大橋純子/スイートベイジルで一足早く決勝戦
2002年 06月 30日
ただ一つ気にかかったのは、この決勝戦に出場停止選手が一人いたこと。ドラムのウエちゃんは、24日からドイツに旅立ってしまったのだ。もちろん、演奏しにいっているのだが、前々からのスケジュールの都合とはいえ、いつものレギュラー・メンバーでのぞめないのは至極残念だ。がしかし、この日の我々は、決勝T1回戦で致命的な采配ミスをおかし、敗戦を招いたトルシエとは全く違い、どのような場面においても、的確な作戦・メンバー交代で集中を切らせず、最後まで戦い抜くことができるということを立派に証明した。
ウエちゃんのかわりは、濱田尚哉君にお願いした。このコーナーをはじめからチェックしている方なら、もうご存じだろう。「ハマちゃん」再登場である。こういったチームが苦しい状況では、やはり経験豊富、百戦錬磨のベテランの力が絶対大事なのだ。それに、ハマちゃんは私達の音楽性と普段の粗忽さ、ふしだらな人間性のギャップを十分理解してくれている数少ないドラマーであり、その優れた適応能力と自己主張(自己のないミュージシャンは、どんな現場でも適応できない)で、もうずいぶん前から一緒にバンドを組んでいるかのような安心感を作り上げてくれるのだ。おかげで我々は、過度の緊張もなく、思う存分自分のプレイに集中することができたというわけだ。
もちろん、そういった精神面の支えだけでなく実際のプレイも大絶賛に値するものだったのは言うまでもない。この日のハマちゃんは、守備の要としてセンターバックの役割をきちんとこなす(的確なテンポ、ビートを供給する)一方で、いざ攻撃のシーンでは、スペースを見つけると果敢に前方にドリブルで上がり、絶妙なクロスを何度もゴール前に蹴りだし、決定的なチャンス(各曲のダイナミクスの良さ、エンディングへ向かう勢い)を演出した。まさにその勇姿は、かつての西ドイツの皇帝ベッケンバウアーを彷彿とさせる「リベロ」(自由な人)であった。
一方、他のレギュラーメンバーとっては、過去8回のステージの演奏で熟成した今回のレパートリーをマンネリ化せずに、リフレッシュさせる効果もあった。中盤の底で「ボランチ」(舵を取る人)として、常に好プレイを続け、みんなを鼓舞していたロクさんをして、「何曲かで、新しいビートを演奏できた。」と言わしめたのである。
また、今回はサポーターの素晴らしさも特筆すべきことだ。とかく、東京のお客さんは割とおとなしく、妙に緊張感があるものなのだが、この日スイートベイジルに集まった満員の人達は、心底音楽好き、ジュンコさん好きのサポーターであった。聴いている人達が、楽しむことを素直に表現してくれることこそ、私達ミュージシャンにとっての最上の喜びであるわけで、そういった素敵なお客さんによって、こちらのより良いパフォーマンスも自然と引き出されていく。それらが、相乗効果となり、この日絶好調のフォワード、ジュンコさんが絶妙のボレー(唄のうまさ)とヘディング(誰にも真似できないハイ・トーン)から2点(!)をゴー〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ルしたのだ!どうだ、まいったか!
この日良かった我々のシステムは、基本的にジュンコさんの1トップではあるが、時折見せた、両サイドからのゴトウさんとタマちゃんの攻撃参加による一時的3トップ状態や、サエコとアッコの2列目からの上がり、という変幻自在の超攻撃的姿勢が、実に効果的にきいて、ショウ全体を飽きさせず美しくまとめあげるのに成功したのだ。(曲のセット・リストがひじょうに良い流れを作ってくれていたこともその要因。)
で、私?フフフフッ、当然、中田英寿的トップ下のポジションで、攻撃の起点となっているのは言うまでもない。また今回、自ら黒子的役割にまわり、そこで作ったスペースにボランチやバックを飛び込ませる、という渋い活躍もあったのであ〜る。(ちと自画自賛しすぎ?)
ベンチの佐藤健監督も今日はすっかりご満悦。終演後、楽屋で我々に、「安心して『大人のステージ」』を観ることが出来た。」と言ってくれた。こう、ほめられちゃ、盛り上がるしかないでしょ!見事な優勝カップを手にしたジュンコさんを先頭に、私達は久しぶりに朝まで飲み明かした。しまいに私、とうとう正体不明の状態になってしまいました。もしかして、ご迷惑をおかけしたメンバー・スタッフの方、どうぞお許しを。でも、この経験は必ずや4年後に生きるはず。なんだと〜!だめだ、こりゃ。サッカー三昧もここに極まれり。音楽とサッカーがごっちゃじゃねえか。いい加減にしろ!そうそう、もうワールドカップもおしまい。そろそろ現実に戻らなくっちゃね。とにかく、みんなにアリガトウ!