エディット・ピアフ〜愛の讃歌

e0093608_162038.jpg 昨年公開されていたエディット・ピアフの伝記映画だが、映画館では見る機会がなく、WOWOWで放送されたものの録画で、これまたなかなか時間が取れずに放置してあったのを、ようやく見る事ができたのでした。

 さて、で、感想は。

 正直、がっかりした。そして、思うのは音楽家、芸術家、ポップ・スター、ミュージシャン等の伝記、歴史ものは映画としてはかなりむずかしい題材だとあらためて思った。
 主演のマリオン・コティヤールは素晴らしいと思ったし、過去のドキュメンタリー等で見られるピアフの感じにそっくりだったし、まさになりきっていたと感じた。だから、アカデミー主演女優賞も納得だ。
 が、肝心のピアフは何だったのか。見終わっての印象では、酒とモルヒネ依存からくる精神不安定の破滅型人生ばかりが残る。

 ただ、前半はいい。幼少期の生い立ち、過酷な貧乏生活からルイ・ルプレーに見いだされて、じょじょにその才能が認められていくあたりは、実にワクワクさせられたし、そのルプレーが暗殺されてしまい、彼女が「死神」扱いされるくだりも、その後の人生を暗示するかのようだし、偉大なアーティストに必ず存在する大きな暗闇を浮き彫りにさせていたと思った。

 だが、問題は彼女の音楽がどれほど素晴らしいのか、という部分がその後全く薄れてしまうことだ。個人的に最も感動したのはやはり前半部分で、大道芸人の父のもとでストリートに立っているとき、客に催促されて思わず歌った"ラ・マルセイエーズ"だ。
 その後、フランスを代表する歌手として大いなる名声を得てからは、音楽よりも悲劇の人生の描写に終始してしまい、そのあまりにも長い「歌わない時」のピアフを見続けるのは大変辛かった。

 確かに、伝記映画だから、そのように彼女の人生をリアルに描き出していくのも当然だし、このような悲劇的な部分を知ることで、より感情移入できる人々もいるだろう。しかしながら、私にとって一番大事なのは、偉大なるピアフの歌であり、素晴らしい楽曲の数々なのだ。
 ひょっとしたら、この映画の制作者達は「ピアフの音楽の偉大さはすでに一般に熟知されている」という前提の下にこの脚本を作り上げたのかもしれない。仮にそうだとしても、やはりどう考えても音楽が足りない。"モン・デュー"も"パダン"も"群衆"も"アコーディオン弾き"も断片だけで、ちゃんと聞けないなんて!

 逆に言えば我々観客は、とんでもない天才には悲惨な人生がつきものなのは重々承知だ。にもかかわらず、そのような悲劇を乗り越えて、圧倒的な力で人々に喜びと感動を与えてくれるのが、彼らの音楽なのだ。
 つまり、このような酷い状況にあっても、生み出された音楽はこのように素晴らしいものだ、というのが見たかった。

 そういう意味においては、ストーリーとしては単純で、可もなく不可もなくではあったがジョニー・キャッシュの伝記映画"ウォーク・オン・ザ・ライン"の方が、少なくともキャッシュの音楽に浸る喜びがあった。

 とは言え、これでピアフの音楽に傷がつくものではない。今は、CDで聞かれる彼女の歌以外は全てミステリーであってもかまわないと感じている。
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by harukko45 | 2008-10-14 16:28 | 映画・TV

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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