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新春放談:JUNKO 2001〜2002を語る(その2)/植村昌弘X和田春彦

植村  「さて、ホームページに続いては、ライヴ活動について語らなければなりませんね。和田さんとしては、昨年のベスト・パフォーマンスはどの辺りだと考えていらっしゃいますか?」
和田  「3月22,23日の福岡ブルーノートを真っ先に上げたいと思います。」
植  「というと僕がいない時ですけど。」
和  「そうです。あなたがいなくて、ドラムは濱田尚哉さんでした。あの時の演奏は良かった!」
植  「・・・・・・・・。」
和  「あなたはいなかったんだから、わからないでしょうが、ほんとうに良かった。素晴らしく盛り上がりました。お客さんも大変すばらしかった。とても印象的でしたね。おまけに宴会がまた楽しくって、楽しくって!その時の模様は拙著『バンマスのぼやきVol.8〜10』をご覧になればおわかりになると思いますが、やはり、その時の内容がいいと、後に書いたコラムの筆ならぬキーボードも軽やか、ってな感じでしょうかね。もうすでに『ぼやきシリーズ』も45本を数えますが、この福岡編は私のお気に入りの一つですね。」

植  「あ〜、そうですか。では、僕が復帰した6月以降についてはどうなんでしょう。」
和  「ん〜、正直、苦労しましたね。」
植  「え、そうなんですか。本当に?まじですか?」
和  「はい。やはり、レコーディング直後の新曲を多くセットに組み入れたので、それを仕上げていくのに時間がかかったのです。前回の“Time Flies”直後は、民音などのまとまったツアーが組まれ、演奏する機会が多く、各曲のパフォーマンスがどんどんタイトに完成されていくのが手に取るようにわかりました。が、昨年はそういったことに恵まれず、また曲自体の捉え方について、私もはっきり方向性をメンバーに示し得なかったため、なかなか満足いく結果にはむすびつかなかったように感じています。これについては、反省しきりです。」
植  「確かに‘8番目の海’は、未だに完璧とはいえないですね。それに‘A Way’は何度やってもむずかしい。その日の気分でもグルーヴが揺らいでしまって、これだ!っていう確信がなかなかつかめませんでした。」

和  「そう言った意味では12月16日の沖縄でのディナー・ショウは、ほぼ完璧であったと思います。この時の構成はメリハリの利いた曲順で、どこでも好評でしたが、特に沖縄はメンバー全員の集中力が切れず、大変満足しています。」
植  「僕も同意見ですが、たぶんに和田さんの場合、その前後の宴会がおもしろかったかどうかが影響するんじゃないですか?僕は前乗りできなかったから、よくわからないのですが、沖縄もかなり盛り上がった夜だったみたいじゃないですか。」
和  「・・・・・・・・。」

植  「まあ、いいでしょう。では、6〜7月におこなわれた“Quarter”のレコーディングについて話をすすめたいと思います。“Time Flies”の時よりもバンド色が濃くなったといって良いと思いますが、いかがですか。」
和  「そうですね。ですから、アレンジメント的には制約が少なくなりました。その分、各自の自主性を重んじたかったのです。しかし、それならそうで、もっとみんなにまかせて、私は情緒的な部分や抽象的なイメージの部分のディレクションに専念してもよかったかなと。テンポやグルーヴももっと揺らいで、音数も少なく空間を生かしたサウンドにしてもよかったのではと感じています。」
植  「よりライヴ的なアプローチを試みるということですか。」
和  「そうとも言えますが、つまり『メインストリーム』なのか『オルタネイティヴ』なのかという命題なのです。『メインストリーム』指向でいくなら、一に良い曲、二に良い歌と演奏、三にサウンドでいいのです。良い曲と良い歌があればピアノ一本、ギター一本でも充分です。しかし、サウンドをより追求する、ましてバンド・サウンドだということなら、ある程度の過激さ、大胆さ、またそこから生まれるハプニングに対しても寛容でなくてはいけません。そして、結果として『オルタネイティヴ』な道を示すということです。」
植  「そこが不十分であると。しかし、現在の音楽シーンに『メインストリーム』というものは存在するのですか?ある意味すべてが『オルタネイティヴ』指向で、従来型の『メインストリーム』な音楽は少なくとも、ヒットしてないんじゃないですか。ようするに『メインストリーム』な音楽は予定調和に終始して力を失い、ディナーショウや深夜テレビの歌番組に追いやられ、アンダーグラウンド化しています。ですから、現代において音楽制作がサウンド指向になるのは至極当然と考えます。ただ、いくらバンド・サウンドだといっても、ある種のリーダーシップをとる人材が絶対必要であり、逆にそのカリスマ性こそが完成度を決めるといえると思います。そういう点では、和田さんの迷いは僕らには困るわけです。」
和  「するどいご指摘です。その指摘はゴトウさんやコーラスのサエコ嬢からもありました。彼らも私の迷いを感じ取ってやりにくかったのかもしれませんし、またそう指摘されることで、みんな音楽に対して真摯な姿勢で臨んでいるのだなとも思ったわけです。」
植  「もうちょっと和田さん、しっかりしてくださいと。」
和  「そうです。ですから、その点が今年の抱負となっていくわけですね。」
植  「なるほど。でも、僕的には‘エンジェルフィッシュは眠らない’は、和田さん言うところの『オルタネイティヴ』な方向性とジュンコさんが合体した成功例だと思いますよ。聴いていて、とても新鮮だし、自分のプレイにも満足しています。」
和  「仰るとおりですね。私も好きです。それにあの時の植村さんの演奏は大絶賛です。あういうプレイはあなたしか出来ません。それと、やはり一曲目の‘A Way’ですね。この曲は先ほどからの『メインストリーム』か『オルタネイティヴ』かというような議論にはあてはまらないところで浮遊しているような仕上がりが気に入っています。“Quarter”は25セント、そのコインの裏表が‘A Way’と‘エンジェルフィッシュは眠らない’ということなのです。」
植  「‘A Way’はレコーディングでも苦労しましたね。でも、確かにグチャグチャしてそうで、素朴なところもあるし、タイトなようで、緩やかなノリでもあるという奇跡的な作品かもしれませんね。それでは最後に今年にかける気持ちということでまとめていただけますか。」

和  「大橋純子という日本において稀有な存在であるボーカリストの素晴らしさを我々はしっかりと支え続けること。それには、今の良い状態をキープするために、『変化』を畏れてはいけないと思います。良い状態=安定は一歩間違うとマンネリに堕落する危険があるということです。それを回避する意味でも『変化』していかなくてはいけません。より安定するために『変化』するのです。これは、今の日本の社会すべてに通じることでもありますが、私達も常に新鮮に音楽に対して臨まなくてはならないのです。具体的にはアレンジ面、演奏面、ショウの構成・セットリストの変更等、いろいろありますよね。それを一つ一つ前向きにトライしていきましょう。」
植  「大変長い時間ありがとうございました。お互い今年もがんばっていきましょう。」
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by harukko45 | 2002-01-01 01:00 | 日々のあれこれ | Comments(0)

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる


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