大橋純子/クラブ・サーキット・ツアー2003を終えて(1)

 7月4日、東京六本木「スイート・ベイジル139」にて、私達の「クラブ・サーキット・ツアー2003」は終了した。「え、もう終わり?」それが今の実感である。もう、すっかり気が抜けてしまった感じだ。「もっとやりたい。もっといろんな所でやりたい。もっとたくさんの人々に聴いてほしい。もっと盛り上がりたい。もっと音楽したい。このまま家に帰らなくてもいいから、もっと、もっと、もっと!」

 なんでこんな気持ちになるのか? 去年も成功だったと思うし、その前も。いや、ここ数年我々のスタンスは何も変わってはいないつもりだ。なのに、今年は特にツアーを終えることが寂しく感じられるのは、福岡・名古屋・大阪・東京それぞれのライブで体験したお客さんたちの前回・前々回を上回る熱い反応のすごさが、私を興奮させっぱなしだからなのだ。その余韻がずっと残っていて、まるで38度の熱が下がらずにいるようなのだ。(実際、風邪をひいて、こじらせてはいるが。)

 今、ジュンコさんのニューアルバム“June”を聴きながら、これを書いている。もうすでにそれぞれの曲が自分から離れ、一つ一つの音楽体として、生き生きと存在しているように感じている。自分がつくった子供達が、出来て1ヶ月でもはや独り立ちするほど成長するとは! そう、音楽とは勝手にどんどん成長するし、若くして死んでしまうこともある。モーツァルトのオペラやベートーベンのピアノ曲は200年以上も成長し続けている。また、ビートルズやブライアン・ウィルソンやボブ・ディランそしてマイルス・デイビスの音楽は、少なくとも僕の中ではますます大きくなり、心の宇宙を埋め尽くすかのようだ。

 そんな中、大橋純子さんという素晴らしい才能の力を借りていながら、私はこれまで何曲もの音楽を自らの稚拙なアレンジで犠牲にしてきたことだろうか。よく、ジュンコさんも我慢してきてくれたと思う。今、この“June”でやっと少し恩返しができたのではと思えてきた。そう、“June”の音楽は成長している。と同時に、別の思いも浮かんできた。‘二人のアフタヌーン’‘Something Blue’はバンドでライブ演奏することによって、成熟の度合いを早めた。少なくとも、大阪における2曲の内容はレコーディング・バージョンとは別の素晴らしさを表現していたと思う。‘You're So Beautiful’、実は今のライブの方が好きである。その日その日で、微妙に変化していったり、(私の演奏が)ふらふらしたり、危なっかしかったりもしたが、常に素晴らしかったジュンコさんの生き生きした感情にあふれていた。

 ‘Rainny Anniversary’は東京でのみの演奏だったせいもあり、CDにおけるオッサンのゴキゲンなパフォーマンスやリズム・トラックのグルーヴを越えることは残念ながらかなわなかった。同じく‘愛は時を越えて’も、徳武さんの素晴らしいプレイが聴けるCDバージョンは、完成度が実に高くて、私にとっても一生の記念に残るテイクであるのだが、今回のライブにおける「アイトキ」は、そういった音楽的要素をある程度犠牲にしながらも、あくまで唄中心のシンプルなバッキングを心がけた。そうすることで、明らかに歌詞が良く伝わって曲自体の良さを強調出来たし、演奏者自らが共感・感動できるレパートリーに仕上がったことは確かだと思う。(悔やまれるのは、福岡の初日一回目のステージ、私が凡ミスしてあまりうまくいかなかったこと。それを引きずってしまって、‘二人のアフタヌーン’もボロボロ。バカヤロー! 反省しろ。猛省せよ!)

 すっかり安定して風格さえ感じはじめた‘たそがれマイラブ’モカ・ジャバ・バージョンは毎回完璧! 名曲! 名演! ゴトウさんのフルート・ソロがけっこうチャレンジャーでスリリングさを醸し出した。

 また、これも東京のみの演奏だったが、アルバム“Quarter”に入っていた‘どうして心は’を今回の雰囲気に合わせて、アコーステッィク・サウンドにみんなでアレンジした。これが、ちょっとスパニッシュ、ジプシー風に仕上がって、一気にノリノリになってしまった。思いがけず大成功って感じ。タマちゃんのアコギとウエちゃんの大活躍でけっこう受けたよ! これからのセットリストにも加わりそうな曲に見事蘇ったのだった。

 そこ行くと、これも東京のみだった10CCの名曲‘I'm Not In Love’のJ・セレクション・バージョンは、もうちょっと良くできたはずだったんだが、本番では今一つ入り込めず、むずかしかった。今回のセットの中では、少し浮いていたかもしれない。その辺は、今回のツアーにおける数少ない問題点とも言える。

 前半の新曲を中心にした「シックな」コーナーのピークは‘二人のアフタヌーン’と‘シルエット・ロマンス’の来生たかお・えつこ作品となったわけだが、この構成はけっこうミエミエでわかっちゃいるけど、やっぱり良かったと思う。今まで、ひとりぼっちで22年間過ごした‘シルエット・ロマンス’が‘二人のアフタヌーン’という伴侶に巡り会えたのだ。この2曲の結婚はライブでしか実現しないのだから、こちらもおのずと気持ちが入ってしまう。しかし、さすがは来生姉弟である。最初から計画していたかのようなお似合いのカップルなのだ、この2曲! 二つが結ばれることによって、それぞれの良さがより引き立つように思えたのは私だけだろうか。

 来生さんの曲の良さは、まるで「スルメ」・・・つまり噛めば噛むほど、演奏すればするほど、味が出てくることなのだ。だから、毎日毎日好きになって、どんどん大事な大事なものになってしまう。今、私の中で‘二人のアフタヌーン’は愛おしくてたまらない存在だ。そしてこんな歳の離れた若くて美しい伴侶を得た‘シルエット・ロマンス’に猛烈に嫉妬している。
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by harukko45 | 2003-07-06 00:00 | 音楽の仕事

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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