ジョン・レノン・スーパーライヴ2007の詳細(2)

 スーパーライヴの詳細(1)からの続き...

 さて、本編のトップバッターとして今回初登場となる「くるり」のお二人がステージに立った。岸田さんはリハの時と同じ、リッケンバッカーの12弦ギター、佐藤さんもベースを演奏しながらのパフォーマンスになる。

e0093608_5465529.jpg 彼らとの1曲目はビートルズ1966年のアルバム"Revolver"に収録されている"She Said She Said"だ。いかにも彼ららしい選曲とも言える。ただ、同じ"Revolver"には同系統と思えるサイケ曲として"Tommorow Never Knows"もあって、ビートルズ・ファンの好みは別れるところ。私でさえ、このアルバムでの代表曲の一つとして上げる際、これまでなら"Tommorow..."の方になってしまう。

 だが今回、実際にバンドで演奏してみたら、CDで聞くと意外にあっけなく終わってしまうような印象だった"She Said..."が、実は骨太なロック・チューンであり、ライブ向きの派手さを持った作品として、かなり現代のロック・サウンドにマッチしていることがわかったのだった。簡単にいえば、かっこよさに気がついたってことね。

 それと、極めて面白かったのが、インド風のムードを醸し出したイントロのファズ・ギターに始まり、フォーク・ロックっぽいニュアンスのギター・サウンドでウキウキと進んで行くと、途中で突然3拍子になってしまうところ。ジョンの曲によくある変拍子だけど、ここでの3拍子がよく聞くと、えらく優雅に演奏されていたのだった。ヨーロッパの舞踏会で演奏されるようなワルツのノリが明らかにそこにあった。それをちょっと意識すると、この部分の演奏がもの凄く楽しい気分になった。
 この辺はウィーンでレコーディングしてしまう「くるり」としては百も承知だったのかもね。

 また後半、エンディングに向けて、岸田君と名越君のギターと十川さんのエレピがサイケ色炸裂の演奏で、カオス状態を作り出したのだった。

e0093608_54778.jpg 続く2曲目は、"Rubber Soul"からの"Nowhere Man"。これはまずは何と言ってもボーカル・ハーモニーの部分。岸田、佐藤のご両人に、私、押葉、土屋で各パートをダブリングしながら頑張ってみました。「くるり」のお二人がいない時もバンド側はよく練習しましたので、本番ではかなり良かったんじゃないでしょうか。最後の最後に出てくる(いつものように)ポールの、主メロを食ってしまう高音部のパートも佐藤君と押葉君の奮闘により、うまくいったと思うよ〜ん。

 それと、1コーラス後に登場するジョージのギター・ソロ部分、これを土屋さんと岸田君と2人で弾いたのでダブリングされてあるスタジオ盤の雰囲気にも近かったのでは。岸田君は、このギターをこれこそまさに「完コピ」する、と気合い入ってましたっけ。

 もう一つ、頭のコーラス後に登場するジョージのフレーズはEのコード上で9thを強調した感じで弾かれていますが、土屋さんの解説によると、7thも鳴っているとのこと。確かに、CDで聞くと一瞬「オッ?!」と思わせるのは、そのせいなのでした。でも、一度耳にするとその響きでなくてはならない気がするのが不思議だし、それがビートルズなのでしょう。

 でも、とにかく私としては"Nowhere Man"のコーラスが、かなりうまくいった手応えを感じ、実に気分がよかったなぁ!

e0093608_13254318.jpg さて、お次は一昨年に続いて2回目の登場であるBonnie Pinkさん。そして曲は"What You Got" 何この曲?どのアルバムに入ってんの?"Walls And Bridges(1974)"の4曲目、うーちょっと見過ごしてましたなぁ。
 "Walls And Bridges"はジョンの「失われた週末」時期のアルバムで、正直、個人的にはほとんど印象になかったし、あまり好きとは言えない。それに、ジョンにはどうにも異質に感じてしまう16ビートが、やはり腑に落ちなかった。

 実際、バンドだけで合わせた時に、ひどくつまらない感じがしてしまった。ただやっていては、何の取り柄もない軽薄なディスコ・サウンドになりそうだったのだ。そこで、全員にもっと「やさぐれて」もらうことにした。小ぎれいにやったってダメだ、もっと汚く。そんな会話に皆すぐに反応してくれて、じょじょにエゲツないサウンドに変わっていった。
 不思議なもので、意識がちょっと変わっただけで、やっていることはそれほど変わっていなくても、ずいぶんと印象の違う音楽になるものだ。それに、Bonnieさんが歌う事で、ちょっとした「美女と野獣」効果が加わり、我々が目指した「やさぐれ」サウンドが具体的に表れてきたのだった。
 そしてとどめに、古田君のローディ・チームにパーカッションで加わってもらいました。彼らは裏方の仕事をしながら、突然として演奏にも参加ですから、ほんと、ご苦労様でした。でも、すごく効果的でしたよ、ありがとうね!

 さて本番では、Bonnieさんのキレのいい発音と、それが生み出すノリが実に気持ち良く、この曲のグルーヴをさらにうねらせてくれたことが素晴らしい。それに、こんな言い方をしては失礼かもしれないが、彼女のボーカルは一昨年よりも数段良くなっていた!
 もとより声の良さとステージングの魅力はあったが、それに加え歌自体が明らかに良くなっているのに驚いたし、感心した。素晴らしい成長ぶりである。
 おかげで、かなりの「おバカのり」で盛り上がらせてもらった。最初の彼女によるカウント「On~e」がなめきっていて良かったしね。

 それと、この曲で歌われている内容、「誰も失うまでは自分の持ち物を知らない/失ってはじめてわかる/ああ、もう一度チャンスがあったなら」という嘆きが、パーティっぽいビートで歌われると、まさに「失われた週末」を感じさせて切なくなる。だが、その「失ったもの」の大事さを悟ったジョンはニューヨークに戻り、ヨーコと再会してもう一度やり直すのだ。

e0093608_5473177.jpg それがBonnieさんの意図だったなら、とてもよく考えられた構成で、これまた感心するし、素晴らしいことだ。2曲目は"Double Fantasy"のオープニングを飾った"(Just Like)Starting Over"だからだ。
 "Starting Over"は発表直後にジョンの死があったために、どうしても哀しみを感じながら聞いてしまうが、内容的にはタイトル通りに極めて前向きな歌で、2人での再出発を歌っているものだと思う。だが、今回Bonnieさんのためにキーを上げたために、元のイメージよりも軽い感じになってしまい、何とも可愛らしいオールディーズ・ソングになりそうだった。なので、サウンドの重心を低くして、よりザックリしたアプローチを試みた。

 具体的には、いかにも50年代風のピアノの3連カッティングをやめ、十川さんにはウィーリッツァー風のエレピで全体をつつんでもらい、シンプルなパターンだったギターは低音部も鳴らしてシャッフルのノリを強調してみることにした。

 この方向性は大正解だったと思っている。私だけでなく、皆がアイデアを出し合ってBonnieさんのボーカルを生かす、実に男性的(!)なバック・サウンドになった。そして何より、Bonnieさんの歌声が気持ちよく、この曲がとても彼女に合っていると感じたし、後半、のびやかなフェイクを聞かせてくれたことで、全体も盛り上がり、終わってしまうのがもったいない気がしたのだった。何と言うか、"Starting Over"の別の魅力を引出すことができたのではないかと思う。
 明らかに前半のピークを作ってくれたBonnie Pinkさんに、感謝であります。

 詳細(3)
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by harukko45 | 2007-12-14 05:55 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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