ジョン・レノン・スーパーライヴ2008の詳細(9)

詳細(8)からの続き。

 ゆずは登場時と同じように大歓声の中を退場していったが、それと同時に古田くんがボ・ディドリー・ビートとも言える南部風のリズム・パターンを叩きだすと、そこに斉藤ノブさんが登場。私とドラムスの間にセットされたコンガを叩き始めた。

e0093608_1573780.jpg このコンガの生音(ノブさんも私もモニターには返していない)がデカイこと、デカイこと。ご本人は力んだそぶりは全く見せていないから、とっても効率がいい演奏をしているのだろう。さすがである。もちろん、音量だけでなくノリも最高である。はっきり言って、「ここからムードを変える」そんな意志を全員に伝えているようではないか。

 そして、長田君のボトルネックをフィーチャアして始まったのは「Some Time In New York City」に収録された"John Sinclair"である。このギターによるブルーズ・リフに導かれて、夏木マリさんの登場だ。

e0093608_15372768.jpg 我々の演奏について話す前に、このアルバムがリリースされた時期とかなりリンクする内容で、昨年の12月に公開され、今はDVDとして発売・レンタルされている映画「Peace Bed アメリカvsジョン・レノン」を観ることをジョン・レノンへの理解を深めるためにもお勧めしたい。

 音楽家ジョン・レノンのことはよく知っていても、彼が人生の後半期に積極的に関わった反戦運動とそれがもたらしたニクソン政権との闘いについて、私もこれまでいま一つちゃんと知ることがなかった。
 が、この映画を観ることで、一人の芸術家のピュアな平和への祈念が、政治家や活動家達に取り込まれ利用され、そしてついには国家権力との闘争に巻き込まれていく事実を、多くのインタビューと未発表の映像を通して把握することができたのだった。
 そして、そんな中でもジョンの考え・主張はじょじょに進化し、生き続け、今でも(今だからこそ)受け止めるべきメッセージを内包していたのだと強く思った。

 そして、この映画の中で貴重な映像として見られる1971年の「ジョン・シンクレア支援コンサート」におけるジョン&ヨーコのライブ。
 ジョン・シンクレアはアメリカに現存する反体制派の詩人で、FBIのおとり捜査で2本の大麻煙草を所持していたとして、懲役10年の実刑を受け刑務所に服役していた。その彼へのシンパシーと支援のために作られた曲が"John Sinclair"であり、FBIはコンサートに潜入し、その歌詞を書き留めていたのだった。

 さて、スーパーライヴのステージに戻ろう。イントロで登場した夏木マリさんの強い存在感はどうだろう!そして、日本語訳で歌い始めたその声のシブさに、思わずマイッタ。私は大好きなボニー・レイットさえ思い浮かべたほどだ。とにかく、彼女の声とこのブルーズのマッチングは最高だとリハの時点で感じていたが、本番ではそれ以上のムードにうれしくなった。
 ノブさんからはあらかじめ電話でキーとアレンジの方向性を聞いていたが、彼のキー設定が的確だったのと、オリジナルのようなアコギによる感じでなく、エレキ・ギターでガツンとやりたい、という言葉にどれだけ勇気づけられたことか。

 なので、私としても、そこまでの流れを一変させるほどのインパクトとダイナミズムを持つバンド・サウンドを生み出したかった。結果としてオールマン・ブラザーズやリトル・フィートのような色合いになったが、まさに望むところであった。
 ちょっと自慢のようで恐縮だが、スタジオでのリハの時、この曲の演奏が終わるとすかさず、舞台監督の中村さんが「あまりにもカッコイイので、イントロをのばしてノブさんとマリさんの登場のシーンを作りたい」と言い出したのだった。

 この曲は上記のような複雑な因縁や事情を抱え込むものではあるのだが、こと演奏にだけ注目すれば、実にジョンらしいヒネリのある、普通の12小節では収まらないブルーズで、特にいわゆるシメの部分での「Got to,Got to...」の連呼を15回するところなどスリル満点なのだった。(実際にジョン自身もスタジオ・テイクで回数を間違えている)
 曲の後半はノブさんと我らがギター二人のソロをフィーチャアして、まさにオールマン風のジャムをやり、エンディングではノブさんのアイデアで「Got to」を10回やったところでカットアウトしようということになった。これがまた実にスリリングだったが、うまくきまった。

e0093608_1844569.jpg 2曲目の前に、パキスタンの少女からDream Powerに届いた手紙をマリさんが紹介するシーンがあったが、いつもは単独のコーナーとして組むところを、今回はそのまま2曲目の"Love"につなげる演出になった。これも、マリさんノブさん側のアイデアだったが、一つのまとまった流れとなり、とても良かったと思う。
 そして、歌われた"Love"はノブさんのジャンベと私のシンセのみでシンプルにまとめた。さりげない感じの伴奏だったが、一応それなりに細かい部分では工夫したつもりで、全体としては満足している。
 とは言え、マリさんの歌、ノブさんの堂々たるビート、どちらもさすがでした。やはり大ベテランのお二人の前では、まだまだ自分はガキです。

 それから、退場する時に、二人で手をつないでいたって?くぅー、なかなか魅せますなぁ。敬服。


詳細(10)
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by harukko45 | 2008-12-27 18:05 | 音楽の仕事

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