レコーディング後記その6

 6月17日は、‘Ken M-4’の打ち込みにほぼ費やされた。この曲は今回のラインアップの中で唯一のバラード物で、やさしいムードで仕上げたい。基本は808、909系のサウンド(Rebirth)でドラム・パターンをつくって、アコギ、エレピ、シンベなどを加えた。ただ、最初すべてシークエンサーで鳴らしてまとめたが、全体に柔らかさが少ないので、後日ドラム以外は生に差し替えた。タマちゃんのアコギはもちろん、私がシンセ・ベースとWurlitzerのエレピを弾いたわけだ。

 シンベにつかったのは、ソフト・シンセのPro 52だが、これは昔のProphet 5をシュミレートしたソフトで、なかなかのすぐれ物、お気に入りで頻繁に登場する。かつて、170万円していたハードウェアのサウンドが、2万円台でコンピューター上に再現できてしまうのだ。なんという世の中でしょう!

 ついでにWurlitzer Pianoについても話すと、Donny Hathawayの名盤「Live」で、彼が弾いているのがそれであり、こういう力強くてファンキーなものから、The Carpentersのおにいちゃんが弾くソフトなサウンドまでカバーする名器なのだ。ロック系では、Super Trampの「American Breakfast」なんかも印象的に使われていたな。みなさん、要チェック。もちろん、今回はソフトなサウンドを心がけた。

 それと、サビのところで、ケンさんのシンセ・ソロが登場する。ケンさんが自宅で弾いたMIDIデータをPro 52で鳴らしたのだが、このデータはクォンタイズがかかっておらず、全くの手弾き。エンディング間際にはそのデータがはいってなかったので、それを引き継ぐように、私が同じ音色で弾いた。よって、コンピューターを介して、私とケンさんの連弾(?)が実現したのである。

 こうやって書くと一見、順調に作業は進められたように見えるが、ところがどっこい、Pro Toolsがこのころから、頻繁にフリーズするようになったのだ。一番すごかったのは、この曲の歌入れをジュンコさんが行っているときだったそうだ。あとラストのサビを歌いきれば出来上がり、というところで、かたまってしまい、その日は作業中止。また、やはりこの曲のアコギ・ダビングでもたびたび作業中断、Wurlitzerの時もそうだった。

 エンジニアとして、ひとり責任をかぶりながら、プロフェッサー・セリザワまたの名をセリセリのスリスリは、この日を境に、ほぼ連日徹夜でOSの入れ替えや、各部分のメンテナンスを繰り返した。そのたびにしばらくは改善されたが、すぐにトラブルが復活するのだった。特にこの‘Ken M-4’を立ち上げるたびにフリーズが多くなるので、この曲が呪われているのではという噂がでる始末。ウエちゃんに至っては、ジュンコさんにMacをやさしく撫で撫ですることを勧めた。また、何か怨念がうごめいているかもしれないから、お払いをすべきとのたまわる。早稲田の理工出てるくせに、そんな神秘主義者もどきの説をマジでいうからね〜。

 ケンさんは、我々の後に登場して、夜中じゅう作業しまくる【トランスフォーマー】のせいではないかというし、だいたいこの曲をケンさんが作ったときの動機に、不純なものが含まれてたのではないか?それが、なにかの怨念をよびさましたのではという説も、まともしやかにスタジオ内をかけめぐったのだった。

 とにかく、メンテをしてはフリーズするの繰り返し、プロフェッサー・セリザワを顔は日に日にやつれて(?)いくように見えたのは錯覚だったかもしれないが、彼の努力で何とか(だましだまし)、もろもろの作業は続けられたのだった。

 ところで、セリセリも実は早稲田の出身であることが判明した。彼は法科の出で、大学ビッグバンド・サークルの名門、「ハイソ」でベースを弾いていたという。さらに、いまでもベースの仕事もしていて、8月から劇伴をやるんだって。二足のわらじを見事に、はき分けているのだ。でも、考えても見なさい、ウエちゃんにしろセリセリにしろ、せっかく早稲田卒業したのに、音楽の罠にはまっちゃってさ!オレたちと一緒に仕事してんだぜ、ヘヘヘ〜ンだ!

 話は飛びましたが、怪しげなPro Toolsをセリセリがスリスリしながら、とにかくダビングは続く。そう、予定遅れてんだから!ちょっとマクからね!みんな、気合いいれとくれ!
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by harukko45 | 2001-07-08 00:00 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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