サカイレイコ/南青山マンダラ

 昨夜は雪の中、サカイレイコさんのワンマン・ライブで演奏してきました。彼女は前にも書きましたが、現在はシャンソンを中心に歌いながら、自作のオリジナルも同時に披露するという活動を続けていて、いわゆる「シャンソン・パブ」やシャンソン系のライブハウスなどで、ほぼ毎日のように歌っていますね。

 そんなエネルギッシュで、そして実にアーティステックな彼女のワンマン・ライブでありましたが、今回はある意味「パンク・シャンソン?」風な意識でのトライとなりました。それは集まったミュージシャン、私をはじめ、ベースの青柳くん、ギターの有田くんというメンバー3人ともシャンソンの達人というわけでなく、どちらかと言えば別のジャンルの出自であったことが大きい。彼女としては、いつものシャンソンに手慣れたミュージシャンにない「何か」を期待しての挑戦であったのでした。

 というわけですから、私にとっても初めて演奏する曲ばかり。正直、譜面と音資料をもらってチェックしていた時には少々ナーバスな気持ちになりましたが、逆にそのせいもあって曲を把握するためによく練習し、いろいろと準備もすることにもつながったのでした。
 そして昨夜、本番を無事に終え、何ともいえない満足感に浸っている感じであります。やれることは全てやったし、不安になる気持ちも強かったけど、実際のステージではいい緊張感と同時に音楽に入り込んで演奏している自分がいて、すごくうれしい気持ちになりました。

 オープニングの"バラ色の人生/La Vie En Rose"は1946年のエディット・ピアフ作詞、ルイ・グリェーミ作曲で、世界中の歌手にカヴァーされたピアフの代表作。
 オリジナルはスウィング・ジャズのリズムとホーン・アレンジに、ヨーロッパ的ニュアンス濃厚なストリングス(特にVerseの部分)の響きが印象的であり、そのバックに歌うピアフはアメリカの偉大なジャズ歌手をも凌駕しかねない、堂々たる風格。ピッチや感情表現は元よりですが、私としては彼女のグルーヴ感の良さを特に強調したい。
 歌のノリが素晴らしいので、バックの演奏も逆に引き立つ。ミュージシャン的な視点でわかりにくいかもしれませんが、実際のパフォーマンスにおいて「ボーカリストのノリ」はとても重要です。
 昨夜は私のピアノだけでレイコ嬢が歌いました。シンプルにやると、それだけメロディの偉大さがよくわかります。ですから、かなり冷静に集中して弾きましたが、不思議なくらい楽しい気持ちにもなりました。満員のお客さんの暖かさも伝わってきたし、レイコさんの歌が会場に響いていく感じが気持ちよかった。

 続けて"かわいそうなジャン/La Goualante Du Pauvre Jean"もピアフのレパートリー。バンジョーが入ったデキシー風なリズムにアコーディオンの響きが、シャンソンの多国籍的要素を感じさせて面白く、単純なメロディの繰り返しを飽きさせないように、スパイク・ジョーンズの冗談音楽風にいろんな擬音を駆使したオリジナル・アレンジが、これまた良いのです。
 で、今回はシンセでそれっぽい効果をトライしようと思いました。それと、レイ・チャールズの"What'd I Say"のリフをぶち込んでみました。ま、この辺は個人的な趣味ですけど。で、最後はヨーロッパの遊園地や公園なんかで見かける「手回しオルガン」風なサウンドを目指しました。短い曲で、テンポも早くてあっという間でしたが、なかなか楽しめました。
 3曲続きで、レイコさんのオリジナル"けげんなアロマ"は、大胆にも打ち込みのパキパキ・ドラム・ループを組んで、それに合わせてメンバーには演奏してもらいました。最初はちょっと「浮くかも?」の不安があったけど、「そんなの関係ネェ」的勢いでやり倒してしまいました。あえてこじつければ、フランスのクラブ・ミュージックは世界でも高く評価されていますし(?!)。
 ここでは、有田くんのカッティングと青柳くんのウッド・ベースによるファンク・リフがいい効果になってくれましたね。

 4,5曲目はクラシック・シャンソンの有名曲が続きました。"ふたつの愛/J'ai Deux Amours"は、1931年に作曲家ヴィンセント・スコットが当時パリのミュージック・ホールで一世を風靡していたアメリカ黒人歌手ジョセフィン・ベーカーに贈った歌。で、内容は2人の男性を愛する不倫ものではなく、故郷とパリへの愛を歌った内容です。だから、曲自体にブルーズやニューオーリンズ・ジャズ風のムードが満載なのです。ですから、演奏はそちらの要素を強調するように心がけました。いわゆるラウンジ風のジャズにはならないように。
 そこにねちっこいフランス語が絡むのが面白いのではないでしょうか。

 "私の回転木馬/Mon Manège À Moi"は1958年の作品。ジャン・コンスタンタン作詞、ノルベール・グランズベール作曲のピアフ作品。グランズベールは"パダン・パダン"の作曲家でもありますね。この人の曲は非常にヨーロッパ、特に中央ヨーロッパのムードが充満しているとでも言いますか。何とも言えぬ哀愁感と楽しさがないまぜで私をクラっとさせる、歌詞の冒頭の「あなたは私をふらふらにさせる」がまさに曲からあふれてくるのでした。個人的にとても共感できる作曲家です。
 ですから、全くアメリカ的ムードは皆無なのですが、レイコさんはピアフのオリジナルよりも急速なテンポを要求したので、何となくカントリー的なリズム・ニュアンスになりました。あらためて考えてみれば、ポルカのようなヨーロッパのダンス・ミュージックが移民によってアメリカに持ち込まれ、それがアメリカン・ミュージックのある形になっていくわけですから、この曲をカントリー風に捉えるのも悪くないと思いました。

 で、激燃えしました、これは。テンポが早くて、テクニカルに弾かなくてはならない部分があったせいもあるけど、やはり曲が「ふらふらさせる、夢中にさせる」からに他ありません。

 さて、1部の後半はレイコさんのオリジナルを2曲。"僕の心を乱す人"と"欲望とドライブ"、"僕の心.."は有田くんのアコギを中心に、"欲望...”は私のキーボードを中心にやりました。彼女の詞と歌い回しを生かせるように注意しましたが、お互いいい緊張感を保ってできたのではないでしょうか。どうしても、シャンソン有名曲を期待されているお客さんには異質に感じる部分もあるかもしれません。でも、根っこにある曲調は結びついているものがあると思っています。後は表現の仕方をもっと工夫していくことでしょう。

 そして、1部最後は"毛皮のマリー/La Marie-Vison"で、イヴ・モンタンの歌で有名なんでしょうか。これまたデキシー風ですが、途中でルバートでクープレが入ってくるのが、いかにもシャンソン風です。今回は、急速テンポのロック系というレイコさんのアイデアで、ギターはかなり「ガチャガチャ」と弾いてもらってフィーチャアしました。そのカッティングだけ聞くとデビュー当時のザ・フーみたいでしたが、正直、これはオーソドックスなアプローチとロック風なチャレンジが完全には融合できなかったかもしれません。
 こういうのって、クイーンのフレディ・マーキュリーあたりがやりそうでもあるわな。だから、もっと大胆にデフォルメしたアレンジにしても面白かったか? その辺は次回までにアイデアを練っておきましょう。

 さて、長くなったので、つづく...と
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by harukko45 | 2008-02-07 17:10 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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