渋滞30km耐久マッチレース
2001年 10月 09日
2001年10月7日、レース当日、天気も良好。絶好の行楽(?)日よりじゃね〜か!
Aチーム・ドライバー、植村昌弘は意外とある部分において、手堅い側面をもっている男である。彼はスタート前にインターネットで、この日の交通情報を着実につかんでいた。「中央高速、大渋滞必至、甲府まで4時間か?」すぐさま、パートナーの加塩明子に連絡をとり、10時待ち合わせを1時間繰り上げて、環7で合流、9時30分には永福町から首都高速に入っていた。
一方、Bチーム・ドライバー、和田春比古はその前日、マネージャー・カルメン・オザワに地図をおねだりして、パートナーの六川正彦には、「翌朝10時に、ご自宅にお迎え参上します。3時間ありゃ、大丈夫でしょう。」と告げていた。六川も「ぜ〜んぜ〜ん、だいじょぶだぁ〜。」と返した。当日、和田はモーニング・コーヒーをゆっくりとすすりながら、やはりインターネットを見ていたが、こちらはその朝おこなわれていたサッカー・ワールド・カップ・ヨーロッパ予選の結果をチェックしていたのだ。
「さて、ぼちぼちロクさんちに向かうとするか。」
とその時、彼の携帯が鳴った。
「ハイ、あ、アッコちゃん、ど〜したのかな?朝から僕の声が聞きたかったの?今はまずいですよ、女房がそばにいますからね。」
「バカイッテンジャナイヨ!まだ、スタートしてないの?信じられない!こっちは永福にいるんだけど、渋滞30kmってでてるよ。もう大変なんだから。わざわざ、連絡してあげたんだからね。遅刻してもネエさんは知りませんからね!」
とはいうものの、もうすでに9時45分だから、結局当初の予定通り、六川家には10時にしか着かないのだ。さして動揺もせず、和田は車をスタートさせた。そして、ピッタリ10時六川家着、すると奥様がでて、「今、犬の薬を取りに、病院に行ってるから、ちょっと待っててくれます?」で、お宅におじゃまして、コーヒーなど頂くことに。
「DVDでも見る?新しく買ったのよ。サラウンドにもなってるんだけど、あれ、写らないな〜。変ね〜。」でもって、二人で原因究明にしばし費やすが、結局配線がおかしいのではということになった。DVDは写らずじまいだったが、六川がやっと戻ってきたので、出発することに。時間はすでに10時15分であった。
「ふ〜ん、でもさあ、渋滞って、ひっかかる時間ってあるからさ。ウエちゃん達は早く出過ぎてる訳よ。」
「そうかもね。それより、久々に車でつるんでいくのはやっぱ気分がいいすね。」
「ん〜ほんとほんと。」
この後、気分上々のBチームは、ずっと喋りっぱなしであった。なんで、そんなに話題があるのか不思議なくらいである。だが、六川は少し心配もしていた。なにせ和田という男は、話が盛り上がってくると、頭に血が上ってしまい、道のことなど、どっかにいってしまうからだ。かつて、これと同じ状況で、渋谷に向かうはずが、話に夢中になったまま目黒に行ってしまったことがあるのだ。大体、彼は家のまわりの道路もよく把握できていないのだ。よって、べらべら喋りながらも、六川の適切なナビゲーションによって、国立インターから、中央高速にのり、甲府昭和をめざすことに。時刻はまもなく11時になる。
高速に入って、さすがに車は多かったが、割りとスムースに動いていた。
「イェ〜イ、ほ〜ら、別に大丈夫じゃん!大体、ウエちゃんの性格、考えてみなよ。あういう頑固で入り込みやすいヤツに限って、慎重にするとかえって、渋滞とかにはまるのよ。そこいくと、俺達みたいに心が大きいと、神様も味方してくれるってこと!ガハハハハハぁだ!」
一方、地獄のような大渋滞をなんとか凌いで、ひたすら目的地に向かうAチームでは・・・・。
「ねえ、ウエちゃん、もうだいぶ近いからさ、ドライブ・インで休憩しない?おトイレも行きたいし、なんか食べようよ。」
「何言ってんすか!これからも、何が起きるかわかんないんですから。ノンストップで行きます!トイレなんか我慢してください!」
「エ〜、ウッソー!ムゥ〜この恨みはいつか晴らしてやる。」
「エ、何か言いました?」
「イイエ、なんでもございません!あ、電話だ。もしもし、あ〜、和田さん。どうそっちは。」
「うん、今ね、藤野でトイレ休憩してるとこ、そんでもって、二人でアメリカン・ドッグ食べてんの。」
「ナ、ナ、ナニ〜、ア、ア、アメリカン・ドッグ、た、た、食べてるって。あたしなんか、人質みたいな扱い受けてるっていうのに!」
「ところでさ、渋滞なんかあった?こちとら、スイスイできたよ〜ん。」
「もしもし、ワダさんですか、ウエムラです。言っときますけど、そんなとこで、のんびりしてると、遅刻しますよ。絶対に!」
「はいはい、ありがとさん。じゃ、ぼちぼち、こっち出ますわ、ほなね。」
「ギャ〜!!!ウエちゃん、アメリカン・ドッグ買ってよ、買ってよ!食べたい食べたい!」
「ダメです!むむむ、憎たらしいことだが、正義は必ず勝つのだ。こんな不条理がいつまでも続いてなるものか。」
ひとしきりドライブ気分を満喫していたBチームだったが、大月あたりから、ピタっと動かなくなってしまった。ついに渋滞にはまった。いや、植村昌弘の怨念か。
「ありゃ〜、こんなとこで動かなくなるとは。」
「いいや、大丈夫だ。俺には見える。俺達二人が、午後2時ぴったりにステージ横にスタンバイしている姿が!」
「オオッ、なんと素晴らしい予言でしょう!」
しかし、やっと車が動き始めたのは、勝沼をすぎたあたりからで、時刻はもう午後1時を過ぎていた。和田は猛スピードで運転し始めた。
「ヒャッポー!イケイケ、ゴーゴー。スピード速いの大好き、大好き。」しかし、六川はアメリカン・ドッグを食べた満足感からか、く〜く〜寝てしまった。
「いいよ。オイラひとりでガンバルッチャ!」
その時、Aチームは現地に到着していた。
「やった!勝ったぞ!どうです、アッコさん。ぼくらの勝ちですよ。」
「何が勝ったよ。じょうだんじゃないわ!」
「え、どうしたんです?何で機嫌悪いのかな?女はわからんな〜。」
六川の心配は甲府昭和インターを降りてから、的中してしまった。地図とは反対の方向に向かっているのに彼は気がついた。
「あやや、これ、反対じゃない?絶対、逆だよ。」
「エ〜、嘘でしょ〜。ヤバイ、ヤバイ。」
結局、Bチームの到着は、リハーサル時刻の2時をとっくに過ぎた、2時20分であった。
「いや〜、申し訳ない、申し訳ない。」待っていた他のメンバー、スタッフに平謝りの和田と六川であった。もちろん、そこには、勝ち誇った表情で、植村昌弘がいたのである。このレースの結果は、Aチームの圧勝で終わった。完膚なきまで敗れ去ったBチームではあったが、リハをこなしてからの楽屋では、何事もなかったかのように、はしゃぎまくっていたのが印象的であった。これに関しては救いようがないと思われる。ジャンジャン!