大橋純子/クラブ・サーキット・ツアー2003を終えて(2)
2003年 07月 06日
いきなりですが、‘シルエット・ロマンス’のあと、我々はROCKする!!
ほんとは唐突かもしれなかった。でも、そうなった。それが、ジュンコさんなのだ。けっして予定調和じゃないのだ、この人は。バラードを色っぽく歌ったその直後に、60年代後半のサイケデリック・シーンに一気にタイムスリップできるのだ。下手すればそれまでの内容を台無しにしかねないのだ。
でも、そうした。
それが、ジュンコさんの真実であり、‘シルエット・ロマンス’とROCKは、彼女の中で常に並立している。それが、素直な気持ちであり、嘘でない本当の自分を今回全てさらけ出したのだ。
単純に考えても、激しいビートにのってハイ・トーンを駆使するのは喉や腰に負担をかける。だからといって、前半のバラードが楽なのではない。微妙なニュアンスを表現するためのテクニックを使うのは、体力のみならず緊張感をともなって、精神的な負担が大きく、別の神経が必要なのだ。最初からどちらか一方なら、ある程度ステージにおけるコンディションの見通しがつくが、今回は途中で全てを切り替えなくてはならないのだ。それに、全く違う2つのサウンドを1つのステージにまとめ上げなければならない。このプレッシャーは、さすがのジュンコさんであっても大変なものであったことは容易に想像できた。
がしかし、精神的にも体力的にも全力を出しきるジュンコさんは、私達バンドのみならず、お客さん達、お店の従業員・スタッフまで熱狂させたのだった。‘Baby,It's You’‘Honky Tonk Women’そして、続けざまにやった‘サファリ・ナイト’で、場内は爆発してしまった。名古屋と大阪ではたくさんの人が立ち上がって踊りはじめた。東京でも、うしろの席の人達が踊っていた。福岡では‘Honky Tonk Women’の後の‘サファリ・ナイト’の盛り上がりは尋常じゃなかった。大阪ブルーノートの女性スタッフが踊っていたのには驚いた。我々と同世代の40〜50代の人にとっては青春そのもののロック・サウンドではあるものの、ここまでみんなが歌い、手拍子し、立ち上がり、踊り出すとは思わなかった。
ステージと客席の熱狂が相乗効果となって、素晴らしい瞬間を私達は体験できた。会場中が一つになった感動、まさにかつてのロックが持っていた「Love&Peace」がこれだったのだ! ほんとに、それぞれのステージでの体験を今思い出すだけでも、鳥肌が立つような興奮を覚える。一生の思い出となるような素晴らしい経験をさせてもらったし、私達のやり方が間違ってなかったという確信を与えてもらったのだった。
本編の最後は‘微笑むための勇気’、すごい熱狂のあとのこの曲の持つ、なんというやさしさに満ちた広がり感だろうか。正直、演奏がどうのこうのではない。この曲、この音楽そのものだけを楽しむ、感じることのできる幸せを何と表現したらよいのか、今の私にはわからない。
アンコール、‘シンプル・ラブ’という傑作はどんな状況でも、人に喜びや明るさを与えてくれる。こういうとき、「演奏すること」と「聴くこと」、それを「楽しむ」ことに差異がなくなる。お客さんも演奏しているし、我々も聴いて楽しんだ。
そして、東京ではもう一曲、‘My Love’をやった。もう、何も言うことはない。