今回のセット・リストの大胆さは、後半の裏切りにある。普通はニューアルバムが抑えたアコースティック中心の仕上がりだけに、トータルとしてアンプラグド的なイメージで構成するはずだ。少しビートのきいた曲をやるにしても、落ち着いたアレンジ、パフォーマンスを試みるのが常套手段なのだが・・・

 いきなりですが、‘シルエット・ロマンス’のあと、我々はROCKする!!

 ほんとは唐突かもしれなかった。でも、そうなった。それが、ジュンコさんなのだ。けっして予定調和じゃないのだ、この人は。バラードを色っぽく歌ったその直後に、60年代後半のサイケデリック・シーンに一気にタイムスリップできるのだ。下手すればそれまでの内容を台無しにしかねないのだ。

でも、そうした。

 それが、ジュンコさんの真実であり、‘シルエット・ロマンス’とROCKは、彼女の中で常に並立している。それが、素直な気持ちであり、嘘でない本当の自分を今回全てさらけ出したのだ。

 単純に考えても、激しいビートにのってハイ・トーンを駆使するのは喉や腰に負担をかける。だからといって、前半のバラードが楽なのではない。微妙なニュアンスを表現するためのテクニックを使うのは、体力のみならず緊張感をともなって、精神的な負担が大きく、別の神経が必要なのだ。最初からどちらか一方なら、ある程度ステージにおけるコンディションの見通しがつくが、今回は途中で全てを切り替えなくてはならないのだ。それに、全く違う2つのサウンドを1つのステージにまとめ上げなければならない。このプレッシャーは、さすがのジュンコさんであっても大変なものであったことは容易に想像できた。

 がしかし、精神的にも体力的にも全力を出しきるジュンコさんは、私達バンドのみならず、お客さん達、お店の従業員・スタッフまで熱狂させたのだった。‘Baby,It's You’‘Honky Tonk Women’そして、続けざまにやった‘サファリ・ナイト’で、場内は爆発してしまった。名古屋と大阪ではたくさんの人が立ち上がって踊りはじめた。東京でも、うしろの席の人達が踊っていた。福岡では‘Honky Tonk Women’の後の‘サファリ・ナイト’の盛り上がりは尋常じゃなかった。大阪ブルーノートの女性スタッフが踊っていたのには驚いた。我々と同世代の40〜50代の人にとっては青春そのもののロック・サウンドではあるものの、ここまでみんなが歌い、手拍子し、立ち上がり、踊り出すとは思わなかった。

 ステージと客席の熱狂が相乗効果となって、素晴らしい瞬間を私達は体験できた。会場中が一つになった感動、まさにかつてのロックが持っていた「Love&Peace」がこれだったのだ! ほんとに、それぞれのステージでの体験を今思い出すだけでも、鳥肌が立つような興奮を覚える。一生の思い出となるような素晴らしい経験をさせてもらったし、私達のやり方が間違ってなかったという確信を与えてもらったのだった。

 本編の最後は‘微笑むための勇気’、すごい熱狂のあとのこの曲の持つ、なんというやさしさに満ちた広がり感だろうか。正直、演奏がどうのこうのではない。この曲、この音楽そのものだけを楽しむ、感じることのできる幸せを何と表現したらよいのか、今の私にはわからない。

 アンコール、‘シンプル・ラブ’という傑作はどんな状況でも、人に喜びや明るさを与えてくれる。こういうとき、「演奏すること」と「聴くこと」、それを「楽しむ」ことに差異がなくなる。お客さんも演奏しているし、我々も聴いて楽しんだ。

 そして、東京ではもう一曲、‘My Love’をやった。もう、何も言うことはない。
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by harukko45 | 2003-07-06 01:00 | 音楽の仕事

 7月4日、東京六本木「スイート・ベイジル139」にて、私達の「クラブ・サーキット・ツアー2003」は終了した。「え、もう終わり?」それが今の実感である。もう、すっかり気が抜けてしまった感じだ。「もっとやりたい。もっといろんな所でやりたい。もっとたくさんの人々に聴いてほしい。もっと盛り上がりたい。もっと音楽したい。このまま家に帰らなくてもいいから、もっと、もっと、もっと!」

 なんでこんな気持ちになるのか? 去年も成功だったと思うし、その前も。いや、ここ数年我々のスタンスは何も変わってはいないつもりだ。なのに、今年は特にツアーを終えることが寂しく感じられるのは、福岡・名古屋・大阪・東京それぞれのライブで体験したお客さんたちの前回・前々回を上回る熱い反応のすごさが、私を興奮させっぱなしだからなのだ。その余韻がずっと残っていて、まるで38度の熱が下がらずにいるようなのだ。(実際、風邪をひいて、こじらせてはいるが。)

 今、ジュンコさんのニューアルバム“June”を聴きながら、これを書いている。もうすでにそれぞれの曲が自分から離れ、一つ一つの音楽体として、生き生きと存在しているように感じている。自分がつくった子供達が、出来て1ヶ月でもはや独り立ちするほど成長するとは! そう、音楽とは勝手にどんどん成長するし、若くして死んでしまうこともある。モーツァルトのオペラやベートーベンのピアノ曲は200年以上も成長し続けている。また、ビートルズやブライアン・ウィルソンやボブ・ディランそしてマイルス・デイビスの音楽は、少なくとも僕の中ではますます大きくなり、心の宇宙を埋め尽くすかのようだ。

 そんな中、大橋純子さんという素晴らしい才能の力を借りていながら、私はこれまで何曲もの音楽を自らの稚拙なアレンジで犠牲にしてきたことだろうか。よく、ジュンコさんも我慢してきてくれたと思う。今、この“June”でやっと少し恩返しができたのではと思えてきた。そう、“June”の音楽は成長している。と同時に、別の思いも浮かんできた。‘二人のアフタヌーン’‘Something Blue’はバンドでライブ演奏することによって、成熟の度合いを早めた。少なくとも、大阪における2曲の内容はレコーディング・バージョンとは別の素晴らしさを表現していたと思う。‘You're So Beautiful’、実は今のライブの方が好きである。その日その日で、微妙に変化していったり、(私の演奏が)ふらふらしたり、危なっかしかったりもしたが、常に素晴らしかったジュンコさんの生き生きした感情にあふれていた。

 ‘Rainny Anniversary’は東京でのみの演奏だったせいもあり、CDにおけるオッサンのゴキゲンなパフォーマンスやリズム・トラックのグルーヴを越えることは残念ながらかなわなかった。同じく‘愛は時を越えて’も、徳武さんの素晴らしいプレイが聴けるCDバージョンは、完成度が実に高くて、私にとっても一生の記念に残るテイクであるのだが、今回のライブにおける「アイトキ」は、そういった音楽的要素をある程度犠牲にしながらも、あくまで唄中心のシンプルなバッキングを心がけた。そうすることで、明らかに歌詞が良く伝わって曲自体の良さを強調出来たし、演奏者自らが共感・感動できるレパートリーに仕上がったことは確かだと思う。(悔やまれるのは、福岡の初日一回目のステージ、私が凡ミスしてあまりうまくいかなかったこと。それを引きずってしまって、‘二人のアフタヌーン’もボロボロ。バカヤロー! 反省しろ。猛省せよ!)

 すっかり安定して風格さえ感じはじめた‘たそがれマイラブ’モカ・ジャバ・バージョンは毎回完璧! 名曲! 名演! ゴトウさんのフルート・ソロがけっこうチャレンジャーでスリリングさを醸し出した。

 また、これも東京のみの演奏だったが、アルバム“Quarter”に入っていた‘どうして心は’を今回の雰囲気に合わせて、アコーステッィク・サウンドにみんなでアレンジした。これが、ちょっとスパニッシュ、ジプシー風に仕上がって、一気にノリノリになってしまった。思いがけず大成功って感じ。タマちゃんのアコギとウエちゃんの大活躍でけっこう受けたよ! これからのセットリストにも加わりそうな曲に見事蘇ったのだった。

 そこ行くと、これも東京のみだった10CCの名曲‘I'm Not In Love’のJ・セレクション・バージョンは、もうちょっと良くできたはずだったんだが、本番では今一つ入り込めず、むずかしかった。今回のセットの中では、少し浮いていたかもしれない。その辺は、今回のツアーにおける数少ない問題点とも言える。

 前半の新曲を中心にした「シックな」コーナーのピークは‘二人のアフタヌーン’と‘シルエット・ロマンス’の来生たかお・えつこ作品となったわけだが、この構成はけっこうミエミエでわかっちゃいるけど、やっぱり良かったと思う。今まで、ひとりぼっちで22年間過ごした‘シルエット・ロマンス’が‘二人のアフタヌーン’という伴侶に巡り会えたのだ。この2曲の結婚はライブでしか実現しないのだから、こちらもおのずと気持ちが入ってしまう。しかし、さすがは来生姉弟である。最初から計画していたかのようなお似合いのカップルなのだ、この2曲! 二つが結ばれることによって、それぞれの良さがより引き立つように思えたのは私だけだろうか。

 来生さんの曲の良さは、まるで「スルメ」・・・つまり噛めば噛むほど、演奏すればするほど、味が出てくることなのだ。だから、毎日毎日好きになって、どんどん大事な大事なものになってしまう。今、私の中で‘二人のアフタヌーン’は愛おしくてたまらない存在だ。そしてこんな歳の離れた若くて美しい伴侶を得た‘シルエット・ロマンス’に猛烈に嫉妬している。
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by harukko45 | 2003-07-06 00:00 | 音楽の仕事

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