レコーディング終了/Part2
2003年 04月 12日
今の時代感覚とは何だろう? 大げさなもの、外見だけ派手なものに、なんだか疑いの気持ちをもってしまう。素朴でもいいから、真実を感じたい、できすぎた音楽性よりも、リアルな感情や直感的な響きが聴きたい。それによって、自分が予定調和でない感動を体験したい。・・・そんなところだろうか。つまり、頭でっかちに考えぬいた音楽より、自然発生的で即興性や肉体性をもった音楽体験がこれから求められるのではないだろうか。
ついつい大見得を切るのが私の悪い癖だが、こんな島国の微力な音楽家にも、一昨年の「9.11以降」という意識はあるのである。アメリカの音楽的指向が明らかにあの時から変わっていったように、私達も生きていて今本当に「聴きたい音楽」「奏でたい音楽」と「そうでない音楽」が明解に分かれてきたのである。数年前だったら、「そうでない音楽」についても関心を持っていなければ、やっていけない気がしていた。でも、もう今はそんなことは必要ないと確信している。人間の人生において、真に「聴くべき音楽」「大事にしたい音楽」とはあまり多くないということにも、やっと気づいたこの頃である。
ふうっ、だいぶ横道にそれた。「アイトキ」にもどろう。今回のアレンジでは、徳武弘文さんをフィーチャアした。彼のアコースティック・ギターをベーシックに、エレクトリック・ギターは自由にフィルインしてもらった。さすがの徳武さんもジュンコさんの歌に最初のうち圧倒されたらしい。はじめは珍しく硬い感じだったのだが、じょじょに調子を取り戻し、いつもの流れるように歌いまくる、素晴らしいプレイで決めてくれた。ほんとにうまいよ、この人は! まったくもってほれぼれする内容だ。
つづいて、ロクさんがフレットレス・ベースを入れた。そして、私がキーボードを加えた。が、この時点で、少し音が飽和しているように思えた。原因は、ベーシックに入っているシンセ・ピアノが全体をおおっていて、各人のプレイを不明瞭な響きにしてしまっていたからだった。というわけで、フェンダー・ローズで入れ直した。すると、サウンドの見通しが実に良くなり、ロクさんとトクさんの絡み合いや、ダブルで録音したアコギがより美しく輝きだした。そして、割と抑えめなパターンでプログラミングしていたドラムも生き生きとした表情が加わって聞こえるようになったのだ。
この曲のアレンジとみんなのプレイをジュンコさんは気に入ってくれたようだった。それもあってか、その後の歌入れでは自他ともに認める最高のボーカルを披露したのだった。今頃になって気が付いたのは、詞がよく聞こえるようになって、その意味や感情が自然に理解でき、もともとの歌詞が素晴らしかったということだ。そうなると、今までこの曲に共感をあまりしていなかった私もいっぺんに大好きになってしまったのである。というより、なんか「キュン」とくる感じなのだ。実はロクさんもそうだったらしい。なぜなら、帰宅時、私の車のなかで、アイトキのラフ・ミックスを聴きながら、一緒に大声で歌い始めたからだ。これには、驚いたが、でも気持ちはよくわかったし、私も気分がよかった。
まずは、アイトキ大成功!これで、ライブのセットリストに復活するのも間違いない、ウムウム。というわけで、幸先良く始まったレコーディングは、まだ続くぞ〜。それでは、今回はこの辺で。