ジョン・レノン・スーパーライヴ2007の詳細(5)

 詳細(4)からの続き...

 私は斉藤和義という人の歌が大好きだ。この人は何とも魅力的な歌を歌う。立ち振る舞いも、リハーサルや出番前なんかに何気なくしているムードもいい。けっして、いい男風でも気取っているわけでもなく、逆に全く気遣いない感じがカッコイイ。だからって、回りの人間を寄せ付けないようなバリアを張っているわけじゃない。

 実は去年のスーパーライヴでの打ち合わせの時から、その朴訥としたような(?)雰囲気が面白く、それでいて一緒にやった"Free As A Bird"と"I Am The Walrus"では、内面からあふれるような情熱を感じさせてくれ、たぶん昨年の全レパートリーの中でも、白眉の仕上がりだったと思っている。

e0093608_0481283.jpg そして今年、彼は去年本当はやりたかったという名曲中の名曲"Jealous Guy"を自らの日本語詞で歌った。それも、彼のMCによると「たぶん、このようなことを歌っているのであろう」と俺訳したもののようだ。でも、その詞が何ともキュンとくるのだった。やはり自分の言葉で伝えようとする姿勢はとても大事なことだと思った。とにかく、スタジオでのリハーサルの段階から、この弾き語りにはみんなシビレていたのだった。
 また、本番ではギブソンの12弦ギターを弾いてくれたのだが、これがまた良い音だったなぁ。そんなこんなで、個人的にはかなりウットリと聴き入ってしまった。

e0093608_0505987.jpg だが、そこでボーっとしていてはいけない。続く2曲目では我々がサポートしなくては。だが、それにしても、またシブい選曲になったものだ。"Baby It's You"は女性R&Bグループのザ・シュレルズが1962年にヒットさせた曲で、バート・バカラックら3人の共作。
 ビートルズはデビュー・アルバム"Please Please Me"でカヴァーしているが、このジョンのリード・ボーカルが実に良いのと、バックのポール&ジョージの「シャラララ」コーラスがこれまたゴキゲンで、正直オリジナルよりも完成度が高く(まぁ、シュレルズ・バージョンの切ない感じがいかにもガールポップ風ですが)、これをしてビートルズ作の曲か、とも思えるような仕上がりだった。

 また、蛇足だがゲイル・マッコーミクがリードボーカルのL.A出身のバンド「スミス」が69年に、かなりハードでブルー・アイド・ソウル風なアレンジでカヴァーし、全米トップ10に入るビッグ・ヒットにもなった。(これもなかなかカッコイイ出来で、私は大橋純子さんのライブで、かつてよくやっておりました!)
 他にはカーペンターズもやっておりましたな。(これまた、全然別曲のように、お兄ちゃんのかなり凝ったアレンジになっておりますので、聴き比べてみて下さい。)

 今回はもちろんビートルズ・バージョンです。で、とにかくこれはまずは「シャラララ」コーラスがキマラないことには話にならんわけ。イメージ的には柔らかく歌っているようですが、実はビートルズはかなりシャキッとやっております。裏声かなんかでフニャフニャ歌っておらんのです。そのキビキビとした中に、何とも言えないセクシーさを出す、これがむずかしいんだよな。
 とにかく、斉藤さんのリード・ボーカルの良さをぶち壊さないように、押葉、土屋、和田で頑張りました。それにしても、斉藤さんが「エッチなミュージシャン」とも呼ばれる理由もわかる気がしました。こういう曲のボーカルがまた色っぽいわけだ。

 それと、特筆すべきはこの時斉藤さんが弾いてた「Silvertone」の黄色いギター、ニューヨークに仕事で行った際に購入したビザールものだそうですが、これが見た目も音も両方いい味出してくれた。おかげでキーボードのバッキングはほとんど必要のないサウンドになりました。リハの時もみんなでこのギターを囲みながら、あれやこれや話がはずみましたっけ。
 というわけで、ここでも私としてはコーラス・ワークがうまくいって、とてもうれしく感じましたし、実に気持ちのいい演奏になったと思いました。そして、何と言っても斉藤さんの素晴らしいボーカルに大感謝であります。

 さぁ、次はいよいよ奥田民生さんです。

 ふらっと現れてセッティングし始めるという、さりげない登場に、自ら「あまりにもカリスマ性のない」と評されてましたが、それがかえって奥田民生の奥田民生たる所以(?)か。
 奥田さんは何と言ってもリラックスさせてくれますし、根っからのミュージシャンであり、音楽を楽しむことをけっして忘れない感じが素晴らしい。だから、妙なアーティスト気取りなど、彼にとっては「どうでもいいこと」なのでしょう。そんなことより演奏して歌ってしめすよ、それが彼だと思います。

e0093608_0524081.jpg そんな彼の1曲目は軽快なロックンロール、L.リチャードの"Slippin' And Sliden"。ジョンは"Rock'n'Roll"でカヴァーしていますが、当然ビートルズ時代から歌い続けていた曲でしょう。この"Rock'n'Roll"はジョンのアルバムの中でも、個人的には最高に好きなものの一つで、意外に一番聞いているかもしれない。やっぱ、ジョンはロックン・ロールがムッチャ似合うのですよ、ハイ。
 ですから、盛り上がらないわけがありません。曲の時間としては2分半ぐらいで終わってしまうのですが、中味は濃いのです。十川さんは実にゴキゲンなロックンロール・ピアノを聞かせてくれましたし、オッサンのソロももちろん渋かったし、私はいかにもビートルズ風あるいはフィル・スペクター風とも言える(いや、元のリトル・リチャードもろだわ!失礼。)サックス・アンサンブルをシンセで再現し、途中でオルガン・ソロも弾かせてもらいました。

 こういうものを歌う奥田さんはさすがですね。ロックンロールをこれだけカッコよく歌いこなせる人って、今、他にいるかな?彼が歌うとノリがぐっとしまってくるのでした。その辺はドラムの古田君との相性もバッチリってとこです。

e0093608_0535197.jpg とにかく楽しさ満載の奥田コーナーにもう一人素敵なゲスト、木村カエラさんを迎えての2曲目は何と!何と!"Revolver"の9曲目(B面の2曲目)に収録された"And Your Bird Can Sing"であります!
 私、個人的に何とも好きなんですね、これ。まぁ、よく考えれば他の名曲の数々に比べれば、どうってことない作品なんだけど、何とも、何ともねぇ、好きなんですよ。(ちなみに"For Sale"に入っている"Every Little Thing"もそういう感じで好きな曲、これはポールの曲だけど、リードボーカルはジョンです。)

 で、何がいいのかって、ツイン・ギターで延々とハモりながらメロ弾いているわけです。これじゃ、インストじゃんってぐらいね。ビートルズ・バージョンはこれがまた何ともタドタドしいんだけど、それがまたいい(?)。

 だが、それだけじゃない。ビートルズのボーカル・ハーモニーのアレンジはいつも凝っていて感心させられますが、例えばビーチ・ボーイズのような天才の考えた造形美あふれるものというよりも、いかにもライブで鍛えたバンドらしい、ザックリしていながら実に効果的なコーラス・ワークと言えるでしょう。
 それが、この小曲でも肝になっています。曲の頭ではジョンのリードの上と下についていたハモが最後の部分ではいきなり上に二つのってきて、これがフォーク・ロック風なムードを一気に醸し出してくれるのでした。こういうのはバーズの影響だったのか?正直、ここがシビレちゃうわけね。

 さて、本番では奥田、土屋、名越によるトリプル・ギターでのアンサンブルになりました。豪華ですなぁ。それに奥田さんはジョンが使っていた(?)、とにかく曰く付きのリッケンバッカーをこの日のために、わざわざ借りてきておりましたからね。
 また、例のハモ・パートはカエラさんの参戦で、ずいぶん強化されました。彼女は全く緊張することを知らないらしく、飄々とハーモニーをつけていましたね。それと、1stタンバリンの大役も軽々とこなしてくれました。私は2ndタンバリンとして、細かい裏打ちや16ビートをやっておりましたが、それに夢中になりすぎて、最後の上に移行するハモを外してしまいました。これは、ひどくショックでした。あんなに練習してたのに!もう、残念至極です。でも、とりあえずカエラさんは全く動じずに歌ってくれていたので、何とか一命は取り留めました。

e0093608_054349.jpg そして、その宇宙人のような存在感のカエラさんをフィーチャアしての3曲目は、出ました"In My Life"。誰もが知ってる名曲であります。カエラさんと奥田さんが一緒に歌うためにキーはお互いに譲り合った感じでAからBに上がりました。でも、この程度なら原曲のムードからあまり遠くはなりませんでした。なので、ほぼオリジナル通りに演奏することできました。
 例のバッハ風ピアノ間奏は、十川さんと私とで連弾じゃないか、とにかく2人で再現しました。十川さんも私も同じヤマハの音源を使っていたので、音色を合わすことができたのも良かったです。

 それにしても、実に楽しい3曲でした。ある意味「古き良き」ビートルズ、一番仲の良かった時代のビートルズを感じさせるパフォーマンスになったのではないでしょうか。それが、いかにも奥田さんらしい、気の利いた選曲だったと言えるでしょう。

詳細(6)へ続く。
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by harukko45 | 2007-12-17 00:55 | 音楽の仕事

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