レコーディング終了/Part4
2003年 05月 02日
まずは、ミディアム・テンポの気持ちいいグルーヴを持った‘Rainy Anniversary’。ケンさんのリクエストによるウッド・ベースでの打ち込み。普通にサンプリング・シンセなどで、プログラミングしてもなかなか面白い感じにはならないのだが、(まあ、当たり前の打ち込みって感じ)今回はもうちょっと工夫して、市販されているベーシストのフレーズ集から素材をサンプリングし、それを解体、新たなフレーズに再構築して、ベースのトラックをつくっていった。これが、なかなかよい結果を生んで、非常にグルーヴィでリアルなベース・サウンドを作り出すことができた。これに、ブラシをメインにしたドラムを打ち込んで、リズムは完成である。
けっこう、この時点でかなりイケテる感じなんだけど、ここに再びオッサンに登場ねがい、アコースティック・ギターのカッティングと全編にエレキ・ギターで自由にフィル・インしてもらった。音色といい、フレーズといい、ピタっと決めまくっていただいて、一同超満足! それにしてもオッサンのソロって、なんか「引っかかる」んだよね。この「引っかかる」って、「プレイぶりが」じゃなくて、「心に」ということ。彼がギターの名手であることは、よく知られているわけだけど、そのプレイの魅力は一言でいえば、まさに「引っかかる」じゃないかな。とにかく、予定調和な美しさを拒否して、常にどこかに過激な(危険な)トライをこころみようとする精神があって、うまさからくる安定感との微妙なバランスが、何とも言えないスリリングなムードを漂わせるのである。
実は、本人にこないだ酔っぱらった勢いで直接聞いてみました。
「オッサン! オレ、オモウンダケド、オッサンノプレイハ、ナンカ、ヒッカカルカンジ、ナンダヨネ。」
「ソリャ、ソウカモネ。ダッテ、イツモ、ドッカデ、ナガレヲ、カエテヤロウッテ、オモイガ、デテキテ、タイテイ、フツウニハ、オワラナクナッチャウンダ。」
というわけで、私の主張する「引っかかる」オッサンは、見事証明され、なおかつ本人はかなり、確信犯であることも判明したわけである。人柄の良さの裏側に潜むある種の「悪魔性」こそ、オッサンのすばらしい芸術的魅力と言えよう。
こういったバックにのったジュンコさんは、今回のアルバムの中で最もリラックスした軽やかなトーンで歌った。ケンさんのメロディとジュンコさんの声。この名コンビが生む軽やかでおしゃれな世界は、あの美乃家からの伝統といってもいいもので、この二人にしかできないサウンドだ。私をはじめ「ニューミュージック」世代にはなつかしくもあり、そして今でもなお新鮮な魅力をもっていることを十二分に示していると確信するのである!
相変わらず大げさな! とおっしゃるな。だって、この曲のノリ、けっこう気に入ってるんだ。みなさんも楽しくのってくれること間違いないと思っています。