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サカイレイコ/南青山マンダラ(3)

 サカイレイコさんのマンダラ・ライブについて3回目とはね。曲について、いろいろ書き始めると止まりません。なので、もう少しシャンソン、エディット・ピアフにおつきあいを。

 2部の最後に2曲続けましたが、その一つは"私の神様/Mon Dieu"。1960年の作でピアフにとっては死がせまりつつある時期のもので、まさにそれを暗示するかのように、残された時間への激しい思いを感じさせる詞であり、素晴らしい歌唱です。特に「もし私が間違っているとしても、少し時間をください。もし私が間違っているとしても、しばらく時間をください。」という最後の部分など、やはり心が痛みます。
 しかし、シャルル・デュモンによるメロディは全体にちょっと甘めな感じがするし、オケのアレンジもかなり「コテコテ」でいま一つ共感できない部分が正直ありました。
 また、前半3拍子で進む曲が2コーラス目でいきなり4拍子のハネ気味のノリに変わるところは、あまりにも気分が変わってしまう感じでむずかしかった。
 そして、ピアニストのプレイも「それっぽすぎる」感じではありましたが、かなり上手だったので、今回はずいぶん参考にさせてもらったのでした。

 なので、思い入れが深かったレイコさんの歌に、私としてはあまりうまく伴奏できていなかったかも、と反省しています。もうちょっと良くやれたのではないか、との後悔も。
 そこで翌日、ピアフのライブ映像として残っているこの曲をYouTubeでチェックしたところ、その時のピアニストは全く違うアプローチをしており、レコーディング・バージョンよりもキリっとした演奏が私には厳粛な雰囲気に感じられ、とても好感を持ちました。
 それに、例の4拍子も3連のノリでハネるのでなく、カチッと4つ打ちっぽく弾いているのが、とても凛としていて良かった。全体に甘ったるい部分がなく、とても素晴らしいと感じました。これならば、イントロの静かだが荘厳な響き(この部分は素晴らしいアレンジです)に意味があるし、ある一つの力強い意志を曲に感じる事ができました。と言っても後の祭りで、まだまだ勉強が足りませんでしたが、次回までにはしっかりモノにしておきたいと思います。

 そして本編最後は、私としては「何て素晴らしい曲に出会えた事か!」と深く感動した"群衆/La Foule"です。

 元々はペルーのワルツ曲で、南米公演中に気に入ったピアフがフランスに持ち帰って、詞を新たに書き直させた作品。この詞の内容がまた素敵で、「祭りの中、群衆に押され引きずられて、偶然にも押し付けられて一つになった二人。彼女は見知らぬ彼に恋してしまう。そして、一緒にファランドールを踊り、幸せを感じていたのに、群衆に押され引き離され、彼を見失ってしまう。そして、彼には二度と会えなかった」
 そんな刹那の恋を歌うのですが、曲といいアレンジといい、実にドラマティックで美しい仕上がりであり、まさに3分間の映画として完成している傑作であると思います。

 とにかく、イントロからして美しい。このような楽想が浮かぶことに感動します。それに続くメロディとコードの流れ、バッキングのフレージングの美しさ、どれも文句のつけようがありませんが、何と言っても、いわゆる今風に言う「サビ」の部分でのワルツには、身も心も夢中になってしまいました。3拍子という「悪魔のビート」によって毒を盛られた気分で、アドレナリンが頭の中で出過ぎて、爆発してしまったかのようでした。
 私はこの曲のあっちもこっちもどこもかしこも、全てが好きであり、1小節1小節にいちいち感動してしまいます。なので、本番での演奏が、どういうことになったのかは今はあまり思い出せません。とにかく、最後まで演奏できて大きな拍手をもらえた事、久しぶりにとことん音楽にのめり込めた気がして、心の底からすごくうれしかったという事、です。
 それだけで、レイコさんには感謝です。彼女がピアフに負けない素晴らしい歌と強いオーラを発していなくては、いくら曲が素晴らしくても、こんな大きな喜びは得られていなかったでしょう。

 その後のアンコールでは、おなじみの"愛の讃歌/Hymne À L'amour"とこれまた大好きな"パダン・パダン/Padam...Padam"をやりました。これらについては、私のような新米シャンソン・ファンが、あえて語ることはないでしょう。

 さて、何とか私初めての「新春シャンソン・ショー」は無事に終える事が出来ましたが、もろもろの反省点をしっかり認識して、是非とも次につなげたいと思いますね。
 メイン・アクトとして素晴らしいパフォーマンスをしたレイコさんは、今後の飛躍が大いに楽しみですし、一番年長のくせに大ハシャギしていた私によく耐えて、しっかりとした演奏をしてくれていたベースの青柳くん、ギターの有田くんには心から感謝です。皆、私より20歳以上も若いのに、たいしたもんです!
 
Commented by nao at 2008-02-10 02:50 x
このレポートを読んでこのライブを聞き逃したのを悔やんでます。
次回は是非行きますので教えて下さい。
ピアフ、しびれます。
Commented by サカイレイコ at 2008-02-10 13:18 x
和田さーん、
お疲れ様でした!
ほんとに最初のリハから迷惑、心配かけどうしで、、
ありがとうございました。

私としては、なんというか、
心から信頼できる方に出会えたという感じです。
だから歌もいつもより、安心して
考えたり迷ったりせずに、ただ湧き出るままに歌えました。
これからもぜひよろしくお願いいたします。

しかし、、日記すごいですね(笑)
なんか私より、まったくシャンソンに精通してしまっているかんじです。。
Commented by harukko45 at 2008-02-11 22:18
naoさん、こんばんは。
音楽に関して私なんかより「うるさ方」の先輩のコメントに何とも恐縮至極ですが、このように未だに音楽やっているバカな後輩の活動にも興味いただいてうれしいです。今後ともよろしくお願いします。
Commented by harukko45 at 2008-02-11 22:32
おおっと、レイコ嬢お疲れ様でした!
オイラがあなたから受けたのは迷惑ではなく、素晴らしい刺激でした。おかげで、音楽の深みってものをあらためて感じさせてもらいました。感謝しているのはこちらの方です。
でも、自分の演奏に関してはまだまだです。次までにはもっと精進しておきますので、是非ともまたご一緒させてください!
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by harukko45 | 2008-02-09 03:11 | 音楽の仕事 | Comments(4)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


by harukko45