ドン・ジョバンニ/ザルツブルグ音楽祭2006

 一昨日書いた「ミトリダーテ」と前後してしまったが、これもNHK-BSで放送されたものの録画を観ての感想だ。というか、「ミトリダーテ」のところでも少し触れているが、演出があまりにも酷くて、およそモーツァルト生誕250年をお祝いするどころか、彼の音楽に泥を塗るような最悪の上演であった。

e0093608_4381146.jpg 一応、出演する歌手もかなり有名人が集まっており、指揮も若手有望株のダニエル・ハーディング、オケはウィーン・フィル、場所もメイン会場といえる祝祭劇場であるにもかかわらず、これほどまでに酷い出来だと、ザルツブルグ音楽祭の権威やら信頼感など消え失せてしまうのではないだろうか。
 だいたい、クラウス・グート演出の「フィガロの結婚」も二度と観たくないが、それでも一応最後までつきあった。が、マルティン・クシェイ演出の「ドン・ジョバンニ」は、1幕目半ばでウンザリし始め、2幕目はもう途中でやめた。後は早送りして「地獄落ち」のところをちらっと見て、すぐにすっ飛ばし、ブーイングの嵐をちょっと期待して、カーテンコールの部分を見たものの、それなりの拍手喝采で、「ふん、つまらん、時間の無駄だったわい」ってところですな。
 まぁ、この演出の初演は2002年だそうで、その再演をやったわけだから、これはこれで地元では評価されたということなんだろう。だが、これが本当にいいのか?おおよそ美的センスが良いとは思えない。下着姿で何度も登場するたくさんの女性達は、ちっともセクシーでなく、それが舞台全体に妖しいムードを作り出すのでなく、ただただみっともなく、カッコ悪く、見苦しく、笑いさえ出てこない。
 
 それにしても、エクサン・プロヴァンスで同じ「ドン・ジョバンニ」の大名演をやってのけたハーディングは、序曲でその期待感をいだかせたものの、その後は全く心に響かず、これが同じハーディングなのか?と疑いたくなるような指揮、というか存在感全くなしで、大変失望した。 
 だが、これほど酷い演出を真ん前で見届けなければならない指揮者の位置にいては、音楽への情熱も意欲も薄れてしまうだろう、と同情する。ハーディングもこんな仕事を引き受けてひどく後悔したのではないだろうか。

 音楽が無惨にも破壊され、演奏家も歌手も共感も共鳴もせず、指揮者が全く求心力を持ちえない現場というのは、はなはだ不幸だ。なので、歌手それぞれの出来もひどい。だがこれも、全くキャストのことを考えていないひどい衣装を着せられて、ただただカッコ悪い姿で舞台に立たされては、かなりの部分致し方ないことだったろう。何とか我慢して歌いきるのが精一杯でしょう。
 また、ウィーン・フィルはオケピットで舞台を見ないですむので、ここは「我関せず」を決め込んだと思われる。それほどまでに覇気を感じない。とりあえず「お仕事、お仕事」で終始。逆に、この舞台に不要な美音を聞かされても、こちらとしては白々しく感じるだけであるから、それで良かったかもしれない。

 とにかく、私にとっては史上最悪の「ドン・ジョバンニ」。グートの「フィガロ」も見る価値なしだったが、これは即刻ゴミ箱行き。
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by harukko45 | 2008-05-07 04:34 | 聴いて書く

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