9月のまとめ/仕事編(4)

 まとめ仕事編で4回目っていうのもやっぱり変ですが、もうしかたないですな。

 で、この9月で指の故障とともに苦しんだのは、ここで書いて行く打込みの仕事であります。正直、音楽を生業とするものとしてはひと月ライブ3本だけでは少々心もとない。なので、家で出来る仕事ということでデモ用のアレンジとオケ作りの依頼をお引き受けしたのでした。
 引き受けたのはそれだけの理由でなく、前々からのお話もあり、個人的にも興味を持ったアーティストだったので、積極的にアプローチしたのでした。

 それは、まだ20代のシャンソン歌手であるサカイレイコさんです。ひょっとしたら現在の日本シャンソン界に詳しい方ならご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。日本におけるシャンソンというと、とてもコアなファンがいて、ある意味アンダーグラウンドでも実に根強い人気を持っているジャンルと言えるでしょう。
 ちまたでは秘かな「シャンソン・ブーム」との噂もありますが、現在公開中のエディット・ピアフの伝記映画へのキャンペーンとしての仕掛けとの話もあり、その実態はいかに。ただ、我々のプロジェクトはそのような流れと関係なく進んでおり、何よりもレイコさんの歌い手としての魅力に興味を持ったからなのでした。

 ただ最初、プロデューサーは彼女の日本語オリジナルとともに、ブルーズ歌手っぽいイメージを模索していたのですが、彼女の本格シャンソン、つまりエディット・ピアフなどのクラシックものを聞いたことにより、方向が一転、まじにシャンソンをやろうとなったのでした。私もライブを観に行きましたが、確かにピアフを歌う彼女がとても新鮮であり、私の好みとしても今さらブルーズというよりも「おフランス」する方が、ずっとワクワクさせられるではないか!と共感してしまったわけです。

 とは言え、シャンソンなる定義は日本独特のものがあります。フランスにおいてはシャンソンとは単に「歌」であって、特別な楽曲やジャンルを指す訳ではないのです。ところが、我が日本においては70年代以前のフランス語曲のみについてだったり、いわゆる越路吹雪さんらが歌われた日本語訳詞のフランス曲によるイメージが強く残っていて、最近のフランスものはシャンソンとは呼ばれていない傾向にあるようです。
 ですから、現代における新しいシャンソン歌手、それもオリジナルを引っさげ、同時にピアフを歌うというのはどういうことになるのか、いろいろ頭を使わなければいかんわけです。
 しかしまぁ、要はたかだか音楽、実際にブワァーっとやって聴き手をねじ伏せてしまえばいいのですから、難しいことやら今後の戦略はプロにお任せして、私は自分なりに面白く感じて良いものに仕上げていけばよろしいのです。

 それで、彼女のオリジナル2曲とピアフの名曲「パダム・パダム」を作ったのでした。このうち、最初にもらったオリジナルは割と短い時間でイメージが浮かんだのですが、実際の作業は指の不自由さと前回までにお伝えした大きなライブの件もあり、なかなかサッサとは進みませんでした。それと、ついつい細かい部分に固執してしまう悪い癖が必ずこういう時には出てくるので、余計な回り道もしてしまうのでした。

 また、ピアフの「パダム...」に関しては、これはもうオリジナルのノルベルト・グランツベルク作品が大変素晴らしく、ピアフの歌もオーケストラによるアレンジも一体化して完成されているので、これを解体するなど、とてもじゃないが冒涜になりかねないようにも思えたのでした。
 なので、基本構造や印象的なフレーズはオリジナルのままにして、サウンド面でのカラーリングの方にこだわってみました。ある意味、最近のオペラの演出の傾向である「18,19世紀の脚本を21世紀の舞台で展開するための現代化」に近い感じです。
 (今調べてみたら、作曲家のグランツベルクはポーランド生まれでオーストリアのヴュルツブルクの音楽学校から同地の合唱指揮者を経て、映画音楽家になっていった人物のようです。ナチの台頭によりパリに逃れ、その後ピアフのマネージャーらに知り合ったようです。ピアフに提供したのは「パダム」とともに「私の回転木馬」が有名です。私がやけに惹かれたのは、彼の生い立ちからくる中央ヨーロッパ的な感触だったのかもしれません。)

 ただ、やればやるほど、聞けば聞く程、深く奥行きのあるピアフの世界にはまってしまう自分がおり、結局はオリジナルと同じになってしまう危険性があって、非常に悩みました。少しでも新しさを付け加えたい、何とかそこが聞こえてこなくてはならんのでした。

 もう1曲のオリジナルはレコーディング3日前に届いて、それからだったので時間がありませんでした。しかし、逆にイメージはすいすいと浮かんでとてもスムースな仕上がりになりました。とは言え、ずっと徹夜での作業でしたが。

 さて、そんなこんなでステージのあった日以外はずっと睡眠不足でコンピューターとにらめっこの「おフランス」な作業で、再び神経症になりそうでしたが、28日にレイコさんが歌を入れてくれて命が吹き込まれたようでした。その出来にはお互いなかなか満足しました。それに次を感じさせました。これで、完成じゃない、まだまだ成長するって予感をスタッフも私も感じたのでした。だから、あんなに頑張ったかいがあったな、と今は喜んでいる次第です。
 これが世の中に日の目を見るのか、皆さんのお耳に達することがあるのかどうかはわからないけど、まずは第一歩を果敢に踏み出したってところです。

 てなわけで、現在の私はまだ耳が「おフランス」しています。だいぶハマっております。何枚かご紹介します。

e0093608_0262624.jpg 昨年発表されたシャルロット・ゲンズブールの新作。ナイジェル・ゴドリッチのプロデュースでフランス・テクノの注目株(?)Airが楽曲提供している。リナンさんはずいぶん前から「良い良い」とおっしゃってましたが、やっと私も理解しました。これは面白い、そして新しいです。

e0093608_0333118.jpg そのシャルロットの父上で、「エロおやじ」の称号もえらくカッコイイ、セルジュ・ゲンズブールのベスト盤。すごいです、このオヤジ。ブットンでます。なるほど、Beckが好きなわけです。でも、Beckにはない本物のエロが存在しています。私もかなりリスペクトです。

e0093608_0385133.jpg そして、何はなくともエディット・ピアフは聞いてみましょう!このように素晴らしい伝説の歌手を聞かないで死んでしまうのはよろしくありません!いろいろCDがあるでしょうが、ベスト盤1枚手元に置いておけばいいのです。左のアルバムは20曲入りでもちろん名作ばかりです。
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by harukko45 | 2007-10-01 00:46 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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