三種の神器

 8月16日、ジュンコさんと我々バンドの面々は倉敷のチボリ公園にて野外コンサートをおこなった。この日、我々にはある3つの出来事が起きていた。その3つの出来事がうまく絡み合ったことが、この夜のコンサートを大盛況・大成功に導く大きな要因であったと思っている。

 まず1つ目。ジュンコさんの「晴れ女伝説」がまたまた実証されたこと。だいたいである、この日の天気予報は、私が家を出る時点(朝8時頃)で岡山方面の降水確率70%だ。それに、関東地方はとんでもないドシャ降りの状態で、ただでさえ楽器やらエフェクターやらで大荷物なのに、傘だコートだと余計なものがふえることになって、そりゃそりゃ新幹線に乗るまでの大変だった事と言ったら、もう!

 ところが、のぞみ号車内でスヤスヤ眠っているうちに、大阪すぎてみりゃ何だ? 晴れてんじゃん! 実はいくらジュンコさんが自他ともに認める「晴れ女」だとはいえ、今回はダメだろうと思ってたのだが、いやいや、疑っていた私が悪うございました。見事に夏日よりになっておりました。しかしまあ、ジュンコさんの仕事で、雨だったのってどのくらい前だろうか? 雨の日のライブを思い出す方がやっかいなくらい、その直前まで悪天候でも、いざ本番になると晴れてしまう、この神通力。これは、もう信じる以外ありません。おそれいりました。

 2つ目は、オッサン。つまりギターの土屋潔さんに今回のライブはお願いしたのである。オッサンは今回のニューアルバムにも参加してもらっているし、また後半のロックものは得意中の得意分野。当然、超ご機嫌なパフォーマンスで、私達に新鮮な刺激を与えてくれたのはもちろんのこと、全体を通して、バンドのサウンドにおける中音域部分を、どっしりしたプレイで支えてくれるので、私などその上に乗っかって行けば良く、えらく楽な気分でプレイすることが出来たのだった。

 ちなみにこの日のセット・リストは‘シンプル・ラブ’で始まり、‘たそがれマイラブ’‘どうして心は’‘Something Blue’‘二人のアフターヌーン’‘シルエット・ロマンス’が、前半のシックなアコースティック・コーナー。そして、後半‘Baby It's You’‘Honky Tonk Women’‘サファリ・ナイト’でぶっちぎり、最後に‘微笑むための勇気’でしめるという構成。

 兎にも角にも、野外の開放的な雰囲気が、我々をリラックスした気持ちにさせてくれ、今年やっと来た夏らしい暑さが、パフォーマンスの熱さにかわり、こういったやり慣れたレパートリーもいつもと違うおもしろさを感じて、とても新鮮だった。ここでも、前半の「しっとり感」から後半の急激な「爆発」というもくろみは見事に成功し、他のイベントとの関係上、当初はないはずだったアンコールに応えて、いつものように‘My Love’を演奏したのである。もうこのころには全員、大汗だくでグショグショだったが、熱烈な拍手に導かれ、最後の曲も心からプレイを楽しませてもらった。

 さて、3つ目の出来事は、マネージャーであるオザワ嬢の復帰である。実は彼女、クラブ・サーキット・ツアー後に、声帯ポリープの手術を受けるため、しばらく入院していた。そして、数日前に退院し、この日現場復帰となった。が、まだ喋ることは医師から止められているので、沈黙状態。会話は彼女がメモに書いて受け応える、という「筆談」でおこなわれた。

 例えば・・・

「どのくらいのポリープができてたの?」
「8mmほど。」
「8mmっても見当つかないな。」
「普通は2mmぐらい。」
「へえ、じゃあそうとうデカイじゃん。それだけ育てちゃったってこと?」
「2年かけて。」
「ゲェ!そんな長い間、ほっといたの?」
「入院するためのまとまった休みがとれなくて。でも、もう限界になって手術に踏みきったんです。」
「そう、いろいろ忙しかったからね。よくがんばりました。オジサンがほめて上げます。」
「ほめていただくよりも、ケーキご馳走してください。入院中10日間、食べられませんでしたから。」
「あちゃ、オザワも花より団子ってわけ。わかりましたよ。バンマスとして普段のお礼に、そのぐらいはご馳走します。」
「ぜひ、2点食いでお願いします。約束しましたよ。こうしてメモに残しましたから、証拠もあります。」

 という具合に、文字通り「黙々」と仕事をこなし、「筆々」(何て読む? ヒツヒツ? フデフデ?)と会話していたオザワだったが、あることがその後彼女に降りかかる。それは本番中、ジュンコさんの目に虫が入るというアクシデントが起きた。なんとか取り除こうとするが、なかなかうまくいかない。とその時、ステージ袖では、舞台監督のハヤシカワさんがスタッフに「目薬持ってこい!」と怒鳴っていた。

 が、その言葉を聞くや否や、彼女は思わず「(ジュンコさんは)コンタクトだからダメです!」と叫んでしまったのだ……、おお神様! そしてジュンコさんは無事自力で問題を解決し、オザワはその一言で、この虫事件がさらに悪化することを見事に防いだわけだが、いやはや、ジュンコさんの危機に対して、咄嗟に声が出てしまったとは、そのマネージャー魂、なかなかあっぱれでありました。ははぁっ。
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by harukko45 | 2003-08-19 00:00 | 音楽の仕事

 インターネットの懸賞当たらないから……と、めげずにコツコツと出してみるものである。な、なんと、レアル・マドリードの来日親善試合のチケットが当たった。それも前の日に。つまり試合は8月5日、その前日に連絡があり当選だと言う。しかし、ここで問題が起きる。普通、この手のチケットは「ペアでご招待!」─これが基本でしょう。なのにである、今回は当選者各自一枚ずつしか割り当てられないとのこと。ま、「レアル」を見たいヤツはたくさんいて、プラチナ・チケットなのだからやむを得ないか。

 そこで、我が夫婦間での「誰が国立(競技場)に行くのか?」という激論、腹のさぐり合い、押してもダメなら引いてみな‥を夜を徹しておこなった結論として、申込者は妻ではあっても、サッカーに関しては一日の長がある私が、順当に(!)チケットを譲り受けることになった。だが、この問題ではその後、家を出発する直前までこぜりあいを繰り返したが、結局私がほぼ持ち逃げするかのように、レアル観戦権を「GETS」したのであった。

 しかし、これは結果として正解だった。なぜならこの夜東京は大雨になり、私はカッパを着ていたものの、あまりの雨にほとんど役に立たず、下着までずぶぬれになってしまったし、おまけに当選チケットは自由席で、もうすでに朝からならんでいた人達によって完全にうまっており、よってずっと立って観ていたわけで、この状況での一人観戦は私で良かったのである。ウム。

 そんな中、入った10番ゲート(前半レアルのゴールやや右裏)のあたりの手すり付近に陣取った(実際はそこから動きようがないほど満杯だった)のだが、これが意外や意外、なかなか見通しが良く、ゲーム全体や各選手の動きもしっかり見ることができたのは、大いにラッキーだった。

 さて、試合の方は前半30分ごろまでは、何も起こらなかった。レアルはいつもスロースターターだし、今回はいわゆるアジア巡業ツアーの一環だから、「ま、こんなもんかな〜。」って感じ。ジダンは欠場なので、スターがいすぎていつも問題になるフォーメーションは、フィーゴが中央上がり目、ベッカムが右サイド、ソラリが左、ラウールとポルティージョの2トップという攻撃陣。これが、まったく機能しない。

 大好きなフィーゴもラウールもツアー10日目の疲労がたまってるのか身体が重そうで、シーズン中ならまずあり得ないような凡ミスが何回かあって、お互いの連携もいまいち、攻撃の形がぜんぜん作れない。ベッカムはマンチェスター時代なら指定席だった右サイドに張り付いていたが、なんともしっくりきてない雰囲気で、いつもの正確なゴール前へのピンポイント・クロスが上がるわけでなく、逆に緩慢な守備で何回かFC東京にチャンスを与えてしまっていた。

 この時、私はレアルのゴール側にいるわけで、歳はとっても「顔」で守れるイエロがいなくなって去年より益々軽くなった気のする、レアル・ディフェンダー陣の危ないシーンを見せられ続けて、少々不安になっていた。(これは何か対処しないと、シーズンに入っても危ないかもしれないぞ。)もし、東京の方に決定力のあるフォワードがいたら、先制点を取られてもおかしくない展開だった。

 ところが30分過ぎ、監督の指示なのか、プレイヤー達自身の判断なのか、それまで中央からボールをうまくさばけずにいたフィーゴが右サイドに動き出し、それによってそのカバーにベッカムが中央、それもボランチのマケレレと並ぶようなポジションをとるようになって、俄然ゲームが「らしく」なってきた。フィーゴはさっきまでの重さが嘘のように右に左に動き出し、相手ディフェンダーを揺さぶり始め、前へのドリブルを試みるようになり、ベッカムはそのテクニックを生かした正確なパスを供給するようになったのだ。それによって、攻撃陣に活発な動きがうまれ、パス・スピードも一気に加速した。さあ、そうやって華麗なるレアル・ショウはやっと始まったのだった。

 ワンタッチ、ツータッチによる早いパス回し─それも狭い空間をいとも容易く、大きく開いた逆サイドへの速くて正確なロング・パス、それを受ける側も高度な技術に裏打ちされた素晴らしいトラップから、ゴールに向かってのドリブル‥等々、まったく目の離せない展開になり、ベッカム→フィーゴ→ポルティージョとダイレクトにつながったボールは、シュートが惜しくもキーパー正面。ベッカム(あれフィーゴだったかも)からの左へのスルー・パスにソラリがディフェンダーを見事にかわしてペナルティ・エリア近くに突進、たまらず東京ディフェンダーは後からチャージして当然ファウル。フリーキックがレアルに与えられ、「ベッカム・オン・ステージ」。

 ベッカムのマンチェスター時代やイングランド代表の試合を見ている人なら誰でも、彼のフリーキックがいかに素晴らしいかをよく知っているのだが、やはり生で決められるとえらく興奮するものだ。ゴール右隅でキーパーがまったく届かない場所に見事に決めるあたり、さすがにスーパースター! ベッカムがキックする瞬間の観客席からのフラッシュも凄かったな〜。スタジアム全体が一瞬光って、すごい演出効果だったよ。

 前半終了間際の2点目はもっと凄かった。ボールはフィーゴ→ラウール→フィーゴ→ポルティージョという流れなのだが、この時はレアル全体が連動して攻撃にかかっていて、その前にいく迫力が凄いのである。ウワォーッ!って感じがピッチから伝わってくるのよ! でも実際にはクールにきめてるに違いないんだが……。だから、せっかく素晴らしいお膳立てをもらったポルティージョのシュートがまたまた(!)キーパーにはじかれても、ちゃんと左からソラリがつめていてゴーーーーーーーール! う〜ん、まだまだ若いね、ポルティージョ君。

 この場所がなかなかの特等席であることを確信した私は、ハーフタイムの間もずぶ濡れになりながらも、他の人に取られないように、そこを動かず後半開始を待った。するとどうだ! 近くでロナウド、ロベルト・カルロスらがアップしてるじゃないの。それに気づいた他の観客達もにわかにざわつき始めた。後半は出てくるよね、こいつら。

 その期待通り、後半開始早々、ポルティージョ、ラウール・ブラボOUT、ロナウド、ロベ・カルIN。これで、ジダンをのぞいてほぼベスト・メンバーとなった「エル・ブランコ」のレベルはかなりの高さに引き上げられた。特にロナウド! 凄すぎる! オーラが違う。彼にボールが来ると会場中が一瞬息を呑むように静寂になる。そして華麗なステップで、ディフェンダーをかわし始めると、何かが起こるようなマジックを感じるのだ。それが、結果ゴールにならなくても、その数秒間我々は至福の時を過ごせるのだ。

 音楽の世界でも一流プレイヤーであればあるほど、「スローハンド」(そのプレイがゆったりと見える)であると言われるが、サッカーにおいても同じこと。ロナウド時間は他のプレイヤーのより遅い。ほんとうはものすごく速い動きなのに、ゆったり、そして優雅に見えるわけで、ほんの一瞬が永遠につながっていくのだ。これが真の芸術性である。天才のみが表現できることなのだ。でも、これでも彼にとっては今の体調はまだまだ調整不足の状態だ。絶好調の彼を見たらどうなってしまうのか。

 ハイ・レベルのサッカーを展開するレアルは私をおおいに魅了したが、残念ながらその後の追加得点がなかった。この日不調のラウールは決定的なチャンスを何回か逃した。「スペインの至宝」そして若きキャプテン、ラウールの本来のプレイはこんなもんじゃない。ただ、よく見ていくと彼が自身不調でありながらも、まわりの選手をよく気遣い、チーム全体をもり立てていることがわかるのだ。彼の献身的な態度は実に素晴らしいと思った。また、これも後半入ったカンビアッソとうまくバランスを取り始めたベッカム様も、守備面でもよく健闘していたし、ゲーム・メイカー、コントローラーとして実に魅力的なプレイを続けていたことも高く評価したい。このポジションは彼の今後に良い結果ももたらすに違いないと思った。

 とはいえ、得点を欲しがる多少ジリジリした時間が過ぎ、攻め疲れた「私の」フィーゴ様が75分にセラデスと交代するとその後、全体として「これでおしまい。」ムードが漂い、雨に打たれ続けた身体もすっかり冷え切ってしまっていた。まあ、このくらいでも満足しなきゃねって思い始めた、まさに80分。この日最高の瞬間、大クライマックスが訪れた! そう、ロナウドだ。ペナルティ・エリア近くの左サイドでボールを受けたロナウドはヒールで難なく─この動きはクーたまらん! もっとやって! ずーっとやってて!─ディフェンスをかわし(その時、彼のまわりには3人のディフェンダーがフニャフニャっと吸い寄せられていった。)強烈なシュート、ボールはキーパーのとどかぬ右隅のネットを揺らしゴーーーーーーーール!!!!!

 この時、ボールは私の正面から飛んでくるように見えた。ゴールが決まった時、私もその廻りの人達も歓喜の雄叫びをあげ、同時に両手を突き上げた! これで、「ザ・レアル・ショウ」は完璧になった。

 当然、満足感に満たされた私は、帰宅してもしばらくは興奮状態であったことは言うまでもない。
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by harukko45 | 2003-08-06 00:00 | スポーツ

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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