ジョン・レノン・スーパーライヴ2008の詳細(13)

詳細(12)からの続き。

 ついにこの長ったらしい詳細も最後。本編トリは吉井和哉さんの登場だ。

 今回も吉井さんの選曲にはしびれた。昨年やった"Help!"の再演はとてもうれしい。なぜなら、これは彼と我々で一緒に作ったという思いがあるし、たった1回で終わりにしたくなかった。あの"Help!"に関しては完全にワン・アンド・オンリー、このイベントでしか聴けない、演奏できないものだからだ。

 基本的には昨年とアレンジは変わらないが、我々の意識が違う。一年経って、体の中に吉井"Help!"がしっかりと定着していたし、この作品への思いが深まっていたと感じた。
 曲は熟成すると思っている。演奏家の意識が変わっていくことで、曲達も成長したり堕落したりしていくのだ。吉井"Help!"は昨年よりも自信に満ちた堂々たる姿で蘇った。だから、各自の演奏に迷いがないのです。
 とは言え、私は、自分のパートのみ少し変更した。昨年はサビの部分でストリングス・シンセで壁のように後ろで厚みをつけていたが、今回はかつてのビンテージ・キーボードの一つであるメロトロンのサンプリング音を使って、ボーカルの裏メロのような動きにしてみた。このメロトロンの音は元ムーディブルースのマイケル・ピンダーが作ったもので、非常に良いのですね、ハイ。
  
e0093608_2349969.jpg そして、もう1曲は"God"。これはすでに2001年に出演された時に歌っているそうだが、その時のメンバーで残っているのは土屋さん一人。他のメンバーにとっては始めての吉井"God"というのは、やはり特別なものを感じる。
 だいたい、この"God"という曲、ジョンのソロ・アルバムの最高作と言える「Plastic Ono Band」、その中でも随一の曲、最も衝撃的だった曲、それが"God"なのだ。

 「神とは概念だ、それで我々は痛みを測る」で始まる歌詞は、突然としてこの曲の核心部分である「〜を信じない」につながる。否定されるのは、魔法、易、聖書、タロット、イエス・キリスト、ケネディ、仏陀、マントラ、ギーター(インドの聖書)、ヨーガ、王たち、エルビス・プレスリー、ジンマーマン=ボブ・ディランで、ついに最後に「ビートルズを信じない」で音楽が止まる。
 
 そして、「僕はヨーコと自分を信じる」「僕はウォルラス/セイウチだったけど、今はジョンだ。」「親愛なる友よ、君たちは頑張らなきゃならない。夢は終わったんだ」で終結する。

 ジョンがビートルズを否定し、夢は終わったんだと歌ったのはショックだった。しかし、ここまで自分をさらけ出しながらも、ちゃんと芸術作品に高めてしまうジョンの凄さをも同時に知るのだった。

 演奏していて胸が痛くなる。が、音楽には夢中になってしまう。演奏することにどんどん入り込んでしまう。それでいて、行き過ぎた演奏は禁物だ。これだけの歌詞がついているのに、無神経なプレイは許されない。オリジナルのスタジオ・テイクでも名手ビリー・プレストンが最小限度の音使いでピアノを弾きながら、彼自身の色を出しているのはさすがだ。

 吉井さんはこうして、再び我々から魂を抜き取ってしまう。夢中になりすぎてしまう私など格好の餌食だ。
 だが、この時の吉井さんはひさしぶりのライブであり、その前の奥田+Charのステージにもかなり刺激を受けたらしく、それでだいぶ緊張してしまい、「帰ろうかと思った」とMCまでしていた。
 これほどまでに人を虜にさせる彼が、そのような気分であったとは、私のような凡人には信じがたいことだった。

 正直、ジョンのあまりにもパーソナルな内容の曲を歌うことは、かなりの冒険であり、自分自身を傷つけかねないと心配もしたが、ご本人の繊細な気持ちを知る由もない私には、いつもの飄々とした雰囲気のまま、見事に聴き手を自分の世界に引き込んで、まんまとジョンを自分に置き換えてしまうのだから、やはり彼はタダものじゃない、と写ったのだった。

 この"God"で本編が終わったとは、何と言うことか。今年の中身の濃さ、異様さ、摩訶不思議さ、それらを証明するエンディングだった。少なくとも私には。おかげでヘロヘロだよ。
 
 こうして、本編は終了し、この後はオールラインナップによるステージになった。そのことについては詳細(1)へ戻って読んでみてください。
 ここまで、長々とお読みいただきありがとうございました。そして、あの12月8日に武道館におこしくださり、一緒にあの時を共有した皆さんには深く深くお礼を言います。皆さんのおかげで、今年のスーパーライヴは無事に終えることが出来たと思います。
 それに比べれば、私個人の後悔などたいして意味を持たないことが、ここに来て理解できました。この詳細の最初で「個人的には大失敗」と書いたのは、違った見方をすれば少々傲慢な姿勢であったと感じています。自分が足らなかった部分は自分でしか解決できない。それに何がだめだったかは自分が一番よくわかっている。だったら精進するしかない。
 そんなセコイ自己チュウな問題などではなく、あの武道館に生まれた共感と共鳴こそが全てであって、それこそがジョンが考え、目指していたものだと思うのでした。
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by harukko45 | 2008-12-29 02:03 | 音楽の仕事

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