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レコーディング後記その1

 前回5月15日に更新して以来、約一ヶ月以上このコーナーをお休みさせていただきましたが、大橋純子ニューアルバムのレコーディングもほぼ完了のめどがたちましたので、ぼちぼちレコーディング後記などでも書いてみるかという余裕が私にも生まれてきました。そこで、今後何回かに分けて、今回のニューアルバム・レコーディングの顛末、もろもろをお話することにしました。

 さて、その前にとりあえず前回のtoto予想の結末は、3等でありましたことをご報告いたします。また、チャンピオンズ・リーグの決勝はバイエルン・ミュンヘンの勝利、また我らが日本代表がコンフェデレーションズ・カップで見事準優勝、などなどサッカーファンにはたまらないひとときを味わうことができました。しかし、そんなムードを一変させるマネージャーのツチダさんからの電話が・・

 「あ、もしもし和田さん、おはようございます。実はですね、レコード会社との話がまとまりまして、ジュンコさんのアルバムのレコーディングが決定いたしました。」

 「うむ、なんとそれは願ってもない朗報ではござらぬか!でかした!でかした!」

 「はい、そうなんですが、発売が8月末ですので、7月10日辺りには完成させなくてはなりません。」

なに!ということは曲集めにアレンジの打ち合わせ、などなど早急にミーティングを持たねばならぬではないか!

 その後、ケンさんより各メンバーにメールが届く。

 「アルバム制作にあたり、楽曲を提供したい方は今月中(5月)に聞かせて下さい。今回はJazz/FunkからStevie Wonderへの道がテーマです。」

 むむっ!Jazz/Funk系の元祖的存在であるStevie Wonderの名前は知らない人はいないであろうが、それをテーマに掲げるとは何と大胆不敵な!確かに70〜76年にかけての彼の素晴らしいアルバム(Talking Book/Inner Visions/First Finale/Key of Life)は今でもPops/R&B界における金字塔であり、私も当時すり減るほどアナログ盤を聴き倒したし、深く感銘を受け、その後音楽活動にも影響を与えている。まさにやりがいのあるテーマではある反面、偉大なるStevie Wonderを眼前にして、少々身がすくむというきらいもなきにしもあらず。ま、とにかく挑戦ではあるはな。

 まずは、ジュンコさんへの楽曲を私も作り始めることとなった。妻の恵子は前作“Time Flies”でも2曲書いているので、また二人でデモ・テープの制作にとりかかる。順調に作業は進んで、2曲仕上がったが、あらためて聴いてみるとそれほどStevieを感じさせる雰囲気ではないなと思いつつも、かといって、彼のコピーをつくってもまるで意味がない。よって、彼の音楽へのリスペクトを感じ、インスパイアを受けながらも、自分達の個性を失わないようにしようということになった。つまり、これでOK、ジュンコさん、ケンさんに聴いてもらいましょ!

 5月25日、この日は「軽音」の日。「軽音」とは、我々ジュンコ・バンドが同士的に集まって、仕事とは関係なく色々な曲を楽しみながら、定期的にリハーサルをやっていこうというもので、ケンさんの提案ではじまったものだ。実は今回の「軽音」で、Stevieの‘I Wish’をやろうということになっていて、私は簡単なコード・チャートを書いていった。きしくもレコーディングを前に、Stevie Wonderをやるというのは偶然だったのだが、とてもいいきっかけ、盛り上げになったのである。

 ‘I Wish’は“Key of Life”にはいっているノリのいい曲だが、シンプルな構成のなかにところどころにセンスのよさが光るアレンジが施されていて、なかなか感心してしまう。実際演奏してみると、ウエちゃんがすぐに気持ちのいいノリをつかみ取ってゴキゲンにグルーヴしている。おかげで、何度やっても楽しいね!って感じで、ジュンコさんが歌いまくるの図となった。

 今思うと、この時この曲を演奏して、基本的なノリをみんなが感じ取ったのは、とても重要だったのだな。

 さて、6月1日、大橋宅でケンさん、ジュンコさん、マネージャーのツチダさん、カルメン・オザワ、そして私とでミーティングが開かれた。この日までに集められた曲のなかでまず絞られたのは、佐藤健4曲、和田恵子曲、埼谷健次郎曲の6曲。ということで、それぞれ通し番号で仮タイトルとすると、‘Ken M-1〜4’‘Wada M-5’‘Sakiya M-6’となる。

 まずは、5日がリズム録りの初日なので、この日にやる曲を決めるのと、そのアレンジについて話し合う。スムーズなスタートをするには、やはりケンさんの曲が一番入りやすいということで、‘Ken M-1’が決まった。

 ‘Ken M-1’は素朴なフォーク・ソング風に始まって、じょじょにテンションを高めつつ、広がりのあるサビを迎えるというなかなか劇的な曲だ。これを、生のバンドで演奏することで70年代の少しガチャガチャした感じを出したいという、ケンさんの意向だ。なるほど、あまり決め事を多くせずにグルーヴを大事にして、音味としては、同じ種類の楽器(アコースティック・ピアノとフェンダー・ローズやオルガン、エレキ・ギターとアコースティック・ギター、ハイハットのダビング等)をうまく組み合わせることで、素朴さとカオスを表現できるのではと思う。

 ‘Ken M-2,4’は打ち込みをベースにしたいとのことであり、また、ブルースっぽいムード漂う‘Ken M-3’と‘Wada M-5’は若干の修正をトライすることとなり、後日に回された。‘Sakiya M-6’は、最初バラードではじまって、その後ハネるビートで歌われる曲で、とてもキャッチーなサビ・メロを持っているのだが、 始まりをさりげない感じにしたいし、全体のビートがはねているのが気になった。私の中で、細かく考えてみたかったので、少し時間を頂くことにした。実はこの曲がこの後、いろいろと悩みの種となって、私を苦しめることとなるとは、、、。

 今回のアルバム制作にあたり、Stevie Wonderの曲を1曲カバーする事になっていたので、ジュンコさん、ケンさんとも選曲に相当苦労された様子だったが、結局、先日の「軽音」での‘I Wish’のインパクトが忘れられず、これに決定した。リハーサルもやったことだし、レコーディング初日に録りましょうということになった。

 さて、ミーティングを終え、帰宅した私は早速‘Ken M-1’にとりかかった。ケンさんから、メールでデモのMIDIデータが送られてきていて、それを私のCubaseにインポートした。全体の構成や基本のビートはケンさんのアレンジで問題ないので、ところどころに私の色を出させてもらう程度にした。“Key of Life”の‘Ordinary Pain’が頭の中で鳴り響いていたこともあり、イントロダクションにピアノのフレーズを加えた。後、どうしてもロクさんのベース・ソロを入れたくなった。と、いろいろやっているうちに朝になってしまったが、ほぼ全容が見渡せる感じになったのである。

 ‘I Wish’に関しては、キーをオリジナルのE♭mからFmにするぐらいで完コピーしようかと思ったが、一転、「軽音」の時のジャム・セッション風な要素をいれたくなったので、タマちゃんのギターとゴトウさんのサックスを大々的にフューチャーすることにした。さあ〜て、これで初日の準備OKです。それでは次回からは実際の録音の様子をお伝えしましょう。それでは。
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by harukko45 | 2001-07-01 00:00 | 音楽の仕事 | Comments(0)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


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