「シリアナ」と「戦場のアリア」

 最近になってずいぶん暇になったので、録り貯めておいた映画を観ていたのだが、たまたま残ったのが、実話に基づく物語だった。

e0093608_23430100.jpg そのうちの1本「シリアナ」は、アメリカでは2004年に公開されて、78回アカデミーでジョージ・クルーニーが助演男優賞に輝いた作品。
 で、その内容は、元CIA工作員が書いた「CIAは何をしていた?」をヒントに、石油利権を中心にしたアラブの王族とアメリカ企業、CIA、司法省、そしてイスラム原理主義のテロリスト達へとつながる、複雑で陰謀にまみれた闇の関係を描いたもの、ってところかな。

 「トラフィック」のスタッフが作ったので、これもドキュメンタリー的な作り(実話が元だし)で、なかなかリアルなのだが、テンポが早く、始めに油断しながら観ていると、何が何だか、誰が誰だったか訳が分からなくなってしまうだろう。ただ、そのうちそれぞれの関係性がじょじょにわかってきて、それが結末における「大きな失望感」とも言える空しさに集約されていくのだった。
 この映画はアメリカという国家がいかに世界に不幸の原因を撒いているのか、という具体的な一例を映していると思う。ある意味「9.11」への道にも通じる何かは、このような形でアメリカ自身が作っていたということかもしれない。

 だいたい、タイトルの「シリアナ」というのはアメリカが考えるアラブ再編構想において、シリア、イラク、イランが一つの民族国家になった時を想定した名前なのだ。私はその事をここで初めて知ったわけだが、それだけでも見たかいがあった。
 そして再び知ることになる真実、アメリカとは、「自分達の都合や利益のためなら、他の国も民族も思い通りにし、何でも出来ると思っている図々しさ、おぞましさ、そして、それを自由と民主主義の伝授として正当化してしまう単純さ」そのものなのだ、ということ。

 これを見終わって感じる事は、アメリカへの幻滅と怒りであり、この世の不条理さだろう。だが、このような映画を作って自らの国家や権力者達の陰謀を世界中に知らしめようとするのもアメリカ人なのだった。そこが、彼らの良き一面とも言えるのだろうが、ハリウッド特有のリベラル指向がこのような形で表れているとも思えて、やっぱり政治的な臭いを感じてしまうのだった。

 だから、この映画を絶賛などしないし、オスカーをあげるほどのものでもないと思った。まぁ、いつもアカデミー賞は驚かされることが多いし、特に最近は可笑しいから(ここ2回の作品賞が「クラッシュ」と「ディパーテッド」だなんてマジ?!)、何か裏があるんだろう。

e0093608_23441733.jpg さて、それに比べるともう一つの実話を元にした戦争映画「戦場のアリア」は、およそ本当にあったこととは思えないような奇跡的な話で、観ていて少し心が慰められた。
 それは第一次世界大戦下フランス北部の前線各地で起こった、スコットランド、フランス、ドイツ3軍による自然発生的なクリスマス休戦の話。

 スコットランド軍のバグパイプの伴奏で、ドイツ軍に所属していたオペラ歌手がクリスマス・キャロルを歌い、フランス軍のシャンパンで乾杯した。そして、多くのものが一つのミサに参加したと言う。当然、公式の戦史には残ってはいないが、ヨーロッパでずっと語り継がれてきたという、実に感動的な話である。

 特に音楽がきっかけで、敵同士が一瞬ではあるが、戦争を忘れて友となっていく流れには熱いものがこみ上げてくる。
 だが、これも最後には国家の力によって無情にも踏みにじられていくのだった。そして、何ともやりきれないのが、ともに同じ宗教の名の元に兵士達は「相手を皆殺しにせよ」と命じられることだった。

 と同時に、ここで描かれる奇跡の物語は、共に同じキリスト教を信じる者同士だから、成立したことだとも言える。もしも、異教徒同士の戦争であったなら、絶対に起きることがなかった物語であり、現代人にとってはファンタジー的に美化された世界に見えてしまうのだった。
 それを考えると、また「シリアナ」の世界にどうしても引き戻されてしまう自分がいた。ただただ世の中は不条理だ。
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by harukko45 | 2007-06-15 04:13 | 映画・TV

おやじミュージシャン和田春彦の日記でごじゃる
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