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サカイレイコ/南青山マンダラ(2)

前回からの続き...

 2月6日にあったサカイレイコさんのワンマン・ライブ第2部について。

 2部あたまは、レイコ嬢が自らピアノを弾きながら、オリジナル曲を3曲歌いましたが、1部からの良い流れを引き継いで、とてもリラックスしたムードでした。ピアノの演奏も安定してたし、何よりお客さんがとても和んだ感じになりました。特に3曲目にやった可愛らしいラブ・ソング(?)がすごく面白く、ずいぶん受けてましたね。

 さて、そんな雰囲気の中、我々バンド3名がゾロゾロと登場。この後は彼女の得意曲であり、クラシック・シャンソンの超名曲、ピアフの代表作が目白押しとなりました。

 まずは"アコーディオン弾き/L'accordeoniste"。素晴らしい曲です。1939年の作品でミッシェル・エメール作詞・作曲。場末のダンスホールのアコーディオン弾きに恋をした街の女の歌ってことなんですが、詞の内容が映画のようにドラマチックで、3コーラスごとに違った感情が盛り込まれているんですね。
 とっても美しいイントロに続いてのクープレは、すごく重い響きでこの恋の物語が語られていくわけですが、ここのピアノの低音の流れがかっこいいのでした。マイナー・ブルーズなんですが、苦しい思いを託したような半音進行が「くー、たまらん」のです。

 ここだけでも素晴らしいが、その後のJava(ジャヴァ)の部分はまさにフランスを感じさせてワクワクします。(ジャヴァは20世紀初頭フランスのダンスで、速いワルツをバル・ミュゼットが伴奏する/酒場のアコーディオン楽団ってとこ?。男女が接近して踊るため正式なダンスホールでは禁止されていたと言う)
 で、このクープレとジャヴァが3回繰り返されるわけですが、恋人のアコーディオン弾きは戦争に行き、そして帰ってこない。でも、彼女はそれでもダンスホールに出掛ける。だが、そこで演奏されているのは違う弾き手によるもの。イントロで奏でられた美しい旋律は、ここでは過激なアッチェルがかけられて、狂ったようなワルツになっています。それに耐えられない彼女の「やめて!そのジャヴァやめて!」で曲は終わるのでした。

 私はこの曲が大好きです。で、この日はとてもうまく出来たと思っていて満足しています。もちろん、もっと良くして行きたいですが、それまでの中では一番良かったと思いました。とにかく、自分が弾き出したイントロがすごく美しく思えたのが、幸せでした。それに、レイコさんはこの手の「ピアフもの」になると、何かが乗り移ったみたいに歌声に凄みを増すのでした。そんな彼女にぐいぐい引っ張られて、最後のアッチェルでは夢中になって弾いていました。

 続く、"ジョニー、お前は天使じゃない/Johnny, Tu N'es Pas Un Ange"。これまたシビレル名曲です。元々はアメリカの偉大なギタリストであるレス・ポールとメリー・フォードの曲ですが、それを気に入ったピアフがカヴァーしたのでした。

 レス・ポールは1940年代後半の時点ですでにオーバーダビングによる楽曲制作をおこなっていた人であり、この曲のオリジナルでもテープの回転を変えてダビングされたギターの高速オブリガードがメリー・フォードの歌のバックを飛び回っているのですが、何とピアフはこのパートをチェンバロで再現している(たぶん、こちらは一発録り)。このチェンバロ奏者がバカテクで、飄々と弾きまくっているのでありました。
 で、今回我々が参考にしたのは、そのピアフ・バージョンをイタリアの名歌手ミルバがカヴァーしたもの。こちらは、レス・ポールの高速フレーズがだいぶ整理され、メロディックなバッキング・フレーズとしてアレンジされていました。このミルバ・バージョンはなかなか仕上がりがよく、気に入りました。それと、何とも漂う「イタリア風」なサウンドが面白かった。私はフェリーニの映画が大好きで、そこでのニーノ・ロータの音楽も大好きなので、これは楽しかった。

 レス・ポールのオリジナルにあるアメリカ的なキラキラした感触から、ピアフによって哀愁と情念を深めたストリート音楽風になり、ミルバにより再びチネチッタ的な豪華でシャレた雰囲気を獲得していたのでした。
 ほんと、いい曲なんです。私はシンセで60年代イタリア映画風のオルガンと、エレピにちょっとだけレス・ポールを意識したギターの音を混ぜた2種類で、ミルバ・バージョンの再現を試みました。弾くのに少々込み入ったフレーズばかりでしたが、練習の成果もあり、かなりうまく行きました。アンコールがあったなら、何度でもやりたかったですけどね。

 ちなみに日本が誇るギターの名人、徳武弘文さんが聞きに来てくれていて、もちろんレス・ポールに関しても、この方ほど精通している人は他にはいないわけですが、終演後にお会いしたら、この曲の演奏をすごくほめてくれて、おまけに「刺激になったよ!」なんて言ってくれました。いやー、ほんまにうれしかったなぁ。

 何と、曲への思いだけで、やったら長くなってしまった。まだ、続くっと...
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by harukko45 | 2008-02-08 01:40 | 音楽の仕事 | Comments(0)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


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