‘Ohtsubo M-7’は、プロデューサーとして売れっ子の大坪稔明氏の曲だ。はっきり言って、彼のデモは完璧なサウンドである。同業者として脱帽なのだ。彼の作品集も聴かせてもらったが、どれも完璧な仕事ぶりで、このサウンドが欲しいのであるなら、私もジュンコ・バンドもおよびでない。しかし、今回私にこの曲が回ってきた以上、なんとかこれをねじ倒さねばならない。私のハートは秘かにメラメラと燃え上がってきたわけである。

 そこで、私が浮かんだイメージは黒人アーティストの中で最も敬愛するMiles Davisだった。Milesのアルバムはほとんど持っているが、特に1969〜75年あたりのものに私は、ぞっこんなのだ。ちなみに、私がほとんどのアルバムを揃えているアーティストは、Miles Davis,Brian Wilson/The Beach Boys,Rolling Stones,Bob Dylan,Carole KingそれにBruno Walterだ。一見、脈略がなさそうに見えるが、私の中ではしっかりと「和田のお気に入り」というジャンルが確立されているのだ。文句あっか?

 話がそれた。さて、実際のレコーディングの日、ウエちゃんにはJazz用のセットを組んでもらった。また、セリセリには少ないマイクでワイルドに録ってもらうことにした。この日、幸か不幸か、ロクさんとタマちゃんが来るのが夕方だったので、ウエちゃんと私とでセッションが始まった。

 Loopのドラムとコンガに、シークエンサーによるシンベを聴きながら、私はFender Rhodesを弾き、ウエちゃんはサビから登場だ。ここから、仮想ツイン・ドラムになる。私も別パターンのRhodesをダビングして、ツイン・エレピというわけだ。いや〜、とにかくウエちゃんはめちゃくちゃカッコよかったのだ。最高に良くキレたゲバゲバぶりだった。ウエちゃんに後光がさしているようにも感じた。今回のベスト・パフォーマンス賞をさしあげましょう!私もそれにあおられて、ついついイケイケになってしまう。

 もう、この時点で80%できてしまったようなものだが、この後、タマちゃんは音数少ないがセンスのひかる効果的なバッキングをプレイし、この浮遊してて、どこかにいってしまいそうなオケを、大地にしっかりつなぎ止めるため、ロクさんのベースをいれた。後日、いくつかのシンセとゴトウさんによるソプラノ・サックスをダビングした。この曲において、ベース以外、ボーカルも含め全ての演奏は、カラーリングなのである。音楽というカンパスに楽器で色を塗っていく作業だったのだ。そのことを直感的に理解してくれたメンバー、ミキサーに感謝したい。

 また、世間が思っているイメージとは違うこういう曲に果敢に挑戦するジュンコさんの姿勢も素晴らしいし、なおかつ、ここには、女のどろどろした情念のような内容の歌詞がつき、ますますオモロイことになっていった。そして、ジュンコさんはその歌詞をあえて、いままでにない押さえたトーンで淡々と歌ったのだった。そのセンスの良さは賞賛に値するのである。

 さて、今回最後に登場するのは、崎谷健次郎氏作曲の‘Sakiya M-8’。前日、ケンさんのアレンジにより、コード進行がすっかり変えられ、オリジナルのロック風なイメージは一掃され、佐藤健氏のフレーバーひろがる世界になっていた。私は間奏のコードをいじくる程度で、ほぼそのイメージを表現する方に神経を注ぐことにした。

 本日絶好調のウエちゃんは、ハネるビートが実に気持ちよく、ロクさんはまさにいぶし銀のようなプレイを披露し、タマちゃんは渋さに溢れながら、それでいて自由奔放な色づけをしてくれた。私のフェーズをきかせたエレピも、それらをうまく包み込めたと思う。ジュンコさんもすっかりゴキゲンで、エンディングではノリノリでフェイクしまくって、我々をどんどん引っ張っていく。 なんとも楽しいセッションで終えることができたのだった。ただ、数日後のサックス・ダビングでゴトウさんは、間奏のソロで相当苦しんだ。何度も何度もテイクを重ねて仕上げたのだった。しかし、こういう葛藤しながらのプレイを録音できたことは、私にとってはある意味、喜びにも感じたのだ。別にイジメているのではない。ゴトウさんが葛藤しているのは、それだけ彼が、真剣に音楽と向き合っている証拠だからであり、本人にとっては苦々しいことも、逆に美しく思えてくるのである。こういうことは、後々素晴らしい思い出として、強く記憶に残っていくのだ。

 7月1日に、楽器関係のレコーディングは終了し、私は休みをもらい、その間、ケンさんのアレンジ・プロデュースで、ABデコーズによるコーラス・ダビングがおこなわれ、あとはトラックダウンとマスタリングを残すのみとなった。まだまだ、気の抜けない日々は続くのだ。

 ところで、このアルバムにはもう一曲収録される曲がある。佐藤健作曲、大橋純子作詞による‘風の舞う町’だ。これは、5年前のアルバム“Tokyo Daze”時にレコーディングされたものだが、当時のディレクターがシングル扱いにしたいとの希望でストックしていたのに、いつのまにかオクラになってしまったのだ。ところが、この曲はたいへん良い出来なのだ。アレンジした私もかなりテンションを上げて臨んだものだったし、その仕上がりには満足していたのだ。それを、長いこと世に出せず、実に残念な気持ちだったのだが、今回、ケンさん・ジュンコさんが改めて聞き返して、アルバムのコンセプトにあうと判断し、めでたく収録のはこびとなったのである。これには個人的に感謝感激、おおいに喜んだ次第であります。

 さあ、ファンのみなさん!あとはあなた方の出番です。8月末発売の大橋純子ニューアルバムをレコード屋さんに行って、今から予約しましょう!そして、発売日にしっかり手元にGetして、CDプレイヤーにかけなさい!最高にハッピーになること絶対です!どうぞ、よろしくね。
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by harukko45 | 2001-07-09 01:00 | 音楽の仕事

 6月19日、この日はタマちゃんのギターを中心にダビングをおこなった。なにしろ、彼は一日リズム録りに来られなかったので、その分ダビングが増えたのだ。‘Ken M-3’では2種類のバッキングを入れた。通常彼が弾いているストラトキャスターと、もう一つはSound Crewにあるセミ・アコの名器、335を弾いてもらった。アンプもVOXとMatchlessを二台並べて、いろいろ試したりして、彼もご満悦である。おかげでリラックスしたプレイをおさめることが出来た。その後、私がB-3とシンセをダビングした。

 続いて、‘Wada M-5’でWah-wahギターを、私がFender Rhodesと何種類かのシンセを入れた。さて、どんどんいくよ!次は‘I Wish’のギター・ソロであります!まあ、まあ、そんなに飛ばして、あとで録り忘れなんかないようにしましょうね。そうそう、あせってノルマを達成しようとしても、いいことありません。ちょっとcool down.しなくっちゃ。じゃあ、めしだ、めしだ!

 というわけで、いつも食事はこのビルの一階にあるレストラン「カーニバル」でとるのだが、ほとんど毎日のように通っているから、マスターにすっかり覚えられてしまいましたね〜。でも、おかげでゴハンを大盛りにしてくれたり、肉の量がだんだん増えたり、コーヒーをサービスしてもらったりと、いろいろ良くしてもらったのです。ありがとうございま〜す。お礼にジュンコさんがサイン色紙をプレゼント、早速、マスターはレジのところに飾っておりました。これからもよろしくね。

 さあ、これでパワーもついたぞ!と、タマちゃんにはカゲキなソロをお願いしましょう!その期待どおり‘I Wish’の間奏はディストーションとWah-wah全開の超オバカ・ファンク小僧のキレたソロがビシーっときまったのであった!やったね。万歳三唱。

 翌20日は、徹底的キーボード・ダビングdayとなったが、この日ジュンコさんは歌入れ前にリフレッシュしていただくため、欠席。カルメン・オザワも連日の疲労がたたってダウン。ツチダさんもいろいろ仕事をかかえて、スタジオからあちらこちらへ飛び回っていた。そして、ケンさんは、自宅で‘Sakiya M-8’のアレンジに取り組んでいた。

 今までリズムを録り終えた曲は、‘Ken M-1〜4’‘Wada M-5’‘Sakiya M-6’‘I Wish’の全7曲、そしてこの間、新たに2曲上がってきていて、そのうちの1曲が‘Sakiya M-8’というわけ。その曲はメロがとても印象的だったのだが、オリジナル・デモのムードがロックぽかったので、ケンさんが今回のアルバムのコンセプトにあうようにアレンジすることになった。

 つまり、この日は私とプロフェッサー・セリザワとふたりで寂しく作業してたわけ。ギャラリーがいないと燃えにくいのがプロというもの、その落ち込みそうなモチベーションを自ら奮い立たせて、我々はがんばったのだった。

 Oh,yeah! great! cool! fanntastic! オレッテ、ウマイ?テンサイ?サイコー?もちろんです。ヤッパナ!

 続く21日はゴトウさんのダビング。‘I Wish’のセクションとソロである。今回、ブラス・セクションは私がキーボードでトランペットやトロンボーンのパートを演奏し、ゴトウさんにサックス・パートを入れてもらうという形になった。同時に二人で演奏した曲もある。これが、なかなかいい感じになって、なんかヤミツキになりそうである。そして、アルト・サックスのソロ!とにかく、出足がかっこよくキマッテ、ごきげんなフレーズ炸裂のホットな演奏を注入することに成功した!おとといのタマちゃんのカゲキ・ギターを引き継いだゴトウさん、なかなか聴かせますよ。きっと、フェード・アウトは引っ張り気味にしたくなるだろうな。さあ、‘I Wish’はこれで、ボーカル以外のオケが完成でありました。

 さて、この後はジュンコさんが歌入れをおこなうことになっていて、私は明日のリズム録り最終日の準備のため、早退させてもらった。残る2曲、‘Ohtsubo M-7’‘Sakiya M-8’をレコーディングして今回のラインナップがここに揃うこととなるのだ。さあ、もうひとふんばり!
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by harukko45 | 2001-07-09 00:43 | 音楽の仕事

 6月17日は、‘Ken M-4’の打ち込みにほぼ費やされた。この曲は今回のラインアップの中で唯一のバラード物で、やさしいムードで仕上げたい。基本は808、909系のサウンド(Rebirth)でドラム・パターンをつくって、アコギ、エレピ、シンベなどを加えた。ただ、最初すべてシークエンサーで鳴らしてまとめたが、全体に柔らかさが少ないので、後日ドラム以外は生に差し替えた。タマちゃんのアコギはもちろん、私がシンセ・ベースとWurlitzerのエレピを弾いたわけだ。

 シンベにつかったのは、ソフト・シンセのPro 52だが、これは昔のProphet 5をシュミレートしたソフトで、なかなかのすぐれ物、お気に入りで頻繁に登場する。かつて、170万円していたハードウェアのサウンドが、2万円台でコンピューター上に再現できてしまうのだ。なんという世の中でしょう!

 ついでにWurlitzer Pianoについても話すと、Donny Hathawayの名盤「Live」で、彼が弾いているのがそれであり、こういう力強くてファンキーなものから、The Carpentersのおにいちゃんが弾くソフトなサウンドまでカバーする名器なのだ。ロック系では、Super Trampの「American Breakfast」なんかも印象的に使われていたな。みなさん、要チェック。もちろん、今回はソフトなサウンドを心がけた。

 それと、サビのところで、ケンさんのシンセ・ソロが登場する。ケンさんが自宅で弾いたMIDIデータをPro 52で鳴らしたのだが、このデータはクォンタイズがかかっておらず、全くの手弾き。エンディング間際にはそのデータがはいってなかったので、それを引き継ぐように、私が同じ音色で弾いた。よって、コンピューターを介して、私とケンさんの連弾(?)が実現したのである。

 こうやって書くと一見、順調に作業は進められたように見えるが、ところがどっこい、Pro Toolsがこのころから、頻繁にフリーズするようになったのだ。一番すごかったのは、この曲の歌入れをジュンコさんが行っているときだったそうだ。あとラストのサビを歌いきれば出来上がり、というところで、かたまってしまい、その日は作業中止。また、やはりこの曲のアコギ・ダビングでもたびたび作業中断、Wurlitzerの時もそうだった。

 エンジニアとして、ひとり責任をかぶりながら、プロフェッサー・セリザワまたの名をセリセリのスリスリは、この日を境に、ほぼ連日徹夜でOSの入れ替えや、各部分のメンテナンスを繰り返した。そのたびにしばらくは改善されたが、すぐにトラブルが復活するのだった。特にこの‘Ken M-4’を立ち上げるたびにフリーズが多くなるので、この曲が呪われているのではという噂がでる始末。ウエちゃんに至っては、ジュンコさんにMacをやさしく撫で撫ですることを勧めた。また、何か怨念がうごめいているかもしれないから、お払いをすべきとのたまわる。早稲田の理工出てるくせに、そんな神秘主義者もどきの説をマジでいうからね〜。

 ケンさんは、我々の後に登場して、夜中じゅう作業しまくる【トランスフォーマー】のせいではないかというし、だいたいこの曲をケンさんが作ったときの動機に、不純なものが含まれてたのではないか?それが、なにかの怨念をよびさましたのではという説も、まともしやかにスタジオ内をかけめぐったのだった。

 とにかく、メンテをしてはフリーズするの繰り返し、プロフェッサー・セリザワを顔は日に日にやつれて(?)いくように見えたのは錯覚だったかもしれないが、彼の努力で何とか(だましだまし)、もろもろの作業は続けられたのだった。

 ところで、セリセリも実は早稲田の出身であることが判明した。彼は法科の出で、大学ビッグバンド・サークルの名門、「ハイソ」でベースを弾いていたという。さらに、いまでもベースの仕事もしていて、8月から劇伴をやるんだって。二足のわらじを見事に、はき分けているのだ。でも、考えても見なさい、ウエちゃんにしろセリセリにしろ、せっかく早稲田卒業したのに、音楽の罠にはまっちゃってさ!オレたちと一緒に仕事してんだぜ、ヘヘヘ〜ンだ!

 話は飛びましたが、怪しげなPro Toolsをセリセリがスリスリしながら、とにかくダビングは続く。そう、予定遅れてんだから!ちょっとマクからね!みんな、気合いいれとくれ!
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by harukko45 | 2001-07-08 00:00 | 音楽の仕事

 6月14日、朝8時入りの恵比寿ウェスティン・ホテルに向かう車中、‘Sakiya M-6’の具体的なイメージがパァーッと浮かんできた。ん〜、これぞ火事場の馬鹿力、音楽の神様が降りてきたというところか?これまでこの曲をずっと避けてきたわけではなく、ケンさん、ジュンコさんともいろいろ話し合い、アイデアを出し合ったのだが、いまひとつしっくりはまらず、まとめられなかった。それが、明日のレコーディングを前にやっと前方に光りが見えてきたのだった。こういう時って、思わずニンマリした顔してんだろうな。

 ‘Sakiya M-6’は作曲家・プロデューサー、また本人もアーティストとして活躍中の崎谷健次郎氏の曲で、今回のメニューのなかでも一番キャッチーでハデさのあるメロディーを持っている。ただ、崎谷氏のデモのアレンジを踏襲するだけだと、他の曲から浮いてしまうきらいがあって、試行錯誤していたのだが、ここに来て結論!

 デモでは劇的な始まりでボーカルが朗々と歌うのだが、それをさりげなく始めて、元のクラシカルなコード進行を生かして、キーボードだけでつくる。本編のハネるビートをやめてフラットな16ビートにして、アフターの16分音符のクイを強調する。ベースのラインを印象的に(シンセ・ベースを加えたり) して、R&B系のムードを引き出す。ブラスのセクションを効果的に入れてハデさを失わないようにする。パーカッションなど鳴り物系を多用して、ガチャガチャ感を出す。間奏はアドリブ・ソロでなく、デモにあるきれいなピアノ・メロを参考にアンサンブルで聴かせよう。エンディングをファンキーなリズムにブラスのリフが印象的に絡むようにする。

 さて、ウェスティンでのリハーサルを終え、一回目のショウは15時ごろ無事終了した。各自、レコーディングや早朝のリハの疲れにもめげず、よく集中したプレイぶりだった。そして、この後二回目のショウまで5時間ある。みんな、思い思い時間をつぶさなくてはならないが、私は部屋をとって、アレンジ作業をすることにした。家からMacとキーボードをホテルに持ち込んでいたのだ。今思えば、この5時間は大事だった。なぜなら、上記のアレンジメントのアイデアをコンピューター上におおまかに打ち込んで、基本的な方向性をデモとして、ケンさん・ジュンコさんに聴かせることができたからだ。

 二回目のショウも無事終了後、お二人にこのデモを聴いてもらい、OKを頂いたので、まずは一安心。遅い夕食をとって、さあ、一気にダビング関係のものも仕上げて、明日はバァーッと録ってやると思っていたのだが、突然、この曲の間奏が著しく格好悪いのではという妄想にかられてしまった。それは悪魔の囁き、イタズラだったのか、一度そう思い始めるとますます深みにはまって、この構成では曲があっという間に終わってしまうのではないか?とか、間奏を盛り上げないと台無しになるのではないか?などなどマイナス思考に一直線に突き進んでしまった。そして、間奏を決められず、時間はどんどん経っていった。

 すっかり夜が明けて、あせりまくっていた私はタバコを一服して考えた。こりゃ、ハマってるのか?まさにハマっちまったに違いない。こういうときは、原点に戻るしかない。そして、最初に考えた間奏に戻って、なにも問題ないことにやっと気がついた。結局、この数時間は全くの無駄だった。ま、よくあることではあるが、こんな時になるなんて!おかげで、一流ホテルの部屋も満喫する余裕もなく、スタジオに向かった。予定したことまでアレンジを仕上げられなかったが、ベーシック・トラックはすぐに録れると思っていた。

 しかし、実際に録音が始まると、もともと私のミスなのだが、打ち込みのパーカッションとクリックとのズレがやけに気になり始めたり、譜面も今までの曲に比べて、指定したものが多く(つまり、譜面が真っ黒)、もろもろ細かいことが気になって、こちらも少々意地になってしまい、何度も何度もみんなに演奏させることになった。メンバーも前日の疲れを引きずっていて、ガンバッテいたが、気持ちと身体がだんだん離れていくような気配だった。バッチリ、ハマってることにやっと気づいた我々は、前のテイクを聴き直し、決して悪くないことを確認したのだった。

 この日の物語はこれで終わらず、とどめはロクさんにおこった。彼は、我々の中で最もスタジオ・ミュージシャンとしてのキャリアが長く、ミスもほとんどないのだが、突然、サビ前のシカケが弾けなくなってしまったのだ。OKのベーシック・テイクの前までは、問題なくプレイしていたのにである。そこの部分だけ(1小節)取り直しをしたのだが、しばらくはちゃんと弾けないままだった。ケンさんが、ロクさんのそばにいって、彼がハマっていることを気づかせるまで、それは続いた。

 長い一日はそうして終わった。いろいろあったが、何とか‘Sakiya M-6’のベーシックはできた。改めて、みんなで聴くと、なかなかいい演奏してるテイクじゃないか!そこへ、ライヴの帰りにスタジオに顔出したゴトウさんが、「あれ、楽しそうな曲、演奏してたんだ。」との感想をもらす。ふ〜、そうだね、何だかんだ言っても、けっこう楽しかったかもね。
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by harukko45 | 2001-07-07 00:00 | 音楽の仕事

 6月8日は、‘Ken M-2’を録った。この曲は打ち込みでやるので、本日のミュージシャンは私一人である。ひ〜、さみしい〜。いやいや、バンドに負けずに打ち込みでもかっこいいのをつくらなきゃ!がんばろう。

 とはいうものの、打ち込みものは下準備が大事、スタジオに入る前の作業がいろいろあるのよ。例によって、ケンさんよりメールで送られてきたMIDIデータをインポートして、音色を差し替えたり、基本のドラム・パターンにいくつかLoopを加えて、変化をつくったりといった作業は前日、レコーディングが終わって帰宅してから、シコシコやっているのである。

 しかし、実際スタジオで鳴らしてみると、細かいタイミングや音色が気になり始めるわけで、その辺のわりとネチネチしたチェックの繰り返しがしばらく続くのだ。

 だから、リズム・トラックのめどがつくのに、夕方までかかってしまった(ちなみにスタートはたいがい午後1時)。その後、アコギ、ピアノ、ストリングス等のダビング(この曲はすべて打ち込み、All Computer Playing)を終えると、やっとこの曲の全容が現れてきた。むむっ、これ、いい曲じゃないか!なんか、スパニッシュなムードがするメロディーに、ケンさんの打ったクラップがフラメンコのパターンのように聞こえてくるし、複雑に組み合わせたLoopが面白い展開を作り出していて、なかなかスリリングなのだ。しかし、全体は4分にも満たないシンプルな出来で、実に小気味よくまとまってるじゃない!

 私、この曲割りとお気に入りになってしまいました、ハイ。10時台のドラマの主題歌にピッタリと思うけどな〜。ん〜、営業サイドのがんばりに期待しよう。

 この日も【トランスフォーマー】の恐怖を感じながら、12時前に作業を終えた。この後、私は別件のリハとライヴ・ハウスの仕事が続き、その間、ジュンコさんは‘Ken M-1’の歌入れをおこなった。彼女ののびやかで、透き通った声が気持ちいい仕上がりだ。

 でもって、6月13日がバンドによるリズム録りの二日目になる。やる曲は、‘Wada M-5’と‘Ken M-3’の2曲である。この日はギターのタマちゃんがNGなので、3人で演奏することとなったが、普段のフォーマットとは違って、これはこれで新鮮な気分でなかなか楽しめたのも事実だ。

 最初にやり始めた‘Wada M-5’は自分で作ってるから、仕上がりの最終形は頭の中に出来上がっているのだが、そういうものをぶち壊すようなハプニングにも期待したくなるのが悪い性格。最初のうち、私はエレピを弾いてベーシックにしようと思っていたが、なんか盛り上がらなくて、Hohner Clavinetに変更した。それに、リズム隊の二人にはよりルーズなアプローチをお願いすることにした。ワシントン系のGO-GOのようなビートでまとめたかったからだ。理解と反応の早い二人はすぐに野太くファンキーな演奏を始めてくれた。私は私で、クラビを弾くのが楽しくて楽しくて、イヤ〜、結局今回、他にも2曲クラビを入れてしまいましたエ〜、ア〜おもろかった!

 ‘Wada M-5’はちょっとおバカでファンキーなビートをベースに上物は怪しげでゆらゆらしたシンセを重ねて、そのギャップがうまく出ればいいなと思っていたが、その思惑通りになりそうだ。後日、セクシーな歌詞がついて、ますます雰囲気が出た。

 調子づいた我々は、‘Ken M-3’の録音へとなだれ込んだ。これは3連ノリでブルース・ムード抜群の曲で、ステージで演奏してとても映えそうな感じだ。だから、サックス・ソロをフューチャーしたり、ちょっとした仕掛けを多くしたり、エンディングもつけて盛り上がっていこう。最初、ウエちゃんがまたまたケンさんのデモのドラム・パターンを意識しすぎて、硬い感じだったが、突然、舶来ドラマーに変身(?)して、かっこいいグルーヴを出し始めた。ロクさんなんか、「Yeah!Yeah!」言いっぱなしである。なんだ、3人でもゴキゲンじゃん!と、そんなところにゴトウさん登場!なんとGood Timing!

 早速、僕がクラビ、ダビングしますから一緒にサックス・ソロやっちゃいましょうよ!てなわけで、時間は無駄なく有効に使うこと。なんだか、やけにテキパキした仕事ぶりのようだけど、この時のゴトウさんのソロ!いいんですよ。よく歌ってて印象的なんだな。それと、私のクラビ、これもバッチリでした。ですから、この日はなかなか良い成果があがった一日でありました。

 ただ、明日(6月14日)のことを考えると暗くなってしまう。なぜかって?明日は恵比寿のウェスティン・ホテルで大橋純子ディナー・ショーがあるのです。いや、ただ演奏するだけならいいのです。会場にはいるのが朝早いのです。午前中にサウンド・チェックとリハをするのです。おまけに、1回目と2回目のショウの間に5時間の待ち時間があるのです。ア〜、ついに私にとって、最大の試練の日がやってきてしまいました。この過密スケジュールの中、なんとかアレンジとレコーディングをやりくりしてきましたが、‘Sakiya M-6’はまだ手つかずでした。リズム録りは翌15日です。ということは、もう時間がありません。どうしよう。
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by harukko45 | 2001-07-05 00:00 | 音楽の仕事

 6月7日、この日は‘Ken M-1’のダビングをおこなった。まずは、アコースティック・ピアノとハモンド・オルガンを入れた。実はこの時、スタジオは他のタレントさんのリハーサルが夜まで入っていたので、実際の楽器は使えなかった。そこでとりあえず、後で差し替えることも頭に入れつつ、私のMacの中のプラグイン・シンセ(VST Instrument)でやることにしたが、これがどっこい、なかなかいけちゃうのよ!ピアノはUnity DS-1、オルガンはNative InstrumentのB4(!)を使ったが、サウンド面、演奏時のニュアンス面ともストレスを感じることはなかった。私はすでに、いくつかのソフト・シンセを他のレコーディングでは使ってきていたが、今回のジュンコさんのサウンドにフィットするかは、正直少し不安を感じていた。しかし、そんなことは単なる取り越し苦労であったことがすぐに判明したのだった。これ以後、シンセに関しては、ほとんどソフト・シンセを使用したことをお伝えしておきます。

 私の目指すシステムは、Macintoshの前にマスター・キーボード一台で完結させることなのだが、ここにきて、それがじょじょに現実のものとなりつつあるわけで、テクノロジーの飛躍的進歩には多いに感謝している次第だ。とはいうものの、オルガンに関しては、後日Hammond B-3に差し替えた。B-3+レスリー・スピーカーのサウンドの魅力は、誰しも抗しがたいわけで、やはり、今回Sound Crewでやっている利点(ヴィンテージ楽器が弾ける)をここでも生かさせてもらったわけだ。

 さて、その後タマちゃんのアコースティック・ギターをダビングした。これで、だいぶfolkyな雰囲気が出てきたし、ピアノとのマッチングもいい。そして、ウエちゃんがハイハットをサビに加えることで、よりグルービーな演奏になったところで、本日のメイン・イベント、ロクさんの登場である。なんと、ロクさんは今日ずっと隣のスタジオでリハをしていたのだ。だから、リハーサル終了後、こちらに来てもらうことになっていたわけで、実に効率の良いことでしょう!

 ま、とにかく‘Ken M-1’の前半を彩る4小節間のベース・ソロはたった1テイクで終わってしまった。時間にして10秒足らず。ロクさんは素晴らしい集中力とセンスで、まるで一筆書きのように仕上げてしまった。みんな、拍手喝采、大絶賛の嵐であります。彼のような一流ミュージシャンなら当たり前の朝飯前といったところだろうが、にしてもイイ演奏するね〜、このオヤジ!

 最後にこの曲のエンディングにタマちゃんの渋めのソロを入れて、この日の作業は終わった。なぜなら、午前0時を過ぎると【トランスフォーマー】が来るからだ。とにかく、彼らが来る前に我々は去らねばならないのだ。ああ〜恐ろしきかな、【トランスフォーマー】!ハードロックの仮面を被った地獄からの使者!その名は【トランスフォーマー】、お願いだからYamahaの10Mとばさないでね。Pro Toolsにもやさしくしてあげてね。彼らのご機嫌が悪くならないように私達はスタジオ内をきれいにして、早々に引き上げることにした。明日、レコーディングが無事におこなわれるかどうかは神のみぞ知る、アーメン。
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by harukko45 | 2001-07-04 00:00 | 音楽の仕事

 6月5日、ニューアルバム用のリズム録りの第一日目。場所はSound Crew Studioだ。いつも、ライヴ・ツアーの楽器レンタル、メンテナンス、輸送等でお世話になっているところだが、数年前から、リハーサルとレコーディング用のStudioをつくり、Pro Toolsを導入して、本格的なハードディスク・レコーディングができるようになっているのである。Pro Tools周りのハードウェアも充実していて申し分ないのだが、我らミュージシャンにとってたまらないのは、Sound Crewが所有する楽器、アンプ、エフェクターなどが、自由に借りられることだ!例えば、キーボードにおいては、Fender Rhodes Piano,Wurlitzer Piano,Hohner Clavinet D6,Hammond B-3 Organなどなどのヴィンテージ楽器が、常にいい状態で使うことができるというわけだ。今回、この恩恵受けた我々ジュンコ・バンドはこの後、数々の奇跡と巡り会うのであった!?

 さて、レコーディングの初日はもろもろのセット・アップやドラムの音決めなどで時間をかけるから、実際のリズム録りが始まったのは15時ごろからだった。あ、そうそう、今回のレコーディングとミックスをお願いするのは、セリザワ君だ。彼はSound Crew所属のエンジニアで、まだ20代ではあるが、もうすでにPro Toolsの達人である。彼の師匠は通称《博士》と呼ばれている北城氏であるから、セリザワ君は《プロフェッサー》とでもいいますか。ま、とにかくこの後、プロフェッサー・セリザワとPro Toolsとの間に繰り広げられる数々のドラマを、この時点ではわかりようもないのだった。

 ‘Ken M-1’を1,2回やってみて、キーとテンポはかたまったが、まだいまひとつグルーヴが決まらない感じだった。ケンさんのデモの打ち込みドラム・パターンを生で再現しようとしすぎて、ノリが堅くなっているからだ。そこで、デモにある印象的なハイハット・パターンはダビングにすることにして、ウエちゃんには自然にノッていけるように叩いてもらうことになった。それと、ドラムの音味がいまいっぽなので、もう少し煮詰めていった。しばらく、プロフェッサー・セリザワとウエちゃんが試行錯誤したのち、ご機嫌なサウンドになってきたぞ!これで、イケル!その気にさせるムードがわき上がった。

 こうなると、はやいのである。さっきまでとはうって変わって、ウエちゃんがイキイキとしたビートをきざみはじめ、常に安定した演奏を提供してくれているロクさんもますます楽しそうにプレイしている。タマちゃんはフェーズを大胆にかけたミュート・パターンをくりひろげて、よりR&B色を出してくれた。私はコーラス・エフェクトをきかせたFennder Rhodesで、それらを包み込むのが役目だ。みんなが自信にみちたプレイを展開することで、‘Ken M-1’のメロディ・ラインの美しさが際だってくることとなった。

 今回のレコーディングにあたって、私はひとつのポリシーをもって臨んでいた。それは、『人間を録ること!』である。ふん、あたりまえじゃないか!そう、あたりまえのことだ。人間が演奏するのだから。しかし、それがなかなかできないのが現実だったし、これまでの反省でもある。いい音をただ録音するのでなく、そのプレイヤー達の人間性・感性、演奏時の喜びや葛藤をそのままパッケージしたい。まして、ライヴもともにしているメンバーでレコーディングしているのだから。

 “Time Flies”は、今聴いても自信を持って、お薦めできる内容ではあるが、まだ、メンバーひとりひとりの個性を十分に引き出すには至らなかった。どちらかといえば、アレンジメントが優勢な感があるし、バンドもまだ成熟していなかった。しかし、2年の歳月が我々とジュンコさん・ケンさんとの間に、ある同士的、仲間的強い絆を生んだのだ。だからこそ、この状態をなんとしても記録したかったのだ。

 具体的には、各自の自発性、セッション時の偶然性を生かすようなシンプルなアレンジを心がけたい。そこで生まれる自然発生的な気持ちのいいグルーヴでジュンコさんのヴォーカルを引き立てたいということだ。そして、結果として、聴く人々に「あ〜、いい曲だね、気持ちのいいノリだね。」とシンプルに感じてくれるようにできあがれば大成功なのだ。

 こうして、まずは‘Ken M-1’のベーシック・トラックが出来上がった。ノリが良いだけでなく、ある種のストーリーを感じさせる演奏が録れた気がする。みんな、いたくご機嫌である。まずは滑り出し好調だ。

 食事の後、‘I Wish’の録音にとりかかる。「軽音」でリハ済みなので、グルーヴをつかむのは心配していなかったが、これはサウンド面で少しこだわりたいのだ。全体にキレイにせずにヨゴシたいとでもいうか。で、みんなが仕上がったあとで、エレピをライン録りでなく、Rhodes本体のスピーカーをならしてマイクでとりなおした。こうすることで、少しでも空気感を音楽の中に封じ込めたいのだ。この試みはなかなか良かったし、みんなの演奏もよかったが、まだ想いえがくところにはきていない。が、これはダビングを重ねることでじょじょに見えてくるだろう。ただ、このテイクのジュンコさんの仮(!)歌が実にワイルドでかっこよかった事をお伝えしておきます。

 さて、第一日目としては成果上々、ノルマ達成とはいかなかった(少し、キーボードのダビングを残した。)が、いいリズム・トラックが録れればバッチリでしょう!というわけで、お疲れ様のビールで乾杯!ロクさんは自分のパートが終わったころから「ビ〜ア、ビ〜ア。」いうてましたな〜。お待たせしました。く〜、いい仕事のあとの一杯はたまりませんな〜、ほんま。
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by harukko45 | 2001-07-03 00:00 | 音楽の仕事

 前回5月15日に更新して以来、約一ヶ月以上このコーナーをお休みさせていただきましたが、大橋純子ニューアルバムのレコーディングもほぼ完了のめどがたちましたので、ぼちぼちレコーディング後記などでも書いてみるかという余裕が私にも生まれてきました。そこで、今後何回かに分けて、今回のニューアルバム・レコーディングの顛末、もろもろをお話することにしました。

 さて、その前にとりあえず前回のtoto予想の結末は、3等でありましたことをご報告いたします。また、チャンピオンズ・リーグの決勝はバイエルン・ミュンヘンの勝利、また我らが日本代表がコンフェデレーションズ・カップで見事準優勝、などなどサッカーファンにはたまらないひとときを味わうことができました。しかし、そんなムードを一変させるマネージャーのツチダさんからの電話が・・

 「あ、もしもし和田さん、おはようございます。実はですね、レコード会社との話がまとまりまして、ジュンコさんのアルバムのレコーディングが決定いたしました。」

 「うむ、なんとそれは願ってもない朗報ではござらぬか!でかした!でかした!」

 「はい、そうなんですが、発売が8月末ですので、7月10日辺りには完成させなくてはなりません。」

なに!ということは曲集めにアレンジの打ち合わせ、などなど早急にミーティングを持たねばならぬではないか!

 その後、ケンさんより各メンバーにメールが届く。

 「アルバム制作にあたり、楽曲を提供したい方は今月中(5月)に聞かせて下さい。今回はJazz/FunkからStevie Wonderへの道がテーマです。」

 むむっ!Jazz/Funk系の元祖的存在であるStevie Wonderの名前は知らない人はいないであろうが、それをテーマに掲げるとは何と大胆不敵な!確かに70〜76年にかけての彼の素晴らしいアルバム(Talking Book/Inner Visions/First Finale/Key of Life)は今でもPops/R&B界における金字塔であり、私も当時すり減るほどアナログ盤を聴き倒したし、深く感銘を受け、その後音楽活動にも影響を与えている。まさにやりがいのあるテーマではある反面、偉大なるStevie Wonderを眼前にして、少々身がすくむというきらいもなきにしもあらず。ま、とにかく挑戦ではあるはな。

 まずは、ジュンコさんへの楽曲を私も作り始めることとなった。妻の恵子は前作“Time Flies”でも2曲書いているので、また二人でデモ・テープの制作にとりかかる。順調に作業は進んで、2曲仕上がったが、あらためて聴いてみるとそれほどStevieを感じさせる雰囲気ではないなと思いつつも、かといって、彼のコピーをつくってもまるで意味がない。よって、彼の音楽へのリスペクトを感じ、インスパイアを受けながらも、自分達の個性を失わないようにしようということになった。つまり、これでOK、ジュンコさん、ケンさんに聴いてもらいましょ!

 5月25日、この日は「軽音」の日。「軽音」とは、我々ジュンコ・バンドが同士的に集まって、仕事とは関係なく色々な曲を楽しみながら、定期的にリハーサルをやっていこうというもので、ケンさんの提案ではじまったものだ。実は今回の「軽音」で、Stevieの‘I Wish’をやろうということになっていて、私は簡単なコード・チャートを書いていった。きしくもレコーディングを前に、Stevie Wonderをやるというのは偶然だったのだが、とてもいいきっかけ、盛り上げになったのである。

 ‘I Wish’は“Key of Life”にはいっているノリのいい曲だが、シンプルな構成のなかにところどころにセンスのよさが光るアレンジが施されていて、なかなか感心してしまう。実際演奏してみると、ウエちゃんがすぐに気持ちのいいノリをつかみ取ってゴキゲンにグルーヴしている。おかげで、何度やっても楽しいね!って感じで、ジュンコさんが歌いまくるの図となった。

 今思うと、この時この曲を演奏して、基本的なノリをみんなが感じ取ったのは、とても重要だったのだな。

 さて、6月1日、大橋宅でケンさん、ジュンコさん、マネージャーのツチダさん、カルメン・オザワ、そして私とでミーティングが開かれた。この日までに集められた曲のなかでまず絞られたのは、佐藤健4曲、和田恵子曲、埼谷健次郎曲の6曲。ということで、それぞれ通し番号で仮タイトルとすると、‘Ken M-1〜4’‘Wada M-5’‘Sakiya M-6’となる。

 まずは、5日がリズム録りの初日なので、この日にやる曲を決めるのと、そのアレンジについて話し合う。スムーズなスタートをするには、やはりケンさんの曲が一番入りやすいということで、‘Ken M-1’が決まった。

 ‘Ken M-1’は素朴なフォーク・ソング風に始まって、じょじょにテンションを高めつつ、広がりのあるサビを迎えるというなかなか劇的な曲だ。これを、生のバンドで演奏することで70年代の少しガチャガチャした感じを出したいという、ケンさんの意向だ。なるほど、あまり決め事を多くせずにグルーヴを大事にして、音味としては、同じ種類の楽器(アコースティック・ピアノとフェンダー・ローズやオルガン、エレキ・ギターとアコースティック・ギター、ハイハットのダビング等)をうまく組み合わせることで、素朴さとカオスを表現できるのではと思う。

 ‘Ken M-2,4’は打ち込みをベースにしたいとのことであり、また、ブルースっぽいムード漂う‘Ken M-3’と‘Wada M-5’は若干の修正をトライすることとなり、後日に回された。‘Sakiya M-6’は、最初バラードではじまって、その後ハネるビートで歌われる曲で、とてもキャッチーなサビ・メロを持っているのだが、 始まりをさりげない感じにしたいし、全体のビートがはねているのが気になった。私の中で、細かく考えてみたかったので、少し時間を頂くことにした。実はこの曲がこの後、いろいろと悩みの種となって、私を苦しめることとなるとは、、、。

 今回のアルバム制作にあたり、Stevie Wonderの曲を1曲カバーする事になっていたので、ジュンコさん、ケンさんとも選曲に相当苦労された様子だったが、結局、先日の「軽音」での‘I Wish’のインパクトが忘れられず、これに決定した。リハーサルもやったことだし、レコーディング初日に録りましょうということになった。

 さて、ミーティングを終え、帰宅した私は早速‘Ken M-1’にとりかかった。ケンさんから、メールでデモのMIDIデータが送られてきていて、それを私のCubaseにインポートした。全体の構成や基本のビートはケンさんのアレンジで問題ないので、ところどころに私の色を出させてもらう程度にした。“Key of Life”の‘Ordinary Pain’が頭の中で鳴り響いていたこともあり、イントロダクションにピアノのフレーズを加えた。後、どうしてもロクさんのベース・ソロを入れたくなった。と、いろいろやっているうちに朝になってしまったが、ほぼ全容が見渡せる感じになったのである。

 ‘I Wish’に関しては、キーをオリジナルのE♭mからFmにするぐらいで完コピーしようかと思ったが、一転、「軽音」の時のジャム・セッション風な要素をいれたくなったので、タマちゃんのギターとゴトウさんのサックスを大々的にフューチャーすることにした。さあ〜て、これで初日の準備OKです。それでは次回からは実際の録音の様子をお伝えしましょう。それでは。
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by harukko45 | 2001-07-01 00:00 | 音楽の仕事

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