クリスマス・ツアー〜第一章:山形

 12月4日、大橋純子クリスマス・ツアーの初日、山形グランドホテルでのディナーショウである。

 新幹線で山形到着後、リハーサルに臨むのだが、いわゆるディナーショウの場合、リハ前に昼食、一回目のショウの後に夕食、そして二回目のショウ、その後打ち上げ(ま、平たく言えば飲み会ね。)、次の日の出発前に朝食がそれぞれホテル内のレストランでとれることが多く、つまり、食っちゃ演奏し、食っちゃ演奏するの繰り返し、ひとつ間違えるとミュージシャン・ブロイラー状態になる可能性もあるのである。

 12月のツアーで太ってしまい、そのまま忘年会・新年会を迎えて、出っ張った腹の所在に困るということも考えられる私のような中年ミュージシャンには、危険なシリーズであるが、例えば、いつも食が細く、栄養の偏りが気になるウエちゃんのような人には、逆に充実した日々になりうるわけである。

 そんなわけで、一階のコーヒー・ショップで充実したランチ・コースをたいらげた我々は、満腹でリハーサルを開始した。すると、順調にチェックが進むと思いきや、PAシステムの右スピーカーの音が出ないトラブル発生、その直後、私の弾くキーボードが故障してしまった。これには、ジュンコさんも不安げであったが、彼女の「いろいろなトラブルを乗り切って、初日を成功させましょう!」の一言にスタッフが応えて、本番前には問題をクリアし、無事に予定通りショウを始めることができたのだった。

 一回目は18時スタート、今回用意したオープニングは、70年代の偉大なソウル・シンガー、ダニー・ハサウェイの‘This Christmas’である。まずはピアノのイントロに続いて、ジュンコさんがしっとりと歌い上げ、ドラムのフィルをきっかけに全員でグルーヴィに展開するのだが、ここらあたりが初回はプレッシャーのかかる所、ウエちゃんも少々緊張気味に始まったが、曲が進むにつれ、ご機嫌なビートを刻みはじめた。どんなツアーでも、初日は適度な緊張感が全体にあって、それが演奏をしまったものにする。結果、演奏サイドは多少不満が残っても、実際にはいい内容だったということになるのだ。

 さて、この‘This Christmas’、とにかくメロディーがいいよね。思わず口ずさんでしまうのよ。また、コードの展開もいかしてるし、曲の合間にちょくちょく登場するリフのアレンジもなかなかおもしろいのだ。ダニー・ハサウェイのことは、よくご存じの方も多いと思うが、簡単にふりかえると、彼は、ゴスペルを原点にしながら、大学でピアノと音楽理論を専攻したソウル界きっての知性派で、60年代にはアレンジャーとして活躍、その後1970年にアルバム“Everything Is Everything”でデビュー、その後“Roberta Flack&Donny Hathaway”“Live”“Extension Of A Man”といった傑作を生み、まさに「ニューソウル」の旗手として、マーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールド、スティービー・ワンダーとともに並び称される人物だったが、その後突然シーンから遠ざかり、79年に自殺という形でこの世を去った。あまりにも早すぎる死によって、彼の活動期間はわずかだったが、その影響を受けたミュージシャンは数多いのである。こんな事を考えると、演奏中も少し複雑な気持ちにもなる瞬間がある。

 ステージに戻ろう。‘This Christmas’のエンディングから、続いて‘シンプル・ラブ’となる。ここって、結構ショウの構成上、一番の肝ね。つまり、この曲から「Welcome to the Junko world」っていうわけ。それに、日米の70年代ニューソウルの名曲を続けてお送りしちゃうっていう仕掛けなのだ!ちなみに、今回の構成、マネージャーのツチダさんが言い出しっぺ。なかなかやりますな!

 このワクワクした楽しい二曲で、会場も一気にクリスマス・ムードとなりましたぞ。ここからは、ムーディなコーナー。‘たそがれマイラブ’‘You're So Beautiful’‘シルエット・ロマンス’と、ジュンコさんが三つの愛の形を、それぞれ違った表情で綴っていく。歌だけで表現する愛のストーリーとでもいうとこか。バックも控えめに繊細さを大切に演奏していくのだった。

 後半戦は‘A Way’‘サファリ・ナイト’‘ペーパー・ムーン’である。前のコーナーで、神経を使った我々は、ここで一気に解放された気分となり、真っ赤に燃え上がっていくのである!みなさん、手拍子をどうぞ!盛り上がっていこう!‘ペーパー・ムーン’前の「タマちゃんショウ」も相変わらずバカ受けです。何度やっても‘ペーパー・ムーン’は怒濤のパフォーマンスとあいなるのであった。そして、本編の最後は‘愛は時を越えて’である。お馴染みのこの曲も、このごろの世の中の空気感の中で演奏すると、特別な意味あいを感じずにはいられなかった。ふと会場を見ると、なんとこの曲にあわせてチーク・ダンスを踊っているカップルがいた。いや〜、素晴らしい光景じゃありませんか!山形のお客さんのセンスのいいこと!我々もとっても幸せな気分になりましたよ。

 こうして、充実した一回目を終えた私達は、8階のレストランで夕食をとることに。ここでもまた充実した「ステーキ・コース」をいただいたのであった。オードブルを口に運んだ瞬間、「あ〜、ワイン飲みてぇ〜。」と思ったが、ま、ここは我慢我慢、二回目に備えなくては。ところが、あまり食欲がないと言っていたゴトウさんが、食事が始まるや一気にコース料理を食い上げ、「いや〜、火がついた。」などと発するや、女性コーラス陣の残した物も全て平らげるという荒技をみせた。一体この人は、何なのでしょう?マッタク!

 充実した精神と充実した肉体(満タンの胃袋)を獲得した我らに怖い物なし!今日の我々には一分のスキもなし!これで二回目が悪いわけ無し!

 その通り!リラックスしたみんなの演奏は、実に生き生きしたものだった。終演後、録音されたDATでチェックすると、同じ曲でも全然表情が違う。全体の完成度は一回目がよいが、二回目の自由で活発なムードも捨てがたい。そうして、盛大な拍手に迎えられて、アンコールは‘My Love’だ。ところが、ここでジュンコさん、突然歌詞がとんでしまいました。おまけに笑いはじめてしまいました。これには、ステージ上も会場もバカ受け状態。逆にメッチャ盛り上がってしまうなんて!おもろいこっちゃ。やり直した‘My Love’は、お客さんへの素晴らしいクリスマス・プレゼントになったはず。

 さあ、「若さと美貌」が売りのジュンコさん率いる、(ゴトウさん曰く)「バカさと貧乏」のジュンコ・バンドはこれからもまだまだいきまっせ!まずは初日大成功に乾杯であります。
[PR]
by harukko45 | 2001-12-07 00:00 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31