スイートベイジルの後半です。

m9.What's Going On
 このマーヴィン・ゲイの超名曲には代表的な名演が2つあって、1つはもちろん本人によるモータウン・オリジナル盤。そのグルーヴ感は大変個性的で、ちょっと異常な感じもある(あのアルバム全体に漂っている悪魔性)。マーヴィン・ゲイとファンク・ブラザーズが、あの時代だったからこそ作り出せた奇跡のようなものだろう。
 もう1つはダニー・ハサウェイのライブ盤における名演。これも、歴史上に燦然と輝く名パフォーマンスだが、モータウン盤のような解読・再現不可能な感じでもなく、よりアグレッシブで分かりやすいグルーヴで、我々にも取っ付きやすい。なので、主にセッションなどでは「ダニー・ハサウェイ的」にアプローチすることが多いだろう。
 最初はそんな気分だったが、ジュンコさんケンさんは2年前ぐらいに出たマイケル・マクドナルドのモータウン・カバー集を参考にしていて、もうちょっとメローでクールなサウンドを求めていた。普段ライブハウスでついつい盛り上がってしまう我々は、その辺りを注意して今回は演奏したつもりだ。
 で、かなりその狙いは成功したと思う。ジュンコさんがゆったりと語りかけるように歌っていて気持ち良さそうだし、バックも肩の力が抜けたビートを常に供給している。

 後半の私のソロはうれしくなってて、ちょっと弾き過ぎてるかもしれないが、まぁ、ここは最後まで弾き倒したので大めに見ます。続くゴトウさんはさすがに堂々たる歌いっぷりです。
 全編に効果的なのが、ユキコ&ヒロコの女性コーラスで、実にいいムードを作ってくれていた。

m10.I'm Not In Love
 もう1曲カバー。10ccの大ヒットでジュンコさんもレコーディングしているし、ライブでも前に取り上げているのでおなじみの方もいるでしょう。
 これに関しては、ジュンコ・バンドの良さ、特に私のキーボードを良さが生きているかな。ある意味オリジナルをリスペクトしつつも別のアプローチの方法で成功したパフォーマンスでレパートリーとしての価値は高いと思う。ウエちゃんのメリハリの付け方がうまくキマッテいてカッコイイです。

m11.Soul Trainまっしぐら
 美乃家における土屋昌巳さんの代表作ファンクチューンの1つ。私もリスナーとしてこのスタジオ盤は大好きであります。これはギターのニュアンスが大事なので、タマちゃんはよく頑張ってくれました。おいしい部分をちゃんと再現してくれましたね。
 ギター以外はわりと今の気分で自由に、そしてよりワイルドにファンクしております。
 にしても、このテイク、かなりのヘビーファンクでイイんじゃないの!誰がどうのと言うより一丸となったグルーヴが最高です。全員がイってないと「Special」なグルーヴなんか生まれません。このツアー中のベストでしょう。
 それと、やっぱりこういう曲でのジュンコさんのボーカルは誰にも真似できません。自由奔放なゴトウさんのソロも最高。

m12.サファリ・ナイト
 もうすっかりおなじみの終盤戦の定番曲。ここまで来ると、演奏する方もある種の充実感を感じています。が、今回は簡単には終わらない。2コーラス後についに登場、植村昌広君の大ドラム・ソロ。一部ネット上では「変態ドラマー」として注目を浴びているらしいですが、「変態さ」というのは天才的とも読めるし、アーティスティックとも言えるのです。彼のような超個性派をバンドに迎え入れる我々の懐の広さったらどうですか!!
 いやはや、ちょっと話が脱線しましたが、とにかくどの会場でもバカ受けの大盛り上がりだったウエちゃんのドラム・ソロのおかげで、今回のライブ全てがハジけきったと言えますね。バンド内MVPをウエちゃんにあげましょう。

m13.ペイパー・ムーン
 しっかしまぁ、この日の「盛り上がり3曲」での全員の16分のキレの良さは尋常じゃないね。素晴らしいもんです。特にこの曲のイントロでのタマちゃんの歪んで過激なカッティングとそれに絡む私のブラス・シンセはかなりのものです。
 で、その後も怒濤の疾走で展開する演奏には強力なカオス感があり、ただのバックバンドではないことを証明していると自信を持って言えます。そんな強力なパワーでお贈りするファスト・ファンク化した筒美京平ポップに敵なしじゃわい。

m14.星を探して
 ついに本編ラスト曲。近年のケンさんによる代表作。マイナー・バラード書かせたら天下一の真骨頂が出た曲であります。
 なので、ここでは確かにレコーディングにおける土屋マー坊さんの素晴らしいギターソロのイメージも強いですが、やはりジュンコさんのボーカルこそが圧倒的な印象を持っているわけです。それだけ彼女の思い入れの強さが表れた素晴らしい歌だと思います。
 不思議なもので、前半よりも声が透き通って来ているではありませんか。おそるべし!

En1.We'll Be Together
 アンコールにお応えして、スティングの大ヒットのカバー。今回の主旨に一番ふさわしいとも言える曲調と詞の内容。もう楽しみましょう、それっきゃないでしょ!と全員で高らかに宣言しているわけです。タマちゃんとロクさんは飛び跳ねておりましたし、コーラスお二人も踊り放し。おっとロクさんが途中見失いましが、無事に復帰してきました。これもご愛嬌。最後には女性ボーカル陣3人によるシャウト大会ね。やっぱり「女は強し」。男性陣バンドはちょっとヘトヘトですが必死についていっております。

En2.Cry Me A River
 ダブル・アンコールに応えて、実にシブイ選曲。これも意外に思われた方が多かったようだけど、ジュンコさんのこういうスタンダードは本当に素晴らしいです。過去にボサノバの名曲カバーでもそのことは証明されていますからね。また今回は特に思い入れも強い曲だったのと、シンプルの極みのような曲調なので、お客さん達もボーカルのうまさを十分堪能されたのではないでしょうか。
 で、この伴奏のピアノの人、なかなかウマイじゃないですか。何だやればできるもんですね。これなら、もうちょっと年取っても音楽で飯食えるかも?
 いやはや、これまでなかなか、ジュンコさんのご希望通りにつけられなかったのですが、この日が一番良く出来ました。またまた勉強になりました。日々精進でありますな。


 
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Photographs/クラブサーキット2006六本木STB139スイートベイジル編

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by harukko45 | 2006-07-30 23:09 | 音楽の仕事

e0093608_0181882.jpg 当日のPAラインアウトのMDを聴きながら、28日のクラブサーキット2006最終ライブを振り返ってみることに。

m1.Welcome To Music Land
 私のパッド・シンセから、いきなりベースの六川さんのソロをフューチャー。この時点で驚く人も多かったでしょう。でも、このオープニング曲の作曲者でありますから、そのぐらいの特権は与えなくちゃねぇ。それに応えて弾きまくる素晴らしいプレイで、この後のステージへのモチベーションを上げてくれている。最近お気に入りの「喜びの歌」の引用もキマッテおります。
 ドラムのフィルインから全員突入で、ジュンコさん登場?と思わせて、まだです。すみません。これからが曲の本編。ジュンコさんが歌っていたパートをユキコ&ヒロコwithゴトウのコーラス隊が代わってメロを。ゴトウさん、かなりノッテますねぇ。ずいぶんチャチャをいれております。
 ここでのリズム・セクションの動きがなかなか良いね。やる気がみなぎっています。バランスもいいし、今後を期待させるよ。

m2.シンプル・ラブ
 曲つなぎでおなじみのイントロ。でも、細かく言うと私はシンセを変えたので、音が良くなっているのだ!まぁ、極めて個人的ですが。で、お待ちかねジュンコさん登場。この曲に関しては、すべてにほぼ完璧な状態のパフォーマンスと言えます。歌、演奏はもちろん、ライン録りにおいてもこれだけバランスが良いのは、非常に心地よい。ベースが超カッコイイ。

m3.摩天楼のヒロイン
 12,3年前のステージでは割と定番の曲としてやっていたのですが、しばらく封印されていました。が、この曲の都会風でオシャレな感じは、元々ジュンコさんや美乃家のイメージにあるサウンド。なので、久々の復活は大正解でした。ただし、演奏はムズカしい。気持ちのいいノリをつかむのにいろいろトライをしました。最終的にCDオリジナルにかなり準じたものに戻りましたが、ところどころに新しい試みを取り入れています。ユキコさん、昔アンドリュー・シスターズをコピーしていたというのを生かして、イントロとインターにおけるコーラス・ワークのボイシングを組んでくれました。特に間奏前のコーラスとサックスとシンセによる厚いジャズ風のアンサンブルはなかなかいい感じでキマりました!
 その後のゴトウさんのソロは、普段と違って珍しくアルトを吹いております。ちょっといつもより遠慮気味なのはテナーじゃないからかな?

m4.Lonely Woman
 続けて、私のエレピのシンプルだけど印象的なコードの流れでスタートするこの曲は、私の中で今回大事に考えていた一品。一番今っぽいニュアンスが通じると思って、個人的には90年代のニュークラシック・ソウルのバンドサウンドを意識した。結果、じょじょにいつものジュンコ・バンド風に戻っていったけど、それはそれでバンドの特色としてOKでしょう。
 なので、コード展開やビートをシンプルにしてメリハリを強くしたり、ゴージャスなオーケストレイションは排除してあって、CDとはイメージが変わっていると思う。でも、もっと良くなると思う。この演奏は全体にはもう一つといったところか。私自身のプレイも含めドロっとしたネバリが欲しいね。大阪のテイクはかなりそういうムードがあっただけに残念。だが、ここでのゴトウさんのテナー・ソロは素晴らしい。さすがに人生経験の豊かさを物語る。

m5.ビューティフル・ミー
 ある意味、最近になってようやくこの曲の正当な評価が確立されてきたような気がする。昔から名曲なのだが、それをみんなが共有出来るようになったということです。つまりファンの方の共感度のアップで、こちらも"シンプル・ラブ"などと同様に曲を演奏できる「名誉」みたいな気持ちを持てるということです。なので、全ては曲自体が良き所に我々を導くわけです。
 玉川君のボトル・ネックの間奏がなかなか情熱的で良い。

m6.Stray Eyes
 いい流れを引き継いで、これはかなり良い出来。最初のウエちゃんのドラミングだけで期待できます。サビでファンキーになるところでのクラビとギターのからみもなかなかよろしい。この曲に関しては、生バンドで再録音したい感じがしますねぇ。ベースの渋いプレイがさすが。ロクさんの余計なことをせずにグルーヴに徹する姿勢が逆に感動します。
 ベーシックなグルーヴは80年代風だけど、表現としては完全に今っぽいニュアンスに昇華されています。

m7.たそがれマイ・ラブ
 こういう曲でのウエちゃんがなかなか光るのです。大人になりましたねぇ。これなら、新たな恋人出現も間近か? ま、冗談はともかく、豊かなドラミングで曲を包んでくれて喜ばしいかぎりです。全体に色っぽい感じがあって細かい演奏云々は気になりません。実はとっても大事なこと。一番大切なのは曲を伝える事で、個人の主張じゃありません。

m8.シルエット・ロマンス
 今年は再び、私とタマちゃんのみのバージョンに戻りました。正直、こちらの方がやりやすいです。他の曲との差別化もついて、印象的だと再認識しました。
 曲と歌の良さについては文句つけようがないので、ここでは私自身について。
 とにかく、私の最大の欠点は曲に自分の思い入れを込め過ぎて熱くなってしまうこと。ミュージシャンとしては気持ちを込めることは当たり前でも、それが過ぎて冷静さを失うのは御法度であり、恥ずかしいこと。
 それと、意外に女性的な表現、よく言えばロマンティックだが、それが「崩れ」につながって立派さや曲の風格を失う危険があるわけです。
 自分でもいろいろな曲のプレイバックを聴くたびに、自らを抹消してしまいたいという思いの日々です。それでも、自覚しているので少しはマシになってきたようです。しかしまぁ、もうすぐ50なのに、いつまでも「若い」「青い」内容では困ったものです。
 ここでも、イントロのストリングスや歌中のピアノで、随所にテンポが遅くなったり焦って早くなったり、ボリュームを上げ下げするところに、まだ弱さや崩れが現れていると言えるでしょう。19世紀のロマン主義全盛の世ならともかく、この21世紀においては、もうちょっと決然とした勇気ある表現を獲得しなくてはいけないと感じます。

 長くなったので、後半戦は次回に。
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by harukko45 | 2006-07-30 17:08 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる