるのですが、船山基紀さんのアレンジによる間奏に罠が一杯で、演奏している方はなかなかリラックスできません、まったく。
 なので、そのかわりと言っては変ですが、妖しげなイントロとエンディングのフレーズをちょっとフレンチ・ポップスやピンクパンサーっぽいイメージで強調しちゃいました。エンディングはフェイド・アウトとリットまでしてしまいましたよ。

 m4.モナムール〜5.夏草の道
e0093608_2310161.jpge0093608_23125888.jpg 続いて、小島良喜さんアレンジによる「変な曲」シリーズ。これは、前の"幸せな昼下がり"のエンディングのおどけた感じを受けての流れとしました。正直言えば、個人的には80年代後半の音楽は、自分がやってきたことも含めて、今聴くと「?」という部分が随所に聴かれます。たぶん、「今だったら、こうはならなかった」と、たくさんの制作者が思っているのではないかと、勝手に想像します。それは、アレンジがどうのと言うのではなく、あの時代、あの空気感、シンセとエフェクトを多用したサウンド、マシン的なビート感、それらが全て、今聴くと、ちょっと困ってしまう。
 ただ、元の曲自体は好きです。特に"モナムール"はすごく魅力的ですし、"夏草の道"もよりシンプルなロック・チューンとして、もっと生かしたいなと感じています。今回はまだ、ちゃんとした意図を持った形には仕上げられませんでしたが、楽曲はライブでも映えるものなので、今後への宿題としたいと思います。

 m6.a sonnet〜7.ペルシャン・ブルー
 ただし、同じ「Proportion」収録ながら、この"a sonnet"には、文句の付けようがありません。逆にライブでは完全に再現できないもどかしさを感じました。もし機会があれば、ストリングスやハープなどの室内楽的な方向性でまとめて、よりナチュラルな世界を表現してみたいです。

e0093608_23502384.jpg 続けた私のアレンジによる"ペルシャン・ブルー"が打ち込みのオケを使ったのは、対比させる意味合いではありませんでしたが、"a sonnet"で打ち込みを積極的に使ってみても良かったかもしれません。
 私は97年の"Above"で、初めてけいこさんのアルバム・アレンジを担当させてもらったので、この辺りの楽曲にはいろいろ思い入れも深いですし、アルバム全体も結構気に入っています。

 ところで、昼の部では、m3から5のセクションと、m6から7のセクションが逆になっていましたし、"モナムール""夏草"ではなく、"ワインナイト""Dear Summer Time"でした。

 m8.きよしこの夜〜9.もろびとこぞりて
 クリスマスにちなんで、クリスマス・ソングをやったのですが、今回は思いっきり原点に戻った感じでしたねぇ。私はけいこさんのように、教会の日曜学校での経験はなく、この手の曲を子供の頃に歌ったことがないので、日本語でキチっとやるのは、なかなか楽しかったです。"もろびとこぞりて"はけいこさんのハモ・パートの方が大変でしたね。我々男性陣はウィーン少年合唱団のイメージ(?)で、精一杯「けがれの無い心」を思い浮かべて歌いました。

 m10.Dear Summer Time〜11.ワインナイト
e0093608_1125865.jpge0093608_11154334.jpg ライブ後半は、8ビートを強調した2曲で。"Dear Summer Time"はTotoとのコラボでおなじみの「I'm Fine」から、"ワインナイト"は85年の「Actress」から。
 どちらもファンの一人として、好きなアルバム2枚です。共に、リラックスして聴いていられるのが良いのです。特に「Actress」はもっと高く評価してよいのではと思います。いい意味での「ゲセワさ」があります。それがプロの仕事の証明でもあると思います。

 m12.Beautiful Days
e0093608_0273037.jpge0093608_2253452.jpg 本編最後にやった"Beautiful Days"はかなり久しぶりにやったのですが、今回、その良さを再認識させられましたし、一番感動しました。素晴らしい曲だと思います。もっと何度も登場しても良かったと思ったほどです。
 昼でやった"Loving You "も同傾向の作品で、こちらもエンディングに相応しい内容でした。なので、ここでの選曲はどちらもしっかりとした意図を感じて、やっている方も気持ちがよかったですし、とても満足感がありました。

 En1.心の扉〜2.ほほにキスして〜3.Too Far Away
 アンコールに応えて、今回はちょっとヒネリ技(?)、ヒット曲"ほほキス"のB面をやるというアイデアは面白かったのですが、やっぱりA面もやらなきゃ収まらない。というわけで、こういう形に。定番・鉄板の"Too Far Away"は夜のみで、昼は「Above」から"この夜に"でした。

 En4.Imagine〜5.Merry X'mas With You
 ダブル・アンコールに応えて、まずはけいこさんが弾き語りで、ジョン・レノンの"Imagine"をさりげなく歌いはじめました。私と田口くんは最初参加しない予定でしたが、何となく加わってみたら、そういうことになりました。結果、じょじょに盛り上がる感じで良かったようです。

 そして、今回のためにけいこさんが書き下ろした、出来立てホヤホヤの新曲"Merry X'mas With You"が大ラス、覚えやすいメロディのサビを会場の皆さんと繰り返して、楽しくエンディングとさせてもらいました。

 というわけで、今年最後の水越けいこさんのライブも無事に終えることができました。2011年も冬・春・秋、そしてクリスマスと、ずいぶん勢力的にライブをやってきましたし、レコーディングも始まりました。3月の大震災があったものの、けいこさんとしてはよく頑張った一年ではなかったかと思いますし、私自身もバックをずっと担当させてもらって、大いに刺激を受けた一年でした。
 また、ファンの皆さんとも、より身近になれた気がしますし、一体感のある楽しい時間を何度も共有できるようになってきたと思っています。
 今年一年のたくさんの応援に深く深く感謝したいと思います。本当にありがとうございました。そして、来年もまた。
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by harukko45 | 2011-12-24 00:40 | 音楽の仕事

 去る17日と19日に大橋純子さんのクリスマス・ディナーショウがあり、バックを担当すべく、千葉と船堀の2カ所に行ってきました。メンバーは、ドラムスに植村くん、ギターに土屋さん、そして私の3人。ベースのいない変則スタイルだったので、私は左手でシンセ・ベースを補うことにしました。まぁ、そのようにしなくても、ショウをやることは可能だったでしょうが、さりげない形にとどめながらも、やはり低音をしっかり出しておいた方が、バンドのおさまりは良いはずと考えて、トライしてみました。
 リハーサルの段階で、ジュンコさんをはじめ、メンバーからも好評だったので、今回はこの形で演奏することになったのでした。個人的には、なかなかリスキーな部分もありましたが、それなりの準備をすれば、ちゃんと対処できると思い、あえて挑戦した次第です。
 もちろん、本当のベーシストのようにはいきませんが、他のメンバーが少しでも通常に近い形でのプレイが出来るようにサポートすることはできたように思っています。

 千葉ミラマーレ(17日/昼夜2回)とタウンホール船堀(19日)のセット・リスト:
 m1.星に願いを(When You Wish Upon A Star)2.たそがれマイラブ 3.大人の恋をしましょう 4.時代 5.季節の中で 6.地上の星 7.シルエット・ロマンス 8.愛は時を越えて En1.White Christmas 2.You've Got A Friend

 さて、肝心の内容の方ですが、バンドの編成が小さいのと、クリスマス向けのディナーショウということもあり、リズムを強調した楽曲は控えられました。その分、じっくりとバラード中心にジュンコさんのボーカルを楽しんでもらうということですが、その意図は十分に達成できたと思います。

 当日録音したプレイバックを聴くと、全体のサウンドに統一感があり、すっきりして落ち着いたムードで、個人的にも好感の持てるものに仕上がっていました。これは、とてもうれしかったことです。
 これは、オープニングにやった"星に願いを(When You Wish Upon A Star)"が、その後の流れにもいい影響を与えていたからではないか、と思っています。
 誰もが、どこかで聞いた事のある、あまりにも有名なアメリカのスタンダードである"星に願いを"は、それこそあまりにもたくさんのカヴァーを生んでいますが、ミュージカル風、ジャズ風、どんな形でやろうとも、元の楽曲が偉大なので、それなり成立してしまうでしょう。
 ただ、そのアプローチの仕方で、歌い手側のセンスが問われることになります。

e0093608_1613430.jpg 今回、ジュンコさんが選んだのは、リンダ・ロンシュタットが80年代に作ったスタンダード集「For Sentimental Reasons」に収録されていたバージョン。私は、これを資料としてもらった時点では、誰が歌っているのかわかりませんでした。が、メロディをほとんど崩さずに、きちっと、そしてゆったりした歌い方が、実に自然で好ましかった。それに、バックのアレンジのシンプルでありながら、気の利いた配慮と工夫に唸ってしまいました。
 それも当然で、アレンジ担当のネルソン・リドルはナット・キング・コール、フランク・シナトラをはじめとするビッグ・ネーム・シンガー達の名編曲で知られる巨匠ですから。おっと、TVの「バットマン」の音楽もね。

e0093608_16133276.jpg 私は、ウエストコースト・ロックの歌姫だったリンダ・ロンシュタットがかなり好きで、アルバムも何枚か持っていたし、来日時にはコンサートにも行ったのですが、その彼女が、1983年にいきなりネルソン・リドルのアレンジで、スタンダード集「What's New」をリリースした時は、かなり驚きました。でも、この「What's New」は良かった。当時MTVで流れていたビデオも良かった。だから、最初の困惑もすぐに消えたのです。

e0093608_16151142.jpg このアルバムはトリプル・プラチナの大ヒットとなり、その後の若手ロック・ポップ系シンガー達のスタンダード・アルバム・リリースへの先鞭をつけたことになったかと。で、ものすごく売れたから、続編「Lush Life」が出るのはわかるとして、実は3作目まで出てるとは知らなかった。正直、当時はニューウェイブ全盛の時で、スタンダード集をじっくり楽しむなんていう心の余裕はなかったのでした。

 また、ネルソン・リドル氏は、85年にリンダとのコラボ3作目「For Sentimental Reasons」制作中に亡くなられたので、彼の最後のアレンジメンツ3曲は彼自身の指揮ではなく録音され、翌86年にリリースされたのです。これが彼の遺作であったのでした。そういったことも知らずに、このアルバムをずっと無視していたことが、今は恥ずかしいです。

 そして、今回初めて聴き、全2作と比較して、このラスト・アルバムこそがリンダ&リドルのベストではないかと思う今日この頃でありますなぁ。リンダの歌の素直な美しさ、リドルのパーフェクトなアレンジ、そしてジョージ・マッセンバーグのレコーディングとミックスが最高です。すべてひっくるめて「音が良い」のでした。

 ですから、ここから選曲してきたジュンコさんのセンスの良さが光るのでありますよ、ウム。

e0093608_16372538.jpge0093608_16392537.jpge0093608_16393428.jpg さて、ちなみに、ロック/ポップ系でのリンダ・ロンシュタット作品の中で、私のお気に入りも紹介しておくと、まずは(左から)1974年の「Heart Like A Wheel」1975年の「Prisoner In Disguise」、1976年の「Hasten Down The Wind」が未だに飽きません。この頃はカントリー色もまだ濃かったし、それが新鮮でした。「Hasten Down The Wind」ではカーラ・ボノフの曲が3曲あって、これがまた何ともしびれる。

e0093608_16394067.jpg で、1980年の「Mad Love」は、いきなりパンク/ニューウェイブ路線で、ハード・ロック的でもあったのだが、これがスカっときまっていて、当時はかなりハマったし、いわゆる「ウェストコースト・ロック」のイメージに反抗している感じでカッコよかった。
 それに、エルビス・コステロの曲を積極的に(「Living In The USA」でも1曲、ここでは3曲も)取り上げているのも実に興味深かった。この時期、ジェームス・テイラーらとともに来日して、ジョイント・コンサートがあり、喜々として観に行った。

e0093608_16394756.jpg ネルソン・リドル3部作後では、1989年の「Cry Like a Rainstorm - Howl Like the Wind」ですな。ここでもジョージ・マッセンバーグの音が素晴らしいし、ジミー・ウェッブの4曲をはじめとする佳曲がならび、アーロン・ネヴィルとブライアン・ウィルソンのゲスト参加等も最高なのです。ジョージ・ルーカスのスカイウォーカー・ランチで録られたオーケストラが何とも豪華。
 これぞ、アメリカン・メインストリームの傑作でしょう。


 さてさて、相変わらず脱線の極致ですが、それほど、今回の"星に願いを"は我々に良い効果を与えてくれたのでした。"たそがれマイラブ"からのオリジナル曲、カヴァー曲も、その影響下で一つの流れとしてまとまりました。

 とは言え、"地上の星"や"アイトキ"では、バンドが3人しかいなくても、燃えるものがありますなぁ。これは止めようがない。そして、大ラスの"You've Got A Friend"。一応、我々3人のステージ前の合い言葉は「いい気になって、楽しくなりすぎるな!」だったのですが、やはり、演奏する楽しさと興奮を抑えられない部分はどうしてもありました。ただ、それも良しです。

 個人的には、無事に3回のステージが終わって、本当に心からうれしく思いました。やはり、シンセベースとキーボードを両方弾くことを決めたからには、それなりの成果を上げたかったからだと思います。もちろん、この形が今後のサウンドではありません。ちゃんとベーシストを入れて、少なくとも4リズム以上でのバッキングこそが、大橋純子さんの音楽への敬意だと信じていますから。

 というわけで、今年のジュンコさん単独でのライブは終了。後は25日の松崎しげるさんとのジョイント・ショウを残すのみとなりました。
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by harukko45 | 2011-12-23 17:25 | 音楽の仕事

詳細(5)からの続き。

 ジョン・レノン・スーパーライヴ2011を振り返るコーナーの最終回。なのに、紹介しなければならないアーティストが3人も残ってしまった。この尻すぼみ的展開に深く反省する次第です。ここでは、奥田民生さんとのセッションを中心に書かせてもらい、吉井和哉さんとオノ・ヨーコさんに関しては短くふれ、次の機会にあらためて書きたいと思う。

 奥田民生さんを迎えて

 2011年のトリビュート・バンドにはキーボードに現・奥田民生バンドの斉藤有太くんが加わったので、民生バンドの経験者(ドラムスの古田たかし&ギターの長田進)が3人揃った。というわけだから、奥田さんにとっては、ほぼホームって感じだったかも。とは言え、「ひねった」選曲は相変わらず。かなりのビートルズ者であっても、思わず唸ってしまうような内容だった。

e0093608_17223692.jpg 特に目立つのは、今回のセット・リストの中で唯一、ジョージ・ハリスンの曲を選んだのは彼だけだったということ。2011年はジョージの没後10年でもあり、ビートルズのアルバムのように2曲ぐらいはあるのではと予想したし、他の出演者による"While My Guitar Gently Weeps"も候補に上がっていたのだが、残念ながら次回以降に持ち越しとなった。
 で、「ひねり」の奥田さんによるジョージ曲は、"Savoy Truffle"。くー、やられた。"While My Guitar..."と同じ「ホワイト・アルバム」に収録されているが、知名度ではかなり負けている。が、曲の中味で比べれば、"Savoy"はアルバムのベスト・チューンに選ばれてもおかしくない傑作だと思う。

e0093608_2274443.jpg この曲の歌詞は、エリック・クラプトンの甘いもの中毒をからかっているもので、ジョージの家にきたクラプトンは虫歯なのに、マッキントッシュ社のアソート・チョコレート「グッドニューズ」を食べまくっていた、というエピソードが元になっているとのこと。だが、クラプトンのチョコ食いは、たぶんドラッグのせいもあるんじゃないかな。

 そして歌詞は、その「グッドニューズ」のフタに書かれているチョコの名前を書き並べて作られた。「クリーム・タンジェリンにモンテリマ...、パイナップル・ハートを添えたジンジャー・スリング...コーヒー・デザート、そう、"グッド・ニューズ"だよ」で、トドメに「でもサヴォイ・トラッフルを食べたら、君は歯をすべて引き抜かなきゃならなくなっちゃうぜ」と、グサッ。
 ブリッジでは「You know that what you eat you are.(食べ物は人を表すのさ)」なんて言われてしまうクラプトンをからかいながら、ついでにホワイト・アルバム・セッションでポールから「何回もやり直しさせられたこと」への皮肉を込めて「Obla-Di-Bla-Da」と書き加える周到さ。これはチョコレート効果なのか、ジョージのインスピレーションはどんどん膨らんでいったようだ。

 おおっ!「グッド・ニューズ」のフタには確かに11種類のチョコの絵と名前が書いてある。Creme Tangerine and Montelimart あります、あります。Ginger Sling、Coffee Dessertも確認、そして、ちゃんとあったぞ!Savoy Truffle!

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 ジョークと皮肉のオンパレードみたいな歌詞だけど、サウンドの方は冗談抜きで最高にかっこ良く仕上がった。まずは、一番印象的なのが、クリス・トーマスのアレンジによるバリトン2本、テナー4本のサックス・アンサンブル、これにディストーションをかませて、ザクザクガツガツとチョコを食わせてる。ジョージがミュージシャン達に、「君たちのすばらしいサウンドに手を加えてすまない。でも、これが僕のやりたいことなんだ。」と、謝ったというから面白い。でも、素晴らしい効果となったことは間違いない。
 それと、ポールの大活躍ぶりに圧倒される。いつもの以上にスピーカーから飛び出しそうなベース・プレイはもちろん、ツボを心得たフィル・インをするウーリツァー(これについては、クリス・トーマス説、ジョージ・マーティン説もあるが、私はポール説に1票)に、随所でのボーカル・ハモと非の打ち所がない。何と言っても「But you'll have to have them all pulled out after the Savoy truffle」の部分はビューティフル。内容がシュールだから、そのギャップがクール(なんじゃ?)
 
 我々のリハでは、演奏をやり終わるたびに「カッケー!」と誰かしら声に出して、もう1回やるって感じ。バンド的には文句なし、今回のライブでのNo.1はこれでキマリ!この曲はある意味、70年代っぽいサウンドを先取りしてる感じもする。けっこうファンキーなのだ。

 もう1曲は、正真正銘ジョン・レノンの曲で"I'm Only Sleeping"。テープ・スピードの操作や、逆回転によるギター・ソロの効果もあり、歌詞の内容通り、実に気怠い感じになっている曲。確かに奥田さんのボーカルには合っていたと思うが、私には手強かった。レコーディングでは6時間もかかったという逆回転ソロを長田くんにトライしてもらったが、なかなか難しかったし、ポール&ジョージのコーラスの妖しい感じも難しかった。「Revolver」は全体にEQやエフェクトなどもかなり凝っているので、もし、次やる時があったら、このアルバムの曲への対策を練っておいた方がいいと痛感した。

 さて、この後、オノ・ヨーコさんを迎えての"Rising"では、本番前のリハの時から、ピリっと張りつめた空気があり、ヨーコさんの「震災」「原発事故」「福島」へのなみなみならぬ思いが感じられた。本番ではその思いを共有できるように、神経を集中させて必死についていった。
 本編ラストの吉井和哉さんは、全曲日本語歌詞による3曲を、"Yer Blues""Jealous Guy""Mother"を熱唱したが、つねに魂を持ってかれそうになる吉井さんのオーラを感じて、我々バンドは夢中になって演奏するのみ。彼の強いカリスマ性は、まさにスーパーライヴのトリをつとめるにふさわしいものだった。
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by harukko45 | 2011-12-20 18:27 | 音楽の仕事

詳細(4)からの続き。

 斉藤和義さんを迎えて。

 昨年、斉藤和義さんの活躍ぶりはすごかった。震災直後における、政府と電力会社を批判した"ずっとウソだった"の発表とUstreamでのライブは、かなりセンセーショナルだったし、一方で年末にかけては、人気TVドラマの主題歌が大ヒットしていた。そして、スーパーライヴ2011では、3年ぶりにトリビュート・バンドとのコラボとなり、こちらのモチベーションは大いに跳ね上がった。

 で、彼の1曲目、来た!来た!来た!"Rain"だ! 
 
e0093608_7354952.jpg これぞサイケ時代の金字塔の一つであると同時に、「シングル・カットしたものはアルバムに入れない」という方針の犠牲となった曲でもある。だから"Rain"は、ビートルズ史上一番レアな名曲だったのだ。うーん、力が入るわい。
 私にとっては、どこからどのように聴いても、どれだけ考えても、アルバム「リボルバー」よりシングル「ペーパーバック・ライター/ レイン」の方が価値が高い。それは、「『サージェント・ペーパーズ』にストロベリー・フィールズとペニー・レインを入れときゃ良かったのに!」という気持ちと同じ。まぁ、今は自分でアルバムを編集すれば良いわけだが、それはともかく、このような作品は1曲で10曲以上の内容を持っているということ。

e0093608_7375123.jpg そういう「レインの発見者達」の熱い気持ちを見事に表現したのが、トッド・ラングレンだ。彼は76年のアルバム「Faithful」で、恐ろしいほどの執着ぶりを見せるカヴァー・ヴァージョンを作った。実は、世間で言われるほど完コピではないのだが、肝となる所はしっかり押さえているし、オリジナル以上に迫力を感じさせる部分もあって、カッコイイことこの上ない。そして何より、ビートルズへの深い敬意のほどに、ものすごく感動する。天才トッドがここまでやるなんて、「レインは、何てすげぇ曲なんだ!」と思わずにはいられない。

 私は、2003年に奥田民生さんのバックでも"Rain"をやったのだが、その時はもう一つ掘り下げることができなかった。だが、時間の経過でこちらの準備も整い、今回はより踏み込んだ意識で曲にのぞめたように思う。それに、斉藤さんの少しダルな歌い回しがハマってたし、エンディングで彼の過激なギターソロも加えて、ライブらしい内容になったのは良かったと思っている。でも、もっとやりたいし、何回でも演奏したい。

e0093608_7382228.jpg 2曲目は、一転してシンプルなロックンロール、タイトルもそのままの"Rock And Roll Music"で、まさにノリ一発勝負となった。基本的には延々と繰り返しなので、途中にソロをはさんで変化をつけたりしたが、そんなことよりも、曲にモノごっついインパクトを与えたのは、斉藤さんが書いた日本語詞だった。
 これは単なる和訳ではない創作で、その精神は「キヨシロー的」。2コーラス目以降で彼は「安全と言いながら〜放射能をまき散らし〜汚染水を垂れ流しやがって〜」とシャウト、正確には覚えていないし、書かれたペーパーもないが、とにかく、"ずっとウソだった"を彷彿とさせる、いや、それを上回る覚悟と気迫を武道館のステージで見せつけたのだ。こっちだってシビレたし、燃えないはずがないだろう。ロックの本質をいきなり思い出させた斉藤和義、すごい。

 
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by harukko45 | 2011-12-19 07:40 | 音楽の仕事

詳細(3)からの続き。

 BONNIE PINKさんを迎えて。

e0093608_2511253.jpg BONNIEさんとやった2曲は、共にビートルズ1965年の名曲。ビートルズには傑作がズラっと並ぶが、その中で「最高」の文字が上につけられる作品も、かなりの数になる。ただし、人によって選曲への意見は異なるだろう。だが、"Help!"に「最高」の爵位を与えることに異議を唱える人がいるか?少なくともビートルズ愛好者で"Help!"にいちゃもんをつける奴は絶対にいないはずだ!いたとしても、「私は信じない!」とジョン風に切り返してやろう。

 聴いている分には常に最高で常に感嘆するこの曲だが、演奏している時は楽しい気分を満喫できる反面、高いプレッシャーも感じる。だから、バンドとしてはかなり練習した。特にコーラス部分。冒頭の「ヘルプ!」3連発から「ヘーエルプ!」のファルセットまで、ビートルズの完璧さには平伏すのみで、最初から難度が高い。
 Aメロだって油断ならない。ジョンのリードに絡み合うカウンターメロを歌うポールとジョージ、この付かず離れず、最後には合体するアレンジはニクい。
 サビでは「Help me get my feet back on the ground」で、ジョンの上にふたりの声が乗って、3声ハモがいきなり構築され、続く「Won't you please, please help me」ではジョンとポールのみで頂点に達して一気に下降する。ここは一番の難所だが、同時に最高のエクスタシーを感じる瞬間でもある。
 そして、エンディングのA6の和音を形成するまでの「Help!」(ポール&ジョージ)「me」(ジョン)の掛け合いから、3人による「me-e-woo」への流れは、「優雅」でさえある。

 ギターも不思議だ。イントロとサビの最後で印象的なジョージのアルペジオは、うまく弾けずに間違えたようにも思えるが、やっぱりこれしかない。
 A7のコード内での「ミ・ソ・ソ・シ」「ミ♭・ファ#・ソ・シ」「レ・ファ・ソ・シ」「ド#・ミ・ソ・シ」のうち、最初の「ミ・ソ・ソ・シ」が一瞬構える感じになって、たぶん普通なら(ピアノ的には)「ミ・ファ#・ソ・シ」、もしくは「ド#・ミ・ソ・シ」としてしまいそうだ。しかし、演奏的にはなめらかではあっても、音楽的には普通でしかなく、ジョージの方が断然カッコイイのだった。

 コーラス部分を最初は私と押葉くんだけで歌っていたが、BONNIEさん用にキーが上がり、どうしてもパワー不足を感じたため、ピアノの斉藤有太くんとギターの土屋さんにも加わってもらい、うまく厚みが出すことが出来た。ギターに関しては、名手・土屋さんにお任せである。

 BONNIE PINKさんのボーカルは、いつもハマリ具合がいい。それは彼女の声質の良さが大きいのだが、実は歌い回しやニュアンスの付け方にも細かい工夫が成されていて、毎回感心する。それでいて、素直で自然体な印象も受けるのだった。

 もう1曲、同じくアルバム「Help!」に収録されている"You've Got To Hide You Love Away"も楽しかった。わずか2分12秒の曲だが、他に何かを足して長くする気分にはならなかった。オリジナルの長さで演奏するだけで、十分に満足できたからだ。とは言え、私のパートはある意味、曲のカラーリングが役割なので、少しだけ60年代風のエッセンスをふりかける感じにした。BONNIEさんには、スウィンギング・ロンドンが似合うと思う。

 それと、ここでも彼女に感心させられたのが、サビでの「Hey!」のキメっぷりの良さだ。正直こういうのって、ジョン以外ではイマイチになる典型だし、この曲の最大の魅力は、あの部分でのジョンの歌い方にあるわけで、たぶんポールが歌ってもダメだったと思う。なのに、BONNIEさんは実に軽妙にこなして、とっても素敵だった。ギターの長田くんが「最後のサビだけ繰り返したら?」と提案したので、それをすぐに頂いた。もちろん、気持ちよかったからだ。

 ちなみに、BONNIEさんとのリハーサルは2時間の予定だったのだが、実際には18分で終了してしまい、スーパーライヴ史上の最短記録となった。これは、我々がこの2曲をよく練習してあったことと、彼女とのマッチングの良さとの相乗効果だと言えるでしょうな、フムフム。

 さて、本番ではこの後、我々トリビュート・バンドも引っ込み、3組のパフォーマンスとなった。

 まずは、曽我部恵一さんが、復活したバンド、サニーデイ・サービスとして登場。3ピースによる骨太なロックで"The Ballad of John and Yoko"と日本語による"Imagine"を聴かせてくれた。曽我部さんはいつもながらの熱唱ぶりだった。

 続いて、今回の目玉コーナーとも言えた桑田圭祐さんの登場。自らのバンドを率いて、ビートルズの名曲8曲を「完コピ」で再現してくれた。歌・演奏のみならず、当時のギター、服装、髪型にまでこだわってのパフォーマンスは、まさに完璧だった。
 曲は、"She Loves You""You Can't Do That""All I've Got To Do""I Should Have Known Better""I'm A Looser""It's Only Love""I Feel Fine""Slow Down"。楽屋のモニター見ながら、こっちも盛り上がったよ。

 3組目は、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND。独自の世界観とサウンドを持つ彼らが、新鮮な"Across The Universe"と"(Just Like) Starting Over"を聴かせてくれた。なかなか充実したプレイぶりは、前2組に負けていなかったし、後半を引き継ぐ我々にも大いに刺激になった。

詳細(5)へ。
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by harukko45 | 2011-12-18 00:16 | 音楽の仕事

詳細(2)の続き。
 スタジオでのリハーサルでは、この後デリコとのコラボになったので、その流れで進めてみる。
 
 では、LOVE PSYCHEDELICOと共に。

 デリコとはここ毎年一緒なので、すっかりリラックスしたムード。それに今回は、前にもやったことのある"Watching The Wheels"が1曲目だったので、作って行くと言うよりも、思い出すという感じでリハが始まった。
 KUMIさんのボーカルは相変わらずいい。まずは彼女のアコギと歌のみでスタートし、じょじょに楽器が増えて行く感じだ。全体的には彼らの好きなナッシュビル風の方向性で、特にドラムのパターンが南部っぽい。

e0093608_18523460.jpg デリコが"Watching The Wheels"を、自分達流にアレンジするヒントになったのは、「Double Fantasy」のテイクではなく、レコーディング前のデモ・ヴァージョンだ。これは、1998年にリリースされた4枚組ボックス「John Lennon Anthology」に収録されていて、アコギ一本に歌のみなんだけど、「もうこれでいいじゃん」って気になるほどの一品。なので、デリコがこっちの方を選ぶということも、とてもよく理解できるのだ。

e0093608_16414958.jpge0093608_14432974.jpg もちろん、「Double Fantasy」の公式バージョンも良い出来で、このアルバムのベスト・トラックだと思うし、2010年の「Stripped Down」による装飾を排したリミックス版にもしびれて、一時はかなり聴きこんだ。
 ただ、今は「Anthology」バージョンが好きだ。「Acoustic」にも収録されたが、リマスターの影響か、前者の方がナチュラルな音質で、ボーカルも引き立っている。

 この「Anthology」は、未発表集なのでボツを集めたものとの誤解を受けやすいが、ビートルズの場合と同様に、公式盤を聴きこんできた人にはかなり面白く感じる内容ではないだろうか。
 例えば、デリコが2曲目にやった"Nobody Told Me"もその一例で、これはジョンの死後にリリースされた「Milk And Honey」が初出で、全米5位のヒットにもなったのだが、正直、個人的にはあまりピンと来なかった。
 だが、「Anthology」のバージョンを参考にしてくれ、と言うNAOKIくんからの指令があり、早速聴いてみたら、何と、こっちの方が全然良いじゃないか!そもそも、ジョンが俄然ノッテル、カウントからして気合いが入ってる。アレンジ自体はさほどの変化はないのだが、何かが違う。あっちにはなくて、こっちにあるもの、それはジョンの魂か?それとも、最初の方のテイクではジョンがノリノリだったが、バンドがこなれて来た頃には飽きていたか。演奏の出来はいいから、後でボーカルをやり直せばいいと思ったのかもしれない。しかし、その時間はなかった。

 とにかく、前曲に引き続き、この曲でも別テイクの良さを見抜いたデリコのセンスに脱帽。本番ではバンドの2人に、NAOKIくんによるトリプル・ギターが豪華だったし、ザックリしたロック・サウンドが心地よかった。

e0093608_2315664.jpg おっと、私はけっして「Milk And Honey」を評価していないのではない。逆に「Double Fantasy」よりも好きなのだ。ジョンのロックへの帰還宣言のように始まるし、後半の"(Forgive Me) My Little Flower Princess"と"Grow Old With Me"も素敵だ。「Anthology」には、名作"Glow Old With Me"の別バージョン(ジョージ・マーティンによるオーケストラ・ダビング入り)が入っていて、これまた話が尽きない。

詳細(4)へ続く。
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by harukko45 | 2011-12-17 00:15 | 音楽の仕事

詳細(1)からの続き。 

 ROYさんを迎えて。

 THE BAWDIESのボーカリストで、バンドではベースも弾くROYくんは、実はかなりのR&B好きとのこと。なので、選ばれた2曲は共に60年代の有名なソウル・ナンバーだった。彼らのプロデューサーであるLOVE PSYCHEDELICOのNAOKIくんも加わってくれることになったので、リハーサルでの仕切りも彼に任せ、何回かセッションしながら、あれやこれやとヘッドアレンジしていく流れになった。

e0093608_0505987.jpg "Twist And Shout"は、「必殺極めつけ」「泣く子も黙る」ジョンの偉大なるシャウトによる大傑作。ビートルズは、アイズレー・ブラザーズのバージョンを元にしているが、出来上がった音は完全に自分達のカラーに塗り替えられていて、実に見事。初期ビートルズのシグネチャー・チューンとも言えるほどの強いインパクトを残した作品だ。
 ただ、アイズレーのバージョンもかなり良く、ROYくんのイメージはこちらのニュアンスの方が近いようだった。で、プロデューサーNAOKI氏は、ボーカルはソウルフルな路線で行くように指示し、バンドは「いつものように」、つまりビートルズ風に演奏することを求めた。と言うことは結局、「まぁとにかくやってみよう」ってことね。

 歌い始めるとROYくんは、声を随所に歪ませながら、地声でシャウトする正統派ソウルマンで、最近のR&B系ボーカルにありがちな裏声使いではなかった。だから、「オーティス・レディング meets ザ・ビートルズ」的なムードになり、バンド・メンバー達もみんな「Yeah!」連発で大いに盛り上がってしまった。
 とは言え、ただのセッションで終わるのは安易すぎるので、NAOKIくんはギターソロなどをはさんだり、アクセントを強調したりと、細かい配慮も忘れなかった。私は押葉くんとのポール&ジョージの「Woo~!」再現に喜々としており、回りで何が起ころうとも常に「サイコーです!」だったけど。

 ちなみに、"Twist And Shout"のオリジナルはThe Top Notesによる61年のシングルで、プロデュースはフィル・スペクター。聴くと分かるが、イメージは全然違ってやったら軽いドゥーワップ、コード進行も別物。作曲したバート・バーンズ(aka/バート・ラッセル)は、この出来に納得せず、翌年アイズレー・ブラザーズを自らプロデュースしてリリース、スマッシュ・ヒットとなった。バート・バーンズがここで再アレンジしなければ、ビートルズも取り上げなかったろう。そして、ビートルズがカヴァーすることで、この曲は完全に歴史に残ったわけ。

 YouTubeで聴き比べ。The Top Notes (1961)、これはこれで楽しいけどね。映像はTop Notesとは関係なし。


 The Beatles (1963)、王室主催の演奏会でのライブ。ジョンのmc「次の曲では皆さんも協力してください。安い席の人は拍手を、高い席の人は宝石をジャラジャラ鳴らしてください」がクール。歌・演奏ともレコーディングとかわらぬハイ・レベル。この時の3曲は「Anthology 1」で聴ける。


e0093608_2131431.jpg 次にやった"Stand By Me"は、昨年、デリコと演奏したし、過去のスーパーライヴでも何回か取り上げられている。それだけこの曲が、ジョン・レノンの代表曲の一つとして認知されているということ。個人的にはベン・E・キングのオリジナルをすっと追い越すし、アルバム「Rock 'n' Roll」は大好きなので、全曲オリジナルよりも良い、実は全てジョンが書いたんじゃないの、って言いたいぐらいだ。

 なんてことを思っていながら、今回の我々はイントロから1コーラスまでは、かなりベン・E・キング風だったっけ、おいおい。でも、ベースとボーカルだけで始める感じは、ROYくんにはピッタリだったのです。その後、間奏はスライドありブルージィなギターソロありで、じょじょにロック色を強めていった。
 ROYくんは最後まで堂々としたシャウトぶりで、こちらもすっかり楽しませてもらいました。
 
 この際だからチョット悪のりして、こっちも聴き比べ。Ben E.King (1961) 、歌素晴らしいです。間奏のストリングスは激甘すぎるなぁ。


 John Lennon (1975)、ビデオ・クリップ。間奏で「ハロー、ジュリアン!」。エンディングで「ハロー、イングランドのみんな、元気かい?ニューヨークからこの歌を贈るよ」。「僕のそばにいて」がいちいちキュンと来るんだなぁ。


詳細(3)
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by harukko45 | 2011-12-16 17:07 | 音楽の仕事

 2011年の3月9日。私は、記念すべき10回目のジョン・レノン・スーパーライヴを成功させたスタッフ、バンドメンバー達とともに、渋谷の料理店でそのお祝いと慰労をかねた会に参加していた。10回という大きな区切りで、このイベントの終結も少し頭をよぎったが、「Starting Over/新たなるスタートを!」という力強い宣言がなされたことで、その日の宴会がいかに盛り上がったかは言うまでもない。我々現場の人間は、いたってシンプルなのだ。

 その2日後、3月11日。東日本大震災は起こった。あの時「安全な側」にいた私が感じたのは、異様な興奮・高揚感、その後の絶望と怒り、そして現在も残る、空しさと後ろめたさ。
 私は、震災後に繰り広げられた「日本はひとつ」的キャンペーンに強い違和感と危うさを感じた。少なくとも私は「安全な側」にいた「後ろめたさ」を克服できてないし、今はその事をちゃんと見つめるべきだと考えている。そして、そんな中でジョン・レノン・スーパーライヴに参加する意義も、あらためて考える必要があった。正直、なかなか答えは見つからなかったし、今もまだあやふやだ。しかし、このイベントが10年以上続けてきたのは「世界の子どもたちに学校を贈ろう!」であり、その一貫した姿勢は全くブレていない。おそらく、そこにこそ意味があるのかもしれない。
 
 11月9日、再び渋谷にて。私はスーパーライヴ2011の打ち合わせに参加した。その日は、特にオープニングでの演出について、多くの時間が割かれた。具体的に提案されたのは以下の事。
 
 ・1曲目は"Gimmie Some Truth"
 ・ジョンがレコーディングで残したヴォーカル・トラックと生演奏を同期させる
 ・レコーディング時に撮影された彼の映像を、3D効果を使ってステージ上に映し出す
 ・それ以外の部分に津波の被害や福島原発等の写真を挟み込む
 ・吉井和哉・奥田民生・斉藤和義の3人に共演してもらう

 実際に私が引き受ける作業は、ジョンのトラックに合わせて、テンポ・キープ用にクリックを打ち込むのと、イントロとエンディングを加えて、曲全体の尺を決めることだった。

e0093608_1652627.jpg 1971年のアルバム「Imagine」で、B面トップに置かれた"Gimmie Some Truth"は、"Imagine"で歌われるユートピアとは対局の、ウソに満ちた現実の世界を強烈に揶揄している曲だ。
 ここでのジョンのボーカルは、過激な言葉をまくしたて、聴き手を煽動するかのように押しまくっているが、それがまさに「ロックそのもの」であり、この曲の最大の魅力であると言っていい。
 また、連ねられた言葉には政治家や知識人達をあげつらうものが多く、それら一つ一つを探るように歌詞を読んでいくのも面白い。
 
 Aメロでは、「型にはまって、先の見えない、心の狭い偽善者達の言う事」や「ノイローゼで、精神病で、頭の固い政治家達の書いている事」、「口を閉ざして、人を見下した態度の、(ママに可愛がられてる)狂信的排他主義者達のしている事」や「分裂症で、利己主義で、偏執狂で、特別扱い気取りの奴らが見せるさま」に、彼はうんざりして、死ぬほど気分が悪いのだ。だから、「欲しいのは真実、真実をよこせ」と訴える。

 Bメロに出てくる「tricky dicky」は、リチャード・ニクソンのこと、「mother hubbard」は、たぶんマザーグースのハバードおばさんで、童謡を逆手にとって「赤ん坊扱い」にかけているのだろう。「dope」はヤクだが、「rope」は逮捕の象徴か、それとも首つりか。
 ここのくだり、「髪の短い、臆病者、腹黒くて狡猾な(ニクソン)野郎なんかが、俺を赤ん坊のように丸め込めるわけがない、たったポケット一杯の希望を餌にして(それは、ドープを買う金、ロープを買う金)」の英語歌詞は、ノリの良さ、韻のふみ具合、暗喩的な言葉遣いが実に巧みで、静かに感動する。

 ここからは私の勝手な推測だが、ヨーコさんがこの曲を選んだのは、大震災における、特に原発問題での日本政府の情報隠しと無能ぶりへの怒り、そして、多くの日本人が原発への安全神話を信じ込み、ずっと思考停止になっていたこと、もっと広げて、この震災の少し前、世界では原子力こそがクリーンエネルギーとして認知されていたことへの反省と警告を促す必要を強く感じたからではないだろうか。それが、70年代に二人で展開した反戦運動への記憶とリンクした。
 Aメロでコテンパンに罵られている連中は、原子力村の政治家・官僚・学者達を容易に重ね合わせることが出来るだろうし、同時に、ずっと無口で自分のことしか考えてこなかった一般民衆達も同類だったと知ることになる。

 12月8日、武道館本番。ジョンのボーカルとの共演、映像とのリンクは万事うまくいった。ジョージ・ハリソンが弾いていたスライド・ソロは奥田さんにお願いし、後半は「All I want is the truth, Just gimmie some truth」のコーラスを繰り返す中、斉藤さんにもギター・ソロをお願いした。

e0093608_17223692.jpg 会場からの拍手の中、続けて演奏したのは、"Everybody's Got Something To Hide Except Me And Monkey"。これは、2008年の時にもオープニングでやった曲。その時は「Come on, take it easy」というマハリシの口癖を思いっきり体現しようとした感じ。だが、今回はかなりヘビーな心境からの2曲目となった。

 あえて言えば、どちらも「真実を隠している」というメッセージ・ソングになるかもしれないが、それよりも重視したいのは、ともにジョンお得意の言葉遊びであり、彼のジョーク・センスは常に冴えまくっていて、特にこの曲では、ノリのいいセンテンスをバァーっと繰り出したあげく、シメに「僕とヨーコ以外は、みんな隠し事をしているぜ」とキメるなんて、これぞ「ロックンロール!」。
 ジョンはこの曲を書く前、風刺画にヨーコがジョンの背中にしがみついている猿として描かれた事に腹を立てていたということだが、それを逆手に取って、まんまと聴き手を惑わしてしまう天才ぶりに降参じゃないか。もちろん、ビートルズによるテイクも最高。カヴァーする我々はワクワクしっぱなしだ。そう、「言いたいことは言ってしまえ」「やりたいことはやってしまえ」だ。少し希望が見えるようだった。

詳細(2)へ続く。
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by harukko45 | 2011-12-15 19:16 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる