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Stanley Kubrick

 いったい、正月からWOWOWは何を考えているのだ。1日の深夜「フルメタル・ジャケット」2日の深夜「時計じかけのオレンジ」を放送し、そして3日の深夜は「博士の異常な愛情(Dr.Strangelove)」をこれから放送する。おかげで毎日、朝まで見続けている。私はキューブリックの大ファンだからだ。
 だが、彼の大作が正月にふさわしいのかどうかは疑問かも。新年早々、暴力と殺戮にまみれた映画を観るのに抵抗あるかな。なんて、真っ赤な嘘。私はこの2日間、すでに何回も観ている「フルメタル・ジャケット」「時計じかけのオレンジ」に再び感動と興奮をおぼえたし、キューブリックが私にとって最も尊敬する映画監督の一人であることを確認した。

 「フルメタル・ジャケット」はこれまで製作されたベトナム戦争映画の最高作であり、「地獄の黙示録」も「プラトーン」も「ディアハンター」もかなわない。
 また、「時計じかけのオレンジ」は「2001年宇宙の旅」と「博士の異常な愛情」とともに、キューブリックの最高傑作3本のうちの1本であり、この監督が全く持って、他の監督達とは違う存在であることを示した偉大な傑作と思っている。

 細かい指摘や解説は映画にもっとくわしい方にまかせるとして、私のようなものが感じることは、彼の映画では、その題材への切り込みが、作家個人の視点などを超えてしまって、もっと違う次元、全てを俯瞰しているような場所から、この世の人間どもの愚かで醜い行いをリアルにえぐり出しているということ。が、そのやり方はとことん人工的に作り出されている。極めて人工的な映像リアリズムによる美の世界が、キューブリックの映画だと思う。
 そして、誤解を恐れずに言うと、キューブリックの映像を観ると「戦争さえも美しい」「暴力さえも美しい」と感じるのだった。
 その映像は「汚いものが、美しい」「美しいものは、きたない」、まるでマクベスに出てくる予言者が語るようなこの世の奥にある、真実を見せつける。

 彼が見せる暴力や殺戮は最初、それほど恐ろしくない、それよりも観ているものに快感さえ感じさせる。それは彼の脚本と演出、撮影と編集の切り口がするどいからだ。そして、奥行きのある、そしてやけに左右対称だったりする個性的な構図のマジックに幻惑されながら、その美しい1カット1カットに感動する。
 しかし、あまりにも美しい映像に一時も目が離せずに見惚れていることで、じょじょに私はその奥に描かれた真実をはっきりと知るのだ。それが、たまらなく心地よいと同時に、本当の畏れを感じることになるのだった。

 またある意味で、彼の映画はすべてブラック・ユーモアとも言える。もろにそうなのは「Dr.Strangelove」だし(1人3役のピーターセラーズとジョージ・C・スコットの名演技が凄い)、「時計じかけ...」も強烈な皮肉と風刺だ。これなど、近未来のロンドンが舞台だが、まさに現代を予言していたではないか。
 残念ながら、2001年に人類は宇宙旅行できなかったが、これさえもジョークに思えるところもあるし、「フルメタル・ジャケット」の前半部分はかなり笑える(それが恐ろしさに直結する仕組み)。

 さて、明日の深夜は「バリー・リンドン」だ。これまた美しい映像美にあふれた歴史大河メロドラマだ。「2001年」や「時計じかけ」のような強い刺激を求める人には物足りないだろうが、私はかなり好きだ。18世紀ヨーロッパ貴族社会を細部に至るまで緻密に再現し、ろうそくを多用した自然光での撮影による「こだわり」ぶりを鑑賞するだけでも損はない。

 今回、放送されないが他の有名作品についても付け加えれば、「シャイニング」はホラーをここまで格調高く美しく作り上げたことには感心したが、彼の偉大な作品群にあってはまあまあだろう。ジャック・ニコルソンを使うことで、彼が意識的にヒットを狙った唯一の作品かも?期待に応えてニコルソンは大熱演だったけど、最初からすでにイッちゃってる演技がちょっとね。

 遺作となった「アイズ・ワイド・シャット」はトム・クルーズとニコール・キッドマンの起用が全くの大ハズレで、およそ「らしくない」駄作になったのは、ファンとして至極残念だった。まぁ、こんなにもダサいトム・クルーズを見るのも悪くはないけど。妙な儀式や乱交パーティも彼の手にかかれば、かなり格調高く見えたが、ヴィスコンティのような本物の退廃までには至らなかった。ご本人も失敗と認める発言をしていたらしい。

 だが、初期の「現金に体を張れ」「突撃」、そして「ロリータ」にも魅力的な映像が多く、最後の作品で失敗したからといって、彼の偉大な仕事に傷がつく訳ではないと思っている。

 そうそう、彼は音楽の使い方のセンスも抜群にキレていた。「2001年」のR・シュトラウス、ヨハン・シュトラウス、「時計」でのベートーベンとロッシーニ、それとあのこわいこわい"雨に歌えば"。「フルメタル・ジャケット」では60年代ロック、特にエンドロールでのストーンズ"Paint It Black"が(ミッキーマウスのテーマの後だけに)最高にシビレた。
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by harukko45 | 2007-01-04 02:30 | 映画・TV

 ちょっと前までは私のTV鑑賞意欲を駆り立てていたのは、「ミディアム」のアリソン・デュボアだったけど、今はイギリスの若き熱血社会派(?)シェフ、ジェイミー・オリヴァー。先週までの「給食革命」はほんとにほんとに素晴らしいシリーズだったし、心の底から彼の取り組みには感動させられた。その苦労が実を結び、その後政府をも動かし、イギリスの学校給食は改善への道を進み始めたという。
 しかし、その大仕事と自らのレストランの仕事で、すっかり疲労したジェイミーは、もう一度自分を見つめ直すために、単身イタリアへ出かけて、庶民の食事、料理とその文化を見て回ることに。まぁ、それをTV番組として制作しちゃうんだから、ちょっと出来過ぎでもあるけど、細かいことは抜きにして楽しかったから、許しちゃうよ。

 私も93年に一度だけ憧れのイタリアへ行ったことがあり、彼がなんやかんやと興奮したり、逆にリラックスして心からその土地や風土を楽しんだりしている姿はそれなりに理解できるよ。だって、それほどイタリアって楽しいんだから!
 もちろん、食事がうまい。彼曰く、「誰もが食のエキスパート」の国。それと人生をとことん楽しもうとする精神ね。そういう雰囲気に溢れているから、何気なく町をぶらぶらしてるだけでも、カフェでボーッと人々を見てるだけでも、有名じゃない町の安いトラットリアで食事したって、とっても気持ちよくワクワクして楽しい気分になるのです。

 イギリスのジャンクフードまみれの給食との戦いから一転、とことんスローフードなイタリアでの原点回帰的な料理修行とその旅。シチリアから始まってまずは魚料理で地元の人々に腕をふるったジェイミーも、みんなが食通のイタリア人を喜ばすにはなかなか手こずっていましたな。でも、とにかくもう一度修行していくような取り組み方が好感持てるね。

 とりあえず、しばらくはジェイミーから目が離せないよ。
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by harukko45 | 2006-11-18 00:27 | 映画・TV

 今、最も私の心を熱くする男が、ジェイミー・オリヴァーだ! 彼は現在30近くなった(?)イギリス人のシェフだ。だが、彼はただの料理人におさまらない。TV番組から一躍スターダムにのしあがった経歴から、これまでにもいろいろ話題を提供してきたらしいが、今回WOWOWで放送している「給食革命」は、かなり凄い。4回シリーズの3回目を昨夜見たが、見終わって後も自分の心がワナワナしたり、いろんなことにショックを受けて、現代の社会につくづく失望したり、もう大変だ。

 イギリスの学校給食はとんでもなくヒドイ! 元々イギリス人は食に無頓着とバカにされてきたらしい(特にフランス人に)が、それにしてもだ! ジャンク・フード(マクドナルドよりひどいハンバーガーやビザ、フライドポテト)ばかりで、野菜はグリンピースだけ、ほとんどが添加物だらけの、ろくでもない加工品による炭水化物と脂肪分だ。それを子供達はうまいといって食べている。生まれてからまともな食事をしてきていないからだ。

 その現状に危機感をいだいたジェイミーは自ら学校に乗り込み、子供達に健康的な食事をさせるために、給食革命の運動に取り組むわけだ。
 だが、なかなか道は険しい。まずは、長年、加工品を温めるだけの作業しかしてこなかった現場の調理師達の抵抗、また実際に手作りのヘルシー料理(ウマそうなのに!!)を平気で吐き出したり、捨てたりする子供達を目の当たりにして、ジェイミーはショックを受けるのだった。
 ジェイミーだけじゃない、これを見た人たちはみんなショックを受けるに違いない、たぶんこのままいったら、イギリス人の子供達はじきに皆バカばかりになる、こんな食事ばかりしてたら、早々に肥満になり、成人病になり、早死にするだろう。だが、親も教師も役人も自覚していない。しんじられなーい!!!

 とにかく、子供は食べず嫌いだ。元々まともに調理された(普通の)食事をしたことがないんだろう。幼い時からずっと食べて来た冷凍ものやジャンクフードだけが「おいしい」もので「好き」な食べ物なのだ。そして、そうやって育ててきたのは愚かな親どもなのだ。

 そういった、すさまじくも根深い問題に果敢挑んでいく若きシェフ、ジェイミー・オリヴァーは英雄か? 実はそれほどかっこいいわけではない。とにかく、彼自身も疲弊しながら取り組んでいるのがわかる。そこに真実味があり、単なるTV番組用のヤラセではないことが伝わってくる。なので、ジェイミーの失望、怒り、そして頑張りがこちらの心にも火をつけるのだった。

 私には子供がいないので、現在の日本の給食、はたまた日常の家庭での食事はわかっていないが、これを見て「日本は大丈夫なのか? いや、イギリスよりはずっとマシだろう」と思いつつ、子供達の抱える諸問題はあまり日英で差がないのではないかとも思う。ジャンクフードや加工食品の嵐は同じだし、精神的に不安定な子供達による問題や事件、それを解決できない親や教師達のことが連日ニュースになっているのだから。

 フー、とにかく、凄いドキュメンタリー・シリーズだと思う。後1回で終わりだが、この4回のためにたぶん半年以上の時間を費やしているだろう。その間に、希望も見えて来ている。それは、政府をも動かす力につながっていくらしい。
 
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by harukko45 | 2006-11-03 00:38 | 映画・TV

Festival Express

e0093608_3212548.jpg 70年にアメリカのロック・アーティスト達がおこなった、列車でカナダ横断するツアーのドキュメンタリー映画「フェスティバル・エクスプレス」を初めて観た。そりゃ、そうだ。お蔵入りだったものがDVDで登場だからね。去年、発売されてレンタル店でも見かけたが、今回WOWOWで放送されたものを楽しんだのでした。 

 やはり、あの時代は面白い事が起きていたんだな。列車に全ミュージシャンを乗せて、まさに「巡業」スタイルのツアー。コンサートとコンサートの間の移動中は、毎日毎晩、列車内でパーティとジャムの繰り返し。リック・ダンコとジャニス・ジョプリンとジェリー・ガルシアがブっ飛んでてヘロヘロのままジャムってるシーンはなかなかの見物。それ以外にも、今の時代じゃ、絶対に有り得ない、もしやっても「ヤラセ」にしか見えないだろうことも、あの当時あの連中なら自然にやっていたのだった。凄いもんだ。

 列車内のドキュメンタリーやジャム・シーンが割と多く、実際のフェスでのライブが少ないのがちと物足りないが、ザ・バンドのかなり尖った演奏(やったら速い"The Weight"なんか、この頃っぽい)に、かなりやられるし、リチャード・マニュエルの歌う"I Shall Be Released"には泣けたよ。
 また、ジェリー・ガルシアはいろんな場面に登場して大活躍だったが、バンドとしてもカントリー方向に傾倒している頃のグレイトフル・デッドのパフォーマンスは実に貴重な映像だったし、フライング・ブリトー・ブラザーズのライブも初めて観れてうれしかった。
 おお、若きバディ・ガイのキレまくった演奏も、この時代の雰囲気にぴったりハマっていて最高だった。
 圧巻だったのは、フル・ティルト・ブギーを率いたジャニス・ジョプリン。この映像は彼女のドキュメンタリー「JANIS」にも使われたものと同じらしいが、とにかく"Cry Baby""Tell Mama"の充実した歌いっぷりにシビレたし、むっちゃ熱くなったよ。この直後の10月には死んでしまうのだから。なのに、この素晴らしい歌! 

 今から見ると、「特別な時代」として評価するしかない60年代後期から70年代初期で、そのカルチャー全てを肯定できるわけじゃないけど、この頃のロック・ミュージシャン達が凄まじいオーラを発しまくっていたことは確かだと思う。そして、それがまた素晴らしく魅力的なのだった。
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by harukko45 | 2006-09-01 03:22 | 映画・TV

S.A.S.は凄いぞ

 今月はやたらとテレビを観ているが、その中でも「The BLUES Movie Project」以上に衝撃的だったのは、イギリスのTVドラマ・シリーズの「S.A.S.」だった。このドラマはDVDもあるので、すでに知っている方も多いかもしれないが、私は今回初めて観て、その内容の濃さにかなりハマッてしまった一人であります。

 ということで、SASとは何だ?と検索してみると、まずはもろもろの企業名に、スカンジナビア航空(Scandinavian Airlines System)、サザンオールスターズ(SOUTHERN ALL STARS)そりゃそうだった!、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)に、大阪市営地下鉄の車内放送のサイト(Subway's Announcement Section)何?、おお、やっとありました。
 「S.A.S.」とはイギリス軍の特殊空挺部隊(Special Air Service)の略で、第二次世界大戦時に結成され今や世界最古で最強の特殊部隊と言われていて、今や対テロリスト、ゲリラなどの特殊作戦の手本となっているらしい。これが、アメリカのデルタフォースの元でもあるとのこと。

 で、要はイギリス軍の超精鋭達が主人公の過激な特殊戦争アクション・ドラマで、さまざまな状況でドンパチやるのだが、そのリアリティが半端じゃない。それは映像が生々しいという意味だけでなく、そのストーリーと人物描写が凄いのだ。そして、見事だと思うのは、単なるヒーローもので終わるのでなく、軍隊、軍人の危うさをもしっかりと、それもかなりドライに見せていること。
 とんでもなく尋常じゃない任務をしている彼らにも、家族があり、普通に飯を食い、酒を飲み、職場恋愛があり、人間関係の不和がある。それら一つ一つのエピソードを一切の「甘さ」なしにズバズバと切り込んでいく演出がひじょうに良い。

 だから、結果として登場人物すべてに共感と同時に反発も憶える。それは、これらの軍事行動そのものに対してもだ。自由と平和を守るのは、たやすいことではない。が実は、そのために陰では手段を選ばないやり方が横行していて、それに実際に関わっているのはヒーローでも救世主でもない、普通の人間なのだった。
 主人公のヘンノ軍曹はものすごく優秀で勇敢で、その行動や考え方には共鳴するものの、と同時に、実際に近くにいたら、その存在を無視していたいほどの恐ろしさとおぞましさを持ったキャラクターだ。その魅力は相反する要素で作られていて、それは他の隊員達についても変わらず、それぞれ重層的な描写がしっかりなされているのだった。
 
 これを観ると、さすがの「CSI」もホームドラマのようだし、あの「24」でさえ甘く思えてくる。
 
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by harukko45 | 2006-01-22 15:54 | 映画・TV

ソウル・オブ・マン

 「The BLUES Movie Project」の6本目「ソウル・オブ・マン」は、ヴィム・ヴェンダース監督の才能が光る秀作だ。これは、発売されているサントラとともに手元に置いておきたい作品と思う。
 「ブエナ・ビスタ...」ではあまりピンとこなかったのに、こちらはほぼ全ての部分に共感できた。このシリーズの中で、最もブルーズの深淵を見せてくれたのではないだろうか。「パリ・テキサス」「ベルリン・天使の詩」におけるヴェンダースが素晴らしい構成と映像で、ブルーズを深く深く掘り下げていったあげくに、ついに宇宙にまで到達したのだった。

 ブラインド・ウィリー・ジョンソンの「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」をきっかけに、その彼を語り部としながら、スキップ・ジェイムスとJ.B.ルノアーという伝説のブルーズメンの人生をたんたんと紹介していくのだが、まずはスキップとJ.B.それぞれの音楽にグっと引きつけられる。二人の歌とギターには魔力がある。一度耳にすると一瞬たりとも聴き逃すまいと思わせるものがあるのだ。

 それを、スキップについてはモノクロで役者を使った無声映画風の演出で見せるのだが、そこに「ブエナ・ビスタ」のような(「ブエナ」は本物のミュージシャンだけなのに演出過剰に思えた)嫌みがなく、とても自然に入り込めた。これはヴェンダース監督のブルーズへの愛着の濃さがそうさせるのだろうか。
 一方、J.B.については60年代にとられた貴重な彼の記録映画を見つけ出し、それを撮った夫妻へのインタビューやTV映像を交えながら、そのユニークな世界をある意味「世界初」、きっちりと紹介してくれた。

 そして、それぞれオリジナル音源を流した前後に、現代のミュージシャン達によるカバー演奏が収められている。カサンドラ・ウィルソン、ルー・リード、ボニー・レイットからベック、ジョン・スペンサー、ニック・ケイヴに至る、ちょっと間違うと乱雑になりそうなライブ映像が、見事に一本筋の通ったトーンで統一されていて、これまた素晴らしい。
 監督の狙いをミュージシャンがよく理解した結果か、はたまた偶然か、それともやはり元となるブルーズの巨匠の音楽の凄さなのか、とにかく短く挟み込まれるこれらのライブ演奏が、映画全体の流れを止めずに、より深い共感を呼び起こすための重要なカットとして生かされていた。だから、唯一の不満はこの素晴らしい演奏をもっと聴きたいと思ってしまったことだ。でも、映画を主に考えれば、この編集で正解だ。後はサントラを聴いて楽しむべきだろう。

 と同時に、ここでクローズアップされた伝説の天才の音楽にもっと触れてみたいと思った。自分にとって「驚き」の音楽だったからだ。

 さて、その感動が大きかった故に、そのあとの7、8本目にあたる「ロード・トゥ・メンフィス」「ゴッドファーザー&サン」はだいぶ見劣りしてしまった。たぶん、「ソウル・オブ・マン」を観ていなければ、いろんなミュージシャンを見られて、なかなか面白かったで済んだだろうが、いかんせん今回の流れでは、二本とも最初のアイデアの面白み(メンフィス・ブルーズゆかりの人々、サン・レコード。シカゴ・ブルーズとヒップ・ホップ、チェス・レコード。)に頼りすぎて、結局上辺だけの表現にとどまった内容に思えてしまった。

 とは言え、このシリーズを見通したことでずいぶんブルーズの勉強になったし、偉大なブルーズメンから刺激とパワーをいただいた感じだ。まだまだ学ばなくてはいけないことが、たくさんあるのを強く実感した。
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by harukko45 | 2006-01-15 14:52 | 映画・TV

 「The BLUES Movie Project」シリーズの5作目「レッド、ホワイト&ブルース」は大変面白かった。監督のマイク・フィッギスは「よく音楽をわかってるなぁ」と感心して観ていくうちに、1時間40分があっという間に過ぎた。後で調べてみたら彼は元ミュージシャンで、ニューカッスルの大学生時代にはブライアン・フェリーと学友でバンドをやっていたという。なるほど、である。

 それと、イギリス人はこの手の「過去もの」ドキュメンタリーを作るのがうまい。いわゆる海外のドキュメンタリーもので、「いい出来だなぁ」と思うとBBC制作だったりする。名監督のケン・ラッセルもBBCドキュメンタリー出身だし。
 そういう伝統なのか、とにかく彼の場合、テンポの早いカット切り替えが見ている者をノセるのだ。その編集のセンスの良さが実に光ると思う。
 それでいて、肝心のブルーズとイギリスの関係とその歴史について、エリック・クラプトンやスティービー・ウィンウッドなどの有名ミュージシャン達多数とのインタビューで、とてもよく理解できるようになっているし、ジェフ・ベック、トム・ジョーンズ、ヴァン・モリソン達によるスタジオ・ライブもかなり良くって、目が離せない構成になっていた。

 これは、ここまでの中で一番の出来かもしれない。出てくる人々が私もよく知っているロック・ミュージシャンが中心だったのも、すごく興味深かった要因だろう。

 驚いたのはエリック・クラプトンが非常に熱く「ブルーズと自分の歴史」を語っていることだ。そして、「音楽は私にとって『シリアス』なもの。常にシリアスなものなのだ。」とそれこそ「真剣」に答えていたことに心を打たれた。私は、現在のクラプトンの音楽があまり好きにはなれないが、とは言え、彼が60年代からずっと第一線で活躍できている秘密は、この真面目さなのではないか、と思う。
 だから、その時代時代に彼は自分の音楽とその周辺を取り巻く様々な物事について、ちゃんとよく考えていたに違いないと思った。そうでなければ、この映画の中でのように過去についてキチっと話をすることは出来ない。

 そして、この映画の結論として、アメリカ人が捨てた偉大な黒人文化をイギリス人が再認識し、本国に逆輸入したことで、アメリカ人はその素晴らしさをやっと理解した、となるのだった。(これはイギリス人特有の皮肉か?)
 それは終わり近くで、B・Bキングがインタビューで語った言葉が象徴的だ。
「もし、イギリス人がいなかったら、私は今でも『暗闇』だったろう。イギリス人よ、ありがとう。」
あのB・Bがここまで言うとは、かなりの驚きである。
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by harukko45 | 2006-01-12 00:25 | 映画・TV

 やっと、史劇映画3本見終わった。特に「アレキサンダー」は長かったなぁ。それと、やったら「血だらけ」だった。

 「アレキサンダー」はオリバー・ストーン監督のいつもながらの肩に力が入り過ぎた感じが、ずーっと映画を支配していて、大変疲れる。救いは主役のコリン・ファレルの熱演だ。彼がいるので最後まで見る事ができた。
 とにかく、これが現代風リアリズムなのか、要するに一切のロマンはない。映像は確かに迫力あるが、見終わった印象は、アレキサンダーという史上最大の狂人が神話の英雄に憧れて侵略と虐殺を繰り返した物語、というだけになってしまった。あまり意味のない冗長なシーンもあったりして緊張感がとぎれるし、物語の山場がはっきりしない編集がイマイチではないか?

 ただ、アレキサンダーの内面の描写はファレルの好演もあり、かなり深く(魔性の母の溺愛によって強度のマザコンとなり、男色となった若者として)エグっていたのは面白かった。が、結局「なぜ、彼はそこまでしてアジア(ペルシャ征服以後の東征)を目指さなければならなかったのか?」が見えてこない。王がさかんに言う「ヨーロッパとアジアの融合」という理想?永遠に歴史に名を残すためだけ?

 「トロイ」も負けずにリアルな戦闘シーンで迫力満点だ。だが、ホメロスの話とはだいぶ違うようだ。だいたい神や魔術がぜんぜん出てこない。あくまで人間としてのアキレスとトロイの物語であり、人間同士の殺し合いによるアクション映画だ。
 そういった意味の見せ場は多いし、メリハリもテンポも良かったし、マッチョなブラッド・ピットは予想以上に好演していたのだが、見終わって全然感動しないのが何とも。ポイントとなる恋沙汰(パリスとヘレネの不倫と駆け落ち、アキレスとパトロクロス、これは男同士ね。そしてアキレスとプリセイス、戦利品で妾となった敵の王の娘)のエグリが軽くって、それが国家同士、英雄同士の戦いに結びついていくところまで入り込めない。だいたいヘレネってもっと凄い(怖い)女性じゃなかったか?

 ウォルフガング・ピーターゼン監督は全体をまとめるのがうまいと思うが、じゃあ何が言いたいのか、が全然感じられなかった。セリフにある「愛のために戦う」がそうだったのなら、ちょっと違うんじゃない?

 人類ってやつは昔から、こういう血生臭い世界を神話化することで浄化し、そこから何らかの意味を学んできたんだろうが、今やこれらの題材もアクション戦争ものと変わらなくなったようだ。「ベン・ハー」や「スパルタカス」が懐かしい。

 で、「キング・アーサー」も「アーサー王と円卓の騎士」の物語ではなかった。こちらも伝説や神話は皆無だ。でも、映画の最初にそれは「ことわり」として明示された。それと1時間半程度で、意外にあっさりしたつくりだ。おまけに、たくさん殺し合うのだが「血」が描かれていないし、カリスマ性を持ったスターが一人も出ていない。
 だが、一番楽しめたかも。だって、まるで「七人の侍」だからだ。と思ったら、最初からそのつもりでアントワン・フークワ監督は作っていたのだった。

 私は黒沢作品をほとんど観ているので、そういう点で好感を持ったのかもしれない。映像的にも美しいし、巨匠的な風格があった。
 が、そのかわり人物描写は物足りない。アーサーもランスロットもトリスタンもこんな? 黒沢の7人の武士達はそれぞれ個性的だったけどなぁ。
 それと、「自由のため、自由のため」って言い過ぎ。ただただ「義と名誉のため」でいいじゃない。「愛だ、自由だ、平等だ」なんて主張するほうが違和感を感じるし、人間界すぎる発想で高貴さに欠けると思う。
 それからラストのハッピーエンドもいかにもハリウッド的な軽薄さで、残念。 
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by harukko45 | 2006-01-10 05:29 | 映画・TV

CSIそしてThe Who

 「CSI」の再放送はシーズン1を見終わった後、そのまま2に突入。こりゃ、やめられまへん。しかし、いくら全米の超人気シリーズで、内容もよく出来ているとはいえ、元祖「CSI」(ラスベガス編)に続いて「CSI:マイアミ」「CSI:NY」って立て続けに作るのって何だかなぁ。

e0093608_14124826.jpg 私としては、あくまでベガスのファンであり、この良さは何てったってキャストの個性が光ってるってことなのだ。特にグリッソム主任役のウィリアム・ピーターセンが最高なんだな、やっぱり。外見からするとあんまり強そうに見えないし、いかにも科学者してて「オタク」丸出しなのが、逆にリアリティがあっていい。それと、かつての「スタートレック」のカーク船長を思いださせる雰囲気があるのだ。

e0093608_14132895.jpg ずっと見てるせいで、ベガスの他の出演者にも思いが強くなってるためか、「マイアミ」のキャストにはイマイチ共感できなくて、じょじょに見るのから撤退してしまった。ただ、アメリカでは「マイアミ」の評価はかなり高いらしい。

e0093608_14135318.jpg それと、昨日から始まった「NY」はしばらく見てみるつもりだが、こちらはトーンが暗いね。どうも舞台がニューヨークだと、出てくる人々が皆「神経症」気味なのは、それが事実だから? 主役のゲーリー・シニーズは映画にもよく出演している名優なんだろうけど、彼のキャラからして重苦しいムードがあって、ちょっと不安。

e0093608_14172292.jpg だからってわけじゃないが、同じジェリー・ブラッカイマー制作でも「コールドケース」の方に愛着を感じている。とにかくリリー・ラッシュ刑事役のキャスリン・モリスが最高。こういうスーツ姿(男装?)の女性というのは、何とも魅力があるのだ。古今東西、オペラから宝塚にいたるまで、いわゆる「ズボン役」は永遠なんだなぁ。シーズン2の放送が待ち遠しいよ。


 おっと、一つ大事なことを忘れていた。「CSI」シリーズのオープニング・テーマは全部The Whoの名曲だということも、やられちゃう原因なのだ。ラスベガスの"Who Are You?"(左下アルバム'78“Who Are You"に収録)、マイアミは"Won't Get Fooled Again"、そしてニューヨークは"Baba O'Riley"(ともに右下'71“Who's Next"に収録)と私も大好きなザ・フー! たまりません。

 この選曲でこだわりを感じる点は3曲すべてが今で言う「シークエンスとの同期もの」ということ。彼らがレコーディングしたころは、もちろん今のようなコンピューター・システムはないから、色々工夫したのだろうが、その出来は文句なし!さすが、ピート・タウンゼント様。
 ザ・フーは凶暴性と繊細さ、ポップなメロディとハードな演奏の共存、外見のメチャクチャさの裏にあるバネの効いたノリの素晴らしさ、などなど書き出したらキリがない。

 そういう彼らの魅力を余すところなく味わえるのは大傑作映画"The Kids Are Alright"につきる。これを観れば、絶対にザ・フーの大ファンになること間違いない!ライブもインタビューもTV映像もレコーディング風景もすべて最高。今見ると、亡きキース・ムーンの姿に涙してしまう。ベースのジョン・エントウィッスルも今はいないんだなぁ。
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by harukko45 | 2006-01-09 14:27 | 映画・TV

e0093608_1611575.jpg マーティン・スコセッシ制作総指揮による「The BLUES Movie Project」は前半の4本を観た。3本目の「デビルズ・ファイヤー」はチャールス・バーネット監督自身の生い立ちをたどりながらブルーズの魅力を語っていくドラマ仕立ての映画だったが、ちょっとパーソナルすぎて、ブルーズそのものを期待していたので、いまいち共感できずに終わった。
 監督のナイーブな感性は随所に感じられたけど、それが「悪魔の音楽」としてのブルーズの根幹まで深まっていかないのが残念だった。


 一方4本目の「フィール・ライク・ゴーイング・ホーム」はスコセッシ自らが監督したもので、「さすが!」という仕上がり。名人はやはり映画作りがうまい、と感心した。正直、彼のある種の「強引さ」が時々見えるものの、最後には結局納得させられてしまうところがあって、こちらにちゃんと満足感を与えてくれる。

 内容は若手ブルーズマンのコーリー・ハリスがミシシッピのデルタから最後は西アフリカのマリにまで旅して、ブルーズのルーツを探るというもの。前半はブルーズ入門として最適なもので歴史上の名だたるブルーズメンの貴重な映像と音楽(サン・ハウスすげぇー!)がすごく楽しい。ただ、ここで実は表だってはブルーズメンの紹介しつつ、裏ではその当時名も知られる事のなかったブルーズメンを探し出しては、こつこつ録音していた白人ブルーズおたく(!)、ローマックス親子の功績も大いに称えているのだった。

 その後、オサー・ターナー達の素晴らしいファイフとドラムの音楽をきっかけに、映画は一気に単なるブルーズ入門ドキュメンタリーを越えて、アフリカへ「真理探求」の旅に出かける。
 この辺が監督の力技を感じさせるところで、多少独善的にも思えて一瞬引くのだが、この後登場するアフリカのミュージシャン達がまたまた素晴らしくって、どんどん引き込まれてしまうのだった。
 特にアリ・ファルカ・トゥーレは演奏だけでなく語りにおいても実に雄弁だった。おかげで、若きコーリー・ハリスはまるで巡礼者のよう。終わりが近づくにつれ、誇り高きアフリカ人芸術家に圧倒されて、真理を説く師の従順な弟子となったようだ。

 そして私は彼らをひどく羨ましく思った。彼らが関わる音楽にちゃんとルーツがあること。伝説と系譜があること。民族性が残っていること。それが誇りであり、時が経ち状況が変わろうが、「文化」は決して消えないということ。翻って、我々はどうだろう?
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by harukko45 | 2006-01-07 17:33 | 映画・TV

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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