追伸:はがくれ

 大阪2日目の午前中、私はリハーサル前にどうしても行かねばならないところがあった。ホテルから、大阪駅方面に歩くこと約10分、目指すは駅前第三ビルの地下2階、「はがくれ」である。うどん、ウドン、饂飩なのだ!旨い物にはこと欠かない大阪にあっても、この店は東京のグルメ本にもよく掲載されている有名店だが、まだ一度も訪れていなかった。そこで、供される饂飩については、本を読みながら想像して、頭の中では何度も食べているのだが、いざ、本物に会えるとなると心拍数もあがり、歩くスピードも早まるというものだ。こういうときは、誰にもじゃまされず、そっと一人で訪れたい。だから、ちょっと水くさいようだが、他のメンバーのみなさんには内緒なのだ。

 行列ができること必至であるから、開店11時前に到着していなければと、約20分も前に着いてしまった私は、しばしコーヒーなど飲みながら、店の方をうかがった。すると、箱に入った小麦粉の上に ビニールシートを敷き、その上から店員さんが代わる代わる裸足で踏んでいるのが目にはいった。ん〜、これが田中康夫氏の「いまどき真っ当な料理店」でも書かれていた光景か!もうすでに、興奮気味の私であった。

 それに見とれているうちに、人が並び始めたので、こりゃいかん、とばかりに、私も行列に加わらねば。幸い4番目を確保できたのだった。そして、すぐに注文の品を尋ねられた。なぜなら、ここの饂飩は、注文を受けた後に生から麺を湯掻くからで、10分近くの時間を要するのだ。

 フフフッ、注文は3日前から決まっているのだ。「生じょうゆうどん」、それも二玉からなる大盛り(通称ダブル)、まずはこれっきゃないでしょう!おばちゃんにそれを告げただけで、よだれが出てきたわい。

 店のカウンターに通され、しばし待って、目の前に出された丼が、おお、夢にまで見た饂飩ではないか!なんと美しい輝き。そして、別皿におろしとねぎと酢橘がもられているのみなのだ。すると大将とおぼしき人(天谷雅之氏)が、「初めてでっか?」「ハイ、教えてください。」ということで、店主じきじきに食し方をご教授ねがった。饂飩の上におろしとねぎを置き、酢橘をビシっと絞り、そこに讃岐産の醤油を一回、二回、半とかける。まずは2,3本とって、一気にすすれとのこと。ズズズズ〜っと。「どや?」「ウ、ウマイ!」「そういうことや。あとはご自由にな。」

 出汁の味よりも麺の腰が命というのが氏の哲学なのだ。腰が強いといっても、当然そんじょそこらの、ただ硬いだけのものとは訳が違う。喉を伝わる清涼感とでもいう快感。そして、そのスキッとした後味の良さ。この喉越しの素晴らしさをなんと表現したらいいのか。私のつたない文章力では到底お伝えできないので、前出の田中氏によれば、「ツルツルッなる形容を越えて滑らか、ニュルニュルッなる形容を越えて艶やかな質感」、ん〜、さすがに小説家はうまいこと言うな〜。こんな時、ウマイウマイしか言えないのもくやしいな〜!

 夢中で饂飩をすすり、その悦楽は5分も経たずに終焉の時を迎えた。店の外をみるとあっという間に長い行列ができている様子。のんびり席を陣取っていては、迷惑千万。大将の「どうも、おおきに。」にこちらも軽く会釈して、会計する。「600円です。」「え、ダブルですよ。」「大盛りでもお値段同じですねん。」「へぇ〜、そうなんですか!」なんか、えらく得した気分!涙涙。

 旨い物を食った後はすこぶる気分がいいに決まってら〜!名前の通り、「はがくれ」/武士道ならぬ饂飩道を極める職人の技に完全に脱帽、恐れ入谷の鬼子母神ったぁ〜このことだ!次回の大阪でも必ずいくぞ!ホテルに戻る足取りもますます軽やかな私であった。

 追伸:実はホテルに帰ってみると、そのビルの地下の飲食店街に「はがくれ」の支店があったのだった。なんとも灯台もと暗し。であるから、閉店3時前に、またまた行ってしまったのだ、そして、ダブルしてしまったのだった。(今度は「きざみうどん」にしたけどね。)あ〜、うまかった。ご馳走様でした。
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by harukko45 | 2001-09-24 00:00 | 日々のあれこれ

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