ジョン・レノン・スーパーライヴ2008の詳細(7)

詳細(6)からの続き

 Salyuさんとの2曲について。

 リハーサルが始まる前の段階で、Salyuさんからは直接電話をいただいて、今回の曲のアレンジについて、いろいろとお話をすることが出来た。その時出たアイデアは、2曲ともにオリジナルからは離れて、ミニマムな世界での表現をしたい、とのことだった。少し浮遊感のあるコード、あるいはピアノの弾き語りのような素朴さ、子守唄のような静けさ、等々、サウンドのイメージはいくつか出てきて、それを私の方でふくらますことになった。
 とても積極的に自らの方向性を提示してもらったことは大いに助かったし、こちらのやりがいも出てくるというものだ。

e0093608_13425425.jpg "Oh My Love"は「Imagine」収録の美しいバラード。ジョンとの結婚を前に子供を流産で失ってしまったヨーコが、その子に向けて詞を書き、それにジョンが曲をつけたとのことだが、今では普通にラブ・バラードとして広く認識されているかもしれない。
 それにしても、何とも幻想的なメロディが心に残るし、オリジナルでの各ミュージシャン達(ジョージ・ハリスンやニッキー・ホプキンス、クラウス・フォアマンら)のバッキングも極めて美しく、実に素晴らしい仕上がりだ。

 だが、今回は思い切って全く違うアプローチをした。「以前のスーパーライヴ(2003年)で、この曲をやったMy Little Loverの、漂うようなコード・サウンドを出してみたい」というSalyuさんのリクエストで、私がシンセ・パッドでオリジナルよりもテンションを効かせたコードを供給し、十川さんにもピアノのトーンを工夫してもらい、土屋さんにはアコースティック・ギターで優しいニュアンスを付け加えてもらった。

 My Little Loverのテイクを参考にはしたが、打ち込みによる音は使わなかったので、シンセやエフェクティヴなサウンドで埋めても、Salyuさんが目指す感覚、つまり、素朴なピアノをバックに歌う子守唄的ニュアンスは十分に生かすことが出来たし、もう一つのテーマである浮遊感あふれる幻想性も同時に存在したと思う。

 もちろん、Salyuさんの独特な歌声が、まさに「オーガニック」であり、心の内に深く入り込んでいくような歌い方だからこそ、このようなトライがうまくいったのだった。

 で、私としてこだわったのは、2曲目にうまくつなげて、切れ目なく一つの世界を作り出したかったことだ。そして、前半後半で演奏するメンバーを変えていくことで、音楽的な鮮度を維持し、それぞれのメンバーの個性も生かしたいとも思った。
 だから、"Oh My Love"のエンディングは土屋さんのさりげなくも美しいガット・ギターのソロで終わり、その後を私の不協和音で埋め尽くしたところに、教会のベルのサンプリング音がかぶって聞こえるようにした。もちろん、これも手弾きであるが。

e0093608_14403027.jpg 当然、このベルの音を聞けば、次の曲は"Mother"しかないと誰でもがわかる。
 "Mother"はジョンの、ジョンによる、ジョンにしか出来ない、まさにジョンそのものであるアルバム「Plastic Ono Band」のオープニングを飾るあまりにも有名な彼の代表作。この1曲だけでもジョン・レノンは永遠だとも言えるし、このような曲、このようなアルバムは彼以外には誰も作れない。日本語によるタイトル「ジョンの魂」はちょっとリアルすぎるものの、アルバムの核心をついているのだった。
 
 Salyuさんはわざわざこの曲のためにギターのみによるデモを作って送ってくれた。私はそのテイクのムードが気に入り、オリジナルのピアノ中心のサウンドでなく、エレキ・ギターでのバッキングを基本にすることにし、長田君にお願いした。彼は、Salyuさんのデモも聴き、自らイメージを高めてそのギター・サウンドを研究してくれた。
 本番ではディレイをうまく効かせたサウンドで、ボーカルに寄り添ったり、突き放したりと、巧みなバッキングを聴かせてくれて、実に感動的だった。また、3コーラス目からは古田君にループのようなイメージでドラムを叩いてもらい、私はSE的で少しノイジーなシンセ・サウンドでコードを弾きながら、後半はチェロのような低音でルートを強調した。
 ベースの押葉君には両曲ともあえて休んでもらったのだが、そのために微妙な空気感が生まれ、音響派やポスト・ロック的な仕上がりになったのだった。

 Salyuさんはリハの段階でこの仕上がりを気に入ってくれて、とても前向きに歌でいろいろアプローチしてくれたこともうれしかった。そして、ジョンの影響を受けながらも、ちゃんと自分の世界を作り上げて、新しい"Mother"を聴かせてくれたことを大いに賞賛したい。


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by harukko45 | 2008-12-26 15:42 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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